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異世界遊び  作者: にごり
序章 闇に沈む
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第八話 暇人


石畳の舞台の傍で俺は身につけた装備一式の具合を確かめながら、腰からロンより譲り受けた剣を鞘ごと引き抜いた。

赤茶色の地味な作りの鞘と、度重なる修練とギルド依頼内の戦闘で少し擦り減ってしまった握りをゆっくりと掴み、しばしその感触に浸った。

良く見れば全体には掠り傷やら何やらで、これではエイデンに貧相なものと評されても仕方がないと無意識に顔が苦笑に歪んだ。


「何か思い入れでも?」


「どうだろうな。ただ……」


「ただ?」


「……何と言えばいいか分からん」


「意地悪ですこと」


そんな俺の様子に気付き、隣に並んでいたローズ嬢がさりげなく話し掛けてきたがどうにも上手く答えられそうになかった。

呆れたようにして笑うローズ嬢には申し訳ないが、ロンから譲り受けたものはこれだけではない。装備も技術も学も、ひょっとすればここまで無事に育つことが出来たこの身体さえも彼のお陰だろう。

思い入れというよりかは――――彼女の好む言葉で言えば誇りなのかもしれない。


「準備はよろしくて?」


「早く始めなければ身体が鈍ってしまうくらいには、な」


「…………例えヴェスパーダがあろうとも、貴方を見くびるつもりはありません。全力で挑ませていただきますわ」


「あのような光景を見せて良く言う。勝てるヴィジョンが見えんよ」


謙遜ではなくそれは心から思ったことだった。

先ほど繰り広げられたエイデンとローズ嬢の試合など一分も持たず、エイデンの黄金の剣が空高く打ち上げられて呆気なく彼女の勝利と終わったのだから。

召喚魔法型アーティファクトなどとトルビル卿は言っていたが、名前如何よりも目の前で起こった現象は恐るべきと言う他ない。

風を呼ぶ剣などと……どうすればいいというのやら。


「では参りましょうか」


「ああ」


こちらの気など知らずローズ嬢の浮かべる表情に手加減や油断など見えたものではない。

戦う貌に変えた美少女などとたわけたことを考えつつも、俺は一歩二歩と試合の舞台へと足を進めていった。







「では、互いに悔い無き戦いを心がけるよう全力で立ち向かえ」


舞台の外からローズ嬢の武器を召喚する様を見ていたが、こうして真正面に見据えると余計にその不可思議な現象に眼を見開かざるを得ない。

彼女の詠唱に応じて宝剣と盾が具現化し、いつのまにか一つの嵐が目の前で渦巻いている。

申し訳ないがディオン卿の有難い言葉などあまり耳には届いていなかった。


肌にさえ感じられる風の流れは彼女のヴェスパーダを中心にして渦をまくように動いており、時折風切り音のようなものも聞こえてくる。

思わず目を細めてしまうが、ローズ嬢はその風を受けてドレスや金糸の髪を靡かせて尚、こちらをじっと見据えたまま風によろめく様子は見られない。


「ディン様……参ります!」


「…………来い」


さて、正念場だ。







5、4、3歩。小細工を挟む余地なくローズは真正面から間合いを詰めていった。

その華奢な武器と華奢な身体に見合わぬ真っ向勝負。ただしその踏み込みの速さはそこらで観戦している鈍重な志願者には目に止まらぬものであった。

そしてそのまま手元が霞むほどの速さで右手を引くと、本当に何のフェイントを入れることなく身体ごと槍のようにヴェスパーダをディンに向けて突き放った。


「シッ!」


無論ディンがそれを間抜けに受けることはない。

例え神速の速さを以って放たれた突きとはいえ、魔術強化によって身体能力の何もかもを強化しているディンには見えていた。右肩を貫く様にして鋭利な切っ先が点となって視界で大きくなっていく。

そしてその突きを受け流す様にして左手の鞘をぶつけようとしたディンの表情が曇った。


(……やはり)


