第一話 マスト
多くの犠牲を以って二千にも及ぶダークストーカーの軍勢を蹴散らした第23次聖戦の後も、フラムバルド国内には勝利への余韻に浸る国民と次への戦に奔走する兵で沸き上がっていた。
サフタムの砦にて七百近い被害を出したとはいえ、最終的にダークストーカーのほぼ全てを屠ったのは次期国王として名高いリヴァン王子とウォーヴァン王子の二人となれば、その裏で犠牲となったフィンロード辺境伯に連なる名も霞んでしまう。
あまりに大きな犠牲がありながらも、この国に住むほとんどの人間はダークストーカーの恐怖に苛まれることなく勝戦の雰囲気に呑まれていた。
そもそもにしてフラムバルド国の核でもある貴族のほとんどがどちらかの王子の派閥に与する者なれば、中立派とも言えるフィンロード辺境伯の死は取り立てて見るべくこともない細事であったに違いない。
さらに言えばほとんど次期国王の座が決定しているリヴァンの傍にいるのは、そのフィンロード家の長子、クジャ・フィンロード。
唯一この戦争の行く末に不安を覚えたフィンロード領地の平民達も、今回の聖戦にて武勲を少なからず打ち立てているクジャが声高に父の無念を晴らすと叫べば――――そこに高潔な貴族の姿を垣間見てもおかしくはないのかもしれない。
といってもダークストーカーと雌雄を決してからまだ3日。ようやく平民にも勝利の報せが届いただけであり、その詳細全てが行きとどいているわけでもない。
人々が現時点で知り得るのは、ただ『勝利した』それだけである。
それはサフタム砦より東に位置する港町、『ソーファ』であってもそれは同じだった。
フラムバルド国の南東に広がる海を受け、そこから他国の商船やら何やら全てを迎え入れる玄関口であり、そういった意味から街としての外観は華美されたものとは言えない無骨な船乗りたちの街である。
街の中を入り組んだようにして広がる水路は全て小船の通り道であり、街に広がる飾り気のない平屋も、人の住む家屋というよりは荷物を収める倉庫だ。
今は聖戦における勝利の報せが他国まで届いているほど時が経っているわけでもないために観光客やら旅人やらの姿は未だに少ないが、もう一、二週間もすれば再びこのソーファの街は『ダークストーカーを打ち破りし国の玄関口』として活気を取り戻していくのだろう。
といっても酒場辺りでは戦の勝利に便乗して酒を煽る屈強な船乗りやらでごった返しているのだが。賑やかなのは今も相当なものである。
そんな、その名の如く勝利の美酒に酔いしれるソーファの街の裏通り。
人気のない暗がりが包む路地裏の一軒家。
穴あきだらけの家屋というわけではないが、表通りのそれと比べればあまりに古びた倉庫の中で息を顰め蠢く人影が幾つかあった。
◆
一面が紅に染まった世界にリリィは佇んでいた。
ただぼうっと呆けた顔を晒したままに虚空を見つめ、その周りの異常に対しなんら反応を示すことなくだらりと腕を下ろしているだけ。踏みしめている真っ赤な足元には波紋が広がり、その様はまるで血溜まりに立つ幽鬼のよう。
ピチャリ。その血溜まりに紅が落ちた。
ブリキのおもちゃのようにして緩慢な動きで首を横に向ける。
そうすればリリィの視界に映ったのは先日体験したあの戦争の――――殺し殺されの世界をそのまま切り取って絵画にしたような静止した世界だった。
今にも振り下ろさんと剣を振り上げるダークストーカー。苦悶を通り越して狂ったように顔を歪める人間の兵士。怒号を上げるように天高く口を大きく開けた騎士の姿。
あの時ディンと共に駆け抜けた戦場がそのままこの世界に広がっていた。
ただ違いがあるとすれば、音も匂いもなく、ただ輪郭に沿って切り取られた『ヒトガタ』が紅の世界で止まっているだけだ。
「…………」
無意識のままにリリィは歩を進めた。
彫像のように動かないヒトガタの隙間を縫うようにして一歩一歩当てもなく進み、やがてその視線はキョロキョロと何かを探す様にして右往左往し始めた。
ディンはどこ?
