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25 長い…3秒間

こんな命が一つしかない世界では、レベル30以上は十分に高いと思う。


二つ名持ちともなれば、相当な実力者だろう。


物騒な〈影なきの処刑人〉、〈神速の剣影〉、そしてギルド長エルドラーナと教官アイザック――この部屋の中だけで、すでにレベル30越えの人が4人がいる。


俺は全身UR装備で、レベルもすでに49。それでも、全員が一斉に襲ってきたら、対抗できるかどうかは怪しい。


念のため、メニューを開いて、いつでも転移できるように準備しておく。


一応、ミニマップを確認してみる。


この部屋にいる全員の点の色は……白が多い?俺は泥棒扱いにされたはずなのに?


おかしい。赤い点は、ヤークとその嫁、そして部屋に控えている騎士数名だけ。どうやら、この会談はいつも以上に警戒して臨む必要があるようだ。




全員が揃ったところで、エルドラーナさんは俺ではなく、俺の後ろに立っている<暁の誓い>のリーダー・アレンと魔法使いのリリィに話しかけた。


「コホン……アレンくん、リリィさん、アリスさんを連れてきてくれてありがとう。では、エトワール様。私はこの場を提供するだけの立場、中立としてこの問題の仲裁を見届ける者です。もしアリスさんに罪が認められた場合は、我がギルドの名誉のために、彼女を差し出し、国の法に従って裁きを受けさせます。」

「構わん。それは我が家の問題だ。彼女の実力を見て、強引に捕らえるよりも、話し合いの場を設けた方が得策と判断した。ありがとう。 こちらは親友の商人、ヤークだ。腕輪が偽物にすり替えられていないかを確認するために、同行させた。」

「承知しました。ヤーク様の同席を認めます。」


エルドラーナさんは続けて、俺に向き直り、静かに言った。


「アリスさん。もしあなたの潔白が証明された場合、我がギルドはあなたを守ります。当然、罪が発覚した場合は、あなたを領主様に引き渡します。よろしいですね?」

「はい、問題ありません。ありがとうございます。」

「では、アリスさん。あなたは現在、領主様の宝物を盗んだ容疑がかけられています。心当たりはありますか?」

「いいえ、まったくありません。」


エルドラーナさんは領主様にこう言った。


「エトワール様、盗まれた宝物というのは、具体的に何でしょうか?」

「……ああ、彼女は我がアマースト家の宝物――〈転移の腕輪〉を盗んだ。その腕輪が本当に“転移”の力を持つかどうかは定かではないが、いずれにせよ、それは我が家に代々伝わる大切な品だ。今も、そのアリスの腕に付けているものだ。」



〈転移の腕輪〉だと?!


聞いたことがないぞ。


そもそもこのゲームで〈転移の腕輪〉なんて必要か?ないよな。だって、いつでも転移できるんだから。それにおかしい。なんで俺が付けてたこの腕輪を、領主様は〈転移の腕輪〉だと確信してるんだ?


俺はすぐに念じて、制作リストで“転移”を検索した。


当然、ヒットなし。


この世界には、〈転移の腕輪〉なんて存在していない……はずだ。


これはいい。この腕輪がただの“麻痺避けの腕輪”だと判明すれば、こっちにアドバンテージがある。


当然、エルドラーナさんや周囲の人々も、その名前を聞いた瞬間、相当に驚いていた。


「これは……もし本当に〈転移の腕輪〉が盗まれたのなら、大問題です。アリスさん、その腕輪をこちらに出していただけますか?」

「いいですよ。」


普通に外すと、ストレージに戻ってしまうので、俺はメニューの装備画面を開き、〈麻痺避けの腕輪〉を外し、ストレージから取り出して手に持つ。そして、テーブルの上に置こうとした――が。


俺は手を離す前に、わざとこう言った。


「エルドラーナさん、失礼ですが、自分は領主様たちのことを信用できません。あなたは“この国所属ではなく、中立の立場”ですから、この腕輪が本当に領主様の宝物なのか、先にご確認ください。」


