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30 月曜の会議

翠夢の森に到着した夜。


夕飯の時、セリーナはまたケーキを注文した。流石に甘やかしすぎるのは良くないので、砂糖が多くないという理由で、甘味は一週間に一つだけと決めた。


幸い、セリーナは砂糖の値段を知っているため、駄々をこねることはなかった。やっぱりいい子だ。


夕飯のあと、フェアリーイーターは夜行性かもしれないと思い、天使の輪を装備してもう一度森へ入った。


やはりフェアリーイーターは夜行性のモンスターだった。獲物を誘うためか、背中に咲いた花が夜になるとほんのり光り、昼間よりも見つけやすい。昼は花に紛れて擬態しているが、夜になると姿を隠さず、ゆっくりと移動している個体も多く見つけられた。


それでもゲームとは違い、一晩探しても二十匹しか倒せなかった。この辺りはすでに狩り尽くしたのだろうか?もっと森の奥へ潜らなければならない。


その夜、手に入った無垢晶は合計七個だけだった。


また来よう。もしフィールドのモンスターが本当にリスポーンしないなら、全異常状態を防げるネックレスは後回しにして、先に迷宮都市へ向かうべきかもしれない。


明日は月曜日。俺は夜しかログインできない。そして、まだやることがあるので、ティリーボスのクリスタルゴーレムに転移して、さくっと倒し、夜十時頃にセリーナの家へ戻った。



セリーナの家に戻ると、まずはベッドをより良いものに交換した。今までのベッドは硬すぎて、十分な睡眠が取れなかったからだ。幸い、今日の移動の途中で綿を手に入れていたので、その素材を使ってすぐに新しいベッドを作ることができた。


その後、木の小屋に浴槽と冷蔵庫を設置し、横に新しいテーブルを置いた。魔導書系の武器と紙も並べておく。小屋には照明がなかったので、以前間違って課金で買ってしまったエルフのランタンを置いた。光は少し緑がかっているが、ないよりはずっと良い。燃料必要ないだからね…ここ大事。


そういえば、セリーナは“失われた花びら”を気にしていたので、何枚かテーブルに置いておいた。他にも裁縫に使えそうな素材を一緒に並べておく。


最後に、セリーナの魔法使いセットと〈絶対零度のロッド〉をテーブルに置き、村人の服に着替えて、ふかふかなベッドに横になり、ログアウトした。



リアルに戻り、俺は明日の出勤の準備を済ませたあと、さっさとベッドに横になった。


本当に兵隊がガンド村に来るのかはわからない。だが、エルドラーナさんが派遣した冒険者の話では、村長の件はすでにギルド長に連絡済みだ。村長を回収する必要がある以上、誰かは来るだろう。


この一週間、俺がいない間、セリーナは普通にガンド村の家で生活する。折角ガンド村の人たちと仲良くなったし、金の心配もなくなった。少しの間は普通の生活に戻ればいい。装備を揃えたら、伯爵領へ旅に出て、しばらくは戻れないだろう。


そう考えているうちに、俺は知らない間に眠りへと落ちていった。



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その夜、俺はまたあの奇妙な夢を見た。


昨晩と同じ、儀礼艦の中でひたすら艦長を助けようと移動し続ける夢だ。


途中で、なぜか艦長とは逆の道へ進んでしまい、そしてまた――あの車の中で、姿の見えないおじさんと並んでラーメンを食べていた。



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翌日、月曜日。俺はいつもの時間に起きた。


昨日と同じく、あの変な夢をなぜかはっきりと覚えている。時々あるよな、こういう夢。気にしないようにしよう。


セリーナの借金問題は解決したし、月曜なのに珍しくいい気分で出勤できた。


昼休み、昼ご飯の残り時間で、相談役のタピオカくんにメッセージアプリで現状を報告する。


ー報告!タピオカくん、昨日翠夢の森に到着した。一晩フェアリーイーターを狩り続けたが、無垢晶7個しか出なかった。


送信すると、すぐに返事が返ってきた。


ーよ、豆腐くん。昨日オレも試しにその森に行ったよ、軽く狩るだけで、すでに10個出たよ。

ー羨ましい!!まあ、多分あの世界のマップはリアルサイズだから。マップ内のモンスター配置数はゲームと同じでも、密度はゲームと違う。

ーこれはこれは……めんどくさいなぁ~!

