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魔法少女の設計図~曲解~  作者: 七色栄兎
第2章 魔法少女ショータイム編
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第9話犯罪的な笑顔

お待たせしました。第2章開幕です。

モンスター退治の翌日。

小鳥さえずる、清々しい朝。

一軒の家、その前に蒼いロングヘアーの少女が立っていた。

「こ、ここよね・・・。」

蒼いロングヘアーの少女、るりはここ、まほの家の前にいた。

「さて、どうしようかしら・・・。」

しばし考えこむ。

「“まほ! 一緒に登校しましょう!”かしら? それとも、“迎えに来たわ! さあ、私と一緒に行きましょう!”かしら?」

るりは、一緒に登校するため、まほの家まで来たようだ。

ちなみに、今日は徒歩である。

「ま、まずは、ドアホンのチャイムを鳴らすところからよね! あっ! でも、まだ心の準備が・・・。」

るりは、まほの家の前を、うろうろと往復していた。

すると・・・


「あれ? るりじゃん!」

「もしかして、るりるりもまほのこと迎えに来たの?」


るりの後ろより、聞き覚えのある声が届く。

その声に、るりは軽く飛び上がり驚く。

「ふぇひゃっ!? ゆ、ゆゆ、ゆうなとゆきとね! お、脅かさないでよ!」

声の主は、ゆうなとゆきとである。

るりは振り返り、二人を見る。

「俺も別に、脅かしたわけではないんだけどな~。」

「わ、分かってるわよ! そんなの!」

ゆきとの質問に、少し慌てながら答える。

そして、ゆうながさらに鋭い質問をする。

「それより、るりるりはピンポーンしないの?」

「うっ! い、今から押そうかと思っていたところよ!」

少し震わせながら、指をチャイムへと伸ばす。

(押すわよ! うん、大丈夫! ゆうなとゆきともいるし大丈夫! で、でもまだ・・・。)

るりは、伸ばした指を少し引っ込める。

しかし・・・


ピンポーン!


「さっさと押そうぜ!」

るりの指を乗り越え、ゆきとがチャイムを鳴らす。

「ひゃうっ! ま、まだ心の準備が・・・。」

「何の準備だよ・・・。押すだけだろ?」

「そうそう、るりるり緊張しすぎ!」

るりの訴えを、ゆきととゆうなは軽く受け流した。

チャイムを押され、ドアホンに一人の女性が出る。

まほの母である。

「はーい、あら? まほのお友達ね。」

「成都です。まほ、迎えに来ました。」

ドアホン越しにゆきとが答える。

「待ってて、今、ドアを開けるわね。」

まほの家のドアが開かれる。

「おはよう、ゆきと君とゆうなちゃん。それとあなたは、まほの言ってた新しいお友達のるりちゃんね! いらっしゃい!」


「「「おはようございます!」」」


3人の声が揃う。

そして、まほの母に導かれ、家の玄関へと上がる。

(こ、ここがまほの家ね・・・。緊張してきたわ。)

