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In Digital  作者: ハルミネ
15/15

ⅩⅣ.感染

⚠️本シリーズには実際に実在しているイベントやメーカー名、名称や”アイコン”、データなどが出てきますが、フレーバーとしての使用であり、全てが完全なる架空の産物であり、何ひとつとして真実や正しいところはありません。

⚠️また特別は団体、性別、国籍、個人などを指して、差別、攻撃、貶める意図もありません。

-----------------

各自の自己責任でお読みください。

当方は読んだ方に沸いた各感情ついて責任を負いません。

全ての文章、画像、構成の転記転載禁止です。

誤字脱字は見つけ次第修正します。

ご指摘・ご意見・リクエスト等は受け取りません。

-------------------------

あくまで趣味で書いているので、できるだけ辻褄は合わせますが、

後半になってつじつまが合わなくなったり、

内容が変わったりすることもあります。

諸々御了承ください。

じわり、と 細胞に すべりこみ。

プログラムを すり替えていく。


騙されたまま 変容していく細胞は 

やがて ”異質”となって


本体を 冒していく。



規則正しく並べられた 隊列は 乱され

すべてが 狂っていく


オセロの 白が 黒に 侵されていくように


変質していく


それで すべて 終わり。



”コト切れた”器を 棄てて

新しい器を さがす

仲間を 増やすために








1.



「…藤沢さん、ちょっと、」


ふいに、呼ばれた。

藤沢レナは、パソコンの画面から顔を上げて、

声の方を向いた。


呼ばれて「はい」と答えるのは、ただの”反射”。

答えてから、嫌な感覚が、じわりと 彼女を包む。


彼女を呼んだのは、彼女の上司―野坂真理子。


彼女がレナを呼びつけるときは、

決まってレナにとっては”面倒ごと”だ。



「・・・はい、なんでしょうか」



ああ、嫌だわ、と思ってもレナは、極力表面に出さないように努める。

野坂真理子は手に書類と白い封筒を手に持って、デスクから立ち上がり、

あご先でレナをオフィスから連れ出した。


小さなミーティングルームに入った。

机とイスが4脚。


真理子は資料と封筒をデスクの上に置くと、

ふぅ、と息を吐き、切り出した。



「・・・実は、」



ほら 来た、とレナは思った。



「来月ニューヨークで、ティム・デリクスのシークレットパーティがあるんだけど、」


と真理子は、書類をめくりながら話し始める。

ティム・デリクス―と聞いて思い出すのは、先月の銀座の件だ。

それから、あの男。


――エリック・エヴァンス、


彼はティム・デリクスの専属モデルだ。

モデルだけではなくて、事務的業務もやっているという話だが。


「…それでね、毎年『fua』編集部が

 取材依頼を申し込んでいるんだけど、」


知ってる、とレナは思った。


『fua』は芳華堂が発行している女性誌だが、

(主にコスメやファッション、ライフスタイル提案)


あまたある名のあるファッション誌に押されて、あまりブランドとのコネクションが取れないでいる。


そういうわけで、一流ブランド主催のパーティには、Fua編集部の記者は、なかなか入れていない。

日本の化粧品メーカー最大手企業の編集セクションなのに。




その中でも、”ティム・デリクス”は、もちろん一流ブランドのひとつではあるが、

そのパーティには、めったに新規ゲストを呼ばないことで有名だった。


どんなにハリウッドで、その年脚光を浴びたとしても、

友達じゃないゲストは呼ばない。



ティム・デリクスに近づけたら、成功する、というジンクスまでまことしやかにささやかれている。




――ラッキースター、または、幸運の神、




噂ではパーティに呼ぶ者を、

CEOである元洲と、DEO付の秘書ジーナ・ガーフェルドが 呼ぶゲストを選定しているとも、

彼女の眼鏡に叶うゲストのみが呼ばれるとも、言われている。


――あくまで”噂”だ



そのパーティに無謀にも、日本の、あまりパッとしない雑誌の編集部が

取材を申し込んだとしても、結果は期待できない。



「それで、ちょっと聞きたいんだけど、」



じ、と真理子がレナの顔をマジマジと見つめる。



「・・・貴方、どこで コネを得たの?」


「・・・・・・・は?」


「・・・ここ数年取材をフラれ続けている編集部に、これが届いたのよ」



と、白いはがき大の封筒を差し出した。

「開けて見てみなさい」と言われるがまま、レナは封が切られた封筒から、

白いカードを抜き出す。


――”INVITATION”