「もし領主様が確認したあとで、『やっぱりこの腕輪じゃない、別の腕輪を出せ』と言い出したら――それは終わりがありません。なにせ、ワタシは盗んでいないんです。“宝物”と言われても、〈転移の腕輪〉それが何か分からない以上、出せるはずがないんです。」



「無礼な!!」



周囲の騎士の一人が、堪えきれずに声を荒げた。


無礼なのは分かってる。でも、それには理由がある。


俺の立場では、エルドラーナさんがどちらの味方かも分からない。相手はこの街の領主――権力者だ。不公平な判断が下される可能性は、十分にある。だからこそ、どんな手を使ってでも、自分の身は自分で守るしかない。


そんな領主様は、手を上げて騎士を制した。


「よい。宝物を取り戻せれば、それでいい。彼女の言う通りにしなさい。」


領主様はエルドラーナさんに頷き、彼女も意味ありげな表情で、静かに頷き返した。


……この二人、目で会話してるのか?


なんだか、最初から段取りが決まってたみたいな空気だ。


「分かりました。では、アリスさん――この腕輪、先に拝見いたします。」


俺が腕輪から手を離した瞬間、何か違和感が走った。


ほんの一瞬だけ、細い糸のような反射光が見えた気がする。


すぐにミニマップを確認するが……敵表示は相変わらず、ヤークとその危険な嫁さん、そして周囲の騎士数名のみ。


彼らは微動だにしていない。……気のせい、か?


エルドラーナさんは腕輪を手に取り、そのまま領主様たちに見せてくれた。


「では、エトワール様。こちらが宝物という腕輪で間違いありませんか?」


領主様とヤークは真剣な眼差しで腕輪を確認し、その後、二人だけで耳打ちのように会話を交わす。しばらくして、領主様が結論を口にした。


「エルドラーナ殿、間違いなく、それは我が家の宝物です。」


……予想通りの答えだ。


エルドラーナさんはこちらに向き直り、こう言った。


「アリスさん、弁明はありませんか?」

「エルドラーナさん、まずはその腕輪がどんなものか、ご自身で確認してください。自分が説明しても、どうせ信じてもらえないと思いますから。」

「つまり……〈転移の腕輪〉ではないと?」

「エルドラーナさんなら、きっとすぐに分かるはずです。」


彼女は腕輪を隅々まで確認し始めた。


宝石の中には、精霊石に似た構造があり、内部には魔法陣のようなものが刻まれているらしい。意外と時間がかかっている。途中、彼女は先日俺から買った精霊石と比較していた。


しばらくすると、彼女の表情がハッと変わる。どうやら、この腕輪がただの〈麻痺避けの腕輪〉だと分かったようだ。


さらに数分後、エルドラーナさんは腕輪をテーブルに置き、申し訳なさそうな顔で領主様に報告した。


「エトワール様、申し訳ございません。この腕輪は、貴方がおっしゃった〈転移の腕輪〉ではございません。恐らく、〈麻痺避けの腕輪〉の上位版かと思われます。」

「そ、そんなバカな!」


領主様は冷静さを失った。


……いや、ちょっと不自然だ。


貴族ともあろう者が、この程度で取り乱すだろうか?この街がここまで繁栄しているのも、彼が冷静な判断を下してきたからじゃないのか?もしかして、普段の領主業務はセバスチャンが代理でこなしてるんじゃ……?


隣のヤークも少し驚いた様子だったが、すぐに目を細め、顎ヒゲを撫でながら何かを考え始める。


そして、領主様はまるで台本通りのように、反論を口にした。


「きっと、アリスが隠しているのだ!」


はぁ……。


ついさっき「本当にこれですか」と確認しておいて、結局は王道みたいな展開になっちゃった。


このままじゃ証明できない。本物の〈転移の腕輪〉を出さない限り、ずっと付き纏うされる続けるだろう――逃げようかと考えた、その瞬間。


周囲の動きが、スローになった。



……攻撃されてる?!



セバスチャン? 違う、彼は動いていない。


あの処刑人――マロニエか?!


