表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けばニチアサ世界に紛れ込んだみたいです  作者: 濃厚圧縮珈琲
第一部 第三楽章 恋と青春と友情と!
29/87

恋も勝負も燃えあがれっ!ドキドキの球技大会!

そろそろソラシーも学校に連れて行ってあげたいと思うこの頃。

しかしふと思えば、プリキュアのマスコットたちもお昼までの4時間弱、放課後までの2~3時間ずっとぬいぐるみのフリをしてないといけないって結構ハードですよね。

はたしてソラシーはそこまでしても、あかりと学校に行くことを望むのか……。


というわけで本編どうぞ!


雲の隙間より指す日の光が街を優しく照らし、じんわりと気温も高く、季節の移り変わりを早くも感じるそんな朝に、あかりはいつも通り少しだけ早足で通学路を歩いていた。

空気は爽やかで、白いシャツの袖口を風が軽く撫でていく。


「おはよー!みちるちゃーん!アリサちゃーん!」


手をぶんぶんと振って待ち合わせ場所へと駆けてきた元気いっぱいなあかりの姿を見て、みちるは呆れ半分に笑みを浮かべる。


「おはよう、今日は何時に増して元気ね……」


「……おはよう。気合いも十分に見える」


「そりゃもう!だって今日は球技大会だもんっ。張り切らなきゃ!う~~燃えてきたぁーっ!!」


そう、今日は球技大会。

それだけでも特別な一日だけれど、今日はもうひとつ……()()()()()()が控えていた。


「今日って、宮崎さんが告白するんでしょ?」


みちるが少しだけ声を潜めながら問いかけると、あかりは力強くうなずいた。


「うんっ!球技大会の後って決めてるんだって!」


「ふぅん……それであかりまで朝からソワソワしてると。……まあ、想定通りね」


「だって今日はひなたちゃんが頑張る日なんだよっ!いっぱい相談も乗ったし、昨日だって練習もしたし……!」


「そうね……、どっちに転がったとしても悔いがない様に頑張ってもらいたいわね」


その一方で、首を傾げたままのアリサが一言呟いた。


「……想いを伝える。ただそれだけの事がそこまで大事なのですか?」


ギュンっと音が聞こえるかの如くアリサへと振り向いたあかりは、珍しく眉毛を逆八にしてアリサへ詰め寄る。


「大事っ!とても大事だよっ!!女の子が好きな男の子に想いを伝えるって、どんな事よりも勇気がいる事なのっ!」


鼻息荒く力説するあかりに、アリサは無表情のまま、静かに一筋の冷や汗を流した。


「……なるほど、勉強不足だった」


「もちろん男の子から告白されるっていうのも素敵だけど……。本当に好きなら自分からアタックしていかないと、誰かに取られちゃっても文句は言えないわってアナスタシアちゃんが言ってたし!」