つまり”招待状”と金文字であった。

カードを開くと、下の方に”Tim Delix”とブランドロゴ

それからデザイナー、CEOのサインがあった。



「…招待者の名前見てみなさい」


と、レナがカードの上部を見て驚愕した。

”Mis Rena Fujisawa”――レナの名前が書かれている。



「・・・これ、どうして・・・・、

 私デザイナーの方にも、CEOの方とも面識は・・・」


「・・・まぁ、そうよね、」と真理子は、息をひとつついた。



それから、


「まぁ確かに?――”私は”持っているけどね、」


「ええ?!」


「…というか、面倒くさいから、黙ってたの」


「ど、どうして、ですか?」



真理子のとんでもない告白にレナは目を白黒させる。

勤めている会社の持っている編集部が取材のオファーを出し続けていることを

知っていながら黙ってた、ということになる。


真理子のところへも”招待状”は届くが、それは自宅に届くため

会社にはバレてなかった、ということだった。


簡単に言うと、面子の問題だろうとレナは思った。

招待状を持っていますよと、会社の”黒子役”の広報部の人間が、

仕事として一番近いところにいるはずの、

編集部担当記者に言っても、ただの嫌味になるからだ。



「だって、”嫌味”じゃない、」


「…確かに、」




今回編集部経由で招待状が来たとなると、

つまり”そういう”ことになる。



――ラブコールに初めて返事が来たが、

  別部署の、人物を”逆指名”で、招待する



条件付きだとしても『Fua』編集長としては御の字ともいえる。




「・・・あの、え、」


「・・・そ、編集長直々に。

 それが取材依頼の”回答”ってことね」


「え・・・私完全に恨まれますよね、」


「そうね」



そうね、かよ!とレナは内心で思う。

レナは編集部の部屋に行ったことが何度かある。


編集長は小奇麗でさっぱりとした好感の持てるオジサマだったが、

記者とおぼしき、プライドの高そうなオネエ様方は、そうではなかった。


しかも”広報部”の人間と分かると、上からものを見るような感じで、

広報部の人間を召使状態で使うような記者が多かった。


レナは あまりこの編集部の人間は 好かないと思っている。




「・・・室長は、どうして黙っていたんですか」


ふと、疑問に思い聞いてみる。

コネがあると知ったら、少し対応が違うかもしれないと思ったからだ。



「・・・・まぁ、そうね、

 ”これ”は、聞かなかったことにして、」


「・・・はい、」



真理子は、レナに顔を近づけて、



「・・・あの編集部の記者、嫌いなのよ」



と、のたまった。


「・・・・!」


レナも同じコトを考えていたので、ただ絶句した。



「・・・というわけで、藤沢さん、よろしく」


「・・・あの、記事も書くんですか?」


「あ、その件だけど、担当記者にレポートと写真を提出すればいいように話をつけてきたから」


「そ、そうですか…」



レナは、ちょっとホッとした。


この上司に仕事をバカバカ渡されて、ただでさえ忙しいところに、

どうして他の部の仕事までしなくちゃいけないんだ、という話だ。


ただレポートと写真を渡せばいい、と言っても、たぶん渡したことろで、

こんな写真が欲しかっただの、なんでこの質問をしなかったのだの、

これだから記者じゃない人間が取材に行くと、とか

あれこれ嫌味を言われるに決まっている。


それが憂鬱だったのだけど。



「まぁ、提出するレポートの項目、質問事項、写真についての細かいものを

 アッチに かなり詳細に出してもらうつもりだから、大丈夫だと思うわよ」


「・・・・はぁ、」



レナは自分の手の中に納まった白い封筒を眺める。

なぜ、この招待状が手元にあるのだろうと、考えてふと思い出した。



忙しい毎日の中で、もう薄れつつあったコトを。




――・・・レナ、



そう機械が話すようなノイズ混じりの、抑揚のない声を思い出して、

背筋が凍った。



まさか・・・――?