あの嫌な微笑みだけが浮かんでいる。後ろの騎士たちも、誰も動いていない。


いや、見えた。細い糸のような、かすかな反射光――!


糸が絡んでいる。


領主様、エルドラーナさんとセバスチャンの首、そして俺の足。出所は分からないが、すぐに斬らないと!


俺はURのダガー〈月影〉と〈星光〉を呼び出し、糸を斬りにかかる。……UR武器でも、斬った感触が重い。まるで金属線みたいだ。こんなの、ただの糸のはずがない。


一番近くにいたエルドラーナさんの首に絡んだ糸を斬り、すぐさま〈星光〉を投げて、セバスチャンの首の糸を狙う。ダガーは正確に糸を断ち切り、セバスチャンは即座に反応して武器を抜いた。


投げた〈星光〉を再召喚し、〈月影〉とともに両手に構える。領主様とヤークの間に飛び込み、最後の一本――領主様の首に絡まった糸を斬る。


続けて、自分の足に絡まっていた糸も一気に断ち切った。


攻撃判定が消え、皆の動きが正常の速度に戻った。


突然武器を抜いて領主様の隣に飛び込んだ俺に、周囲は驚いた。だが、この位置からなら見える。


糸の出所――マロニエだ。


神速のセバスチャンが俺に攻撃する前に、俺は叫んだ。


「セバスチャン様、領主様を守ってください!……ここの全員を殺す気ですか、そちらのご夫人!」


ミニマップではセバスチャンは中立。領主様も、まだ白い点のまま。


敵が俺でないと分かれば、背後からの攻撃はないはず。だからこそ、俺はマロニエに警戒を集中させた。


俺の動きに、周囲の騎士たちも何かを察したのか、次々と武器を構え、マロニエに視線を向ける。


当然のように、彼女は無関係を装った。


「あら怖い。アタシはただの商人の嫁よ? 何ができるっていうの?」

「領主様、セバスチャン様、エルドラーナさん。半透明の糸が襲ってきます、気をつけて!」


背を向けているので、彼らの反応は見えない。だが、動きが――またスローになった。


来る!


犯行がバレたと判断したのか、マロニエは半透明の糸を釘のように束ね、真正面から俺の頭めがけて撃ち出してきた。


攻撃判定中のスロー時間なのに、釘は速い!咄嗟に頭を横に逸らす。釘はかすめて通り過ぎた――が。糸使いの達人なら、釘の軌道を自在に操れるのは当然。俺の背後には、領主様がいる。


釘の次のターゲットは――領主様だ!


セバスチャンが即座に反応。釘の軌道を読み切り、斬り抜けると、領主様を抱えてソファから部屋の端へと一気に移動させた。


……待て。


釘を避けたあと、攻撃判定は消えたはず。スロー時間も終わるはずなのに――まだ終わっていない。


視線を戻すと、目の前のヤークがナイフを抜き、ゆっくりと、俺に向かって突き立ててくる。


反応は、身体が覚えている。他のゲームで鍛えた、最速の格闘技――〈ムーンキック〉を発動!


キックはヤークの顎に命中。攻撃判定が消え、周りの動きは普通に戻す。ヤークはソファごと、壁にぶっ飛んだ。



ドーーン!



「くぇ!」


ヤークのHPが一気に1/3ほど削られた。彼のレベルなら、無視しても問題なさそうだ。同時に、セバスチャンが釘攻撃の糸を斬った反動で、マロニエは一歩後退。


俺も彼らとの距離を取り、応接室の中央から離れた。


あぶねぇ……。


この距離であの釘が頭に当たってたら、即死だった。ステータスがこっちの方が上だったのは幸いだ。攻撃が遅くに見えなかったら、絶対に避けられなかった。


騎士数名はすぐに領主様を囲み、他の騎士たちは俺とマロニエの間に陣を張る。ギルド教官のアイザックはエルドラーナさんの前に立ち、守りの構えを取る。


……俺も警戒されてるのか?


