勇者召喚
オースワカ王国の王宮―――
私は賢者ムスメサン。
王から勇者召喚を行うように命じられている。
「王よ。今度こそ勇者召喚を成功させます」
と私は言った。
相次ぐ王国への魔物たちの襲撃で、国も王も疲弊していた。
「頼むムスメサン。勇者が召喚できなければ、この国も、この大陸もおしまいだ」
と王は肩を落とす。
大陸には、大小あわせて48の国があり、戦乱状態にあった。
そこに現れたのが、魔王軍率いる魔物たちだった。
「新しく発掘された古文書によると、勇者召喚には、多量のマナを使うゆえ、生贄が必要だと。その生贄には豚の肝臓が良いとありました」
と私は古文書を見せた。
「なるほどな。豚の肝臓か。たしかに効きそうだ。では頼む」
と王は言った。
その声は心なしか震えて聞こえた。
私は新鮮な豚の肝臓を手に入れ、
複雑な魔法陣と、一流の魔導士12名とで、
召喚の儀式を行う。
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
私は、祭壇の豚の肝臓を、熱した金の皿の上に置く。
(ジュ―)
音と肉の焼ける匂いが辺りをただよう。
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(エルサー。エルサー。ユウシャエル)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(ミチビキタマエー。エーコエデ)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
(エーコエダカラー。ユウシャエル)
「レバニーラ。レバニーラ。レバニーラ。」
と私は手をあげ、禁止された秘呪を唱える。
(レバニーラ。アゲルカラキテーネ)
12人の魔導士が一斉に手をあげ唱和する。
その瞬間――――
古びた王宮の一室は、古いゲームのドット画面のようになり、
空間は捻じれた。
(こんこんちきちきこんちきちき)
(こんこんちきちきこんちきちき)
(こんこんちきちきこんちきちき)
(こんこんちきちきこんちきちき)
(こんこんちきちきこんちきちき)
(こんこんちきちきこんちきちき)
「遂にやったか」
と私は声を上げた。
天井が光り輝き、
一人の男がゆっくりと降りてくる。
私と12人の魔導士はひざまずく。
「勇者様、ようこそオースワカ王国」
と私は言った。
……
私が、天津飯を食べようとした瞬間。
世界は変わった。
私は驚いた。
まさか天津飯が、こんな食べ物だとは。
しかし、ここはどこだ。
私は古びたレンガ造りの一室にいる。
手には、天津飯を突き刺した蓮華がある。
そして、周りにはブルマ姿の男たちが、私を囲んでいる。
全員が私にひざまずいている。
なんだ……、この異様な光景は。
懐かしい匂いがする。
これはレバニラか。
「レバニラ」
と私は言った。
男たちは、突然騒ぎ出した。
「レバニーラ、レバニーラ、レバニーラ」
そう叫んでいる。
「大変恐縮ではありますが、こちらはどこでしょうか」
と私は尋ねた。
「おぉ言葉が通じるぞ」
と代表者らしき男は周りの男たちに言った。
「あっそうですか」
と私は呟く。
何を言ってるのか、理解できない。
ここは私のいた世界とは違うのだろうか?
「重ね重ねで大変恐縮ではありますが、こちらはどこでしょうか」
と私は再び尋ねる。
「こちらはオースワカ王国でございます」
と代表者らしき男は頭を下げた。
なるほど、ここは大阪か。
どうりで……。
大阪なら、このノリもわからなくもない。
うん……、さすがに、ムリがないか?
「私は、御堂二三男。御堂筋の御堂に漢数字の一二三の二と三に男と書いて、みどうふみおです。駄菓子メーカーの営業部長をしております。
こちら名刺です。はじめまして」
と私は頭を下げた。
「ご丁寧なご挨拶恐れ入ります。私は、オースワカ王国の賢者ムスメサンです。王から勇者召喚を行うように命じられたところ、御堂二三男様がおいでになられました」
と賢者ムスメサンという男は言った。
私は考えた。
どういうことだろうか?
大阪ではなく、オースワカ王国と言っているような気がする。
それに、ムスメサンって名前なに?
えっ。これはボケなの?
突っ込んだ方がいい?
それとも、ボケに乗っかったほうがいい?
考えろ。
私は条件分岐で考えた。
①ボケだった。
・なんでやねん。とツッコミをいれる⇒成立。
・ボケに乗る。これならノリツッコミでいける。⇒成立。
②ボケではない。
・ツッコミを入れると、商談が不成立になる可能性大。⇒失敗の可能性大。
・とりあえず話にのると、商談がまとまる可能性大。⇒成立。
「なるほど、私が勇者候補なんですね」
と私は尋ねる。
「ご理解いただけ光栄です。ではまずこちらに」
と賢者ムスメサンは言った。
私は賢者ムスメサンとブルマの男たちについていく。もちろん賢者ムスメサンも、ブルマだ。
これも、後でツッコムべきボケなのだろうか。
そういえば、メンズファッション界でも、レディースのファッション界でも、最近ブルマがよくコレクションなどで出てくるそうだ。
私は見たことがないが、そうか。これはオシャレなのだろう。
まぁしかし、おっさんがブルマに長い靴下を履き、革靴を履いているのだから、なかなかシュールだ。
「つかぬ事をお伺いしますが、そのズボン、ブルマは流行っているのでしょうか?」
と私は尋ねる。
「ブルマをご存じですか。これは流行っているというより、この世界では老若男女全員がブルマを履いております。勇者様のような服装はとても珍しいです」
と賢者ムスメサンは言った。
私はさすがに、それはないだろうと思ったが、条件分岐に従い、いらぬ事は言わないことにした。
「なるほど。私のような背広姿は珍しいですか」
と私は尋ねた。
「古の勇者がセビーロという服を好んで着たと文献にありますが、絵姿はなく。これがセビーロなのかもしれませんね」
と賢者ムスメサンは言った。




