初戦闘なの~
デンと玉座に座って、使者を迎える。初仕事だ。気合いが入る。
「転移者ゴトー殿の使者でございます」
二人入って来た。服装から平民だ。
使者はヒゲモジャモジャの大男と、キツネの目をしたいかにも、小知恵が回りそうな細身の男だ。
あれ、こいつら、平伏をしない。まあ、良い。我は寛容な女王だ。
「よく来たの~、どっから、来たの~?」
「おい、ガキの後ろにいるメイド、いい女だな。まだ、残っていたんだ。こっちに、来い」
「ヒィ」
無視かよ。
何か様子がおかしい。
ケビンがアンの前に出て、庇う。
「御使者殿、約定では、王都の者には、手をつけないハズだが」
「あん?だから?でないと、この銃を乱射しちゃうぞ?」
「ヒヒヒヒ、王の首、一つで許されると思うとは甘ちゃんですね」
「・・・何だと」
「え、首?」
皆、うつむいている。
首?もしかして、私の??
「ハニャ、やーなの。アンはおやつ係なの。連れてかないの!」
カチャ。
男が、背負っていた銃を取り出して、構えた。
その時、膨大な記憶が流れてくるような感覚に陥った。
異国の騎士団にいた記憶だ。
☆
『星苅小隊長に朝のあいさ~つ。【敬礼!】』
ザッ!
『【直れ!】小隊陸曹!今日の訓練計画を話しなさい』
『了解です!・・・』
・・・・・
あれは、20式5.56ミリ小銃・・・初めて実物を見た。
あれ・・・何でわかるのだろう。
「ほ~ら、撃っちゃうぞ!」
大男は威嚇して、銃口を皆に向ける。
とりあえず近くに寄る。
トコトコトコ~~
「あん?何だ。お前は?おい!おい!やめろ。お前は皆の前で処刑だぞ」
「エイ!」
銃を掴んだ。
男は、銃を振り回す。私の体は、宙に浮き。まるで、遊具に乗っているように、振り回される。遊んでいるようだ。
「フガー!」
思わず手を離しそうだが、まず。銃本体の側面、引き金付近のポッチを押して、弾倉を外す。
ポロン!
半ば宙に浮いた足で、弾倉を蹴飛ばす。
「エイなの~~」
カン!
弾倉は、男から離れた。キツネ目の男は・・・銃を持っていないな。
それにしても舐めすぎだ。謁見に武器を持ち込ますとは、
それが、我国の現状だ。
映画では、これで、弾は撃てないだろうとなるが、現実はそうは行かない。
銃の薬室には、弾が一発残っているのだ。
「フガー!」
「おい、何だ、お前は!」
必死にしがみつき。今度は、コウカンを引く。薬室を覗くが、金色の薬莢は見えない。
さすがに、弾込めはしていないか。
そして、被筒部の・・ここを強く押し込むと、押せるか?
パラ!
銃身部を覆っているカバーが取れた。
銃身部の内部が晒され、更に、規整子をネジの要領で取り。むき出しになったピストンカンを掴む。
ピストンカン、射撃で生じるガスを利用して、また、撃鉄を押し返す部品だ。だから、『自動』小銃とよばれるのだ。
「フガー!」
私の体が、離れた。そのついでに、ピストンカンも
ポロンと取れた。私も床に投げ出された。
ドタン!
「もう、撃てないの!こいつらを捕まえるのーーー!」
「はい!」
ケビンが動き。つられて、衛兵達も続く。
そして、状況を聞いた。
・・・・
「え、私が最後の王で、和議で、革命軍に、処刑される・・・」
「はい、その通りでございます。圧政により。諸候は離反、既に王都近郊のみの領土でございます」
「フガー!やーなの~」
何でも、我国は重税で民が苦しみ。転移者を中心に冒険者が決起した。
500名あまり。
おかしい。いくらなんでも、騎士団で鎮圧出来るであろう。
「それが、異世界の武器、銃を召喚して、誰もかないません」
・・・銃、20式か。正義の革命軍か、しかし・・・こういった場合。
「大変です。ゴトー軍が、王都を荒らし回っています!」
そうだ。こういった場合、圧政に立ち上がった勢力も、決して、正義ではないのだ。
旧体制よりも、ゴチャゴチャすることが多々ある。
「行くの~~~」
「お待ち下さい!危険です」
「どうせ。殺されるの~!」
「アルバート、乗せてなの~」
「ヒヒ~ン、ヒン」(乗りな。お嬢さん)
パカパカパカと、王都に向かう。
バン!バン!バン!
「ヒャハハハハ、女を寄越せ!」
「「「キャアーーー」」」
商店から物を強奪をしている。
女を追い回している。こいつら・・・
敵の勢力は、およそ50名というところだ。
何で来た。
パジェロが二台に、三トン半の幌がないタイプのトラックが、2台、
パカパカパカ!
「ヒヒ~ン!」(これ以上は、危ないぜ)
「降りるの~」
「ヒン?」(おい?)
トコトコ~
我国の騎士団がいた。
騎士団は遠巻きに見ている。皆、歯ぎしりをしている。
「状況を説明するの~」
「・・・女王陛下、私は平民騎士団のトムです。私たちは、使節団の護衛のハズですが・・・使節団は略奪を始めました」
「命令では、手を出すな・・です。銃にかないません」
「命令なの~、戦うの~、相手は銃を持ったお猿さんなの~」
「しかし、命令では・・」
「私が、最上位なの~!私が手本を見せるの~!」
荷台に木の箱がある。あれは弾薬箱、
ヨシ、
トコトコ~~
と三トン半トラックの近くまで行く。ファイヤーボールの射程内だ。
「ファイヤーボールなの~~」
コン!
小さな火の玉を燃料タンクに当てた。
三トン半トラックは、燃料タンクがむき出しだ。
このトラックは国内用。
海外派遣用に防弾処置の改造されたものではない。
ダメだ。小さすぎる。
「おい、何をやっているガキ!」
ポン!
お、開いた。
燃料タンクの給油口の蓋を開けて、
「ファイヤーボールなの~~」
ボン!
次は、発火した。
「ヒン!ヒヒ~~ン!」(おい、危ないぞ!)
アルバートにハムハムされて、私は引きづられた。
乗れと言うことだろう。
ボオオオオオオーーーーー
トラックは、燃えて、更に、
バーーーーン!
爆発をした。
「ヒエ、あれには弾があるんだ!」
「ゴトー様に、怒られる!」
「手持ちの弾しかないぞ!」
「女王陛下!お見事です」
「王都市民を避難させるの~、ボウガンと矢で戦うの~、近接戦闘は厳に禁止なの~、バリケードは有効なの!レンガは弾を通さないの~」
「「「御意!」」」
・・・・・
戦闘は、トムに任し。
パカパカパカ~~
お、ポニーって結構速いな。
王宮につき。
現状を把握だ。
「食料は、まだ、十分あります」
「金庫が、空です」
「援助、お願いするの~、各国に、急ぎ、寄付のお願いをするの~、怪鳥を使うの~」
「はい、いや、御意!」
この男、外務卿のサム、商人というだけで、外務卿に任命されたのだ。
メアリー政権は、この日をもって、機能し始めたことになる。
最後までお読み頂き有難うございました。