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18.僕の可愛い大好きな弟

 月音と弟クン、そして声をかけた女の子とさよならをして家に帰ることにした。ボクとしてはどっちかについていっても良かったんだけど、今日は少しミッションを課せられているから仕方ない。実家に帰って弟の面倒を見に行かなければならない。父さんと母さんが今日明日明後日と海外にプチ遠征らしいから、ボクに白羽の矢が立った。半分絶縁状態なのによく頼もうと思えるなと苦笑が浮かぶ。


「まぁ可愛い可愛い弟のためだし、ボクはいいけどね」


 新幹線に揺られながらスマホを見る。弟とLINEをしつつ新幹線の2時間の暇を潰すことに。


 ボクの弟は死ぬほど可愛い。本人は可愛いと言われるのは癪に触るだろうけれど、本当に可愛い。同年代の男の子、ひいては女の子を含んでもダントツだと思っている。顔も可愛い、行動も可愛い、声も可愛い。無敵過ぎて心配になってしまうけれど、ボクと同じ血を通わせている時点で無敵の才能はある。ボクだって顔はいいし。


(顔だけと言われたらそこまでではあるけど…….)


 ボクが顔だけでも弟はしっかり性格も良い。ちょっと毒吐き癖が酷いけど。そんな弟も愛おしいと思っているボクは多分月音を笑えないレベルのブラコンだと思う。


 新幹線で2時間半、そこから電車で数十分で実家の最寄りに着いた。そして歩いて5分ほどの場所に、見慣れた家を視界にとらえた。一応持っている合鍵を差してドアを開けると、これまた見慣れた白髪がお出迎えしてくれた。


「おかえり姉さん」

「ただいま蒼。元気?」

「うん。姉さんが思ってるよりずっと元気だよ」

「よかった……」


 ボクとは真逆の少し薄い青が映える白髪を揺らした弟、朝霧蒼。中1になって二ヶ月強だけど、上手くいっているみたいでホッと胸を撫で下ろす。心なしか以前より顔色もいい気がする。

 玄関からリビングに移動して、ソファにボスっと座る。横に蒼もぽすっと座ってボクの肩に寄りかかってきた。


「甘えん坊?」

「姉さんは時々しか会えないし……だめ?」

「全然。いくらでも寄りかかっていいよ」

「えへへ」


 あーもう可愛すぎて頭が蒼エキスでぶしゃぶしゃだ。こんな子がもし恋人になったら多分3日目で抱き潰す。蒼の性格的に、多分言葉で抗っても身体は全く抗わずにむしろよがるタイプだろうなと弟で最悪な妄想をかます。

 すると蒼がスマホを見てニヘッと笑った後、すごい速度で文字を打ってすぐに送信ボタンを押した。宛先は誰か分からないが、ボクは確実にその"匂い"を嗅ぎつけた。


「蒼」

「な、なに姉さん」

「ボクは蒼が好きになった人ならいいよ」

「何言ってるの!? というか断定してるじゃんそれ!」

「だって顔がもう……」


 ボクがそう言うと一気に蒼の白い頬が真っ赤に染まっていった。そして口から漏れ出る言葉が『あぅ……ぁ……』とかになってしまって完全に図星だ。顔は真っ赤なのに思考は真っ白になっているようで、目がグルグル回っている幻覚すら見える。


「ふふっ……ビンゴかな」

「ぅぁぁ……ぁう……」

「真っ赤過ぎだね蒼。隠す気も無いねぇ」

「だって……ぁあーもぉぉ……! 僕そんなに分かりやすい?」

「うん。とっても」


 目を細めニシッとした笑みを浮かべながら蒼の問いかけを肯定すると、蒼の紅潮した頬が首まで伝播して大変なことになってしまった。可愛いなぁとニコニコしながら見ていると、蒼は唸りつつ爆発しそうな顔を向けてきた。


「姉さんは僕のことよく知ってるよね?」

「うん。蒼が男の子の事が好きなのもよく知ってるよ」

「その人も男の人なんだけど……ネットで知り合って、声も顔も知らない人なんだ」

「……? え、それの何がダメなの?」


 そう言うと蒼はバッと顔を上げた。爆発しそうなくらい赤かった顔は無く、どこか期待感を孕みつつも肯定されないだろうと思っていたであろう表情をしている。この家のことだ、どうせ親父がノッケから否定したに違いない。お袋はお袋で蒼の事をどう扱っていいのか分かってない感じもするし、ほんと碌でもない親だ。


「……男同士は……気持ち悪くて生産性が無いらしいから……それでしかも会ったこともない人だから……馬鹿馬鹿しいかなって……」

「まぁそういう意見も勿論あるだろうね」


 ボクはそう言いつつソファを離れてキッチンへ向かう。棚の上の方に隠してあった赤ワインを探し出して、グラスに半分ほど注ぐ。蒼は顔を下げてしまったが、ボクは言葉を続ける。


「でも否定意見だけを吸収しているのもどうかと思うよ」

「……そうだけど……」

「蒼はどんな恋をしたいんだい? 燃えるような赤い恋かい? 冷静に一歩ずつ進む青い恋かい?」

「……両方」

「欲張りだね相変わらず……んぐっ……」


 ワインを一気に煽る。胃に何も入っていないので底の方にワインが直撃して、体全体を一瞬でアルコールが巡っていく視界でグラス越しに蒼を見る。

 白髪が目元を隠しているが、どんな顔をしているのかは明白。自分を否定してほしく無いという気持ちが全面に押し出ている雰囲気、そして表情。こんなに分かりやすいのに親父もお袋も気づかない。はっきり言ってどうかしている。


「蒼の好きな人はどんな人なんだ?」

「……優しくて、僕の事を理解してくれて、歩み寄ってくれる人。無駄な詮索も、優しさの無い同情も無いよ」

「ふぅん……いい男だ」

「うん……いい男」


 そう同調する蒼の顔は、見たことがないほど柔らかくて暖かい表情だった。その顔を見てボクはまたワインを煽った。

 そんな男を知ってしまった弟への嘆きをネットの創作仲間へDMで送る。迷惑とかは知らない。相手が何かあったら連絡してくれと言ったのだからこういう時にこそ活用しなければ。


【赤ワイン : ねぇー弟が男にメロメロにされてるよぉオリえもん〜】


【オリオン : も〜しょうがないなぁワイ太くんは……テッテレー! コン○ームー!】


【赤ワイン : 天才か?】


【オリオン : あかんあかんあかんあかんあかん】


 相変わらずノリがいいこの男に思わず口角が上がる。ワインに合うつまみを作りつつ、ソファに座り好意の対象に連絡を送っている蒼とノリのいいオリオンくんを肴にワインを煽る。そんな謎の時間がずっと続けばいいのになと漠然と思った。

 もうオリオンくんと蒼を結婚させればいいのではとも思った。叶うわけないけれど。

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