第5話努力の時
俺は力を手に入れたぞ~!なんておふざけをしている暇なんてない状況。
自分の体を知覚できないため、変化を感じられないが相変わらず体は動かせない。
一つだけ変化があるとしたら、心臓部分から今までに感じたことのない力を感じる。
これが魔力だと思われる。
俺は、自分が怪物になってしまったのかわからないのならば、ここから出ることを優先しようと思った。
(とりあえず、魔力をどう使えばいいんだ?
これって動かせるのか?
やっぱ腕から発動とかするんか?)
魔力の使い方を試行錯誤する中で、動かすことができることが分かった。
大地に水が染み込むがごとくゆっくりとした動き。
しかし、少しずつ体を巡り全身に満遍なく魔力が巡っていく。
魔力の操作の中で、一か所に魔力を集中させられることや、巡りを早くしたり多くできることが分かった。
(この魔力を手から出してみて、今度こそ慎重に行動しよう)
岩であろう壁に魔力を通す。
しかし魔力の通りがとても悪く、突っかかりがあるような抵抗を感じる。
(魔力は通るけど通りが悪いな)
そのまま魔力を通し続けていると、徐々に倦怠感を感じ始める。
そしてそのまま意識を失った。
(何が起こったんだ?)
普通の倦怠感ではなく、抗えないような眠気により気絶するように気を失った。
これが続くようでは不味い。
原因は明らかに魔力。
(より繊細に魔力の感覚を掴まないとだめだ)
(こんなことを繰り返したらいくら時間があっても足りない)
そこからは再度の試行錯誤。
時間感覚がないためわからないが、相当な時間を要した。
それこそ年単位なんじゃないかと思えるほどに。
それによって分かったことがいくつかある。
最初はとにかく感覚を掴もうと体内を循環させた。
そしたら微量だが体から魔力が漏れ出し、少しづつ魔力を消費していることが分かった。
今では一切漏らすことなく循環させられるが、この練習に一番時間を要したのではなかろうか。
その時に、目に魔力を集め暗視のような効果と魔力を視る力を手に入れた。
また微量ずつ魔力を消費したことにより、魔力は使えば使うほど量が増えていくことが分かった。
時間はわからないが体感で使用時間が伸びている。
また魔力が増えるのは魔力が底に近づくほど増える量が多くなる。
魔力がなくなることを魔力欠乏症、底をつき気絶することを魔力限界と名付けた。
その次に、魔力を体外に出すことに注力した。
これを魔力放出と名付けた。
やっているうちに気付いたのだが、俺が土魔法だからか岩に魔力を通すのはとても辛い。
逆に背中側は玉石の下に土があるのかどんどん魔力が染み込む。
魔力を体外に放出するほうが消費量が圧倒的に多い。
そして魔力限界は感じ取れるほどに魔力が増幅する。
そこからは楽しくなってどんどん垂れ流すように魔力を使った。
(気絶しては練習の繰り返し)
(腹も減らないし、眠気も来ない)
(魔力限界で気絶できる分まだ人間っぽいか?)
岩に魔力を通すのは色々理に適っている。
操作性は上がるし、難しい分土よりも大量の魔力を使える。
俺はひたすらに練習を重ね、もはや修行になっていた。
(何年くらいたっただろうか)
感覚的に数年は立っただろう。
今では背中側の土を土魔法で消してスペースを作り、岩をも操作できる。
この空間もいつでも出れるだろう。
しかしこの年月で色々考えた。
今後のことを、未来のことを、そしてみんなのことを。
今この空間を出たとして元の世界ではさほど時間もたっていないだろう。
今ならそこまで大事にせずみんなと合流できる。
とても甘美な考えで、引き付けられる魅力がある。
(でも!それじゃダメだ!)
世界が変わったとき、あの地震より大きな災厄が起きたとき俺は。
みんなを守れる力が欲しい。
もう自分を犠牲にするんじゃなく、4人でいられるように。
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(いや~この宝石は修行に持って来いだったな)
(あの地底温泉も忘れ難い)
(マントルに近づきすぎたときは焦ったぜ)
(そろそろ頃合いだよな)
金仁郎はスキルを発動した。
現実世界のあの場へと戻ったと同時に壁のような大岩を音もなく一瞬で消し去った。
読了ありがとうございます。
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