見た目針と見紛うほどに貧弱なヴェスパーダの刀身にぶつけたはずの鞘が、見えない何かにぶつかったように弾かれたのだ。

ディンの流し手など知ったことではないと勢いを止めないローズの突きに、ディンは無様に身体を仰け反らせるようにしてなんとか躱すことが出来た。

無論体勢など崩れたままで反撃など出来るわけもない。そのまま仰け反らせた勢いで大きく一歩二歩と後ろに下がると、ディンは人知れず冷や汗を流していた。


(嵐)


ディンが内心で評価した言葉の通りであった。

今にも折れそうな見た目であるはずのレイピアが阻むもの一つないほどの脅威を誇り、回避したとしても巻き起こる突風が体勢を正すことを許さない。

攻撃と防御が一体化したそれは、とにかく隙を窺って一撃を入れるディンにとって何とも突破口を開けることすら難しいものであった。


(今となっては堅固な城を誇る重装騎士の戦い方を羨まざるを得ないな)


隙を減らすべく無理やりに両足で力強く地を踏みしめるディンだったが、またしてもローズは教科書通りの淀みない神速の突きを繰り出してくる。

そこに奇策めいたものは何一つ存在しない。ただひたすらに、愚直に突きを放ち、その度に生じるディンの崩れの合間を縫うようにして再び突きを。

体勢を崩されながら格好悪く紙一重で避けていくディンであったが、ローズの表情に油断など欠片も浮かんではいない。その様は騎士と言うよりも狩人。


「………ッ!」


自らの攻撃を差しはさむ隙を見つけられぬことに一つ舌打ちをしたディンだったが、その瞬間に腹部辺りの鎖帷子を掠るようにしてヴェスパーダが通っていった。

いくら貧相な装備といえども一応は赤銅製だというのに、ローズの操る細剣は歪むことなく、むしろ削り取るようにして傷を付けた。そこらで売っているような安物にはあり得ない、見た目と強度がまるで合わぬ不可思議。

さらに言えばローズの動きはどんどんこちらの動きに最適化するようにして速く、鋭くなっている。

ディンは薄く苦笑いを浮かべながら、未だ一度も振る機会を見つけられない右手の剣をチラリと見た。


(…………どこまで粘れるやら)


自嘲するようにして笑うディンだったが――――それに対してローズの胸中にあったのは正しく焦りだった。


(……捉え、切れないっ?)


何度も、何度も、何度も。突きを繰り返しては体勢を崩し、再び突きを入れる。

ヴェスパーダという宝剣を扱うに限り、その方程式に間違いなどなかったはずだった。真実、代々この宝剣を使用してきたフィンロード家の者はこの戦法で多くの敵を屠ってきたはずだった。

相手をねじ伏せる『力』を風で以って起こし、そこに技術と速さを以って刃を入れる。

それこそが繰り返し繰り返しローズが行ってきた鍛錬であった。


無論宝剣だけに頼るようなことは、周りが許してもローズという人間自身が許すわけもない。

魔術行使は勿論のこと、盾による攻防も学び倒し、体術までにも手を出した。

そうやって出来上がったローズという少女は、既存の騎士に負けず劣らずの力を持つほどに強くなっていた。


「くっ……」


しかし彼女の剣はディンには届かない。届きそうで、届かない。

無論彼女とて馬鹿の一つ覚えのように突きを繰り出していたわけではない。彼女もディンと同じようにして魔術行使によって身体能力を上げてはいるのだが、そこには密かに一つの小細工が含まれていた。

密かに魔術強化を強めて徐々に速くなる攻撃によってディンのテンポをさらに崩すつもりだったのだ。


最初の一撃から何度かの攻撃を経て、ローズは自分の攻撃がギリギリの境界でディンに避けられることを理解出来た。故に徐々に突きの速度を上げればいつかは。

体勢を崩されて尚避けること自体がそこらの凡夫と一線を画することなのだが、ローズに油断はない。油断は、ないのだが。


「はぁ、はぁ……」


攻撃は止めず、相変わらずローズは突きを繰り返している。

しかしその肩は次第に上下し始め、基本の型として左手に構えていたはずの盾が徐々に下がり始めていた。

――――ほとんど鎧袖一触で倒す戦法故の、体力の無さ。

ディンがそれに気付いたのかは定かではない。しかし彼は未だ息を上げることもなく不安定な動きでローズの攻撃を避け続けていた。


(何て、強靭なッ……)


