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初めてのミッション

「よし、ミッションを配るぞ。」



 ………昨日だけだったら、普通の学校生活だったけど…始まった。特別な、学園生活が。



「それは今後の学園生活部に関わる物だから、慎重に扱えよ?誰に見せてもいいが、そいつに邪魔されて大学一歩手前、なんてなったらシャレにならんからな。」



 確かに、一部集団に全力で邪魔されてミッション遂行ならず……とかになりかねないから、人に見せるべきでは無いのだろう。

 まぁ、私は当然のようにむっちゃんに見せるけどね!

 退学なんてそう簡単に起きないだろうし、ミッションも、本当に遊び半分で出来るような、誰にでも出来るようなものなんだろうな。先生曰く、「ミッションはお前らの性格と日常生活をAIが学習し、それに基づいて作られる。ミッションの合否も、AIが判断する。ミッション内容は学園内で出来ることしか書かれていない。というのも、この学園内であればAIが全て監視しているからな。」との事だ。


 ということで、早速自分のミッションが書かれた紙を開き、見る。



【友達を作れ】



 ………さっそく、むっちゃんに手伝って貰うのが難しいミッションだ……無理だ。ムリだ…友達なんて、むっちゃん以外に出来るわけない。

 退学かぁ…短かったな。私の人生…



「見て見てこれ!私のミッション!」


「見せちゃっていいの?ルナっち。」


「大丈夫大丈夫!簡単だから!」


「最初だから簡単めに設定されてるのかなぁ?それとも普通にこんなもんなのかなー」



 みんなは簡単なの?……じゃあ、これが簡単だって思われてるってこと?……AI君さぁ、友達作るのが簡単だったのは、昔の私なんだよ。今は無理だよ!!



「むっちゃんごめん…むっちゃんを一人にしてしまう…」


「そ、そんなに難しいお題だったの?」


「うん。これ…」



 むっちゃんに、私の紙を渡す。…これには流石のむっちゃんも、絶望だろう。

 私と一年間過ごしてきて、私がどれだけコミュ障ボケナス陰キャか理解しているむっちゃんにも、このお題は「退学しろ」と同じくらいの無理難題に見えてるのだろう。



「……」


「絶望だよね…むっちゃん…」


「たぶん、大丈夫だと思うよ…?…でもこれ、みっちゃんが友達だと認識していなかったらダメなのかな?」


「…わかんない」



 …けど多分、友達を作れ、だから、私が友達だと思って、かつ相手も友達だと思わないとダメなんだろうな……無理な気しかしない。



「手伝うと言ったからには私も頑張らなくちゃね!」


「むっちゃん…」



 優しい。…けど、無理だ…むっちゃんはもう友達だし。むっちゃんもまだ流石に友達なんて出来ていないだろうし、友達紹介も無理だ。というか、むっちゃんからの紹介とか緊張しまくっちゃうから、逆に無理だ。



「瑠奈ちゃん、愛ちゃん、ミッションは簡単だった?」


「うん。見てこれー!」


「私もちょー簡単だった!」



 当たり前のように紙を見せてくる神無月さんと小望さん。

 神無月さんは──



【一週間に、自宅学習累計三時間以上せよ。】



 …私もこれがいいなぁ…っていうか、これ、ミッションになって無くない?一週間に三時間って、普通じゃ……いやでも、AIがこのミッションにしたという事は…神無月さんは自宅学習をしない…ということなのかな?


 そして、小望さんは──



【一日、学園内では誰に対しても敬語】



 これまた簡単そうなミッションだ。……私に関しては、むっちゃん相手にさえ気をつけておけば大丈夫って事でしょ?………いやまぁ、小望さんだからこそ難しいミッションなのだろうけど…



「みっちゃんはね、友達を作れ。だったの。」


「簡単じゃん!……あ、でも私たち昨日の時点で友達だもんね…」


「私もじゃん!もう昨日友達になっちゃったもんねー。」


「……………え、いつの間に…?」



 どうやら、二人の中ではもう友達だったらしい。………えぇ…どういう判定なの?友達って…。



「つきちゃんは?簡単だった?」


「……」


「あ、別に、強制じゃないからね?難易度も、言いたくない人は言いたくないだろうし。」


「あ、そういうわけじゃなくて……」



 そういえば、むっちゃんのミッション、知らないな……まぁでも、むっちゃんに出来ないとは考えにくいし、大丈夫だろう。



「私のミッション……何かエラーか分からないんだけど…」



 そう言って私に紙を渡すむっちゃん。

 エラー?…とんでもない無理難題が来たとか?

