9話
9話
典子は苦悩の日々を送っていた。信二とは結婚できない自分の運命を呪っていた。信二もまた「何故会えないのか何故、会って抱きしめられないのかを自分で自分を苦しめていた」だが、それが何なのかは信二には解らないが典子にはそれは痛いほどに分っていた。だから信二とは距離を置こうと典子は考えていた。そんな時、典子とは突然メールのやり取りが出来なくなって信二は慌てたが典子には「仕方ないわ」と、何かを諦めていた。
だが信二は典子を諦めることが出来ずに何度もメールを送り続けたが「既読」されたことは一度も無かった。そして典子の居る部署にもドンドンと新人が入って来ては典子の居場所は部屋の奥へと移動させられた。そしていよいよ「移動か!」と、言う時に典子に世話を見て貰った古株たちが典子を庇いそして助けた。典子は何とか古株のお陰でポジションはキープしたが、新人が入ってくればくるほどに典子の居場所がなくなるのは目に見えて明らかだった。
典子を想う古株たちは幹部に対しても典子を助けて欲しいと懇願した、幹部達も典子の居場所を何度も考えていたが重役達には典子の存在の大きさは誰も解らなかった。「所詮、事務は事務だろう!」の重役の言葉は余りにも大きすぎて典子のことを知る下っ端重役も大物重役にはたてつけなかったようだ。だが管理職たちは典子の存在を重役たちにわかってもらおうと必死に説得したが、何故に事務のことで管理職が口を挟むのか誰も解らなかった。