「誰よアナスタシアちゃんって」


「この前テレビでやってたアニメの元悪役令嬢のお嬢様!凄くかっこよくて、今度原作も買おうかなって!」


「いやアニメかいっ!」


きゃっきゃとじゃれあいながらも通学路を進み、途中で三人を待っていたあおいと合流する。


「おはよ、三人共。今日も楽しそうだね……」


「そりゃテンションも上がるよ~!だって、球技大会!それに、私はひなたちゃんの恋の応援団長なんだもん!」


「そっか……今日は絶好のスポーツ日和だし、優勝目指して頑張ってね」


はしゃぐあかりに対して、テンションが恐ろしく低いあおい。

どちらかというとインドアなあおいは運動はそこまで得意ではなく、強制参加ゆえに当てられたバレーでも目立たずに振舞おうと思っていた。


「うんっ!絶対勝って、いい流れ作って……それで、ひなたちゃんもバシッと決めるの!」


「……あかり、浮かれすぎると転ぶわよ?」


「う、うぅ……気をつけます……」


みちるの鋭いツッコミにしゅんとするあかりだったが、すぐにバッと顔を上げて、よりキラキラした目で皆を見回す。


「でも、今年の2-Aは絶対優勝できるよっ!だって最強ストライカーのアリサちゃんがサッカーのキャプテンだし!」


あかりの言葉に皆の視線がアリサへと注がれる。


「……割り当てられたからにはやる。……みちるはそれで良い?」


「うーん……やり過ぎない程度にね?」


まだアリサの実力を知らないあおいだけは、頭に?を浮かべていたが、後に宇宙を背後に浮かべながら彼女の活躍を見る事になる。




開会式の行われる体育館へと向かう前の休み時間。教室では着替えを済ませた生徒たちがそれぞれのペアやグループで盛り上がっていた。

そのざわめきの中、教室の隅っこではひなたがあかりと顔を寄せ合い、秘密の会議をしていた。


「だ、大丈夫かなあ……やっぱりやめた方がよかったかなぁ……」


ジャージの袖をぎゅっと握りしめて、ひなたが不安げに目を伏せる。

その様子に、あかりはひなたの手を握って力強く言った。


「ううん、やめちゃだめっ!今日はひなたちゃん……ちゃんと自分の気持ちを伝えるって決めたんでしょ!悩んで、落ち込んで、それでも前に進もうって頑張ったんでしょ!」


「でも……もし、上手く伝えられなかったら……」


「それでも、絶対に後悔しないよ!」


びしっと伸ばした指がひなたの胸の前を指す。

驚いたように目を丸くするひなたに、あかりは微笑みながら続けた。


「だってね、ひなたちゃんが好きって想いをずっと大切にしてきたの、私は知ってるから。」


「……あかりちゃん……」


少し潤んだような瞳であかりを見つめ、ひなたはぎこちなく笑った。


「……ありがとう。じゃあ、ちゃんとがんばるね」


「うんっ、がんばろ! そのためにも今日は勝って、いい流れを作るんだよ!」


ひなたの手をぎゅっと握るあかり。

手のひらがほんのり温かくて、ひなたはそれだけで少し安心できたように、ふわりと微笑んだ。


「ねぇ……今日のバレーの時、ハヤト君、応援してくれるかな」


「絶対してくれるよっ!だからこそ、相馬君の事もちゃんと応援してあげよう??」


「うん……じゃあ、ちゃんと見てもらえるようにがんばるっ!」


小さく拳を作って「えいえいおー」と声を出すひなたに、あかりも思わず笑って返す。


「うんうん、その調子!よーしっ、ひなたちゃんファイトっ!」


「おーっ!」


まだ始まってもいない球技大会。

だけど、ひなたの心の中ではすでに、小さな決戦の火蓋が切られようとしていた。




———————————————————————————————————




続々と生徒達が集まってきている体育館には、まだ朝の光が高窓から射し込んでいた。

吹奏楽部の奏でるマーチに心躍らせながらも、各学年、各クラス毎に整列し、開会の時を今か今かと待ち受ける。



やがて吹奏楽部の演奏が止み、学年主任の号令により開会式が始まった。


校長や教頭の話、体育教師の話と続いて、皆の顔に退屈さが浮かんだところでようやく選手宣誓。


三年生の野球部キャプテンの男子とバスケ部の女子主将が宣誓すると、拍手とともに生徒たちの間にざわめきが広がる。いよいよ球技大会の始まりだ。


男子の方は妙にハイテンションで、すでに円陣を組んで気合いを入れているチームもちらほら見られた。


一方女子はというと、やや温度差のある反応。盛り上がっているグループもあれば、喧しい雰囲気に耐えながら静かに並んでいる生徒もいた。


