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In Digital  作者: ハルミネ
2/15

- Ⅰ.覚醒

⚠️本シリーズには実際に実在しているイベントやメーカー名、名称や”アイコン”、データなどが出てきますが、フレーバーとしての使用であり、全てが完全なる架空の産物であり、何ひとつとして真実や正しいところはありません。

⚠️また特別は団体、性別、国籍、個人などを指して、差別、攻撃、貶める意図もありません。

-----------------

各自の自己責任でお読みください。

当方は読んだ方に沸いた各感情ついて責任を負いません。

全ての文章、画像、構成の転記転載禁止です。

誤字脱字は見つけ次第修正します。

ご指摘・ご意見・リクエスト等は受け取りません。

-------------------------

あくまで趣味で書いているので、できるだけ辻褄は合わせますが、

後半になってつじつまが合わなくなったり、

内容が変わったりすることもあります。

諸々御了承ください。

1.






――2004年5月19日 日本 AM3:27





ヴーーーーー・・・・ン





それは、密かに、起動音を立てた。

コンセントにつながれた、ハンドヘルトのパソコンの、画面がひとりでに明るくなった。

本来、使われていないときは、二つ折りにされるタイプのものだった。

しかし今は、開かれた状態だった。




現在の時刻は、午前2時。

不吉なことが起こる、と言われる「魔の時間帯」。

真っ暗なアパートの一室。

部屋の主は、ベッドルームのベッドの中で、深い眠りに落ちている。

真っ白な寝具に埋もれて、何も知らずに静かな寝息を立てていた。



それが、ひとりでに起動し始めたことには、毛ほども、気付いていない。






カタ、カタカタカタカタ・・・・・・




[ エラーコード804 ・・・・ ]




カタカタカタカタカタカタ・・・・・・




[認識不能 ディスクスキャンにかけますか?]



[キャンセル...........]







カタ、カタカタ、カタ、・・・・カタカタカタ・・・・・・・





[不当アクセス ウィルスの可能性 は あり_____ません・・・・]





ブー・・・・ン、カタカタカタカタ・・・・ブー・・・・ン、ブー・・・ン、、、





[ レ、  不当アク___ RE  セス    NA    不当アk  ]







・・・・・・ブッ、






しばらく機能が停止したのか、低いモーター音のみになった。


画面は、デスクトップ画像の背景に、ノイズを含んだまま、フリーズしている。





数秒、そのままだったが、ふいに画面が切り替わった。



起動間際に移る、黒一色のあの画面だ。

カーソルが、何もない場所で、点滅している。





[再起動]





・・・・ブッ





そう画面に表示した直後、それは、電源を落とした。

そして、すぐに、再起動し始めた。


勝手に。





・・・・ヴ、・・・・・・・ゥゥ・・・・・ン・・・・・








[スタート プログラムファイル 内臓サーバ接続・・・・]




ひとりでに、カーソルが動き、ソフトを自動選択する。





カタカタカタカタカタ・・・・・・・・




誰もキーボードをたたいていないのに、文字が画面に現れて、

なにかの文字列を再現した。






[サーバーに接続・・・・・成功・・・・・・正常に接続されました]






カタカタ、カタ、カタカタカタ・・・・・・ウゥ・・・・・・ン・・・・・









[検索中・・・・・・データ送信・・・・・・・2%・・・・・・15%・・・・・・・]






カチカチと音を立てながら、ソレは、確かに動いていた。


そして、大量のデータをどこかに送っていた。
















2.








