40 旅のはじまり
日曜日の昼、セリーナが女王様とサクラリアと共にお昼を食べている頃、悠希とタピオカは現実で昼食を済ませ、これからのことを語り合っていた。
『って、豆腐くん。あとでまたダンジョン周回しない?』
「いいえ、バールヴィレッジに戻って旅の準備をする。セリーナは恩のある服屋リリアナローズに、しばらく旅に出ることを伝えたいみたい。」
『これは仕方ないね。……迷宮都市まで走らないよね。』
「バールヴィレッジ辺りから王都付近の迷宮都市は遠いから。毎晩数時間走ると何日かかるか分からない。もし夜中まで走って、その付近の転送ポイントを解放しないままログアウトすると、その夜の走った距離は無駄になる。例え町に到着しても、深夜では宿が開いていないだろう。」
『移動用の鳥を買う?』
「いや、ゲームと違っていつでも呼べないし、転移したらあの鳥は現地に残される。それに恐らくリアル的に食費が必要。セリーナたちは明日普通に乗合馬車に乗って迷宮都市に向かうつもり。」
『では定番の冒険者の護衛として?』
「セリーナのギルドカードの名前は“アリス”だから。バールヴィレッジではもうアリスを出さないほうがいい。」
『先週のことね。ふむふむ、だからセリーナたちは一般人として乗合馬車に乗るのですね。』
「そういうこと。乗合馬車は護衛もいるし、野盗が出てきても大丈夫そうだ。」
『レベル50越えな野盗…いないと思う。』
「タピオカくん、女性が旅の準備をする時、必要なものを教えてくれ。バールヴィレッジでついでに買っておこう。」
『わかったわ、任せてください!あ~そうそう、セリーナの家に鏡付きの化粧台が欲しい!』
「無理だ…ガラスを作る素材がない。」
『森の川にはないの?……普通の砂。』
「そういえば……あの世界だとあるかもしれない!あとで探しましょう。工事現場にも砂があるかも。」
『よし!では、一緒にセリーナを幸せにしましょう!!』
「おお!!」
『…あ、その前に新しい櫛も欲しい!セリーナの部屋着も何着か欲しい。それと……』
タピオカは自分の家のように細かく注文を重ね、悠希はその素材を取れる場所を攻略サイトで探していた。
しばらくして時間を見て、二人は再びセレアグにログインした。
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ログインした俺たちは、まっさきに見えたのは妖精の女王がサクラリアの髪を櫛でとかしている姿だった。
セリーナ:あ、お帰りなさい。精霊さん、タピオカさん。
サクラリア:お帰りなさいませ、タピオカ様、精霊様。
「ただいま戻りました。セリーナ、サクラリア。」
『ただいまです。』
『タピオカ殿、このまま動かないで、そろそろ終わるから。』
『あ、はい。』
女王様が櫛を通したあと、サクラリアの髪はいつもよりずっと姫様らしく見えた。足まで届く淡いピンク色の長い髪が後ろに流れ、その髪をまとめるように綺麗な白い花の髪留めが飾られている。大人しい姫様らしい雰囲気が漂っていて、俺は女性の髪型には詳しくないけど、髪留めを付けるだけでこんなに可愛くなるのか……。セリーナにも髪留めを買ってあげようかな。
女王様は昼からずっとここにいるみたいだ。
サクラリア:タピオカ様!お母様はすごいですよ!今朝冥府の呪術師という敵を倒しましたわよ!
「冥府の呪術師?!」
『冥府の呪術師?!』
え?!あのボスはもう出てきた?!しかし、女王様は何もないように小屋に来ている……。
俺はタピオカくんに視線を送った。
それを見通したように、女王様はサクラリアの髪を櫛でとかしたまま俺たちに話しかけてきた。
『精霊殿、タピオカ殿。あの者を倒せたのはそなたたちが贈ったこの首飾りのおかげだ、礼を言う。瘴気に毒されなければ、あんな雑魚は一撃で倒せたわよ。』
「一……撃……」
『すごい!』
俺は今度はタピオカくんと目で会話した。
(おいおい、タピオカくん。女王様のレベル??の意味は多分ホントに100以上だよ。攻略サイトでは冥府の呪術師のレベルは50もある。そんなボスキャラを一撃で倒せるなんて……)
(私達も言葉を気を付けないといけませんよね。)
(だ、大丈夫。ミニマップを見たら俺達は一応味方の状態だ。……多分大丈夫。)
『安心せい、二人とも。そなたたちも妾の友人だ。心配しなくて良い。』
「申し訳ございません、女王様。もしかして、自分は顔に出ていましたか?」
『いいえ、何となくだけ。』
怖えー!こいつ、ニュータイプなのか?!