そんな中、2年A組の女子バレーチーム。

あかり、ひなた、みちる、そして他の3人のクラスメイトたちで構成された6人は、やや緊張の面持ちで肩を寄せ合って並んでいた。


「あ……ぅ、なんか……ドキドキしてきた……」

ひなたがジャージの裾をぐっと握り締め、小さく呟く。

その顔は緊張で少し引きつっていた。


「……しっかりしなさい、試合はすぐ始まるわよ」

みちるが前を向いたままそっと言ったが、目だけはちゃんとひなたを気にしていた。

その横であかりは、ぐっと拳を握って元気よく返す。


「大丈夫!大丈夫!私達、ちゃんと練習してきたもん!絶対勝てるよっ!」


「……勝って、良い流れ作ろうね……」

ひなたがふっと頬を緩めると、あかりは満足そうに頷いた。


教師の誘導により、サッカー・バスケ・バレーと各競技ごとの会場に分かれていく。

女子バレーはそのまま体育館で行われ、2-Aは第一試合に登場することになっていた。


試合開始前、コートの外で待機していたひなたの視線がふと、一つの方向に向かって止まった。

同じく体育館で第二試合に出場予定の男子バレーメンバーが順番待ちも兼ねた応援に来てくれていたのだ。


「……ハヤトくん……」


ひなたの呟きは、他の音にかき消されて誰にも届かない。

彼は特に何も気付いた様子もなく、真剣な顔で肩のストレッチをしていたが一瞬、視線が合った。


「……!」


ひなたが目を見開き、一歩後ずさろうとした瞬間、ハヤトがほんの少し、口元を緩めた。

そして小さく、手を上げる。


「……っ」


緊張で固まりかけていたひなたの顔に、わずかに赤みが差した。

とても静かな、けれど確かな()()の仕草。それだけで、胸の奥に熱いものが広がっていく。


「が、がんばらなくちゃ……っ!」


頬を両手で軽くぺちんと叩いて気合を入れるひなた。

それを見ていたあかりは、にっこりと笑ってサムズアップを送った。


「いけるよ、ひなたちゃんっ!」


そして、試合開始のホイッスルが鳴る——!





2年A組の女子バレーチームは、やや緊張した様子でコートに散った。


あかりはネット際の前衛左。ひなたは後衛中央。みちるは前衛右のポジションについていた。


「サーブいくよー!」


相手チームのサーブ。

スッと上がったボールが、綺麗な放物線を描いてこちらのコートへ飛んできた。


「来たっ、あたし行くっ!」


前衛の一人、さきがレシーブに飛び込み、ボールは大きく天井近くまで上がる。


「ひなたちゃん、トスお願いっ!」


「う、うんっ!」


あかりの声に反応して、ひなたが前に走り込む。

練習通り、両手を構えてボールを真上へと押し上げ——。


「そりゃああああああっ!!」


あかりが見事なジャンプスパイクを決めた!


「ナイスー!」

「いいぞー!2-A!!」


周囲の歓声がわっと上がり、ひなたは驚いたように自分の手を見つめた。


「……できた……ちゃんと、できた……!」


隣でにっこりと親指を立てるあかり。

そしてふと目をやると、体育館の壁際で腕を組んで見守っていたハヤトがこちらを見て、またほんの少し、口元を和らげた。


「……見てくれてる……」


その一瞬だけで、ひなたの中の何かがポッと灯る。


——怖くない。私はちゃんと、やれるんだ!

そんな気持ちが胸に満ちて、自然と次の動きが軽くなる。


「はい、サーブ行くよ!」


続くラリーも、2-Aチームは順調に得点を重ねていった。

クラスメイトたちの応援の声も徐々に大きくなり、ひなたももう、最初のようなぎこちなさは消えていた。


ネット際でブロックをするみちるの気迫あるプレー、安定したレシーブを見せる他のメンバーたち、そしてチームを牽引するあかりの明るさが、ひとつに繋がっていく。


——そして、セットポイント。


「……ここで、決めるよ!」


後衛のマコがレシーブで相手の玉を跳ね上げた瞬間、すぐ隣にいたひなたが一歩前へ出た。


「トス、お願い……っ!」


小さな声だったけれど、その瞳は真っ直ぐだった。


「任せてっ!」


あかりは笑顔でトスを上げ、タイミングを計りひなたはボールを叩いた。


「えいっ!!」


……決して力強いアタックではなかった。ジャンプをしてもひなたの身長だと指先がネットをギリギリ超えるか超えられないかぐらい。それゆえに、彼女は工夫した。ネットギリギリを攻めるふわっとしたフェイントショット。