 そして、紙を見る。むっちゃんの、ミッションは──



【なし】



 ………ん?無し?ん?…どゆこと?

 いや、なし、梨、…なし?………つまり、むっちゃんには苦手なことが梨…じゃない。無い、と言うこと?



「むっちゃんに……苦手なことは、無い??」


「え、そんな事ないよ?」


「でもこれって、そう言う意味じゃ…これ、神奈月さん達にも見せて大丈夫だよね?」


「うん。大丈夫だよ。」



 とりあえず、神奈月さんにも紙を渡す。



「こんなことあるの!?」


「マジか……チート?」



 やっぱり、そんな反応になるよね、うん。

 まぁでも?考えてみれば簡単な話だ。天使なんだから、人間基準のミッションなんて受けるわけないよね。



「私、別に苦手なことあるのに。」


「例えば?」


「人を叱ったり、ボクシングとかだとはいえ、人を殴ったりするのは苦手。」


「まぁ、まだ始まって2日で作られたミッションだし、AIくんも玲ちゃんの事よく知らなかったんじゃない?」


「一時間目始めるぞー」



 むっちゃんの「なし」について、様々な議論していたら先生が教室に入ってきて、一時間目が始まった。


 一時間目は、担任の先生の担当の、数学だ。



 §



 三時間目も終わり、昼の時間だ。お昼…今日は、お母さんが作ってくれたけど、購買があるらしいし、明日からは購買かな。お母さんの手を煩わせるわけにはいかないし……あ、でも、お金的な問題がある場合は、弁当の方が良いのかな…?



「お昼ご飯一緒に食べよー!ふみふみ!つきちゃん!」


「もちろんいいよー。みっちゃんもいいよね?」


「も、もちろん!」



 二人で食べるお昼も楽しいけど、やっぱりいっぱい人がいた方が楽しいに決まってる。

 それに、むっちゃんがいれば何とかなる。うん。超絶自然なカバーしてくれるだろうし。



「じゃあ机、小学生の時の給食みたいにしよー。」



 神無月さんに言われたとおりに、机を四角形になるように並べる。この四角形って、全小学共通だったんだ……



「私給食の時この形じゃなかったわ~。」

「え、マジ?みんな同じだと思ってた」



 …別に全小学共通なわけじゃ無かったらしい。普通に、神奈月さんと偶然同じだっただけみたいだ。



「よっしゃー!いいね、この感じ!」



 私の隣がむっちゃんで、目の前に神無月さん。その隣に、小望さん。ベーシックな、四角形だ。



「という事で!やっぱりお昼と言えば、お話だよね!」


「お昼と言えばお昼ご飯だと思うけど…」


「いえーい!恋バナー!!!!!」


「恋バナ限定なの?」



 むっちゃんが、ツッコミ役になっている…私はもちろん、ずっと黙ったままだ。



「じゃあ私からー!」



 神無月さんは、小さい腕をピンと伸ばし、「私だ」と、全力で主張する。…なんだが、小動物みたいでかわいい。



「私は………恋したことありません!!」



 急な恋したことない宣言。………めちゃくちゃ、意外だ。恋するために高校生になったとか言ってたから、中学生も恋しまくって生きてきたのかと思っていた。



「恋バナ破綻してるじゃん。なんでトップバッターに立候補したん?」


「なんとなく!」


「まったく。これだからルナっちは…という事で!お次は私の番だね!」



 またもや神無月さんと同じように、腕をピンッとさせ、自分を主張する小望さん。



「私は〜実は!男が嫌いなので、彼氏が出来たことありません!」


「!!」


「いや、もちちも同じようなもんじゃん。」

「まぁね。」



 私と……同じだ!!!



