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ANDEARTALE アンディアーテール  作者: サンサソー
第2章 立ちはだかる難敵
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第12話 遺跡の洗礼

 どこまでも落ちていく。どんだけ深いんだと叫びたいぐらいには落ちていく。罠にかかった俺とイムさんはずっとずっと落ち続けていた。


「タウロス。俺たちはどれぐらい落ちてるんだ」


『ざっと2時間……いや、もうすぐ3時間といったところだな』


「……いくらなんでも深すぎねぇか?」


 このままこの星の反対側にでも飛び出しちまうんじゃないかってぐらい落ち続けている。どうなってしまうのかと騒いでいたイムさんも、今ではグースカ寝てる始末だ。


『なんだ、そなたまだ気が付いておらんのか?今落ちておるのは無限に続く異界の穴だ。我が城の無限回廊にも使われておる魔力を用いた空間術だな』


「それを…!それを早く言え!無駄に時間を食ったじゃねぇか!」


 タウロスへ怒声をあげながら、人間への偽装のために抑えていた内なる魔力を解放する。それによって姿が魔王のものへと戻ってしまうが、こんなところに人間は居ないだろうし問題は無い。俺の魔力によって空間が軋み始め、耐えきれなくなりヒビ割れていく。


「フンッ!!」


 ダメ押しに全身から魔力のオーラを放てば、暗い穴は砕け散り風景がガラリと変わった。それと同時に床を砕きながら着地、イムさんは……あっ、寝てたから顔面着地してる。


「フガッ!?な、なになに、人間のカチコミ!?」


「着いたぞ。あー……起こしておけばよかったな、すまん」


「着いた……ああ、ようやくか。別に構わないよ?ボクはスライム魔人だからへっちゃらさ。それにしても……ずいぶんと古めかしい場所だね?」


 辺りは壁画のような壁に整備された石畳。だけど長い間放置されていたのか、だいぶ朽ちている様子だ。大昔の遺跡か何かだろう。考古学者でもいれば垂涎ものなんじゃないか。


『むぅ…?無限の空間術が仕掛けられていたのにこのような有様か。そもそもセンタス大陸でこのような古い遺跡があるなど聞いたこともない……』


「……そもそもおかしい点がある。あのマヌカンドラ坑道に、なぜここに落ちるトラップがあった?明らかにこの遺跡は坑道よりも古いものだし、坑道を掘った坑夫たちがトラップに気づかないはずも無い。このトラップに気付いていたなら閉鎖されてしかるべき、不自然が過ぎるだろ」


「そうだね。ボクもこんな遺跡を見つけたという報告は聞いたことがないから、魔物が作ったとも考えづらい。文字も魔物や人間の使うものとは違うし……」


 そうして思考に耽っていた時、イムさんの方から何かが落ちる音が聞こえた。次いで俺の腕に何かが当たる感触と凄まじい金属が擦れる音。

 やかましさに視線をやれば、そこには俺の腕に刃を潰されてしまった円形ノコギリと腰から上を両断されたイムさんの姿があった。


「やぁ、不憫属性が追加されたイムさんだよ。ボクって毎回こんな目にあってる気がするんだけれど……いつの間にこんな立ち位置になったのかな」


「知らねぇ。それよりこのノコギリどっから来た?」


『壁の穴から飛んできたな。大方、侵入者迎撃のトラップだろう』


「罠だらけか……イムさん。今のうちに元に戻―――」


 言葉を言い終わらない内に、壁はガチャンガチャンと音を立てて色んなものを表出させた。大きな刃や複数連なったボウガン、何やらこちらを向いている筒に幾つもの穴。


「―――あ〜……もう少し寝ときな」


「承知したよ」


 それらは一斉に俺たちを傷つけようと火を吹いた。だが流石の魔王ボディはその全てを捉え躱し、捌くことができる。イムさんはさらに斬られ蜂の巣にされていくが、魔力が込められていない攻撃ではそもそもダメージは無いだろう。


「いいなこれ。運動になる」


『そんなことを言っとる場合か。騒々しくてかなわん。魔力を用いた兵器が出てきては厄介だ、今のうちに一掃してしまえ』


「……そうだな。俺はまだしも、イムさんは魔力が込められた攻撃だと流石にダメージが通る」


 魔力を放ち、部屋の中心で収束させる。軽く呪文を紡げば、それは爆破属性となって威力を解放した。


 《デトネートスペル》


 爆発は連鎖し、この部屋ごとトラップを破壊し尽くしていく。イムさんも爆発に巻き込まれたが、何ら心配はいらない。イムさんは()()()()()()()()()()()()()()()()からな。


「終わり。戻っていいぞ」


「はーい」


 バラバラになっていたイムさんが液状化し、集合して元の姿に戻る。それを見届けると、俺は吹き飛んだ扉の先へと歩を進めていった。




「災難だったな。不調とかは感じるか?」


「大丈夫さ。いくら刻まれたり穿たれても―――」


 《撃ち水》


 イムさんの指先から水の弾丸が廊下の先へ放たれる。それはちょうど壁から出現した刃を粉々に粉砕した。


「―――ボクにはなんら支障はないからね。というかいい加減鬱陶しいな!仏よりも心の広いボクでもここまで罠だらけなのは面倒くささを覚えるよ」


『そうさな。明らかに居住や施設としては適しておらん。普段使いというよりも、何か特別な目的で作られたと考えるべきだろう』


 俺たちが落ちた部屋からずっと罠は作動しまくっている。よくもまあ、ここまで罠だらけにできたものだ。これを見るに何かしらの罠を作動させなくするカラクリがあるのか、はたまたこの遺跡を建造した者たちが使うためのものでは無いのか。


