プロローグ
私は、ツメラギ王国の王女、10歳、メアリー、いつも、欲しがっていた。
王位継承権最下位だ。今は亡きお母様は、メイドだったらしい。
「ズルいの~、お義姉様たちだけ。良いドレスなの~、メアリーのは、出来合いなの~!宝石はガラスなの~!オモチャなの~!」
「我慢しなさい!それは、庶腹だからよ。後ろ盾の貧乏伯爵家に頼みなさい!」
「オ~ホホホ、今日は、ホロホロ鳥よ。メアリーは、お魚よね」
私は、いつも、欲しがっていた。
「ちょーだい!欲し~い!欲し~い!」
しかし、ある日。
「メアリー、このドレスあげるわ。王家の正統な姫の徴よ」
「この宝石もあげるわ。王家の長女が持つ宝石よ」
「有難うなの~」
あれ、義姉様達が優しい。
「ポニーも、乗りたがっていたわね。アルベートをあげるわ。乗って良いわ」
「有難うなの~」
お義兄様達も、
「よし、軍の指揮棒をやる」
「これは、王太子が持つ剣だ。メアリーが持っておけ。もう、王太女だな」
「有難うなの~~」
お義母様も、優しい。
「王妃の証、カチューシャをあげるわ」
お父様にいたっては、
「いっそのこと、王位をやるぞ。即位式は後でやるが良い。王冠と杖をやる」
「有難うなの~~」
「「「さあ、これに、サインをして」」」
「はいなの~」
王位継承の宣誓書だ。
「王族として品位を保ち。民を善導することを誓うの~」
お父様達は、満足して、近衛騎士団と共に去ってしまった。
これで、
「おやつ食べ放題なの~」
・・・・・・
「アン!おやつ、持ってくるの~」
「はい、フルーツが沢山残っていました。お食べ下さい」
「やったなの~~」
モグモグ~
夢にまで見たフルーツだ。
「アンも食べるの~」
「いえ、職務ですから・・・グスン」
さて、何をしよう。お父様たちは、いつも、ここに座って、偉そうに命令をしていたな。
特に、何もすることはない。
宰相に任せっきりだったな。
「宰相を呼ぶの~」
「はい、女王陛下、お呼びですか?」
「あれ、お祖父様なの~~」
お母様のお父様、つまり、私の祖父だ。
貧乏伯爵家の隠居なのに?
「今日付で宰相に任じられました」
「やったなの~、オモチャ買って欲しいの」
「・・はい、義姉妹たちのオモチャが残っています。どうぞ。ご自由に」
「ワーイ、ワーイ」
しかし、独りで遊んでもつまらない。アンはいないか?
一緒に遊んでもらおう。が、いない。
まあ、良い。女王として、王都をまわろう。
厩舎に行く。目的は、ポニーだ。
「ヒヒ~ン?」(乗るかい?)
「お願いなの~」
アルバート、白毛のポニーだ。
欲しくてたまらなかったな。
ポニーで城内を回る。城門には、衛兵たちがいた。
ガチャガチャ、
「女王陛下に頭~~中!」
ザザッ!
「こんにちはなの~、お外に出たいの~」
「・・・それは、宰相閣下にお聞き下さい」
「はいなの~~」
パカパカパカ~
宰相、どこかなと城内を回っていたら、中庭に、アンがいた。
お、騎士のケビンと一緒だ。仲が良いな。
「グスン、グスン、メアリー様がおかわいそうで、おかわいそうで」
「アン・・・いっそのこと、逃げよう」
「ダメ、最期まで、一緒にいるわ。せめて、我が儘をかなえて差し上げたいの」
何だ。ぎっちり手を握っている。
「アンを泣かしてはダメなの~」
「!これは、女王陛下、失礼しました」
「まあ、メアリー様、おやつを持ってまいりますわ」
イソイソ~
「さっき、食べたの~」
・・・・
即位式を行った。
宰相と数人の宮廷泊と、平民の騎士、数十人の寂しい即位式だ。
でも、良い。
「お祖父様、今後のスケジュールは?王都市民にお披露目と、地方に巡幸もしたいの~」
「・・それは、おい、おい、グスン、グスン」
「はにゃ、何で泣いているの?とりあえずお仕事持ってくるの~」
「はい、これより、使者と謁見です」
「どこの国なの~」
「・・・それは、転移者の使者です」
「はにゃ、珍しいの」
・・・転移者か、不思議なお土産でも持って来てくれるのか。
ワクワクして、王座に座って、待つ。
王冠と杖を持ち。威厳を保つぞ!
初仕事、気合いが入る。
「魔王討伐でもしてもらうの~?」
「いえ、ただ、お座りになっていれば・・・宜しいかと、グスン」
皆、過保護だな。まあ、仕方ない。
ここで、威厳を保とう。とその時は、思っていた。
最後までお読み頂き有難うございました。