――2004年5月18日 アメリカ PM13:27



空は高く、透明な青。雲ひとつなく、快晴の空だった。

傾きかけの太陽光が、全面ガラスの、その部屋に差し込んでいた。


白を貴重とした、室内には、白いリネンのソファ、ガラス板のテーブル、

床は、ほどよく磨かれたフローリング、白い壁には、大きな絵の入った額、

ユッカなどの背の高い観葉植物が、転々と置かれていた。



オシャレなショールームを思わせる、几帳面にまとめられた室内からは、

眼下にマンハッタンの街並みが広がっていた。

鈍いメタルシルバーに輝く街、一見無機質な建物のそこかしこに、

わずかながら緑地が見える。




「・・・・・ぇ、あぁ・・・・そうだね・・・・」




キッチンの方から、この部屋の主が顔を出した。

裸足に室内用のサンダルを履いて、ゆったりとした七分丈のコットンパンツに、

白の半袖Tシャツを着、右手でコードレスの受話器を持ち、耳にあて、

左手には、ミネラルウォーターのボトルを持っている。


彼の容姿は、とても印象的なもので、すらりとした長身、程よく鍛え上げられた体躯、

すこしクルクルと癖のついた金髪、アクアマリンのように透明度の高い碧眼と、

見えがよく、美しく見えるように造られた彫刻のようだった。


完成された体躯とは、裏腹に、彼の顔立ちには、まだどこか幼さが残っている。

そのアンバランスさ、あやふやさが、彼の魅力をより濃いものにしていた。





「・・・・・え、メール・・・・?・・・・あぁ、ごめん、まだ見てないんだ」




彼は、受話器を耳と肩にはさんで、背の低いガラステーブルの上に置かれていた、

彼は、その電源のついた、ラップトップのパソコンの前に座った。



パソコンは、アダプターケーブルによって、コンセントへとつながっていた。

煌々と、モニタ画面が、静かに発光している。



彼は、マウスを動かし、メーラーを起動させた。

[受信]をクリックすると、大量のメールを、読み込み始めた。


[メールの受信中]と表記されている横で、読み込んでいるメールのタイトルを、

次々に表示していく。その多くは、「迷惑」メールである。





「・・・うん、今読み込んでいるよ・・・・あ、待って、君の探すから・・・」





彼は一日に、何万通という数のメールを受信していた。

そのうち、迷惑メール(メールソフトが自動的に排除する)や、メールマガジンなどの、

”特に読まなくてもいい”ものを除いても、彼は、一日数百通のメールには、

目を通さなければならなかった。そのなかには、友人からのものも当然含まれる。




『・・・・ねぇ、パソコン買い換えればぁ?』




受話器の向こうから、声が漏れ聞こえてくる。


彼は、苦笑いを浮かべながら、「そうなんだけど・・・」と、歯切れの悪い返事をする。




『・・・・あぁ、行く暇がないかぁ・・・・』



「そうなんだよね・・・・もう5年も前の型だから、遅くてさぁ、買い換えたくても暇がね・・・」



『言ってくれれば、買ってきてあげるよ? ほら、ジャパンのアキハバラだっけ・・・・?』



「あ~、アキハバラね~」





ははは。と笑い声を上げて、彼はつかの間、モニタから目を離していた。

といっても、しばらくメールの読み込みに時間がかかる彼のパソコンの場合、

彼にとっては、”いつも”のことだった。







――”ソレ”は、とても密かに、彼のパソコンに流れ込んでいた。






ある迷惑メールのデータを改ざんし、貼付ファイルのデータを書き換え、

別の圧縮データを刷り込ませて、彼の友人からのメールになりすます。

彼のパソコンに取り込まれていく、メールの何千万、何千億もの文字データの中に、

”ソレ”の”一部”が、隠れる。




それが、彼によって、開かれるのを、じっと待っていた。







やがて、メールの読み込みが止まった。

彼は、受信フォルダに入れられた、迷惑メールを除く全てのメールのうち、

仕事友人関係のメールを、専用のフォルダに送るように、あらかじめ指定していた。




「あ、終った、今見るから、ちょっと待って」




受話器の向こうの人物に、そう言うと、彼はパソコンのモニタ画面に

視線を移し、カーソルを動かした。




カチッ




無機質な音がひとつ響いた。





メールのひとつが開封された。




「あっ」



彼は短く声をあげた。




『・・・どうかしたの?』



「いや・・・」と彼は、受話器の向こうの人物に、困惑気味に答える。



「今、・・・・カーソルが勝手に・・・・」



『え、でもそういうことって、あるよ?』



「そぅ・・・・なんだけど・・・・でも・・・」








ポーンッ



唐突に、電子音が響いた。


ブゥー・・・・ンという動作音の中、画面に警告を示すウィンドウが表示された。




[不当アクセス 予期せず終了しました 詳細を表示する キャンセル]





静かな画面に、赤い丸に黒で×印の書かれた記号の、その赤がやけに毒々しい色に映った。





そのウィンドウを閉じて、間もなく、別の窓が開いた。





[エラー604 再起動しますか 再起動]