最初にローズとディンの浮かべていた表情は既に逆転しており、攻めているはずのローズが貌を顰め、ディンは無表情のまま避け続けるのみ。

あまりに奇妙な状況に周りの観客達さえも言葉を呑み、ただ事の経過を見つめるだけとなっていた。

そして、もはや何度目か数えることも意味を為さないディンの体勢の崩れ。本来であればそこに突きを入れるべきだったローズの動きが如実に鈍り――――。


「ふッ!」


まるで待っていたかのように驚くべき速度で体勢を整え直したディンが、斬り上げるようにして右手の剣を薙ぎ払った。

さすがに十全に力を込めるほどのものではなかったが、確かに振るわれたその剣はローズの手元へと向けられていた。

的はヴェスパーダの柄。幾度も巻き起こる風で相手の剣を飛ばしていたローズ自身が皮肉にも武器を――――。


「――――――ッ!!」


今の今まで模範通りの動きを繰り返したローズが突然華麗さの欠片もなく左手を強引に差しだし、結果、剣の代わりに彼女の白銀の盾が空を舞った。

歯を食いしばり、左手に響く鈍痛に顔を歪めたまま、右手の剣は握りしめたまま放さない。

ほぼ無意識にディンからバックステップで距離を取ったローズは、苦痛に顔を歪めたままに大きく息を吐いた。


それに引き換え、ディンの追撃は無し。

ここが攻め時であるというのに、ディンは距離を取ったローズを見つめ剣を構えたまま動かない。

彼もまたスタミナ切れか――――否。


「……全力でぶつかる、のではなくて?」


「その通りだ」


「ならば何故ッ」


ローズからすれば休憩とも取れるこの時を与えられたのは、何よりの侮辱であった。

故に声を荒げディンを糾弾するが、相も変わらずディンは無表情のままに変わらない。

そしてただゆっくりと口を開き、その表情を一変。獰猛なまでの笑みを浮かべ、吐き捨てた。


「全力を出していないのは貴女も同じだ。もう一度言う――――来い」


「ッ!!」


ディンの有無を言わさぬ言葉にローズは一瞬呆け、そして表情を曇らせたまま狼狽し始めた。

何せ、彼の物言いは真実を捉えていたから。


「世に聞こえし宝剣とやらがこんなチャチなものなどあり得ん。風を操るというのならば、先ほど見たばかりの俺でも10通りは使い方を考えられる」


「そ、それは……」


「必要なのはマナか、精神力か? 純粋に技量か? それとも詠唱か? 決意を違えるつもりがないのならば、今一度全力を出せ。ローズ・フィンロード」


嘘を、拒否を許さぬディンの瞳にローズは狼狽を隠さぬままにただぎゅっとヴェスパーダを握りしめた。

沸き上がる不安はディンを気遣うと同時に、自分がそれを出来るかどうか自信を持てぬこと。果たして、自分に――――。


そんな迷いに視線を右往左往させれば、ディンの気配が急激に重苦しさを増して鋭くなったことにローズは気付いた。

馬鹿らしく思えるほどの、魔力の気配。マナと精神が尋常でないほどに練られたその源がディンの身体に渦巻いていた。


「幼少から剣を振るうなどとは言うが、所詮早かったか遅かったに過ぎない。騎士隊にも探せば十年以上も剣を振るっているものなどざらにいるだろう」


「なんッ……て……大きい」


「そもそもにして子供が剣を振るなど不可能だ……故に俺は鍛錬のほとんどを、いや、生活の最中でさえ魔術の鍛錬に身を委ねた。投げられる小石? 家の中でも向けらる狂気にも似た感情? 剣の鍛錬? その全てを俺は精神の研鑚に勤めていた」