ーそうだね、一応今晩はもう一回翠夢の森に探索済みの場所を回って、モンスターがリスポーンするか確認してみる。もしリスポーンしなければ、もっと深くに入るか、それとも本当にティリーポイントを使うしかないと思う。

ー無垢晶のためにティリーポイントを使うのか…勿体ない。あれはUR素材のために使うべきだと思うよ。

ーわかってるよ。ただ、このままでは森の中のフェアリーイーターを全部狩っても、50個集められるか怪しいな。

ーそうですね、ではまた報告してくれ。

ーおう!


昼休みが終わり、午後の仕事に戻る。そこで――まさかこんなお知らせが来るとは思ってもみなかった。


「高橋くん。ちょっと会議室に来てくれ。」

「あ、はい!」


上司と一緒に会議室に入る。上司は立ったまま話し始めた。軽い話らしい。少し安心する。


「高橋くん、佐藤くんが急な用事で本社への出張に行けなくなった。代わりに行ってくれないか?」

「え?自分…ですか?」

「ええ。佐藤くんの奥さんが急に今週出産でね。今の時代にそんな大事な時期に無理やり出張させるのは不味いだろう。それに、俺も鬼じゃないからな。」

「は、はぁ…」

「そこでだ。君に頼みたい。今週の木曜と金曜、青森の本社で会議に参加してくれ。」


まじかよ。普通なら嬉しい案件だ。運が良ければ本社異動のチャンスにもなる。だがここは大阪、本社は青森。遠い。セリーナはどうする?さすがにゲームのために大事な会議を断るわけにはいかない。


「わかりました。お任せください。」

「ありがとう。資料はあとで送るよ。」



こうして急な出張が決まった。



大阪から青森へは水曜日に新幹線で出発、木曜と金曜は会議、土曜に大阪へ戻る予定。資料整理の時間はほとんど残されていない。


その夜は当然残業。整理しきれなかった資料を家に持ち帰った。


今週は多分、セレアグの世界に入る時間もないだろう。


「セリーナに話しておこう。」


家でコンビニ弁当と言う夕飯を済ませ、残った資料を整理する前に、俺はデバイスを頭に載せ、セレアグの世界へログインした。




目を開けると、緑色の光が揺れていた。エルフのランタンの明かりだ。ここはセリーナの家ではなく……木の小屋。


セリーナ:あ、こんばんは。精霊さん。


「こんばんは、セリーナ。えっと……何をしてるの?」


俺の手には妖精ガチャ用のアイテム〈失われた花びら〉があった。名前は花びらだが、これは明らかにフェアリーイーターに食べられた妖精の羽だと思う。


セリーナ:そうですね、その花びらが綺麗なので、何が作れるのかなぁと思ってた。


確かに、エルフのランタンの緑色の光の下で、この花びらはゲーミングPCのライトのようにキラキラと輝いて見える。だが、イベントが発生できないため妖精ガチャは回せない。だからこのアイテムはセリーナの好きにしていい。


妖精シリーズを作らないのか?……いい質問だ。性能は悪くないが、妖精シリーズは翼を持つ魔法少女のようなデザインで、可愛らしすぎる。この世界でそんな装備を着て歩けば、衛兵に捕まるのがオチだ。


アリスの格好は一応普通のドレスだし、あの時は他の選択肢もなかった。村娘の格好で大量の素材を換金すれば、盗品だと思われるに決まっている。


コホン……時間はあまりない。本題に入ろう。


「ごめんね、セリーナ。今週は仕事が忙しくて、今日もすぐに戻らないといけない。恐らく土曜か日曜までは来られないと思う。」


セリーナ:え?!そう……ですか。


「大丈夫。週末にはまた来ますから安心してくださいね。今週は休みだと思って、借金の心配もなく、久しぶりに村の人たちと交流して過ごすといい。」


セリーナ:わかりました。


「もし本当に兵隊が来たら、この小屋に逃げてください。食べ物は冷蔵庫に入ってあるから、週末にはまた来ますから安心してくださいね。セリーナは痩せているから、栄養補給のために毎日ゆで卵を必ず一個食べること。他にも面白そうな素材を置いてあるから、好きに使っていい。それと……」


セリーナ:もう、精霊さんは私のお母さんですか?

