完成
花火は時間にしたら一五分ほど上がっていた。でもそれは一瞬の用も感じたし、永遠にも感じた。隣の駄菓子屋をチラ見すると、泣いていた。俺はそっと頭を撫でた。
「今年もお祭りできたよ。おばあちゃん」
そう呟き終わると、頭から俺の手をすごい勢いで払いのけ
「たまやー」
と叫んだ。
町の小さな祭りも、見る角度が変わるだけでこんなにも壮大な物語に見えてくる。
「駄菓子屋よ」
「何よ」
「いや、葉子さん」
「なっ!?何よ」
「ありがとう」
それだけ言って、恥ずかしいのを隠すために佐山のほうへ逃げた。
町の人も帰路につき、祭りが終わった。テントの解体を手伝いながら
「おい記者よ。お前いつまでこっちにいられるんだ?」
居酒屋が聞いてきた。
「うーん、今日をもって記事は校了になるので、あとは本社の指示待ちですかね。それまでは事務処理したりって感じで特にここでやることはなくってしまうので」
「そうだよなー。仕事でここにいるんだもんなあ。寂しいよ俺は」
そういってもらえると心から嬉しい。豆腐屋も
「もうこの街に腰据えたらいいじゃろ」
とおっしゃる。なかなかそうもいかないですよ。すると、居酒屋は
「よし!送別会だ!記者の送別会するぞ!」
また動きがわかったら連絡しますねーと伝えるも
「いや、別に気にせず普通に飲みに来いよ。大事な仲間だろう!」
大声で言った。こんな熱い仲間、少年誌でしかできないと思ってたよ。
そんな話のさなか、誰からフラッシュを焚いた。
「郵便屋くん。何の記念写真だい?」
そう聞くと
「僕、この街の本を書こうと思いまして。その資料集めです」
ほお、と目を丸くしていると
「郵便屋さん、西野さんにだいぶあこがれているに見たいですよ」
そう牧野さんがつぶやいた。いい記者になれそうだな。
「まーたあしたから普通の駄菓子屋に戻るのかー。かーっ。やる気でね~」
駄菓子屋がぼそぼそいう。
「まあまた遊びに行くから元気出せよ。な?」
じっとこっちをにらんで「チッ」と舌打ちをした。なんなんだ。
こうして祭りは大成功で大団円と相成った。この記事もこれにて仕上がる。完成である。