「分かる!!」


「つきっちも、男バツな感じ?」


「うん!」


「ふみふみ過去一の食い付きじゃん!」



 初めて同類と出会って、ちょっとテンションが上がってしまった。イケナイ、イケナイ。感情が高ぶったら、自分でも何言うか分からないし。感情コントロール、大事。



「じゃあ、つきっちは女の子が好きなんだ」


「………え?」


「違うの?」


「ち、違います!恋愛対象は、無しです!」


「梨?」


「無し、です!」



 きゅ、急に何を言い出すんだこの人は……女の子は、嫌いでは無いけど…寧ろ、男が嫌いな分、好きではあるけど…流石に、これは恋愛感情では無いだろう。

 むっちゃんは信仰対象だし。



「そういうもちちはどうなのさっ!」


「私はねー、かわいい女の子らぶ♡だよ。」



 堂々と同性が好きだと言う小望さん。言ったあとも、特にいつもと変わらない様子。…本当に、凄いと思う。

 そういうことを躊躇わず、堂々と言えるなんて。仮に私が同性を好きだったとしても、ぜっっったいに、誰にも言えないだろう。むっみゃんにすら、家族にすら。



「好きな人はー?いるのー?」


「いないなー。まだ学校生活始まって二日だしねぇ。」


「出来たら教えてよ!もちろん、私を好きになっても、言ってね?」


「残念ルナっち。私は、大人な人がタイプなんだよ。」


「ほうほう、じゃあ私か……」


「違うよーん。大人っぽい…そう、玲ちゃんみたいな人かな!」


「え、私ー?そう言われると、ちょっと照れちゃうな~…。」



 ……私の入る余地がない。…まぁ、慣れっこだ。

 空気空気。そう、私は空気なのだ。話を振られたら返す空気ロボットなのだ。



「もちちは、なんで男嫌いになったの?嫌だったら答えなくていいからね!」


「ううん。全然、そんな重い内容じゃないから。…私はねー、中学生の頃、モテモテでねー。よく告白されてたんだよ。」


「自慢かな?」


「ルナっちだって、告白くらい、何回もあるっしょ?」


「私は告白されたこと無いよ!」


「…え、マジ?…その可愛さで?ルナっちの周りにいた男、目腐ってるんじゃないの?」


「褒めてもらってると受け取るよ、ありがとね!」



 モテモテな小望さん……ものすごく容易に想像出来る。スタイル良くて、誰にでも分け隔てなく明るく接してくれるギャルなんて、そりゃ好きになる。



「…まぁ、そう。告白されまくってた、それだけなら全然良かったんだよ。私のことを好きになってくれて、その気持ちを伝えてくれたんだから。ただ〜……偶然、聞いちゃったんだよね……「小望はヤレそう」って。」


「……」


「それからかな〜。私が男に対して嫌悪感を抱くようになったのは。」



 ………なんと言うか、言葉が見つからない。こういう時、なんて声をかければいいのか分からない…でも、少なくとも、私が何か言うべきタイミングではない…よね。



「っていうか、これじゃ二人連続で恋バナ破綻してんじゃん!オモロッ!」



 そんな、気まずい雰囲気を、小望さんが自ら破壊してくれた。

 流石ギャル!流石陽キャの中の陽キャ!!ありがとう!!!



「ズカズカと、何も考えず踏み込んでごめん…」


「ん?いや、気にしてないよ、むしろ、男アンチとしては、この実話を広く伝えていきたいと思いますね。」


「強靭なメンタル…流石もちち」



 何度でも言おう。…本当に、凄いと思う。私には到底出来ない考え方。そしてそれを実行出来ること、全て。本当にすごいと思う。



「まさかもちちも恋愛経験無いとは……じゃあ次は…つきちゃん!」


「私はねぇ……恋愛とか、よく分からないかなぁ…」



 うん。流石は天使むっちゃん、期待を裏切らない。

 天使は、誰かのキューピットになることはあれど、恋することはないのだ。絶対に!!(過激派)