必要なのはイメージ。

敵を、死を、そして自分という現実を目の前にしても揺らがぬ絶対的なイメージ。

天井を知らず、ただ魔術という幻想に没頭し、その上で現実を見つめる心。

――――元々感情が希薄という重荷はあったが、身近にファンタジーというものに触れられる魔術という存在は、彼にとってこの上ない『暇つぶし』であった。


「もう一度だけだ、ローズ。全力で来い」


気付けば観客も、ローズも、そして試験官として試合の経緯を見つめていたカトレアですらも唖然としたままディンの姿を見呆けていた。

世界を侵食していると勘違いするほどの、濃厚な魔術の気配。それはもはや魔術と呼ぶよりは、現実を歪める魔法ではないかと勘違いするほどに。

そしてそれの有様を見れば見るほどにローズは手の震えが小さくなっていき、ディンと同じような笑みを浮かべはじめた。


「これほどの戦士が、私の力を知り、認めてくれている。誰かを守るために備えた力を認めてくれる……なんと、なんと幸運なことでしょう」


「…………」


「ただのお遊びとして両親にも兄上にも認めてもらえなかった『戦うということ』を、貴方様は受け止めて頂けますか?」


「最後だ……来い」


ゆっくりとヴェスパーダを正面に構えたローズを中心に、会場を吹き荒れる風が唸りを上げた。今、嵐と揶揄的に評価されていたローズは正しくそれへと変貌したのだ。




「空を傷つけ地を抉れ。天に吼えるは慈悲無き嵐――――」


「――――その名は『顎門』。『屠りの顎門』。この身の覚悟を喰らい逝け」




絶えず渦を巻く風の流れは目に見えるほどに白く発光し始め、一つの台風がローズを囲むようにして球状に収縮していく。

だと言うのに会場に渦巻く風は勢いを増し、誰もが顔を抑えて目を開けることすらできぬほどになっていた。


「待て、貴様らッ! 加減なしにぶつかるなど馬鹿な事をッ……」


当然今にも衝突しそうになる二人を止めようとカトレアが声を張り上げた。

しかしその声すらも、身を挺して間に入ろうとしても彼女の身体は風が遮っている。もはやカトレアに出来たのは巻き添えにならないように二人から離れ、固唾を飲んで見守るだけだった。


「…………」


「…………」


そんなカトレアの心配も余所に相対するのは二人。

ヴェスパーダの切っ先を真っすぐディンに向け、球状と化した台風を身に纏うローズ・フィンロード。

体中に猛る魔力をそのままに、一度手に持った剣を鞘にしまい、腰に携えたまま体勢を低く落したディン・セルグリム。


轟音が絶えず響き渡る会場の真ん中で、不気味なほど静かに動かぬままでいた二人。

しかしその矛盾した静寂も数瞬。

石畳を削る様にして加減なくローズが一直線にディンに向けて突撃を仕掛けた。


「はあぁぁぁぁぁッ!!」


ガリガリと地面を削る様にして突き進むローズはまさに弾丸。もはやレイピアなどという範疇に入らず一つの魔法と化した彼女は、咆哮を上げたままその切っ先を揺らがせはしない。