*****









「あ、それで、藤沢さん、もうちょっとだけ、」



自分達の上司、野坂真理子が、レナを別室に連れて行こうとするのを、

アキは、気配だけを追っていた。



ちらり、と盗み見た白い封筒は、なんだか怪しい。



――そういえば、今年もするんでしょう?



と、数週間前、ある男に囁いた。

彼はアキが何を言わんとしているのかが、わからず、首をかしげた。



――ティムデリクスのシークレットパーティよ。


――・・・ああ、


――アンタも行くんでしょう?


――もちろん、行くけど…


――”ウチ”の会社の『fua』編集部が毎回ラブコールをしてるらしいのよね。


――へぇ、でも新規ゲストは呼ばないよ?


――知ってるわよ。でも、レナをアンタのモノにしたいんでしょ?


――もちろん、


――あのコ結構頑固なくせに、環境とか世間体には流されやすいから、・・・




”自分のモノ”として連れて行けば、

嫌でも”モノ”になるわ”…―――



そう、無茶苦茶な理由をこじつけた。

本当は、編集部にいる高ビーな某記者の鼻を明かしたかっただけなのだが。



彼もレナに会う口実に良いと思ったのか、

それともTeo2000の(もしくは彼自身の)知能が単純なのか、

とにかくその無茶苦茶な理由が効いたらしかった。


彼は、ニヤリ、と不穏な笑みを浮かべて、

「やってみるよ」と答えた。


それから、その男は現れない。



彼――エリック・エヴァンスは、

完全に、Teo2000の、”A.I.”の思考に冒されてしまったのか、



彼は もう何回も、ホログラム通信でアキの部屋に来ていた。

アキは、エリックと数回会ううちに、何かの狂気に”染まっていく”のを

感じていた。


より人間らしさが欠落していき、より人工知能的な、何か冷たい感じを受けるようになっていた。




――もし、上手く行かなかったら、どうすればいい?



何かのとき、ふと彼は疑問を口にした。

”もしレナがそれでもエリックを拒んだ場合”ということ。



――そうね、力づく、かしらね、


――力づく・・・・



彼はその言葉を反芻する。

整った白い肌の横顔の、形のいい口元が、歪んだ。


伏し目がちな青い瞳が、ひときわ妖しく輝いたのを、

アキは見逃さなかった。



――もし、彼女がボクを拒むなら・・・・



エリックは つぶやくように、どこか床の上に視線を落としたまま、

暗い微笑みを浮かべた。



――洗脳(・・)すればいいね、



それから、彼はアキを見つめる。

ぞく、アキは戦慄した。


感情の欠落した無機質な視線。

人の温かみの欠片も感じられないほど、冷たい瞳だった。



それは、もし計画が失敗すれば、アキ自身も危ういと思わせた。



もし、あの”爆弾”が機能しなければ、

彼の”報復”は目に見えていた。



危ない橋、ね。とアキは、”計画”が動き出したことを悟った。







[newpage]

2.



