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空が愛したのはインドラジット  作者: 殿様
第一章
7/10

傭兵〜7柱〜


 俺とマスターはランケが使用した神技(ゴッデスアーツ)により空中へと放り出された。先程まで自分達の居た洞窟の入り口が真下にギリギリ見える高さだ。


 洞窟内から脱出するのに必要なのは分かる。だが、この高さはマスターが飛んだよりも更に上空ではないだろうか……。


「マスタぁぁぁぁぁぁ」


「お? ゲイルの奴、飛んだことねぇのか。仕方ねぇな、マジクス」


「あわわわわわ! ゲイルさぁぁん、待ってくださぁぁい!!」


 空中に有り得ないものが現れる。湾曲した片刃の剣が(みね)の部分をこちらに向けて大量に発生し、くっ付き合う。1つの絨毯(じゅうたん)のようになり、スピードをつけた俺の身体を優しく受け止める。


 マスターはゆっくりと降りてきたランケとは対照的に剣がその質量を支えきれない程勢いをつけてバキバキと落ちていった。


「ゲイルさん、大丈夫ですか!?」


「ランケさん、マスターのおかげで俺は無事ですが……」


「ボルドーさん? ボルドーさんなら大気圏スレスレに飛ばされてもかすり傷で帰ってきたので多分問題ありません」


 びっくり人間……いや、やはりモンスターの方がしっくりくる。


 ランケと話していると大量の剣が今度は階段のようになった。


「おーい! 早く降りてこーい!」


 一段下に降りるごとに剣が消えていく。追われているわけでもないのに恐怖を覚えるのは何故だろうか。


 地に足をつけるとマスターが何かに喋りかけていた。


「……大体なんでアルジラ程度を今までどうにか出来なかったんだ。あ? 一定の範囲内に入ると気取(けど)られるから? あー、分かった分かった、また今度な」


「局長ですか?」


「そうだ……面倒だがパヨカカムイの安全を確認後、キナスツ達と合流。そんでランケを里に捨てたら帰ってこいだとよ」


「捨てるって……僕の扱い……」


 帰り道、木々の影に隠れて何者かが着いてくる。どうやら賊の残党が俺達のことを狙っているようだ。

 マスターは既に気付いている。見通しの良い開けた場所、そこまで来たところでマスターは隠れている者達に問いかける。


「俺様が5数える間に出て来やがれ。はい、いーち。はい、さーん。はい、ごー」


「いや、それなら3で良くないか!?」


 アルジラのアジトに転がっていた身体と比べて小さな猫人(キャルティア)が次々と表れる。


 姿を表した猫人(キャルティア)達の中から青色髪の男が前に出る。他の猫人(キャルティア)同様小柄だが身のこなしからアルジラに近い強敵だと分かる。


「俺はアルジラ様の盗賊団副頭(ふくがしら)フラグラ! お前達がアジトを潰した侵入者どもだな!!」