見知らぬ世界。定まらない意識。自由の利かない身体。
どれもこれもがあやふやな状況の中だというのに、その一点だけはいつも変わらない。
やがて何かに急かされる様にして足が速くなり、人形のようだった表情はくしゃりと歪み、ピチャリピチャリと音を立てながら奔る様は親とはぐれた子供のようだった。
「ディン! ディン!?」
声すらも取り戻し、その悲痛な叫びを紅の世界に響かせるも、誰ひとりそれに応えるヒトガタは存在しない。不気味なままに戦争の光景を切り取ったままだ。
ただ一人この意味不明な世界に残された不安からか、どこまで走ってもディンの姿を見つけられない故にか、とうとうリリィの瞳からは涙が零れ始めた。
「ディン……ディン……」
その場に崩れ落ち、まるで聞き分けの知らない少女のようにして泣くリリィ。
止まらない涙を流す瞳を必死に腕で拭い、鮮やかな紅の血溜まりに座り込む。
ただ、彼の名を呼んで。
「リリィ」
すれば、彼女の名を彼は呼ぶ。
茫然とした表情でリリィが見上げれば、そこには今まで一度たりとも見せたことがなかったディンの満面の笑み。感情を求め、無機質なままに生きてきた彼には到底見せることがないような清々しいもの。
だがそんなものに視線を釘づけにされる余裕など無く、リリィはただ自分の声に応えてくれたことに破顔し、そしてその濡れた両腕を彼に向って差し出した。
しかし。
「お前の心も、有難う」
返されたのは、ゆっくりと差し出されたディンの掌。
リリィが差し出したそれに触れることなく彼の手はまっすぐ彼女の胸元を穿ち、沼に沈む様にしてずぶずぶとめり込んでいく。
ようやくにして鮮明に蘇る記憶。
戦争。裏切り。変容。そして――――。
「ディ……ン……」
そこまで思い出し、リリィの視界は闇に沈んでいった。
◆
「ディンッ!」
跳ね上がるようにして上半身を起こしたリリィは、息切れも激しく仄暗い視界の中でしばし呆然とした。
滝のように流れ、そして冷えていく気持ちの悪い汗。暗がりの中でもその表情は蒼く、傍から見れば夢見が悪かったとすぐに分かるほど。
簡易式ベッド……いや、ベッドとも言えぬただの毛布に包まっていた彼女は、徐々にその意識を先ほどの世界から現実へと引き戻していった。
「…………夢」
呟いたリリィは何故かうすら寒いものを感じて怯える様にして自分の周りを見回した。
木箱や樽のようなものが積み重なった部屋はどうにも狭く思え、目を凝らしていけばその他にも雑多なものが数多く散乱しており、まるで使われなくなった物小屋のように見える。
煤けた窓ガラスもあったがその先から陽光が入りこむ様子は見えず、今が夜なのか昼なのかも分からない。
そして微かに鼻の奥に匂ってくる潮の匂いと埃っぽい臭い。先ほどの凄惨な光景の夢からすればなんとも拍子の抜ける、柔らかでむせ返るような矛盾した香りだった。
「…………」
胸の前で拳を握り、そして開き、今見えている光景が果たして現実なのかまだ夢の中なのか曖昧な感覚を確かめる。
自らの記憶は戦争の、サフタム砦の、あの、光景の。
そこまでを思い出せばこの現状をどこまで信じていいものかリリィは自分の意識を信じることは出来なかった。やがてそんな不安も一つの物事にとってみれば些細なことだったが。
――――彼の姿が、ない。
どことなく感じる違和感に歯を弱く食いしばりながらも、暗がりの部屋の中を手探りに動きこの現状を説明してくれる誰かを探す。
いや、説明などしなくてもこんな場所に一人でいること自体リリィには耐えられなかった。
ここはどこなのか。何が起こったのか。あれからどうなったのか。
――――ディンはどこ。
自分以外誰もいないと言うのに、リリィは震える唇を何かから隠そうとして強く噛み締めた。何故そうしたのかは自分でも分からなかった。
ギシリギシリと心許ない足元の音に戦々恐々しつつ、やがてぼんやりとだけ光が入る窓ガラスの脇に扉が見えたリリィはそのノブに手を回す。