でも、タイミングを外された相手チームは反応しきれず、ボールはラインギリギリに落ちる。



「セット……マッチ!!」


勝利を告げる笛の音とともに、コートが歓声に包まれた。


「やったぁあああ!!」

「勝ったー!!」


あかりがひなたに駆け寄り、ぱっと抱きつく。

ひなたは驚きながらも、そのままぎゅっと抱きしめ返した。


「すごいよひなたちゃん、決めたよーっ!」


「うん……うんっ、がんばれたっ……!」


涙ぐんだ瞳をぬぐいながら、ひなたは笑った。

見上げると、遠くの男子側のベンチで、ハヤトがまたひとつ、小さく拍手をしていた。


——伝わっている。想いは、ちゃんと。


そしてその拍手は、ひなたの背中をやさしく押してくれていた。




女子の第一試合が終わってすぐ、間髪入れずに始まったのは男子バレーの部。


ひなたは男子チームの応援をする為、少し端の方でそっと座っていた。

隣にはあかり。そして、その隣にはみちるも並んで座って様子を見ている。


「ほら、始まるよ……!」


あかりに促されて顔を上げたひなたの視線の先、

バレーコートに立つのは2年A組の男子チーム。


その中心に立つ、背の高い男子生徒。

精悍な顔立ちに、どこかクールな雰囲気を纏った彼こそ、相馬ハヤトだった。


試合が始まると、ハヤトはすぐにその実力を見せつけた。

ジャンプ力、瞬時の判断力、そして正確なスパイク。

次々と得点を決めていく姿はまさにエースそのもので、観客席からもどよめきが漏れる。


「キャー!相馬くんかっこいいー!」

「やっぱ違うよね~他クラスでもあれは有名になるよ」


周囲から漏れる黄色い声援が、ひなたの耳に自然と入り込んできた。


その声を聞きながら、ひなたは胸の奥に小さな鈍いものを感じてしまう。


——やっぱり、私なんかじゃ、釣り合わないのかな。


ハヤトの姿を見るのが嬉しくて、応援していたはずなのに、

自分の想いがとても小さく感じて、手のひらがじんわりと汗ばんでいく。


それでも、視線を外せない。


すると、ふとこちらを向いたハヤトと目が合った——気がした。


「……っ」


たったそれだけなのに、胸が跳ねる。

彼の瞳には特別な意味なんて込められていなかったのかもしれない。

それでも、まるでほんの一瞬だけ、世界に自分しかいなかったみたいで。


「……ひなたちゃん、大丈夫?」


あかりがそっと声をかけると、ひなたは小さく笑った。


「うん……だいじょうぶ。もう少しだけ、がんばる」


男子チームも快進撃を続け、最後はハヤトの鋭いスパイクが決まり、セットを奪取。

勝利が決まると、彼は少しだけ嬉しそうに、控えめなガッツポーズを見せた。


その姿を、ひなたはまっすぐに、熱を持った視線で見つめていた。




———————————————————————————————————




ゆらゆらと揺らめく蝋燭のシャンデリアの光に照らされた薄暗いコンサートホール。

今はまだ静まり返ったホールへと足音を立てて廊下をズカズカ進んでくるのは……あの男。


「んはーっはっはっはっはァ〜っ!!今日はワシの出番だァっ!!!腕が鳴るわい!」


ミーザリアが出撃から戻ってきた後、対ブレッシング・ノーツへの対策を考えるという名目で取った休日で、フォルティシモ男爵も羽を伸ばしてきたのか、額のツヤが良く廊下の照明の光を良く反射していた。


右手には漆黒の指揮棒、左手には真新しいレゲエホーン。懐にはミュートジェムを忍ばせた完全装備。


ドゴンっと音を立ててホールへの入り口を開け放ち、騒々しく転移門のあるホールへと足を踏み入れた男爵を待ち受けていたのは、舞台袖から現れたクレシド卿だった。

白髪を撫でつけ、赤い瞳を細めながら、男爵を一瞥する。


「……やれやれ、男爵がいない二日間は実に静かで快適であったのに」


クレシド卿の冷たい刃のような言葉も、男爵の前には等しく無力である。


「うははっ!ワシが居らねば寂しかろうて!このツンデレめッ!!今日も最高の芸術を娘っこ共へと馳走してやろうと思ってな!ミーザリアが中々うまくやったと聞いてワシも色々と考えた。暗黒海の土産屋を物色しながら考えを膨らませた、その際にこの素晴らしき我が頭脳の閃きはァッ!!まさに稲妻が直撃したような衝撃と共に妙案を生み出したのよ!……だがその後に食べた料理がまた随分と衝撃的でな!その衝撃で忘れてしまったというまさに喜劇ッ!まさかそんなオチが待っているとは思うまいッ!ワハハハハハハっ!!!」