どうやら糸の攻撃が見えている者は少ないらしい。仕方ない。


そのとき、エルドラーナさんが離れた位置から声を上げた。


「アリスさん、これはどういうことだ、説明して!」


まぁ、糸が見えなければ、俺の動きは異常に見えるだろう。マロニエを警戒しつつ、俺は簡潔に状況を説明した。


「領主様、先ほど、そこのご夫人が、半透明な糸で皆さんの首と、私の足を絡めていたのを見ました。それを斬っただけです。ヤークも私にナイフで刺してきたので、反撃しました。」



彼らは思わず首元に手を伸ばした。指先に触れたのは、確かに――細く、冷たい、糸のような感触。半透明で、光をわずかに反射するそれは、まさしく俺が言った通りの“糸”だった。


一瞬、場の空気が凍りついた。騎士たちも、目を見開いて互いの首元を確認し始める。


俺は嘘をついていない――それが、誰の目にも明らかになった。


領主様は、怒りを抑えきれずに声を荒げた。


「なに?!これは一体どういうことだ!ヤーク!貴様、私を裏切ったのか!」


ヤークはゆっくりと立ち上がり、顎を撫でながら答えた。


「ケホケホ……おやおや、裏切ったのは領主様の方ではないか。はぁ、エトワール。俺が気づかないとでも思ったか?」

「何をだ?」

「真面目な君が、急に奴隷を欲しがるなんて怪しすぎる。こっちの裏を探ってるのは、もうバレバレだ。

本当は、もう少し君の金を搾り取りから殺すつもりだったが……まあいい。マロニエ、ここの全員を処分しろ。」

「あら、いいの、嬉しいわ。」


ヤークの命令を受けた瞬間、マロニエの顔に悪魔のような笑みが浮かんだ。その笑みだけで、肌が粟立つような寒気が走る。そして、彼女の口からこの技名を出した。



「【血糸の舞踏】」



「あはは、ははははははっ~!」


狂気に満ちた笑い声が応接室に響き渡る。


マロニエの身体から赤黒い魔力が噴き出し、床に血のような魔法陣が浮かび上がる。彼女はその中心で、まるで舞踏会の主役のように、優雅に、しかし狂ったように踊り始めた。


両手から放たれた赤い糸は、空気を裂くように四方八方へと舞い上がり、まるで生き物のようにうねりながら、部屋中の人間を狙って絡みついていく。


技特有の赤い攻撃範囲表示が、部屋全体に広がる。床、壁、天井――すべてが赤く染まり、まるで“処刑場”のような空間に変わった。


回避は不可能。


この部屋にいる者すべてが、死の舞踏に巻き込まれる。


幸い、俺の視界では時間が引き延ばされたように見える。彼女の動きが遅くにに見えるのは、俺のステータスによるものだ。だが、油断はできない。これはボスの大技だ。


セバスチャンはレイピアを抜き、領主様に向かってくる糸を次々と切り裂いていく。エルドラーナさんは詠唱を続け、魔力を高めている。ギルドの教官は、エルドラーナさんを守りながら、赤い糸の侵入を防ぐのに精一杯だ。


「こっちに集まって!」


エルドラーナさんの呼び声が響く。


セバスチャンはすぐに領主様を連れて、彼女の側に集まった。


俺は……やっぱりやめておこう。未だに領主様たちを信用することができない。



「〈アイスウォール〉」



エルドラーナさんの前に氷の壁が出現し、部屋の一角を完全に分断した。少なくとも領主様とエルドラーナさんたちは、これで安全圏に入ったはずだ。もう領主様を守りながら戦う必要はない――それだけでも、かなり助かる。


だがその分、俺とアイスウォールの外に残された騎士たちは、赤い糸の集中攻撃を真正面から受けることになった。


攻撃はスローに見えるとはいえ、糸の数が多すぎる。俺は頭と首に向かってくる糸を斬るだけで精一杯。気づけば、腕や足にも糸が絡みついていた。


転移で逃げるか?