何故か一気に開けることは憚られた。
しかし恐る恐る手を掛けようとした時にあちら側からゆっくりとそのノブが回った時、確かにリリィの心臓は止まった――――ような感覚に陥った。
「う、うわっ……」
「…………リリィ?」
その場に蹲り、両手を前に押し出したリリィの行動に意味はあったのか。
少しだけ潤んだ瞳の彼女を見下ろしながら呆けるのは、黒髪を街中まで流れ込む潮風に揺らす一人の美女。
街娘のような衣服に身を包みながらもその顔つきと眼がやたらと凛々しい女性だったが、リリィは彼女にどことなく見覚えがあるような気がしてゆっくりと口を開く。
「カトレア隊長?」
「……どうやら無事に目を覚ましたようだな」
腰に両手を据え、心の底から安心したかののようにして息を吐いたのはまさしく鎧を外したカトレアだった。
しかし一度その表情を緩めたカトレアは辺りを見回すとすぐに、外に出ようとしていたリリィを押し込むようにしてその小屋の中へと入っていった。
どことなくその動作は何かから隠れる様なもの。急に押されたリリィは驚きに声を漏らしながらもカトレアの行動に従う他なかった。
「一体何が……」
ドアを閉めるカトレアを咎めるようにして呟くリリィに、彼女はどこから話したらいいものかとしばし腕を組んで思考を巡らす。
しかしふと何か気付いた様にしてカトレアが小屋の中の一角へ視線を向け、リリィに向けて人差し指を口元に立てて見せた。
「……?」
騒ぐな、とでも言いたいのか。
リリィは彼女の行動に首を傾げるだけだったが、その視線が向く先をじっと良く見てみれば驚いたようにして声を上げるのだった。
「ローズ?」
おそらくは先ほどまでの自分と同じように気を失い、簡易布団にくるまっているローズの姿だった。
◆
情報を集めるならば酒場。現実だろうがファンタジーだろうが人の集まるところに情報が集まるのは道理である。
世界各地を旅する冒険者という存在もあってか、血に濡れた戦士たちが一時の休息を求めて集うため、集まる情報も自然に多様な物になっていくのだろう。戦士ギルドという便利な組織や場所もあることはあるのだがやはり酒の有無は大きい。
そんな酒場に向かう一人の冒険者風の大男。いかにもな風体に変装したベダールだった。
口元を覆う無精ひげをなぞりながら密かに周りを警戒しつつ街通りの目立たない所を進む。何かに隠れて動くのには慣れているのか、一際目立つ大きな体躯をした男であると言うのに、通りを行き交う人々はこれといって彼に眼を向けるものはいなかった。
いや、港町であるからにして屈強な男の姿は見慣れているのか。
ふとベダールが海の方角を見れば、夜の空に浮かぶ月を船のマストが遮っていた。
兎にも角にもベダールが向かうのは人が集まるその酒場。
彼が、いや、彼らが何より欲しているのは情報だった。
命からがらサフタムの砦より逃げてきたカトレアとベダールの二人は、気を失って動かないリリィとローズを背負いながら丸二日かけてこの港町へと逃げ込んだのだ。
無論戦争の真っただ中であれば、戦場付近をうろつく商隊や旅人など街道で出会うわけもなく、カトレアに至っては戦闘の影響で負傷している。そしてそれはベダールも同じ。
道中、互いに掛ける言葉は少なかった。
あの豪快に減らず口を叩くベダールでさえも。
しかし二人は何度も立ち止まり、そして立ち上がってはこの街を目指した。
ベダールとしてはどことなく焦燥したものが胸中に浮かんだが、カトレアはそうもいかなかった。
戦争の裏に潜む真実を潰えさせてはならぬ、あの砦で散った者を犬死させてはならぬ、受け取った意思を絶えさせてはならぬ――――死ぬわけにはいかぬ。
敗走、逃走、どちらにしても惨めな歩みであったが、カトレアの瞳から光が消えることはなかった。そして今、この港町まで彼らは生き延びた。
