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新人君  作者: くらいいんぐ
2/7

第二話 プチ更年期障害

「おい、新人!これコピーとっておけ。」

「は、はい」

上司から指示されたのは、同期の新人Aさんだった。

ちょっとおっとりした女の子だった。

期待の新人君は、ちょっと目をやり、すぐに自分の仕事に集中した。

Aさんは、コピー機の前で機械と格闘していた。

ピーッ ガガッ プープー

コピー機が悲鳴を上げている。

明らかにコピーの仕方を知らないのがわかった。

上司が見かねて、Aさんのもとに来た。

「おまえ、コピーの仕方もわからないのか!」

「は、初めてで・・・」

「もういい!向こうへ行け!時間の無駄だ!」

Aさんは、しょんぼりしながら自分の席に戻った。

すると、コピーしているその上司のもとに、これまた新人の女の子Bさんがスタスタと歩いてきた。

「そんな言い方ないんじゃないんですか!」

「は?なんだお前。それが上司に対する言い方か!」

「上司だったら、もっと寛容なはずです。上司らしくして下さい。」

このBさんは、気の強い子で、Aさんをかばっているつもりらしい。

上司の目つきが変わる。完全に怒っていた。

「お、おまえ・・・」

その時だった。

すぐさま、期待の新人君が駆け寄った。

「すみません!」

「なんだおまえ!!」

上司は怒鳴り散らす。

「申し訳ございません。実はこの子、ちょっと調子が悪いんです。」

「なんだ、調子悪いって!そんなことが社会で通用するか!」

「あれなんです、あれ。女の子特有の。最近症状がひどいんです。」

「なんだ、まさか生理なんて理由にしないよな?」

「いえ、違うんです。更年期障害なんです。」

「更年期障害?まだ20代前半だろ。ふざけたことを言うな!」

「いえ、プチ更年期障害といい、ホルモンバランスが悪いんです。それで自制できなくて・・・」

「私そんなんじゃ・・・」

Bさんが口を挟みそうになったので、Bさんを遮るように上司とBさんの間に、強引に割って入り、新人君はこう言った。

「最近の医学で分かってきたことです。更年期障害のようにホルモンバランスが崩れ、急にヒステリックになってしまうんです。それを俗語でプチ更年期障害と言います。女性特有の事みたいです。」

「なんなんだ、こいつらは。頭おかしいんじゃねえか。」

上司はそれでも納得いかない様子だった。

それを見ていた部長が声をかけてきた。

「〇〇君、まあそうカッカすることもないだろう。たかが新人の言ってる事だ。」

「しかし部長・・・」

その間に、新人君は、Bさんを引っ張り席につくように促した。

Bさんは、新人君をにらみつけたが、新人君は小さな声でこう言った。


「あとでレアチーズ大福おごるから。今回はおさめて、ねっ。」

それはBさんの好きなセブンイレブンの人気スイーツだった。

Bさんは、もう勘弁してよみたいな顔つきで席に戻った。

怒っていた上司は、部長になだめられて、わかりましたと言っていた。

新人君は、何事もなかったかのように席につき、仕事をしていた。

部長は感じていた。

新人と中堅の争いはこんなものじゃない。これは序章に過ぎないと。

しかし、新人君はあくまでも冷静だった。

それはこんなの当たり前みたいな姿勢だった。

社内はキーボードを叩く音がこだましている。

カタカタカタ・・・

話をするような雰囲気はなく、緊迫した嫌な感じの空気がそこには流れていた。

新人君が現場に就いて2ヶ月目の事だった。


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