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新人君  作者: くらいいんぐ
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最終話 退職

新人君は、みんなの前に立っていた。


「この度は、お世話になりました。家庭の事情で、今日を持って退職することになりました。」


退職のあいさつだった。

いつものように淡々と話をする。


「一時、ハッピータイムをしていた時がありましたが、その時の自分の気持ちを大切にして下さい。きっとそれが組織を作る基盤になると思います。」


最後に本当にお世話になりましたと言い、あいさつは終わった。


新人君がいなくなった後、新人君のパソコンのデータを整理している人が、大きな声を上げた。

「おい、来てみろよ。」


そこには、ハッピータイムの発言をいつ、誰が、何を言ったというのが記録されていた。

「あ、あいつ・・・」


「たぶん彼は、見た目よりずっと、会社の事を想っていたんじゃないかな・・・」


「惜しい人材だったよ・・・」


すると、談話室のテレビをつけろ!と部長が開発部に叫びながら入ってきた。

テレビをつけると、あの新人君が会見を受けていた。


大手○○企業の社長が病気で倒れ、入院している間、急きょ息子の新人君が、代理社長をするという会見だった。


記者は言う。

「その若さで経営というものがわかりますか?大丈夫ですか?」


すると新人君は、

「大丈夫です。弊社は組織が出来ていますから。それぞれの役割がそれぞれにあるので、私はそれを調整するだけです。」


「組織というと、お父様(前社長)は、垣根のない世代という事をよくおっしゃっていましたが、それは理解されていますか?」


「はい、それは熟知しております。

まず、アナログ世代、デジタル世代や、団塊の世代、ゆとり世代とか言われますが、それは会社にとって弊害にはなりません。どちらかというと、それを区別し始めることが弊害となり、組織を崩します。」


「難しいですね。どういうことですか?」


「要するに、垣根を作っているのは自分たちで、実は〇〇世代なんてないんです。同じ会社に入ったなら、同じ目標に向かうだけです。苦しみを共にし、同じ方向を向いてればいいんです。上の者は、ただその方向を良い方向に向けてあげるだけなんです。」


「良い方向というのは?」


「ポジティブに考えることです。些細な事でも良いことだと感じる人間は、ポジティブに考えることができます。個がポジティブになれば、組織はおのずとポジティブな方向を向きます。ただそれだけです。」


会見は続いたが、テレビを見ていた部長を初め、社員たちは、ハッとさせられた。


ある社員が言いだした。

「ハッピータイム、またやってみませんか?」


「そうだな。」


みんな声をそろえてハッピータイムの復活を希望した。


それからだった。

このIT会社は急成長を遂げる。


そこには、社員間での垣根がなかった。そう、立派な組織ができていた。


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