無論戦争からたかが数日で情報がここまで届くとは思えなかったが、だとしてもあの騎士隊の鎧を身につけてここらをうろつく選択肢など取れなかった。
事の真相にはまだ辿り着けていないが、カトレア達からすれば今では戦勝の要となっているであろうリヴァンが姦計を企んだのは明白。さらにあのような乱戦の中にまでジャンと言う刺客を送ってくるということはすなわち――――。
自然、カトレアとベダールは潜伏場所を裏通りの古ぼけた小屋の中へと決めた。
いずれ自分達が生きていることを知れば、必ずリヴァンは逃がさぬだろう。
しかもあの中でリヴァンの企みを暴くのに一番近い所にいるものであればなおさら。
「…………酒の匂いが恋しいぜ」
ため息を吐きつつベダールはその匂いが漂う酒場の扉へと手を掛けた。
目まぐるしく境遇は変わっているが、ベダールが酒を喉に通してから数えるほどの日数が経ったか否か。
彼にとっては死活問題とも言えるほどの断酒の期間ではあったが、普通に考えれば『まだ』数日といったところである。
ぬうっ、とベダールのような大男が扉を潜れば、否が応でもゲラゲラと笑い合っていた酔っ払い達は彼の方へと視線を向ける。
しかし向ける者共もベダールに負けず劣らずの大男達。ちらりと一瞥するだけで再びジョッキになみなみと注がれたエールを煽り始めた。
それを見ればベダールは安心しつつもむさくるしい光景にため息を吐く。
自分とてその光景に自然と溶け込む同類だったが、ベダールはそんな殊勝な男なわけもでもなく。
自分がむさくるしいのは別に構わないが、自分の視界にむさくるしいものが並ぶのは許せない男だった。いや、自分はダンディな男だと思っている様な人間だった。
「らっしゃい。一人かい?」
数少ない空席となったカウンターにその身体をねじ込めば、ガタイのいい女性がタバコをふかしながら問いかけてきた。
日焼けした肌にタンクトップとエプロンという港町さながらの女店長。それなりに歳は重ねていそうな雰囲気を漂わせつつも、露出した部分から見える両腕は鋼のように引き締まっていた。
瞬間、ベダールは心の中で「抱くのなら柔らかいほうがいい」と零した。
「一番つええのを」
「あん? なんかやな事でもあったのかい? 軍隊が化け物どもを蹴散らしたって皆浮かれてるじゃないのさ」
「儂みたいな凄腕の冒険者にとっちゃ、雑魚をいくら蹴散らしたってうれしくはねぇな。見ろよ、この腕の傷。こいつはなぁ、ドラゴンをぶっ殺してやった時の……」
「はいはい、とりあえず酔いたいんだね? ほら、ここで一番強い酒だ」
ベダールの言に隣に座っていた他の客さえもクスクスと笑い始め、店長もまた呆れかえったようにショットグラスに古びたラベルが貼られたビンを傾け始めた。
ベダールは、心の底から息を吐いた。
◆
「戦線はどうなってるんだ?」
「さぁ? 私は兵隊さんでも軍人さんでもないからねぇ」
「サフタム砦はどうなってやがる?」
「落ちたって聞いたけどね。でも本隊があの化け物どもを蹴散らしたっていうじゃないのさ」
「戦争から帰ってきた奴はいるのか?」
「私たちが知ってるのは『勝ったらしい』それだけだよ」
「戦争なんて大抵野次馬の一人や二人がはしゃぎ回って『こう』なるもんだろ」
「じゃあ、何かい? 私たちが騒いでるのもその法螺吹きのせいだっていいたいのかい?」
「いや、確かに戦争には勝ったんだろうよ」
「じゃあ、いいじゃないか。まだ西の空には煙が上がってるけど、あれは化け物共を焼く煙だと思いたいからね」
豪快に酒を煽って酔っ払うわけにもいかず、ベダールはちびりちびりとグラスに口を付けながらその女店長から色々と情報を聞き出していた。
しかし彼の予想通り自分たちの益になるようなものには乏しく、未だ数日も経っていないのであればそれも仕方がないのだろう。
むしろその戦争の中心にいたベダールの方が詳しいのかもしれない。