玄関に上がると、るりはきょろきょろと周囲を見渡す。

まほの家は、白を基調とした2階建ての家だ。

特別広くもなく、かといって狭くもない、そんな広さの家である。

「まほは、2階よ。いつも通りまだ、寝てるわ・・・。」

まほの母は、困った表情でそう言った。

「俺らが、起こしてきます!」

「いつも悪いわね・・・。では、お願いね。」

後のことを、3人に任せ、まほの母は台所の方へと向かった。

代わりに一人の男の子が3人の方へと走ってきた。

まほの弟、“有芽知おと”である。

「おはよう、ゆきと兄ちゃん! ゆうな姉ちゃん! それと・・・え!? もしかして、姉ちゃんの新しい友だちって、るりるり!?」

おとは、ゆきととゆうなに挨拶をする。

しかし、るりを見て何故か驚いた。

「おっす、おと! あれ? おとは、るりのこと知ってるのか? あ~、まほに聞いたのか。」

ゆきとは、驚くおとに対し疑問を抱くも、まほに聞いたのだろうと納得する。

しかし、おとの反応は違った。

「いや、るりるりだろ? あの、突然現れてすぐ引退した、天才子役の!」

「えっ、子役? そうなのか?」

おとの反応にゆきとは驚き、るりの方を向く。

「え、えぇ、そうね。そう呼ばれていた時期もあったわ!」

るりが、少し焦りながら肯定する。

「なっ!? 本当なのかよ! あれ? その時の愛称が“るりるり”ってことは・・・。」

るりのことを、“るりるり”と呼ぶ人物が身近に居たのを思い出す。

そして、その人物のほうを振り向く。

その人物は、軽く視線をそらす。

「やっぱり・・・。ゆうなは、このこと知ってたのかよ・・・。」

ゆきとは、少し呆れ気味でそう言った。

「ま、まほっちはともかく、ゆきとは知ってると思ってたけど?」

「そうね。私も知られていると思ってたわ!」

ゆうなとるりは、ゆきとに反論をする。

「まあ、いいや。それより、そろそろ、まほのこと起こしに行こうぜ!」


「「あっ!」」


ゆきとの言葉に、ゆうなとるりは本来の目的を思い出す。

「ゆきと兄ちゃん、ゆうな姉ちゃん! それと“るりるり”姉ちゃん! 俺は先に学園に行ってるよ! 2階で寝てる姉ちゃんのこと、よろしくな!」

そう言うと、おとは3人を残し、学園へと登校していった。

「2階、行こっか・・。」

「そうね・・・。」

ゆうなとるりは、2階への階段を眺めそう言った。




2階にある一室の前に3人は到着した。

扉には、“まほ”の文字が書かれた木の表札が掛けられていた。

「ここが、まほの部屋・・・。」

るりが、呟く。

「もしかしたら、まほっちもう起きてるかもよ?」

「う~ん、どうだろうな。まあ、開けるぞ!」

ゆきとは、扉を開けた。

ゆきとを先頭に、ゆうなとるりが部屋へと入る。

3人は、部屋を見渡した。

ピンクと白で彩られたその部屋の奥に、ベッドがある。

ベッドの上では、その部屋の主はすやすやと寝ていた。

「やっぱり、まほ寝てるな・・・。」

「うん、いつもながら、まほっちはずいぶん幸せそうに寝てるね。」

「え!? いつもこうなの?」

まほの様子に対し、三者三様の反応を見せる3人。

「さて、まほっちをどうやって起こそうか?」

ゆうなは2人を見る。

「普通に揺すってみるとか?」

「耳元に目覚ましを設置するとかどうだ?」

るりとゆきとは、ゆうなにそれぞれの策を提案をする。

「う~ん。それもいいけど・・・。せっかくだから・・・。」

ゆうなは、にやりと微笑み、るりの方を見る。


「えい!」


ゆうなは、るりの背中をまほの方へと押した。

「ひゃっ! ちょっと! ま、待って! ふにゃっ!」

バランスを崩したるりは、まほの方へと倒れる。

るりは、倒れつつもなんとか腕で自らを支え、まほを押しつぶすことを避けた。

「も、もう! いきなり何なのよ!」

るりは、悪態をつきながら自らの体を起こそうとする。

しかし・・・

「え!?」

るりの下にいるまほが、もぞもぞと動き出したのだった。




――ここは、まほの夢の中。

まほは、動くキャンディとへんてこなダンスを踊っていた。

「楽しいね! キャンディさん!」

まほは、楽しそうにダンスを踊る。

まほの近くには、お菓子の家があった。

その家の影から、マシュマロがぴょこっと顔を出す。

「あ! マシュマロさんだ。」

へんてこなダンスをやめ、マシュマロの方を向く。

しかし、マシュマロはまほに気づかれると、ぴょんぴょんと跳ねながら逃げ出した。

「あ! 待って、マシュマロさん!」

まほは、マシュマロを追いかけた。

そして、すぐにマシュマロを捕まえる。

「捕まえたよ! うわぁ、マシュマロさん。ふわふわだぁ~。」

まほは、マシュマロを抱きしめた。




「ちょっ! まほ、い、いきなり何なの!?」

「ふわふわぁ~・・・。あれ? ん? え!? る、るりちゃん!?」

まほは、るりの声に目覚め、そしてその状況に驚く。

なんと、るりを抱き寄せていた。

「は、早く離しなさいよ!」

「わ、あわわ! ご、ごめん、るりちゃん!」

そう言うと、まほはるりを離し、肩を強く押した。

「ちょ、うわっ!? ふぎっ!」

強く押されたるりは、床へとしりもちをつく。

「うわぁ!? る、るりちゃん大丈夫?」

「イタタ・・・。」

るりは、ゆっくりと立ち上がる。

「お疲れ! るりるり!」

「寝てるまほに近づくと、高確率で抱き寄せられるんだよな・・・。」

るりに対し、哀れみとねぎらいの言葉をかける、ゆうなとゆきと。

「こうなるの知ってたのね! つまり私は、生け贄にされたということね・・・。」

二人の話を聞き、るりは呆れる。

「おし! まほ起きたし、俺らは外で待ってるか!」

「そうだね。まほっちも早く準備して降りてきてね!」

「わ、私も外で待ってるわ!」

3人はバタバタと、まほの部屋を出て行った。

「私も早く準備しよ・・・。」

一人残されたまほは、静かに呟いた。




まほの家、その玄関前にて、3人はまほを待っていた。

「二人は、いつもまほを迎えに来てるの?」

るりは、ゆうなとゆきとへと質問をした。

「いつも・・・では無いわね。あたしは、朝練、ゆきとは委員会の仕事があるから、それが無い時だけだね。」

るりの質問に対し、ゆうなが答えた。

「え!? ゆきとは、委員会の仕事してるの?」

「あ、あぁ、一応な・・・。」

ゆきとは少し微妙な顔で答える。

「ゆきとは、図書委員なのよ。ただ、その他の委員の手伝いもしているみたいだけど。」

「そうなの? それに、他の委員の仕事もって複数掛け持ち?」

るりは驚きながらも、さらに疑問を増やす。

「そうだよ! 俺は、あいつに無理やり、図書委員やらされたんだよ! その上、他の委員会の手伝いまでさせやがって!」

「自業自得じゃない? “ウナジュー”と賭けをして、負けんたんでしょ? あぁ、“ウナジュー”ってのは初等部の委員長、“(うな)(ばら)(じゅう)()(ろう)”のことね。ゆきとは、“メガネ魔王”なんて呼んでいるけど。」

