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ANDEARTALE アンディアーテール  作者: サンサソー
第2章 立ちはだかる難敵
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第11話 相棒

 港町ハーボーで地図を買った俺は、イムさんとともにセンタス大陸南西に位置するマヌカンドラ帝国へと向かっていた。


 せっかくだからハーボーで少しゆっくりしたかったんだが、街は予定の船が到着しないことに騒然としていてくつろげられる雰囲気ではなかったから断念した。あの船が港町に着いたら否が応でも俺たちに注目が当たるし、早めに離れたのは正解だったろう。


 さて、なぜマヌカンドラ帝国に向かうのかだが理由は単純。地図上での最短距離では、マヌカンドラ帝国へは深い坑道跡を通るからだ。

 タウロスが敗れる前は魔物も出没していた坑道跡はかなり入り組んでおり、もしかすればまだ生き残りが息を潜めているかもしれないと考えたからだ。


「スラー。クラーケンについては許容したけど、次は何があっても食べたりはしないでくれよ。このままじゃ本当に軍の再編も何もあったものじゃない」


「もちろんわかっているさ。ボクは感情をコントロールすることに関しては人一倍長けているからね」


「どの口が言ってんだ。料理一口台無しにされてあれだけブチ切れてただろ」


「あれは人間たちが身近に居すぎてストレスが溜まっていたんだ。正体を隠して仲良しこよしするなんて思い出しただけでも吐き気がする」


 俺が魔物と人が共に暮らす世界を作るって言ったのを忘れたのかコイツ。よく堂々と人間への嫌悪を吐き出せるよ、ある意味才能だろもう。


「いやぁ、それほどでもあるよ」


「だからナチュラルに思考を読まないでって言ってるよね?」


「まあ受け入れるつもりではあるし、努力はするよ。人と魔物の居住地をしっかり分けて検問とかを設けてくれるならね」


 イムさんでこれだ。他の魔物たちはどうなのか想像もつかない。さらに苛烈か、はたまたそれにとどまらず絶対殺す思考に染まっているか……やっていけるか少し不安になってきたよ。


『悪いが話はそこで切り上げよ。目的の入口が見えたぞ』


 タウロスの言葉でようやっと前に見えてきたものに気が付いた。世界一長く深い坑道、マヌカンドラ坑道。篝火が照らすほの暗い洞窟が口を開けていた。


「坑道なら任せてくれ。水気を辿って外までの道を割り出すなんて朝飯前だからね」


「ほぉ……旅を始める時は色々と不安だったしなんだかんだ言っていたけれど、やっぱりお前さんなかなか有能なんだな」


「よ…よしてくれ。そうやって素直に褒められるとさすがのボクも恥ずかしいんだ……」


 皮肉も混じらせたつもりだったんだが流石はイムさん。言葉を額縁通りに受け取るのは生粋のバカの所業。


「ボクはカバじゃないと何度言ったら…!」


 バカが何か言ってるけど無視だ無視。背中に引っ付いて叩いてくるイムさんを尻目に、俺は坑道へと足を踏み入れた。








「迷った」


「だろうと思ったよクソが!」


 イムさんの先導に従って坑道内を進みはや数十分。いや、もう1時間になるかもしれない。地図を買った時に帝国までの道のりを聞くと、店主はマヌカンドラ坑道は20分程度で抜けられると言っていた。

 松明を辿ればいいと説明を受けたが、イムさんはやれこっちの方が近道だと抜かしてどんどん奥へと進んで行った。その結果、俺たちは現在地もわからない状態に陥った。


 別に坑道内を探索するとは言ったが、迷子になるのは別問題だ。 現在地がわからなければ既に探した道を潰せずただ無駄に時間を浪費するだけになってしまう。


「なんで自信満々だったんだ!いったいなんの理由があった!?」


「いやぁ……洞窟だと中は乾燥してるし、出口に近い方が水分が多いからすぐに辿り着けると思ったんだけど……地下水脈でもあるのか、奥に行けば行くほど水分が多いみたいなんだよね」


「だからってズンズン奥へ進むか!?気付いたなら早めに行って欲しかったぞ…!」


「いやぁ……上手くいかないものだね」


 少し沈んだ様子で頭を搔くイムさん。そのらしくない様子に、俺の怒りも少し収まり頭が冷えてきた。


「……すまん。熱くなりすぎた」


「ボクがヘマしてしまったから、ベヒー……ベヘモットが謝ることじゃないよ。ボクは配下と一緒に魔王城へ行く命令を突っぱねて、無理を言って着いてきてるんだし。少しは役に立てる所を…見せたかったんだけど……」


 その言葉に、何も言えなくなった。イムさんがここまで思い詰めていたとは。タウロスがイムさんは溜め込んで爆発するタイプと言っていた意味がわかったよ。


「……俺の思い違いならいいが、別にお前さんが足を引っ張っているとは露ほどにも思ってはいないからな」


「えっ……?」




「イムさんに振り回されることは何度もあったが、それと同じぐらい救われてる」


「俺の不注意で魔王の姿をそのままにしていた時も目撃者の処理をしてくれた。クラーケンの時も、イムさんがいなければ船ごとクラーケンも人々も全てを沈める羽目になっていただろうさ。あの時はイムさんが出ていなければ本気で消すつもりだったからな」


「そして今回、俺だけでは辿り着くことも困難な坑道の深層までイムさんのおかげで来ることができている。つまりは……まぁ、あれだ。お前さんが思っているほど迷惑だなんて思ってはいないし、お前さんが思っている以上に俺はイムさんのことを評価してるんだ」


「だから……ありがとう。俺に着いてきてくれて」




「……は、はは。そうかそうか!なら良いんだ!まあボクがベヒーモス様の役に立っていることなどわかってはいたがね?そうやって面と向かって言われると照れてしまうよ。はははっ!」


 上機嫌になったイムさんがぶんぶんと大きく手を振って歩き出す。ん……なんだタウロス?イムさんの照れ隠し?ははは、キャラじゃないと言っておきながら可愛いところあるじゃないか。


 そうやって少々ほっこりしていると、イムさんの足元で小さな音がした。何かスイッチか何かを押したような軽い音。いや、『押したような』じゃないな。よくよく見れば、イムさんの足下が四角く凹んでいる。どこからどう見ても何かのスイッチだ。


「………………」

「………………」


 沈黙した俺たちの足元がパカリと開き、穴ができた。しばし空中で止まった俺は、イムさんの顔を見た。


「……テヘッ☆」


「『テヘッ☆』じゃねぇよてめぇ!見直した俺の感動を返せえええ!!」


 罠の魔力による拘束か、力を出す前に凄まじい力で穴へと引っ張られる。俺たちは仲良く下へと落ちていくのだった。



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