『そうだわ、セリーナから聞いたわよ。このあとは“バールヴィレッジ”という街に行って旅の準備をするらしいわね。いつ戻れる?』
女王様はサクラリアの髪をとかし終え、俺に質問してきた。ここには鏡がないので、タピオカくんは自分のメニューのステータス画面を開いて、サクラリアに今の髪型を見せていた。
はいはい、答えるのは俺しかないよね。知ってる。
「そうですね。ワタシとタピオカくんは平日では夜しか来られないので、今のように朝から来られるのは土日だけです。セリーナたちは今晩バールヴィレッジの宿で過ごし、明日の朝は乗合馬車に乗って迷宮都市に向かう予定です。」
『あら、そう。』
「ワタシは毎晩来ますので、セリーナたちが泊まった場所の近くに転送ポイントがあれば、それを解放してすぐに来られます。」
『いいえ、妾は平気だ。無理する必要はない。』
「いいえ、無理ではありません。セリーナたちが休んでいる間、ワタシとタピオカくんはダンジョンを周回し、サクラリアの実力を高めるためと、この部屋用の家具を作るための素材を集めるつもりです。」
ここでタピオカくんが口を挟んだ。
『女王様、私の力で作ったものはどうやら妖精サイズです。もし女王様が欲しいものがあれば、お構いなく話してください。』
『ありがとう、お二人。妾は大丈夫。暇な時は妖精の国に来なさい。歓迎する。』
「『ありがとうございます。』」
『妾もそろそろ戻るわ。サクラリア、体を気を付けて、あの結界の腕輪を絶対に外さないようにね。』
サクラリア:わかりました。お母様。
『サクラリアはわかりましたと話しました。』
『そう。』
女王様はサクラリアをもう一度抱きしめたあと、妖精メイドたちと共に帰っていった。
「ふぅ…」
『ふぅ……女王様はやっぱりすごいわね。あのボスをワンパンで…。』
セリーナ:精霊さん、もうバールヴィレッジに行くですよね。
セリーナ:リリアナローズのみんなにお菓子を持っていくのはいい?
「ええ、もちろん良いですよ。セリーナが好きなようにして大丈夫です。」
セリーナ:ありがとうございます。
「サクラリア、これから“バールヴィレッジ”という人間の街に行きますが、心の準備は出来ていますか?」
サクラリア:はい!準備は出来ております!人間の街がどんな感じか楽しみですわ。
『私もこの世界では初めて街に行くのですね。なんだか少しワクワクしました。』
「タピオカくん、画質以外は、ゲームとあまり変わりませんので、安心してくださいね。」
どうやらセリーナは俺たちがいない間に、すでに旅に必要なものをすべてカバンに入れて準備していた。俺はセリーナの指示通り、冷蔵庫からクッキーを取り出し、そのまま“バールヴィレッジ”外にある最寄りの転送ポイントへ転送した。
アリスではなく、セリーナとしてバールヴィレッジに戻る。きっと大丈夫…だよな。……多分。
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【名前:セリーナ】
レベル 52
• 武器:SR 絶対零度のロッド
• 頭:UR 星のヘッドピース
• 体:SR ノクターン・ブルーム
• 手:UR 月光のオペラグローブ
• 足:SR ミスティック・パンプス
• アクセサリー1 聖護の首飾り
• アクセサリー2 マジックローブ
• アタッチメント:なし
• インナー:月のガーターストッキング 黒
‐魔法レベル24→30
‐料理レベル19→20
‐採集レベル24→26




