領主の宝
昔、共に冒険をした二人の男が酒場で再会を祝う。しかし何やら街が騒がしいが、、、。
ちょっとした出来事を会話形式で送るコメディタッチの物語。
大都市フェザーバードの東地区、とある酒場にて
「久しぶりだな、ルイス」
「ラッシュ、お前も元気そうでよかったよ。旅から別れてもう2年だ」
「南の様子はどうだ?新しい村の開拓は進んでんのか?」
「いや、遅れているよ。南に広がっている未開の森から見たこともないモンスターが襲ってくるんだが、生物学者が研究のために生け捕りにしろって無茶をいうのでね。そのたびに伐採が中断されている」
「木材は重要だしな。トロウルを一人で倒した凄腕ルイスが、今は木こりとは笑えるぞ」
「その話は二度と口にしないでくれ。嘘がバレたら開拓副司令官をクビにされてしまう」
「まあまあ。それより、大人数で木を切り倒してたら森の精霊が黙っちゃいないだろ?」
「そこはフェザーバードから派遣された高官シャーマンと現地のエルフが上手く交渉してるから問題ない。」
「お前もフェザーバードのためとはいえ頑張るなあ。あ、ねーちゃん、ビールお代わり三つ。え、二人しかいないのに?うるさいな、じゃ四つにして!」
「ところでラッシュ、街が妙に騒がしいな。ここへ来るまで守衛や指揮官みたいな奴らが走り回ってたぞ。何かあったのか、脱走か?」
「そんなとこかも知れんね」
「嫌に無関心な答えだな。まさか、シーフのお前が関わってるんじゃないだろう?」
「さすが2年も一緒に冒険した仲だ。もしそうなら俺を突き出すか?」
「まず聞かせろラッシュ。」
「その前に、、、お、来た来た。もう一度再会に乾杯だ」
☆★☆
「2日前の夜、ここで一人で飲んでたんだよ。そしたら奥に座ってた冒険者っぽい野郎が、酔っ払って周りの客に絡みだしてよ。『俺はどんな鍵でも開けられる』とか『お前らも知ってる悪党を暗殺した』とか」
「なんだお前の同業者じゃないか。放っておけば店の主人が守衛を呼ぶだろ。牢屋で看守が朝まで聴いてくれるさ」
「ところがそいつは、『旧フェザーバードの旗を遺跡から見つけたのは俺だ』と言い出しやがった」
「それは聞き捨てならない話だぞ」
「だろ?大変な思いで探し出したのは、俺らのパーティだぞ。さすがに腹が立って、『オイ、そこの酔っ払い、ちょっと待て!』と言って近づいた」
「それでケンカになったのか?」
「俺もだいぶ酔ってたからな、お互い罵倒合戦が始まっちまって。結果的に、じゃどっちがこのフェザーバードの街で価値のある物を盗めるか対決しよう、ってなったんだ」
「お前は酒癖さえ悪くなければ、ギルドの一つでも任せてもらえる器なんだが、、、」
「死ぬほど聴いたよ、その言葉」
「結局、街が騒がしいのは、お前らのつまらない意地の張り合いが起こしたものというわけか。それでお前は負けて捕まった所を、脱走してここにいるのか?俺と会う約束のために」
「バカ、このラッシュ様が負けるわけないだろ!今ごろ失敗したあのアホの身柄を捜索してんのさ」
「何かもっと詳しいことを知っているようだな。教えろよ、面白そうだ」
「俺は奴が何を盗ろうとしていたか知ってたんだ、情報屋を使ってな。どうせケンカの後、別の酒場で言いふらすだろうと思ってたら見事に当たったよ」
「何を盗もうとしていたんだ?」
「奴は旧フェザーバードの旗を盗む気だったんだ。今は領主の屋敷隣の宝物庫にある」
「それでお前は、あいつより先にその旗を盗んでやろうと思ったわけだ」
「そんな分かりやすい事するかよ。この俺が真正面からあんなホラ吹き野郎と勝負するわけがないじゃないか」
「じゃ、天才ラッシュ様は、一体どうなさったのですか?」
「ちょっと罠を仕掛けたんだ」
「罠?」
「ああ。勝手に予告状を出しておいた。いつ何時に旗を盗みに参上するって書いて」
「よく思い付くな、そんな事」
「ま、失敗して今頃は逃げ回ってる所だろうけど、じきに捕まるだろ。ここの守衛は意外と優秀だから」
「結局何もせずに勝ったわけだ」
「おいおい、俺だって一応プライドがあるぞ。ちゃんと価値のある物を盗ってきたさ」
「あの旗より価値のある物なんてこの街にあるのか?まさか領主の娘の恋心なんて、歯の浮くような事言わないよな?」
「枕だよ」
「枕?」
「そう、領主の枕」
「領主の枕なんてそんな価値があるのか?装飾が凄いとか?」
「あれは魔法の枕でね。不眠症の領主はあれがないと寝られないんだと。ルイス、人は何日寝なくても大丈夫か知りたくないか?」
「バカ、すぐに返してこい!お前はこの街を滅ぼしたいのか!」
「冗談だよ、盗んでないさ。ルイスも価値のある物を盗られないように気をつけろよ。例えば恋人のシャルとかな。今は街の守衛長で頑張ってるぞ」
「まさに盗られないように迎えに来たんだよ。随分待たせたから」
「予告状出しておこうか?」
「余計なことはするな!」
了