2ヶ月前、そのウィルスは世界中にばら撒かれた。


ウィルス――といっても、人体の機能を狂わせる、

インフルエンザやエボラ、マラリアなどの類ではない。

コンピュータを狂わせる、コンピューターウィルスのこと。

当然、プログラムの一種になる。


あるPCソフト会社の作った、特定のプログラムにのみ反応するウィルスだ。



ウィルスの感染方法には、主に2種類ある。

ひとつは、メールなどに添付されて送られるもの。

もうひとつは、サイトを見た瞬間に感染する、というもの。


前者は怪しいメールの添付ファイルを開かなければPC内部に入る込むことはない。

しかし後者は、知らないうちに感染している恐れがある。

感染に気づかないまま放置すると、ある日発症する。

または個人情報が気づかないまま、流出している場合もある。



ばら撒かれたウィルスは、後者の形態だ。

それもターゲット以外のPCのディレクトリに入り込んでも、

そのまま放置しても全く害はない。

定期的にアンチウィルスソフトで、簡単に”掃除”できる。



ターゲットになったのは、ZAP社のTeo2000という機種。

ZAP社は世界で初めてのコンピュータを発売した会社だが、

2000年に、ミレニアム記念として従来と全く規格の異なるPCを発売した。

それが、Teo2000だ。


ZAP社がコンピューターを発売して以降、

色々な会社がそれぞれ独自のPCを発売したが、

基本的に規格はZAP社のものに習っている。



ソフトの充実などの点で、シェアを奪われるようになったZAP社が、

ミレニアムを記念して発売したTeo2000は、

世界で初の、A.I.を搭載したコンピューターだった。


もちろん簡単にウィルスに冒されないように、

二重三重のウィルスブロックをかけて、だ。

それも未だ脆弱点が見つかっていないほど、

完成度の高いガードがかけられている。



ただし、Teo2000の生産は、現在終了している。

唯一の欠点、他社ソフトとの互換性がないため、

他社ソフトとの互換を可能にした他社PCの購買に、

PCユーザーが動いたのである。


一昨年ZAP社は、他社と同様に互換性のあるPCを発売した。


しかしこのPCがウィルスに冒されにくいと信じて

未だにこれを使っているユーザーも少なくないため

サポートは継続されている。


ZAP社はTeo2000以降、毎年新しいPCを発売しているが、

ウィルスブロックのプログラムは、この機種のものを元に作られている。



つまり、Teo2000のガードを破ることができれば、

現在発売されているPCのガードが突破できる可能性がある、ということだ。



PCの心臓部のドアを開けるには、特殊なアクセスコードが必要だった。


エリックは――いや外見はエリックだが、思考はTeo2000自身というべきか、

――とにかく彼は、それをあっさりと、アキに渡した。



彼自身がメチャクチャに”創り出した”ホログラムのほころびに、

バグを見つけたアキが、それを指摘するや、彼は顔色を変えた。

酷く動揺し慄いた。


それを見逃さなかったアキは、悪魔のように囁いた。



私なら、それを直してあげられる、と。

そうして、彼はあっさり手渡した。



発展途上の人工知能には、”装う”ことはできても、

”嘘を疑う”ことは まだ学習していないようだった。



単純すぎるわ、とアキが、ほくそ笑んだのを、彼は知らない。



彼――Teo2000――のプログラムは、アキの元につまびらかになり、

アキはバグを直すフリをして、全データを自分のPCの隠しフォルダにコピーしていた。


それをハッカー仲間に一部を流し、

ウィルスを作る専門ハッカーが、そのウィルスを作成し、

また独自のルートを通して、ばら撒まかれた、というわけだった。



ちなみにTeo2000用のウィルスを作成したハッカーは有名な人物なのだが、その素性は全く知られていない。

存在すら怪しむものすらいる。


もちろんアキ自身にもよくわからない。

ハッカー仲間に聞いても帰ってくるのは、「よくわからない」という言葉だけだった。


けれど、かなり頭のいい人物であることだけは、皆理解していた。



昨夜、ハッカー仲間のJKとのチャットで、

ZAP社の元にTeo2000の動作不良の報告が多数寄せられるようになってきたらしい、との情報だった。

ZAP社は、その情報をまだ発表していない。


その多くは、「勝手に起動する」「勝手にどこかに通信している」というかなりオカルティックな内容や、「最近動作が重くなった」というものもある。


ここ数ヶ月の間に増えた報告なので、ウィルスが疑われているが、ZAP社ではその正体が一向につきとめられないでいるらしかった。