マシンガンのように喧しく話し出した男爵に次第にイライラを募らせ、眉間を揉みながらクレシド卿は吐き捨てるように言った。


「喧しい……、分かったから早く行くなら行ってくれたまえ。私の気が穏やかなうちにな」


しっしっと手で追い払うようなジェスチャーをしてクレシド卿は舞台袖のカーテンを翻しながらバーカウンターの方へと引っ込む。

しかし男爵はクレシド卿を追いかけてバーカウンターまで顔を出す。



「おぉ!?随分つれないではないかクレシド卿ォ~?んん~んッ!!どれ、行く前に出先で手に入れた極上のツマミがあるんじゃが、一杯ひっかけてみんかの?……なんと冒涜蛸の墨漬け、中々癖が強いくせに中々どうして、旨いんじゃ……!」


「……遠慮しておこう。私は冒涜的な料理より、静寂とワインの方が好みでね」


クレシド卿がひらりと袖を払うようにして言い捨てると、バーカウンターの奥へと姿を消す。


それを見送る男爵は、ふんっと鼻を鳴らしながらも、懐から墨漬けの入った瓶を取り出した。


「ったく、愛想のないやつじゃ。まぁ良いだろう……好きな時に摘まむと良い!だが食べないときはしっかりと封を忘れずにな!リタ坊の目に入らないところに置いておくんじゃぞ!」


と、名状しがたき絵の描かれた土産の瓶をカウンターへと並べ、転移門へと歩みを進める。


「さぁて!!リフレッシュしたワシの力、見せつけてやろう!!」


腕をぐるぐると回しながら、開いた次元の穴へと飛び込んでいく。爆音のマエストロがあかり達の元へと現れるまで、あと少し……っ!




———————————————————————————————————




第一体育館では男子女子バレーが白熱し、あかり達2-A女子バレーチームも順調に勝ち進んでいる一方で、グラウンドではサッカーの試合が熱を帯びていた。


特に注目を集めていたのは、他でもない――2-Aの謎の転校生ストライカー、咲良アリサ。


「すげぇ……あのドリブル、やば……!」

「無表情のすかした奴だと思ったら……何だあの動きは!?」

「一人で何人抜いたの今!?嘘でしょ!?」


歓声ともどよめきともつかない声が、観客席から一斉に湧き上がる。

その中心で、アリサはただ黙々とボールをゴールへと運び、華麗なシュートでネットを揺らしていた。


女子からは黄色い歓声が上がり、男子からもまさに今、伝説を目撃しているといった熱視線が注がれている。


「咲良さん!例の教えた奴!やってみてよ!」

元気なクラスメイトの女子……倉間奈央から言われ、前々からクラスメイトとの交流で教わっていた”ふぁんさ”なる物を試してみようと歓声を送るオーディエンスへと向き直る。

アリサはしっかりした愛想笑いこそまだ出来ないものの、ほんのりと微笑むような柔らかい雰囲気を纏い、わずかに目元を和らげ、ウインクと軽く手を振る動作で、それとなく声援に応えてみた。


挿絵(By みてみん)



教えた本人の奈央は「きゃっ♪」と想像通りの絵になるアリサを見て、他の友人とはしゃいでいたが、オーディエンス等は一瞬時が止まった。


「……待って、ヤバい……い、今の……見た?」

「ウインクした!?俺に!?」

「馬鹿いや俺だろ!?俺と目が合ってた!!」

「う、うおおぉぉぉっ!!推せるっ!!こんなん推すっ!!」

「アリサお姉さま……っ!!」


わっと止まった分の歓声が同時に溢れ出て、一際より大きな歓声がアリサを包む。

もはや半分神格化しかけたその姿に、対戦相手のチームも既に戦意喪失気味。

アリサのチームメイトたちも「もうアリサだけでよくね?」とばかりに、軽くパスだけ回して基本歩いている。


相手全員がアリサにマークを付けたとしても――


「……ッ!」


風のように、残像を残すかの如き動きでアリサはすり抜け、キーパーとの一騎打ちすら冷静に制していく。


やがて、試合終了のホイッスルが鳴り響き、6-0で、2-Aの勝利が決まった。




「……なるほど、あかりが言っていたのはこういう事……」


2-A組の対戦相手だった2-C組の女子サッカーを応援に来ていたあおいが、宇宙を背後に浮かべ、虚ろな瞳で盛り上がる生徒達の陰で呟いていた。




球技大会 前半でした。

次回は中盤、あかり達はどこまで勝ち進む事が出来るのか

ひなたはハヤトへ想いを伝えられるのだろうか…?


どうぞお楽しみに~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