「……俺様らが潰したってことになんのか、ゲイル?」


「元々潰すつもりでしたし、あまり変わらないのでは?」


 それを聞いたフラグラと名乗った猫人(キャルティア)は剣を抜き放った。他の者もそれに続いて剣を抜く。


「っざけやがって!! お前達、生きて返すな!」


「ありきたりな台詞(セリフ)だなったく。ゲイル、お前あっちの4匹相手にしろ。俺様は青毛玉と残りの7匹相手にする」


「分かりました。矢は要りますか?」


 マスターは首を横に振ると片刃剣を空中に20本程発生させた。


 フラグラは首元の赤い宝石が付いたペンダントを握りしめた。


「俺のマジクスは中位の炎神『カークス』! 剣を生み出すだけのマジクスなどには負けん!」


 炎で出来た2本の腕がフラグラの背中から現れた。腕は周りに炎を撒き散らし、雪を物ともせず木々を燃やしていく。


「俺様のコレ『カタナ』っつうんだがなぁ」


「知らんなぁ!!」


 一方、俺はランケを背に4人の猫人(キャルティア)に囲まれた。武器は全員同じブロードソード、マジクスは持って無さそうだ。


「ランケさん、ご自身の身は守れますか?」


「僕は遥か上空にと、飛んで戦闘が終わったらお、降りて来ますね」


 有り難い。こう言ってはなんだがランケは戦闘向きではない。


 ランケの姿が一瞬で消え、それを見た猫人(キャルティア)達は包囲を縮めてくる。

 1番近くに居る猫人(キャルティア)が剣を振り上げ、襲いかかってきた。


 俺は静かに攻撃を(かわ)し、次の攻撃も難無く避ける。


「いくぞ」


 俺は敵の死角に入り続け、視界から消える。


「なっ!? 何処行きやがった!?」


「ぐわぁっ!?」


「野郎、一体何処から攻撃してやがる!?」


 まずは1人。逃げ足の速そうな奴は先に潰しておく。


「ぎゃあ!!」


「がふっ!!」


「な、なんなんだよコレ……うぐっ!」


「あんたで終わりだ。アルジラやヴェルナならともかくあんたらぐらいなら俺でも十二分だな……マスターの加勢には、行く必要もない、か」


 俺が戦闘を終わらせるとマスターは既に終わっていた。マジクスが発生させたカタナはマスターの周りをぐるりと囲って輪を作っており、ところどころ歯抜けになっている。


 フラグラ達を縛り上げ、俺がロープの先を引く。それを見ていたランケが近くに降り立った。


「よしよし、どうせならもう片方も捕まえたかったがまぁいい」


 もう片方? これで全員じゃないのか……。


「ユピちゃんも居ねぇし、さっさと殺すぞゲイル」


「こいつらは懸賞金掛かってないんですか?」


「フラグラ以外は手間しかかからねぇ。それに……こいつらは盗賊だ。ゲイル、前にも言ったがもしこういう時に躊躇(ちゅうちょ)すれば大事なもんを失うと思え。綺麗事でやっていけるほど大星は甘くねぇ」