 だがこの様相ならば、この奥に何かを守っているようにも見て取れる。俺たちの身の危険になるようなものは今のところ出てきていないし、このまま探索を続けるか。


 そうやって罠を破壊しながら進んでいると、大きな扉が見えた。この廊下も終わりかと思っていると、不意に照明が赤く点滅しけたたましい警報が鳴り響いた。


『シンニュウシャ、第二防衛線ヘセッキン!全防衛兵器ノ制限カイジョ!第二ノ試練へ移行セヨ!』


「……防衛線?試練?何を言ってるんだ」


「ここは防衛基地みたいなものなのかもしれないね。それにしては物騒過ぎるけれど」


『……む、ベヒーモスよ。左右に気をつけろ』


 左右?そういや、何か音が聞こえるような……いや待て、この魔力反応はマズイ。


 イムさんを担ぐと天井へと跳躍し片腕を埋める。俺の足下で、幾つもの魔力光線が壁から放たれた。


「おぉ……ついに魔力兵器が出てきたんだね」


「そうだな。といっても、単なる魔力砲台ってわけじゃないらしい」


 光線が放たれた壁が音を立てながら上昇し、中から複数の巨体が姿を現した。魔力によって動くゴーレムだ。それもずいぶんと頑丈そうな奴らばかり。


「ゴーレム!凄いな、ボクが昔作ったものよりもずっと高性能だ。この遺跡を出る時に回収することにしよう」


 《撃ち水》


 水の弾丸が頭部のモノアイへと放たれる。しかし、弾丸がゴーレムたちに着弾するや否や、それは甲高い音とともにイムさんへと跳ね返された。


「えっ、ちょっ!?」


「世話のやけるな!」


 足の一薙ぎで打ち払ってやれば、間髪入れずゴーレムたちは天井にいる俺たちへとモノアイに魔力を集中させ光線を放ってきやがる。


「イムさん、クラーケンの時みたいに鏡で反射はするなよ!ゴーレムと鏡で反射しまくって大変なことになる!攻撃するなら物理だ!」


「了解!」


 天井を蹴り、放たれた光線を紙一重で躱しながらゴーレムの一体を踏み潰す。イムさんを手放しつつ裏拳を放てば、後ろにいたゴーレムを他に数体巻き込んで吹き飛ばす。


 胴体を潰したゴーレムのモノアイに魔力が集中するが、頭部を踏み潰すことでようやくゴーレムは沈黙した。


「頭を破壊すれば止まる!いちいち構うんじゃない。邪魔なやつだけ破壊して先に進むぞ!」


「はーいよっと!」


 俺は拳で頭部を殴り壊し、イムさんは両手を鋭い刃や槍に変形させ斬り貫いていく。後方に残したゴーレムたちが光線を放ってくるが、魔力を感じとれば避けるのは難しくない。


 進めば進むほど新たなトラップやゴーレムが行く手を阻むが対処は簡単。見えていた大扉を蹴り開け、中へと入った。


 壊し漏らしたゴーレムやトラップが未だにこちらへ攻撃を仕掛けようとしていたが、振り向きざまに俺は魔力の波動を手のひらから放出する。一直線だった廊下を俺の魔力の波が押し流し、こちらへ害意を持ったものは全て押し潰された。


「……ふぅ。なんとか切り抜けたみたいだな」


「新しくゴーレムやトラップが出てくる気配もないし、少し一息つけそうだね」


 やっと足を止め、そこで初めて俺は部屋を見渡した。よくわからん壁画や床はこれまでの部屋やろうかと同じ。朽ちかけてはいるが崩れそうではないし、部屋の奥にある巨大な柱も支えになっている……ん?


「イムさん、あの柱。根元の部分に何か見えないか?」


「ふむ、どれどれ……」


 巨大な柱と形容したが、それは何やら部屋全体に無数の線のようなものが伸びており、その根元には何かが埋まっているように見えた。


「……女の子?」


 小柄な少女だ。色の薄い黒髪、その一本一本が柱に繋がり、纏っている服はどこか布というよりも金属。そしてその背からは鉄の翼が生えており、頭には小さな黒鉄の王冠のようなものが載っていた。


 そこで再び警報が鳴り響く。また罠かと身構えた俺たちの前で、柱から何かを吸い上げるように髪の先端から緑色の光が少女へと流れ込んでいった。


『シンニュウシャ、第二防衛線ヲトッパ!仮装戦闘異界テンカイ。魔力供給カイシ、コレヨリ最終試練ニ移行スススルル』


 無機質な声に何やらノイズが走り始めた。部屋はどこか闘技場を思わせる広大な異界へと変わっていく。そして少女へ流れ込む光は留まるところを知らず、やがてその髪を翠緑に煌めかせ始める。


『基地内魔力残量70%……基準魔力残量ヲ下回リマシタ。魔力供給ヲヲ停止シ……基地内魔力残量40%……魔力供給ノ停、止ニ失敗シマシタ。非常貯蔵魔力ヲヲガガガ……基地内魔力残量10%……危険デスデスデスデス』





「……様子がおかしい。気を引き締めろ、何が来るかわからないぞ」


「わかってる…」



『破壊……兵、騎……オメガレ、クス……起動…マ……』



 翼からは魔力が放出し、その手には魔力で構成された鉤爪の目立つ手甲が装着される。全ての髪が柱から切り離され、少女はゆっくりと目を開けた。



「デモンズハート正常稼働。マジックメイル外装及び副次装展開。兵装順次行使制限解除。オペレーションテスト、開始」



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