セリーナ:私は大丈夫ですよ。精霊さんは仕事を頑張ってください。


「あ、そうだね。では戻るよ。セリーナも徹夜せず、早めにお休みくださいね。」


セリーナ:わかってますよ。おやすみなさい。


「はい、おやすみなさい。」


俺はメニューからログアウトボタンを押した。


さて……仕事に戻るか。とほほ……。



--------------------------------------------------------



私は自分の体を動かせた。精霊さんは精霊界に帰ってしまった。


どうしてだろう、たった一週間の付き合いなのに、急に寂しく感じてしまう。……いやいや、精霊さんはただ仕事で来られないだけ。もう二度と会えないわけじゃない。


借金問題も解決したし、昔からずっとやりたかったことをやりましょう!


「よし!まずは……精霊さんがいない時しかできないことを!」


私は冷蔵庫を開き、中から昨日とは違う茶色のケーキを取り出して、ぱくりと食べる。


「うん~~~!美味しい~!この“ちょこ”っていうものはよくわからないですけど、甘くて美味しい~!」


あっという間に食べ終わってしまい、まだ物足りなくて思わず冷蔵庫をもう一度開ける。


中には精霊さんが昨晩作った料理や食材がぎっしり詰まっていて、他のケーキや甘味も色々入っている。

今度は冷蔵庫の表示に出ていた“ぱふぇ”と書かれた画像に手を伸ばし――。


「はあ!だめだめ!!一週間に一個だけって精霊さんと約束したんだ!我慢我慢!」


冷静さを取り戻し、私は冷蔵庫の扉を閉じた。


「精霊さんもいないし、今日は早めに寝ましょうか。」


歯を磨き、顔を洗い、明かりを消して、ふかふかのベッドに腰を下ろす。


「ふわぁ~あ!精霊さんにお礼を言うのを忘れてた!」


そう、精霊さんは昨晩、このふわふわの新しいベッドを作ってくれた。その寝心地が良すぎて、今朝は思いっきり寝坊してしまったくらい。そうだわ、精霊さんへのお礼を考えなくちゃ。


そんなことを思いながら、私はうさぎのぬいぐるみを抱きしめたまま、知らないうちに眠りに落ちていた。




翌日。ベッドが気持ちよすぎて、今日も少し寝坊してしまった。


朝起きて、朝ごはんを食べながら、これからやりたいことを考える。


精霊さんへのお礼……精霊さんは無垢晶を欲しがっていた。今は確か7個しか持っていない。私が翠夢の森に入ってフェアリーイーターを探してみようか?フェアリーイーターは弱いし、精霊さんの話では、私の魔法なら一〜二発で倒せるらしい。


……いやいや、でも私はあの植物みたいなモンスターの剥ぎ取り方がわからない。フェアリーイーターのどこに価値があるのかも知らないし。


精霊さんがモンスターを倒すと、すぐに消えてしまって、素材も自動でストレージに入るんです。でも私には精霊さんの“メニュー”の力がないから、倒したらそのまま残ってしまいます。


「うん〜どうしようかな〜。一体だけ狩って、ガンド村に持ち帰って、ガインおじさんに頼んでみたら?」


よし、試してみよう!


朝ごはんを終えると、私は自分の家と繋がっている木の小屋に入り、魔法使いの装備に着替えた。ストレージがないので、護身用のダガー、数本のポーション、そして食べ物をカバンに詰める。〈絶対零度のロッド〉を手に取り、私は一人で翠夢の森へと足を踏み入れた。

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