 ……俺は選んだ、強くなる事を。傭兵としてやっていくことを。


 だから、謝らない。姉さんもユピも失うわけにはいかない。


「さよならだ」


 俺は傭兵としてマスターに着いていく。大星になって今度こそ……どちらも守る。



「あ! み、見えて来ましたよ!」


「おら! キリキリ歩け!」


「マスター、俺が里の兵に引き渡して来ますからランケさん連れてパヨカカムイさんに会って来てください」


 姉さんとユピに速く会いたくなり、俺は急いでフラグラを門で番をしていた兵に渡した。

 兵は驚きで絶句したが俺の傭兵メンバーカードとフラグラの手配書を確認し、すぐに対応してくれた。


 狭く雪で毎年閉じるこの里にある宿は1つだけ、場所は簡単に見つかった。宿に泊まっているのも1グループだけらしく、呼んで貰った。


「ゲイル〜!! おかえりぃ!」


「ゲイル、おかえりなさい。着いて行けなくてごめんなさいね」


「ユピ、姉さん、ただいま。マスターと一緒では俺もほとんど役に立たないことは分かってましたから問題ありません」


 実際、俺がしたのは帰り道にちょっと戦闘をしただけだ。里に来た襲撃者もほとんど眠らせたとはいえ、大事なところでは望みの薄いこの神石(マジクス)(すが)った。


 ぐーきゅるるる……。


 考えるのは後にして腹の虫を騒がせているユピと食事をすることにしよう。


 俺達は宿の隣にある店に入った。古い看板だったが香ばしい匂いに釣られてしまった。


「イランカラプテ! あ、ごめんなさい! いらっしゃいませぇ!」


「3人、そっちに座ってもいいですか?」


「どうぞどうぞ! お水とメニュー持って来ますね!」


「え? ちょっと!?」


 給仕の女性は素早く店の奥へと消えた。


 この店、ぼったくりの店だったのか……まぁ、飲み物はどちらにせよ頼む事になるからいい。それに姉さんも凄い表情になってるから恐らくすぐ出ることになるだろう。

 金の準備だけしとくか。


「お待たせしましたー! こちらお水とメニューです!」


「あの、私達水は頼んでないのだけど」


「あー、なるほどぉ。ゴルドイーストでは何処の店でもお水はサービスで出されるものなんですよ! だから遠慮なく言って頂ければおかわりも注がせて頂きます!」


 ぐっ、知らなかった。マスターも居ないから教えてくれる人もいないし。

 それにしても水が無料(タダ)なんて国があるなんて……ケリドの街なら破産するだろうなぁ。


「ゲイル、アルジラは捕まえれた?」


「一応戦利品は持って帰ってきたよ。だけど……」


「そう、その先は言わなくてもいいよ」


 アルジラがどうなったか伝わったらしい。ユピは不思議そうな顔をしてるが運ばれてきた『シト』という玉のようなものに黄金色のソースがかかった食べ物に目が移った。


「はーい、こちらご注文頂きましたお腹に溜まる甘味(かんみ)でーす!」


「ゲイルゲイル! この良い匂いのソース何!?」


「うふふ、これはゴルドイーストの各地で作られてる醤油(しょうゆ)、という調味料をベースにしたソースをシトに絡めた『みたらし団子』というものです!」


 うん、美味い! 外で()いだのはこれの匂いだったのか! 

 ユピも気に入ったのか姉さんに負けない勢いで皿を空ける。2人を見ているとこっちまで食欲が湧いてくる。


 呑気(のんき)なことを考えていると子供が1人店に押し入って来た。手にはナイフが握られている。


「うわぁぁぁあ! か、金を出せぇ! お前達も持ってるものを全部置いていけぇ!!」


「おっと」


 俺は子供を組み伏せ、深く被っているボロボロのフードを剥ぎ取った。

 顔には切り傷が深く刻まれており、あちこちがアザだらけだ。


「ど、どうしましたお客様!」


「何でもない、大丈夫」


 何故こんなところにこの子が……亜人が居るのか分からないが、ひとまず耳を隠して店を出よう。


「姉さん、一旦宿に戻ろう」


「ん、分かったよゲイル。ユピ、行こうか」


「え!? えぇぇぇ」



 さて、宿に連れて来たのはいいとして、どうするか。姉さんもユピも亜人に対して偏見があるわけじゃない。

 マスターは……分からない。だからマスターに相談するのは出来るだけ遅らせよう。


 俺は姉さんにユピを連れて宿の前でマスターが来たら足止めして貰うようにした。


「これでとりあえずよし。ゆっくり事情を聞く準備が出来たぞ」


「お前、おいらなんか捕まえて何をさせたいんだ」


「何かさせたいわけじゃない。君の名前は?」


「おいらはユール・サカキバラ、西の国『フールウエスト』出身だ。こっちには闇市で売られる奴隷として運ばれて来て、アルジラって盗賊に道中襲われた時に隙を見て逃げ出した」


 ということは両親はとっくに死んだと考えるのが妥当かな。ファミリーネームがサカキバラということはどちらかがゴルドイースト出身。


懇切丁寧(こんせつていねい)な説明のおかげで質問がかなり減った。で、強盗の真似事をしたのは当然金が無いからとして、金はフールウエストに帰るための資金といったところか?」


「半分正解……もう半分は闇市で売られた妹を助けるためだ」


 帰ったらゾトーバスに行くつもりだったが……イチマルイチプラントとやらに行っても800人以上もの子供達がどうなってるかは分からない。準備も必要だ。


 よし、こうするか。


「ユール、俺を雇わないか?」





チキサニ(1066)

フルネーム・チキサニカムイ

種族・神

中位神


身長171cm

体重

0kg(通常時)

890127kg(戦闘時)


好きな食べ物

プリン


嫌いな食べ物

鶏肉

豚肉

牛肉

魚肉

鹿肉

猪肉

桜肉

兎肉

etc


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