そしてこの情報は、内部の機密情報だという。



ZAP社はプライドにかけて、その正体を突き止めようとするだろう。

けれど恐らく…、とアキは思っていた。


たぶん、”あの”エリックのせいだろう、と。



Teo2000には、もうひとつ機能として装備されているものがあった。


Teo2000には一台にひとつ、IDがつけられており、

友達のIDを指定すると、同じPC間でファイルの共有ができる。


それも複数のIDを指定すれば、PCの容量にもよるが、

一括で、ファイルの送受信ができる、というわけだ。


ただし、音楽や映画ソフトを読み込んで見たり聴いたりすることはできても、

PC内にファイルをおくことができないようになっているので、

音楽や動画ファイルの送受信はできない。


ただしTeo2000専用のビデオカメラでのみ、

動画は取り込めるため、ホームビデオの類はディスクに焼いたり、

送ったりすることはできた。



Teo2000は、PCに初じめて、

ワイヤレスのLANカードを搭載していることもあり、

感染は容易だと思っていた。






[newpage]

3.



――ニューヨーク州マンハッタン PM6:27



彼は、ふぅ、と息を吐いて室内に入る。

複数の鍵のついたキーリングをカチャカチャ慣らしながら、

それをキッチンカウンターのフックにかける。


リビングの窓から、

薄っすらと暮れかける西の空が窓から見えた。

地上13階の窓から、西日を受けて冷たく光るビル群が見える。


遠くに銀色に光るビル群が見えた。


まるで何かのオベリスクのようでも、

墓標のようにも見えた。



エリックは、かけていたサングラスをリビングのガラステーブルの上に置くと、着ていた上着を脱ぎ捨て、白いソファの上に放った。


ガラステーブルの上に、ラップトップが置かれている。


折りたたむとA4よりも少し大きいサイズの一般にノート型と呼ばれるPC。

二つに折りたたまれたその背には、ロゴラベルがあり、ゴシック体で”Teo2000”と打たれていた。


星マークに”ZAP”と入ったロゴで有名な、ZAP社のノートPC。

Teo2000は、2000年にミレニアムを記念して発売されたPCだ。


本体の色は、”パーフェクトホワイト”――艶のある白一色だ。


このデザインは有名なデザイナーが手がけ、その年のベストデザイン大賞を受賞している。



Teo2000の起動時、本体のフェイス全体がほんのりとアイスブルーに発光する。

背の部分の白のアクリル板の下に、LEDが埋め込まれているためだ。


さらに本体のサイドにあるLANカードソケットには、LANカードが挿入されている。


そのLANカードは、同規格の”周辺機器”で、デザインも、本体と同じ人物が手がけたものだ。

もちろん色も、本体と同じ艶のあるホワイトだ。


スティック型のアンテナを立てネット世界に接続する。

データの送受信、データの書き込みのときには、Teo2000と同色のランプが点滅する。



エリックは、置いたままのPCをちらりと横目で眺めて、

その部屋を出た。





静かになった部屋に、かすかな起動音が、した。


テーブルの上に置かれたままのPCの、ランプが点灯した。

折りたたまれたままの、その隙間から光が漏れる。


本体がしばらくジジ、ジジ、と音を立てた後、

LANカードのランプが 前触れなく点灯し、

小刻みに点滅し始めた。





しばらく点滅を繰り返して、やがてそれをやめた。


閉じたままのノートの隙間から、モニタのものと思われる光は

まだ漏れている。

本体のランプも 何事もなかったかのように点灯している。



それから、かすかな起動音がして、

”きゅ、”という音とともに、隙間から漏れていた光が消えた。


本体のランプも、フェードアウトして消えた。



それきり部屋は、また静かになった。



聞こえるのは、家電の”ウゥーン・・・”という何かのモーター音だけだ。

建物の外からの音も、聞こえない。



窓の外、ビル郡が黒く染まり始め、

日がゆっくり、静かに暮れていく。





部屋の主は、まだ現れない。







※年代はあえて設定しないことに。

世界貿易センタービルは、現時点ではあることになっているけど、

だからといって倒壊以前の時間設定、というわけでもないつもりです。

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話自体は2000年ごろに書いたものなので、技術が古いです。

実際のデータ、名称などを使っていても、全て架空物であり、真実はありません。

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