……いや、ダメだ。この場の皆が死んでしまえば、ヤークたちはきっとこう言う。「アリスが皆を殺して、転移で逃げた」と。


そう考えた瞬間、手足に絡まっていた糸がじわじわと締まり始めた。怪我はない代わりに、何十本ものゴム輪が腕に巻きついているような感覚。徐々に痛みが増していく。


慌ててHPを確認すると、1秒ごとに10ずつ減っていた。

数値上は大したことない――だが、この世界の“リアルさ”を考えると、油断はできない。


俺の身体にはUR装備がある。胴体も腕も、物理と魔法防御も高いだ。……でも、首だけは無防備だ。この妙にリアルな世界で、もし首を締められたらどうなる?ゲームのようにHPがゼロになるだけじゃ済まないかもしれない。即死だけは、絶対に避けたい。試す気なんて、さらさらない。


さっきは首に向かった糸を斬るので精一杯だったせいで、手足の防御が後回しになった。その隙に、糸がじわじわと絡みついてきている。ストッキングとオペラグローブは、たぶんシステム補正のおかげでまだ壊れていない。UR装備で守られているとはいえ、今はまだ怪我はない――だが、このまま放置すれば、動きが封じられるのは時間の問題だ。


「あははははーーーっ、踊りなさい~!アリス、あなただけは殺さないわ。」


未だに狂ったように死のダンスを踊り続けるマロニエが、そう叫んだ。なぜ俺だけ殺さない?計画が俺のせいでバレたからか?……まあ、今はどうでもいい。


周囲の騎士たちも、飛んでくる糸を捌くので精一杯。次第に怪我が増え、糸に手足を操られた者も出始め、味方同士で攻撃し合う者まで現れた。


このままではジリ貧だ。効果があるかはわからないが、それでも俺は、試しに短剣の剣技を使うことにした――。



〈シャドウステップ〉



これは、ただ一瞬で敵の背後に移動する初期の短剣技。だが、効果は抜群だった。


俺は糸の呪縛陣から瞬時に消え、視界は踊るマロニエの背中へと切り替わった。この技……ガチで完全に物理を無視してる。


「アリスが……消えた?! えっ、うしろ!? きゃあっ!」


俺は背後から彼女を蹴り飛ばす。


幸い、ゲームのようにスキル発動時に“鋼体”が発生するわけではない。マロニエは蹴りを受けてバランスを崩し、前方に倒れ込んだ。


その隙を逃さず、俺は彼女に馬乗りになり、ダガーを構えて両腕を狙って攻撃を加えた。糸を操るには腕の自由が必要なはず――これで封じられる。


一応、殺さないように手加減はした。それでも彼女のHPを確認すると、まさかの1/4が減っていた。やっぱりこの世界の装備、いくら高性能でもRやSR止まりか。今後もできる限りUR装備を見せないようにしよう。


血糸の舞踏が止まり、赤い糸たちは力を失って床に落ちていく。


その瞬間、俺の背後から男の声が響いた――



「〈パラライズ〉」



……誰のサポートだ!?


マロニエか?いや、違う。すぐに彼女のステータスを確認する――麻痺状態ではない。


じゃあ、パラライズのターゲットは――俺か?!


視界に映る自分のステータスを確認すると、そこにははっきりと「麻痺状態」の表示が浮かんでいた。


身体が――まったく動かない。


攻撃判定が消え、スロー時間も解除された。ステータスが高いせいか、麻痺の残り時間はたったの3秒。……だが、この状況での3秒は、致命的だ。



転移を――できない。



メニューはずっと開いている。だが、いくら念じても、転移は発動しない。まるで、何かに“封じられている”ような感覚。


セリーナ:精霊さん!ミニマップから赤い点が迫ってくる!


そして、背後から――誰か、何かがナイフで俺の心臓に刺さるような感触が走った。


セリーナ:精霊さん!!


彼女の無言の叫びが届いた瞬間、一瞬、心臓が跳ねた。まさか、刺された?麻痺状態のまま、何もできずに――?



……誰だ。


このタイミングで、俺を狙う理由がある者――まさか、まだ“敵”がいたのか?

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