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冷酷の騎士  作者: 川咲鋏
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間違いだらけの人生

美加理の元彼・水瀬真佑が主人公の話を、美加理の話の続編として書いていきます。


(美加理が死んでから…もう5年ほど経った…確か梅雨明け前だったな…)


5年前の今頃に、あの子は19歳で死んでしまった。梅雨になる度に思い出しては、胸が締め付けられる。


かつて一生愛すると決めた美加理は、もうこの世界にはいない。

会いたいと願っても、夢ですら出てきてくれない。それは当たり前なのだろう。



天音美加理が死んだのは、全部俺のせいなのだから。



俺はあの忌まわしい日をきっかけに、美加理を苦しませてきた。その苦しみから解放するために好きな人が出来たフリまでした。

それで怒った美加理をなんとか落ち着かせようとしたが、俺に掴み掛かろうとした際に転んで机の角に頭をぶつけてしまい、病院に運ばれた時にはもう手遅れだった。


美加理の家族には、本人が滑って転んでしまった不慮の事故だと伝えた。ご両親やお兄さんの嘆き様はとても見ていられなくて、俺は本当のことを言えなかった。

葬儀の時、美加理の親友である蓮見柚莉奈には、何でこうなる前に助けなかったんだと、泣き叫ぶように怒られた。真実を言えないままひたすら謝罪を繰り返していたことは、今でも忘れられない。

そんな柚莉奈も、2年前に人間関係の拗れとたった一人の家族である母親を亡くしたショックで自殺してしまった。


そうして、俺は完全に独りになった。


俺はどこで選択を間違えたのだろうか。そもそもどうしてこうなってしまったんだろうと、考えずにはいられない。

少なくとも美加理のことを彼女としてどうなんだと馬鹿にした奴らと話した日から、何かがおかしくなったのは間違いない。

美加理が俺に対して顔色を伺うようになったり、怖がっていたはずの性行為を受け入れて無理をするようになったからだ。


でも、絶対にそれだけが理由ではない。


俺だってその日から美加理の様子がおかしいと気づいていた。だからこそ、俺から解放するのではなくて寄り添えば良かったと、今は思えてならない。

それ以前に、空気を読まずに美加理を庇ったら、また中学のように虐められると考えてしまう臆病な所さえなければ、美加理が苦しむこともなかったかもしれない。

昔から俺は、その場の空気を読みながら上手く行動できなくて、相手も自分も傷つけてしまうことが多い。

そんな最低な所や俺の忌まわしい過去を知って受け入れてくれた美加理ともっと一緒にいたかったのに、もう美加理はこの世界にはいない。

否、いたとしても、もう俺とは一緒にいてくれないだろう。


最近では、大事な人も誰もいない世界で生きるくらいなら、もう死んでも良いと思ってばかりだ。それでも、臆病な俺は柚莉奈のように自殺してしまうこともなく、のうのうと生きている。


2年前にやっとの思いで就職した会社からの帰り道を、俺は今日も何の感情もなく進んでいき、家まで帰ろうとしていた。



キキーーーーッ…!!!


「ッ……!?なんだ…?」


車の引きずるような音と、警音が鳴り響き、俺は音が聞こえた方向を急いで振り向いた。だが、その前に道にいた人たちが騒ぎながら走って逃げていくことに、俺は気づけなかった。



「えっ………!?」



振り向いた時には、俺を目がけてスピードが抑えられていないであろう車が飛び込んで来ていた。


今からでは、もうどこにも逃げられないであろう距離だった。



ああもうだめだ…なんて、思えなかった。

むしろ、このまま轢いてくれとさえ思ってしまっていた。



そのまま俺は目を瞑り、突っ込んできた車を受け入れた。




     ーーーーーーーーーーー


『…それで、俺に話したいこととはなんだ?』

『……………様は知っていたんですか?…新たに宮廷の使用人となった長い金髪の女…カンナ・アルマディアが……』


話し声が聞こえてくる。俺は死んだはずなのに、声が聞こえる感覚がやけにはっきりしている。


意識が段々はっきりしていくと、綺麗に装飾が施されている壁が映し出された。まるで城の中にいるかのような気分になる。

少しふらつきそうになり、バランスと取ろうとしたら、地面を踏んだ感覚がはっきりと伝わった。


「ッ………!?俺…まさか生きてる…!?」


だが、生きているにしては、服装も先程まで着ていたスーツもしくは全身モノトーンの地味な格好ではなく、むしろ所々身体が重い。特に、腰の辺りが。


(……っ!?えっ!?なんで俺剣なんて持ってんだ…!?)


剣を腰に身につけているとは、まるで騎士みたいだ。俺とは正反対の、強くて凛とした存在感のある格好は、自分にはあまりに不相応なのではないか。

しかし、どこにも鏡が見当たらないため、肝心の顔が分からない。死ぬ前の俺の姿をしていない可能性は高いが、どんな姿なのか気になってしまう。


(もしかしてこれが転生ってやつなのか…?でも姿を確認できないと確信が持てない…)


自分の姿を確認できないもどかしさに悩んでいると、左の方からコツコツと足音が聞こえてきた。

少し長めできっちり切り揃えられた銀髪の美少年が、こちらに向かって歩いてくる。


「"ライヤ"じゃないか、君こんなところで何をしているの?」


美少年の伏し目が、俺を捕らえている。突然話しかけられて驚いたが、俺は自分の呼ばれた名に、違和感を抱く。


("ライヤ"…?なんで俺のことをそう呼ぶんだ…?)


「え、あ…その…見張りです」

「ふぅん…それを変な目的に利用されてないと良いけど。君は冗談とかそういうの全然通じないタイプだからね」

「あ、す、すいません…」

出会っていきなり小言を言われて、何だこの生意気な奴はと思ったが、自然と謝罪の言葉が出てきた。俺の元々の性格もあるだろうが、この身体もつい謝ってしまう体質なのだろうか。

「ま、良いや。それよりグランディエ兄様見てない?アレン兄様…いや、陛下と一緒に話したいことがあるからずっと探してるんだけど」

「いや…見てませんが…」

グランディエにアレン、それに俺の名前がライヤ。

随分と聞き覚えのある名前が、次々と登場する。

「もし見かけたら伝えておいて。貴方の弟セルレウスと陛下が血眼になって探しているとね」

「は、はい…」

「じゃあよろしくね」


くるっと優雅に後ろを向き、元来た方向へと、セルレウスと名乗った美少年は歩いて行った。

それを見届けながら、俺はこの状況について確信してしまった。


(今いる世界ってまさか…美加理がやってた乙女ゲーム『花園の天使』の舞台!?それで俺は攻略対象のライヤ・ラズライト!?!?)


死んだと思ったら、美加理がプレイしていたゲームの世界に転生するだけでなく、何気に推していたキャラのライヤに転生していた。


俺は衝撃の事実のあまり、柄にもなく悲鳴を上げそうになった。


何故浮気をしたのか、何故急に性格が変わったのか、真佑自身過去についても明かされていきます。美加理の話以上にドロドロでしんどい展開多めですが、真佑視点も是非お楽しみください。

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