とある少女と執事のお話
8/11プロローグのサブタイトル変更しました。
「ねえ爺! 本当にこの道であっているの?」
黒い高級車、その車内にて少女の声が響き渡る。
その少女は、とある企業のご令嬢である。
海のように蒼い髪をしており、純白のワンピースを着ていた。
「はい、お嬢様。まもなく見えるトンネルを抜けた先が目的の町でございます。」
運転席に座る白髪の老人はそう答えた。
その老人は少女の執事である。
黒い礼服を着ており、整った身なりをしている。
「そ、そうよね! 爺が道を間違うはずがないわよね! それにしても・・・」
蒼い髪の少女は、その長い髪を静かに揺らし、外の景色をじっと眺めた。
「緑一色って感じね・・・。」
少女はそう呟いた。
上り坂の道路は舗装されているが、その両脇は森がどこまでも広がっていた。
「これから向かいまする町、星影市の星影台には、山の上を切り開いた台地にあります故、
もうしばらく山道でございます。今しばらくご辛抱下さいませ。」
「問題ないわ! 私も外の景色を楽しむことにするわ!」
少女は運転席側へと振り向き、微笑みながらそう答えた。
単調な景色が続く山道だったが、時折野生動物が顔を出し、少女を喜ばせた。
「ねぇねぇ見て! 今、もこもこしたのがいたわよ!」
少女は目を輝かせて窓の外と運転席を交互に見つめていた。
「あれは、カモシカでございますな。この辺りは自然豊かな土地故、様々な野生動物が見られるようですぞ。」
「ふ~ん・・・。ねえねえ!また見られるかしら?」
「うーむ・・・。野生動物は人間を怖がり、滅多に人里へは顔を見せないですからな・・・。」
「そう、残念ね・・・。」
少女は少し残念そうに顔をうつむかせる。
「ですが、星影台では、野生動物の目撃情報も多数あるようでございます。
お嬢様がいい子にしておいでならまた見れるかもしれませぬぞ。」
それを聞き、少女はまた目を輝かせる。
のんびりとした景色を進む黒の高級車、少女は徐々に夢の世界へと旅立とうとしていた。
「う~ん、ZZZzzz・・・。ふにゅっ!? ZZZzzz・・・。」
しかし、それは突如起こった。
一瞬の煌き。
「えっ!?」
しばらく窓の外をぼんやりと眺めていた少女だったが、視界の先そのすぐ上を一筋の光が横切った。
夢の世界へと旅立とうとしていた少女は一瞬にして現実へと呼び戻される。
「ねえ、今の何?」
少女は驚きに目を丸くしていた。
問いかけれれた少女の執事は、眉間にシワを寄せ顔を険しくしていた。
そして、何やらどこかと連絡を取っているようである。
「特に異常は無いようでございます、お嬢様。ですが、念のため周囲を警戒に当たらせました。」
「そう、爺が大丈夫というなら大丈夫よね! ふふっ、きっと鳥か何かね!」
不安そうな顔をしていた少女だったが、執事の言葉を聞き頬を緩めた。
(ふむ、今のは一体・・・鳥にしては速すぎる、しかし銃弾の類でもなさそうじゃが・・・)
少女を安心させた執事だったが、その執事には疑問が残ったままであった。
その後少女は再び外の景色を眺めていたが、ふと、思い出したようにカバンから一枚の写真を取り出した。
写真には一人のショートヘアーの女の子が写っていた。
桜色の髪をしており、教室で授業を受けている最中の写真であった。
しかし、その女の子は幸せそうな顔で今にも夢の世界へと旅立ちそうであった。
「ねえ、あの町に、この写真の女の子もいるのよね?」
「はい、お嬢様。事前調査にて星影台にございます“私立東第七来葉学園”に在籍していることが判明しております。」
「そう、楽しみね。」
少女から笑顔が溢れだす。
バックミラー越しに見える少女を見て問いかけられた執事も釣られて笑顔になった。
「ねえねえ! この女の子、本物だと思う?」
少女は笑顔のまま、運転席へと体を乗り出し、執事へと問いかける。
「ふむ、手がかりはその写真だけですからな・・・。身辺も調査させましたが、決定的な証拠は得られず・・・。しかし、その写真を見る限り、何らかの秘密を持っているのは確実ではないかと存じます。」
「う~ん・・・。やっぱり実際に私が行って真偽を確かめるべきね!」
そういうと少女は体を元の席へと戻し、もう一度写真を眺めた。
「お嬢様、間もなくトンネルが見えてきます。こちらを抜けた先が目的の町、星影台でございます。」
少女は視線の先を前方へと向ける。
前方には短いトンネルがあった。
僅かな時間、太陽の光が遮られる。
そして、光が差し込み、そこには一つの町が広がっていた。
「ついに来たわ! 星影台!」
星影台、人口はそこそこ、周りを緑で囲まれた自然豊かな町である。
町の中心にはこの街のシンボルである時計塔が立っている。
時計塔は山の下からでも目立つ、大きな塔であった。
周りには広場が広がっており、人々の憩いの場となっている。
また、その広場は学生たちも多い。
広場の東に位置する学園に通う学生たちだ。
通学路の一つとなっているだけではなく、昼休みに学園を抜け出し、
この広場へと足を運び昼食を取る者もいるらしい。
「では、お嬢様。明日から通われます学園をご覧になっていかれますかな?」
執事は静かに少女へと問いかけた。
「そうね! 少し見ていくわ!」
執事はその答えを聞き、学園へと車を走らせる。
「さて、お嬢様、着きましたぞ」
執事は少女へと学園への到着を告げる。
「ふ~ん・・・。ここがあの子の通う学園・・・。結構きれいな校舎ね!」
少女は校舎が予想より良く驚いた。
しかし、少女はさらに驚くこととなる。
「はい、お嬢様。先週の内に我が企業の力にて、きれいに建て替えてございます。」
執事はさも当然のようにそう答えた。
「えっ!? そ、そうなの!? そこまでしなくても良かったのに・・・。」
「いえ、お嬢様の通われる学園。万が一のことがあっては困りますのでセキュリティ等を強化しております。」
「ま、まあいいわ・・・。学園も見れたし私達の引越し先へ行きましょう!」
少女は執事のその行動に少しひいていたが、いつものことだと諦めた。
「では、参りましょう!」
執事は、車を学園から引越し先へと向かうため走らせる。
少女は引越し先へと向かう車内にて、明日から起こるであることに思いを馳せる。
「明日から大忙しね! まずはあの子に近づくことから始めましょうかしら?」
「そうですな・・・。初めから核心を突かず、まずはその子に近づき、情報を集めるのが宜しいかと存じます。」
執事は少女の考えを肯定し、そうアドバイスをする。
「よし! 決まり! まずは、あの子とお友達になるところから始めるわ!」
少女はそう言うと、いろいろな策を頭で思い描いた。
「さあ、あなたの全てを教えてもらうわよ! 魔法少女 有芽知まほ!!」
二人の少女はこの地、星影台にて出会った。
そしてその出会いは、二人に大きな変化をもたらすこととなる。
初投稿です。いざ投稿するとなるとドキドキですね・・・。