ただ目の前で構えるディンがこの全てを受け止めることを信じ、退くことを棄てていた。


まるでコマ送りのようにしてどんどん間合いを狭めていくローズの視界にただディンだけが映った時、周りを吹きすさぶ風が止まぬ中、確かに彼女は耳にした。

未だ鞘から剣を抜き放たず、目を閉じたままのディンの声が。




「――――抜けよ、絶刀。心がままに」




一閃の光線が迸り、ローズは、台風を伴ったまま弾き飛ばされた。







瞼越しにぼんやりと浮かぶ黒と白に意識が向き始めた瞬間、ローズは勢いよくその身を起こした。

身に覚えがない全身を奔る鈍痛と気だるさに少しだけ涙目になりつつも、痛む身体で辺りを見回せば、自分がベッドの上で寝ていることにようやく気付いた。

そして徐々に明瞭としていく自分の記憶。


「試合……」


ぼそりと誰に言うでもなく呟いた彼女が現状を察するのは早かった。

くしゃりと身体に掛けられていた清潔なシーツを握りしめ、ほう、と天を仰ぐ。

どうやら試験のために緊急で拵えられた医務室なのか、部屋の中はどちらかというと客間のようなものを感じさせる。

王宮の鍛錬上近くにあるのか、どうにも鉄の匂いもまた近くに感じられていた。


「入ってもいいかな?」


「ふ、ふえっ!? あ、ゴホンっ……構いません」


そうやってぼんやりとしていれば、トントンと木製のドアを小気味よく叩く音が部屋に響いた。

あまりに唐突な訪問者に驚き素っ頓狂な声を上げたローズだったが、すぐさま持ち直したのはさすがと言った所か。

入ってきた二人の人物の片方は今にも吹きだしそうに口元を抑えていたが。


「ディン様……それに、確か受付の時に」


「あーはいはい、僕の名前はジャン・トルビルね……一応試験前の説明でも名乗ったんだけどなぁ」


「ローズ嬢、身体の調子は?」


愚痴愚痴と呟くジャンと飾りげなくストレートに自分の身体を心配するディンに何故かほっとしたローズは、ポツポツと自分の調子を説明しつつ、今一番確認しなければならないことを聞いた。

もちろんそれは試験の結果のこと。どうやら既に試験は終わっているらしく、ディンとの試合からそれなりに時間が経っているらしいのだが。


「まぁ、一応あの試合はローズ君の負けということで」


「やはり、そうでしたか……」


「あぁっ! でもあれだよ? 勿論騎士試験には合格と言う事で」


「望まずともフィンロード家の娘として扱われている身です。試験結果など私が声を上げなくても変わらないでしょうに」


「……みーんな、もうちょっと言葉には気を付けようよ……近頃の教育はどーなってのかね」


そんな二人の会話を聞きつつ、ディンはとりあえずローズの身が無事なことにほっと胸を撫で下ろした。

実のところ先ほどの試合の中でローズを煽ったのも、互いに全力を出し合うなどといった健全な目的ではなく、単純にそうしなければ受かる可能性が低かったからである。

何せあの最後の衝突までの試合展開はただひたすらディンが無様にローズの猛攻を避け続けただけ。見た目だけであれば、これほど情けないものはないだろう。

故に宝剣として、それを受け継ぐ者として有名な彼女の全力を捌く必要があったのだ。


「そういえばディン様は……勿論?」


「ああ、俺も騎士の一人となれるらしい」


「ま、いろいろと今の時期はアレだから、アレになるだろうけどね。所属とか編隊もアレになりそうだし」


「……もう少し胸を張って話せませんの? 騎士ならば民にそのような姿を見せては……」


「……藪蛇だったようだ」


兎にも角にも激戦を通した後にめでたく二人は騎士としての資格を得て、これよりダークストーカーとの戦いに狩りだされるだろう。

その戦争の中で王の座を争ういざこざがどのように関わってくるのはこの場にいる誰にも分かりはしない。

しかしそのような仄暗いことなど今は関係のないこと。痛む身体でありながら満面の笑顔でディンの合格を祝うその姿に、ぐだぐだと言っていたジャンも頬が緩む。


「まあ、任命式とか騎士の誓いの儀式とかは後にやるから、兎に角今は身体を休めてね。一応ローズ君のことは……フィンロード家の方に伝えておいたけどいいよね?」


「……お父上のお小言が目に浮かぶようですわ……」


げんなりと肩を落としたローズと、それを見てご愁傷様と眉をへの字に曲げるジャン。

そして何よりも、緩やかな雰囲気ではあったがその中でディンは微妙に困ったような表情を浮かべていた。

彼がしきりに視線を向けているのは、自分の腰に下げている長く使いこんでいる剣。揺れる度にカチカチと不自然な音を鳴らす大事な剣。


(戦争と言うが得物がなくてはな……これほど手に馴染む剣もないというのに)


それはあの最後の激突の影響でロンの剣は粉々になってしまっていたからに他ならない。

深く深くため息を付き、ディンもまたローズと同じように表情に影を作っていた。





西洋剣で居合wwwワロスwww

基本的にこの小説は適当な勢いと微妙な雰囲気で出来ております。

真面目に考えると頭がおかしくなって死ぬので云々かんぬん。



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