『・・・・なに、どうかしたの・・・・?』




受話器の向こうから、心配そうな声が聞こえてきた。

彼の瞳は、画面を凝視している。


指先で、カチカチとマウスのボタンを押す。

しかし、明らかに、画面には反映されていなかった。



マウスをいくら動かしても、白い矢印のカーソルは、ピクリとも動かない。





「・・・・まずいな、ウィルスかも・・・・」



『・・・・ぇ......』




彼は、突然の事態に焦りながら、マウスを諦めて、キーボードに手を伸ばした。


カチカチと、キーをメチャクチャに叩き、反応を見る。


そのうち、薬指が、[Enter]キーを叩いた。




カチッ




画面の中の警告を示すウィンドウの、隅にあった[再起動]というボタンが、

”押された”。




――あぁ、ヤバイ・・・・・




彼は直感的に、そう思った。


しかしどうすることもできなかった。


彼のパソコンは、動作音を立てながら、再起動の体制に入った。

みるみる画面が暗くなり、最後には黒一色に変わった。

動作音が一瞬止まる。



数秒後、パソコンが低く唸り声を上げた。







真っ暗な画面に、一瞬、何かが映った、ような気がした。






――・・・顔・・・・?






カチ、







カチ、カチカチ、カチカチ、カチ、カチカチカチ・・・・・・








黒一色の画面に、白い文字がタイプされていく。

縦棒のカーソルが点滅し、それが横に動くたびに、文字が現れる。

一列打ち終わると、その下にカーソルが移動し、さらに文字列を作る。

はじめの方は、なにかのコンピュータ言語のようだった。





視線の端に、白く細身の子機が、テーブルの上に横倒しになっているのが、映った。

その奥には、透明の液体の入った、ペットボトル。

ボトルの内側には、無数の水滴がついている。




静かだった。





ポー・・・・ン・・・




小さく電子音がなった。

彼は、モニタ画面に視線を戻す。

やはり、画面は、黒い背景に白い文字が整然とならんでいた。





カーソルが点滅している箇所を見た。







[ソフト ノ インストール ヲ 開始シマス]







――ソフト・・・・・?なんのだ?





彼は、漠然と思った。


もう目の前のパソコンは、彼の知っているものではない、ということを

薄々感じ取っていた。

そして、どうしたら、いいのかすらわからない。










困惑する彼の目の前で、カーソルが動いた。

文字が一文字ずつ増えていく。













[It’s You]












「・・・・なっ?!」







――――ズキッ!!









「―――アッ!・・・・・」




激しい頭痛が、脳天を突き抜けた。

彼は短くうめき、反射的に背筋を反らし、天を仰いだ。

双眸は見開かれ、その瞳孔が開き、体を痙攣させ始めた。




「――――ぁァッッ!!」





彼は、背筋を反らせたまま、ビクビクと、硬直している。

その白い皮膚に、汗の玉が浮かび始めた。

眉間や首筋の血管が浮き、ドクドクと脈打っている。






――――ドクン、






「――ハ、  ゥ、 ア、・・・・・ウッ!!!」











続けざまに後頭部を、ザクッザクッっと、太い鉄串で突き上げられているような


耐え難い激痛。


彼の視界のあちこちが、スパークし、フラッシュのような強い光が、点滅していた。


耐え難い激痛の中、腕を動かす意識を探す。そして、こめかみのあたりを両手で覆う。









―――ズキィッ!!






「あああああああああああああああああああああああッーーーーーー!!」








ぐりん。





彼の眼球が裏返しになった。








ガターーーーッ!!





ガラステーブルの上にあるものをすべて、蹴散らし、派手な音を立て、

フローリングの上に、倒れ込んだ。

重たく鈍い音を立てて。






『・・・・ちょっと!!今の音何?! エリック!? エリック?! ねぇ!!』





床の上に転がった、受話器から、ヒステリックな声が漏れ聞こえてくる。



しかし、それに答えるものは、いなかった。



















カチ、






ガラステーブルの上のパソコン以外は。









[Eric Evans インストール 完了]









ブッ・・・・










唐突に、全ての電源が落ちた。











それっきり、室内はまた静かになった。










話自体は2000年ごろに書いたものなので、技術が古いです。

実際のデータ、名称などを使っていても、全て架空物であり、真実はありません。

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