しかしあの乱戦の中で本隊についての情報がまるでなかったベダールは、その拙い情報を繋ぎ合わせながらも今現在の状況を推察し始めていった。
リヴァン隊、ウォーヴァン隊がダークストーカーの本隊を打倒したのは、サフタムの砦が落ちると同時だったのかもしれないとか。それでもリヴァン隊が烈火のごとき勢いで黒の群れの中心を喰い破っていく光景は絶景だったとか。ウォーヴァン隊もまたそれに続いたが、リヴァンのそれと比べるとどうにもインパクトに欠けるものだったとか。
「にしてもあの戦場から近い街とはいえ、随分と情報が回るのは早かったじゃねぇか。軍がこんなに早く兵隊を還すわけもねぇだろうし」
「そうなのかい? 私らはそんなこと全然気にしないけどねぇ」
「しかもやけにその場で見て来たような情報もちらほらとあるじゃねぇか……脱走兵でも来たのか?」
「はははっ! 脱走兵だったら呑気に戦争の決着まで眺める馬鹿はいないだろうね」
グラスの中の氷が音を立てて崩れた。
景気よく笑う女店長の声に釣られそうにもなったが、どうにもベダールの頭には疑問符が浮かんで仕方がなかった。
たった数日で戦場をそのまま見て来たかのような情報がここまで回っていると言うのに、その中に『リヴァン隊とウォーヴァン隊が砦を見捨てた』という情報がまるで入ってきていないのだ。
この情報伝達の速さを考えると、脱走兵やら帰還兵と言うよりはどこかの情報屋が野次馬根性で戦場を俯瞰できる位置から眺めていたというのが妥当である。
となればリヴァン隊とウォーヴァン隊の不可思議な動きのこともある程度は言及されてもいいはずである。
だがしかしこの酒場、街に蔓延る情報はリヴァン隊が勇ましくダークストーカーを打ち倒し、その間にサフタムの砦が落ちたということだけ。
正確なようで正確ではない。
その不可思議な伝達速度。
グラスの中に残った酒を一気に煽ると、喉と頭の中を焼かれる様な感覚を楽しんだベダールは銀貨をカウンターに置いて立ち上がった。
女店長が声を掛けるのを無視するようにして急ぎ足でベダールは騒々しい酒場から夜の街へと足を踏み入れる。
見上げるのは、やはりマストで遮られている大きな月。
ベダールは思う。
カトレアにつき従い、ここまで落ち伸びて来たものの、自分たちが勝ちと定めるそれは何なのだろうか。
リヴァンの姦計を見破り、公の場に知らしめ、砦にて戦場の塵と消えた戦友達の敵を取る。
カトレアの性格を考えれば、そのような高潔な目的があるのは言葉を交わさずとも付き合いの長い彼には予想出来た。
「お嬢……遅すぎたぜ」
首を振る様にしてため息を吐く。
おそらくこの港町だけでもなく、この国にあるほとんどの街にはリヴァンがダークストーカーを撃滅させたとの情報が回っているのだろう。
中立派の皆殺しなどという狂事ではあったが、あれが政争の果ての気まぐれで行われたということなどありえるわけもなかった。
ベダールは騎士である。
だが騎士ではない。
敵を打ち倒す騎士ではあるが、国を守るために戦う騎士ではない。
ベダールはぼんやりと考え込んだまま、カトレアの待つ路地裏の隠れ家へと向かっていくのだった。
約二カ月と言ったところでしょうか。
日は開いてしまいましたがようやく更新です。お待たせしてしまい申し訳ない。
そして残念なことに再び更新速度が落ちます。
あのね、この小説失敗したわ。
作者的には厨ニやりてぇー! でも戦争とか序章から絡めちまったから主人公無双できねぇー! そもそも最初は冒険者からとかでいいじゃん!
描写とか吹っ飛ばして主人公復活! 超パワーで敵死んだ!とかやりてぇ!
妙に整合性とか説得力とか持たせようとするから物語的に地味で仕方がない。最初からやり直したいレベル。
だが我慢して我慢してからの厨ニはこれ以上ない爽快感が……。
まあ、あれです。
そのうち作者覚醒するかもしれないですし。
ゆっくりやらせてもらえると幸いです。