「ふ~ん。なるほどね。」

るりは、その話を聞き納得した。

「絶対、次の勝負では、絶対あいつに、絶対勝ってやる!!」

意気込むゆきとに対し、るりは、

「“絶対”を3回使うほど勝ちたいのね・・・。」

と、呆れながら言った。


少しして、まほがパンをくわえながら、3人の方へと走ってきた。

「ごへん! ひんひゃ、おまひゃせー!(ごめん! みんな、お待たせー!)」

3人はそれを見て、少し考えこむ。

「まほ・・・。いろいろ突っ込みたい所あるけど、早く学園に行くわよ!」

「そうね。あたしたちも遅刻しちゃう。」

「うわっ! もう、こんな時間か! 俺ら、少し走ったほうがいいかもな!」

ゆっくりと話し込んでいたせいか、いい時間になっていた。

4人は合流し、学園へと急いだ。



「ふぅ~。なんとか間に合いそうだな!」

「そうだね。ちょっとした朝練になったかな?」

息切れも少なく余裕な、ゆきととゆうなに対し、

「うわぁ、待ってぇ~。ゆきと君、ゆうなちゃん!」

「ぜぇー、ぜぇー、ふぐぅ・・・はぁ、はぁ、わ、私は運動苦手なのよー!」

ぐったりとして続く、まほとるり。

なにはともあれ、4人は登校時間に間に合ったようだ。




午前の授業は何事も無く終わり、時刻は昼休み。

4人は、時計塔の広場に居た。

「あれ? 今日は、ゆきとも一緒なのね。」

今日は、ゆきとも居る、るりはそのことに疑問を発した。

「たしかに、ゆきとがこっちに来るのは珍しいね。」

「あぁ、今日は“勝負”も無いし、たまにはな!」

「ゆきと君もいるから、今日は、みんな一緒だね!」

4人は昼食を取るため、この広場に来ていた。

まほ、るり、ゆうなは弁当、ゆきとは学食で調達したパンを持参している。


「なあ、朝の話だけど・・・」

「えっ? 何の話?」

話題を振るゆきとに対し、まほが疑問を挟む。

「あぁ、まほが寝てる間に下で話していたんだけど、るりが子役だったって話。」

「わ、私の話!?」

急に自分の話になり、るりは少し慌てる。

「え!? るりちゃん、芸能人だったの?」

「あぁ、まほっちも知らなかったか・・・。」

驚くまほを、やっぱりといった顔で、ゆうなは眺めた。

「俺も結構TVは見る方だけど、知らなかったしな。どんな役だったんだ?」

ゆきとの視線が、るりへと向かう。

「わ、私が出たのは、ちょっとだけよ! そのシーンの人が急に出られなくなって、代わりに出ることになったのよ。」

「たしか、るりるりが出てたのは、連続ドラマの1話だけよね。それでも、そのシーンが印象的だったってことで、一部で話題になったのよ。」

るりの説明をゆうなが補足する。

「へぇー。1話だけで話題になるって、相当だな。どんなシーンだったんだ?」

ゆきとが、さらに疑問を投げかける。

「なっ、どんなシーンだっていいでしょ!」

るりは、その疑問への答えを拒否した。

「わ、私も、るりちゃんの演技見たいなぁ~。なんてっ!」

「ま、まほがそう言うなら・・・い、1回だけよ!」

「俺のお願いはダメで、まほならいいのかよ!」

「まあ、あたしも、まほっちの願いなら聞いちゃうかもね。」

それを聞き、少し納得のいかない、そんな表情のゆきとであった。


「で、では、行くわよ!」

その言葉に、3人は頷き、そして視線がるりへと集まる。

るりは、気持ちを切り替える。

深呼吸を1回。

表情を引き締める。

そして、るりはいつもと違う声色で演技を始める。


「私、宇宙の端でトカゲに怯えながら、ずっと、ず~~~と、待っていたんだから! もう絶対に、離さないんだから! お兄ちゃん、だ~~~い好き!!」


るりは、満面の笑顔を浮かべる。

「こ、これは・・・!」

「生で見ると、また迫力が違うわね・・・。」

「るりちゃん可愛い!」

ゆきと、ゆうな、まほは、るりの演技に魅了される。

「も、もういいかしら? いいわよね!」

笑顔で表情を固めながら、るりは3人に問う。

「犯罪的な笑顔だな!」

「そうね、このままテイクアウトしたくなるわね!」

ゆきととゆうなは、感嘆の声を上げる。

「ギューッとしたくなるね!」

そして、まほはそう言いながら、るりを抱きしめようとする。

「ちょ、まほ! また、寝ぼけているんじゃないの!?」

るりは、そのまほの行動に慌てふためく。


4人は、そんな会話をさらに続け、賑やかな昼休みを過ごしたのであった。


第2章は全6話+幕間で終わらせる予定です。


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