 このまま誰にも恋せず、一生私の隣にいて欲しいものだ…



「えー?本当にー?」


「玲ちゃん、絶対モテてたでしょ!」


「うーん……どこからどこまでがモテる、なのか分からないから…」


「めっっっっっっちゃモテてたよ。」


「みっちゃん!?」

「「やっぱり!」」



 ごめんむっちゃん。……でも、むっちゃんは全校生徒の憧れだった。性別問わずモテまくり、告白もされまくってた。全校生徒から告白された訳ではない理由は、好きじゃないからでは無く、恐れ多いから、だ。諸説なし!(諸説あり)



「告白とか、されまくってたよ。」


「つきちゃ~ん、本当にいなかったの?彼氏とか~」


「彼女とか!」


「もう、みっちゃんのせいで話がややこしくなったじゃん!」


「ごめんごめん。」



 頬をプクーとして、顔全体で「怒ったよ!」と表現するむっちゃん。

 本当に可愛い。もちろん、常時可愛いけど、その常時に倍増だ。可愛すぎる。



「告白は、例外なく全部断ったよ。この学校に来るために、学業に専念したかったから。」


「真面目ちゃんだ〜。流石はつきちゃん。」


「偉いねぇ玲ちゃん。」


「時々みっちゃんと遊んだりしてたから、娯楽を完全に経ってた、とかじゃないから…そんなに褒められても困るよぉ…」



 それでも、偉いものは偉い。むっちゃんはこの学校でも成績上位だ。それは、日頃ちゃんと勉強してるから。中学で、勉学を疎かにしなかったからだろう。

 あと、困ってるむっちゃんも可愛い。



「今のところ恋バナしてないなぁ」


「ごめんね?…恋とか、愛とか…よく分からなくて…」


「いやいや、玲ちゃんが謝る事じゃないって!ルナっちも、私も、恋した事ないんだし!」



 恋バナ……恋に関する話ではあるけど…恋したorしてる、的な話は0だ。…確かに破綻してるのかも?…恋バナしたことないから分からないけど。



「という事で、最後は、ふみふみだね! 」


「………え?」



 喋り0.1割、聞き9.9割すぎて、私は盗み聞きしてる人なわけじゃなくてこの輪に入ってる人間だという事、忘れてた。………。



「つきっちの恋バナいえーい!大トリだー!」


「……」



 恋……バナナ?………ダメだ。恋とバナナの関連性が見えてこない…

 無理。無理無理。無理無理無理。恋バナなんて、人生で1度もしたことないし。する必要もなかったし!…バナナの話しだしたら引かれるかな………そもそもバナナの話すら出来ないじゃん、私。


 こうなったらむっちゃんに助けてもらおう。きっと、何とかしてくれる!!



「……」


「…みっちゃん、恋した事ないって。」



 むっちゃんの裾を掴んで引っ張り、首をふるふると横に振る。それだけで、私が言いたいことが伝わる。流石むっちゃん。


 そのまま、机の中にあった小説を手に取り、小説に向かって指を指す。



「小説とか、漫画とか、二次元の方が好きだって。だから、まだ恋とか分からない…って事だと思う。」



 むっちゃんの言葉に、全力で首を縦に振る。



「すげぇ……テレパシーだ…」


「一心同体…流石つきつきペア!」


「「つきつきペア?」」



 むっちゃんと被ってしまった。ちょっと気恥ずかしい。



「そう。むつきのつきに、ふみつきのつき。だから、つきつきペア!それに、二人とも初日から仲良かったし、高校入る前からの友達でしょ?」


「うん。私達、同じ中学出身で、中学の頃から仲良かったよ。」


「いいね!つきつき!二人をまとめて呼びたいときは、つきつきペアって呼べばいいね!」


「…そ、そんな…むっちゃんとペアだなんて、恐れ多い…」



 私みたいな人間下位と、むっちゃんみたいな人間の上位互換、天使がペアだなんて…美女と野獣状態だよ!



「みっちゃんは…私とペアは、嫌?」


「そんなわけ無いです!!!!!!!!」


「じゃあ決定だね!いえーい!つきつきペアの誕生だー!」



 キーンコーンカーンコーン



 昼休み終わりの鐘がなったので、むっちゃんと共に急いで机を元の場所に戻す。


 という事で、今日の昼休みは恋バナをし、つきつきペアが誕生して終わった。

…今日の昼は、確実に私の日記に書くだろうな。

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