あなたの勝ちですわ
本日二回目、
よろしくお願いします
黒いオーラに包まれた地下室に、闇色の髪を持つ美少年が全身を凍らすような微笑みをしながら縮まっている私を見下ろす。
え、どうしてですか?私なにか変な事言いました!?
「おい!」
「は、はい」
その声は地より低く、寒くて、全身の怒りが爆発寸前だとすぐ分かるようだ。
「じゃあお前は俺より年下という事だな。」
「え、ああ、はい、そうですわね。」
まあ、たぶんそうですが、いや、どうしてです?
「ふ、それでは俺の言うことぐらい聞けるよな。」
ええええ、まさかの縦社会ですか?!
いや、確かにこの世界では権力者が物を言いますけど、
「その、それは......」
「そうだよな」
「......はい、そうですね。」
「ふ、宜しい、じゃあやってもらいたい事がある。
まあ、お前に拒否権など無いけどな。」
うう、確かに家柄でも総合的な歳でも勝てるものはありませんですもの、一様聞いておきましょう、
ですが、
「あ、あの、それって?」
まさか物騒な事ではないですよね......
「俺のこと翔さんって呼べ。」
「へ?」
「なんだそのアホズラ、」
「いや、ですから、」
「二人の時と俺を呼び出すときにだけだ。」
「は、はあ。あともう遅いので、今日はこのぐらいで、」
「それとだ、」
まだなにかあるんですか?
「なんだ、不満か?」
「いいえ、そのまだなにかありますか?できれば簡単で物騒な事ではないといいんですけど......」
「ふ、お前にとって少し難しいが、これしか方法がないと思え。」
「え?なんのことです?」
「はあ、おまえの脳みそはサイコロ以下だな。」
「いや、どうゆうことですか?」
手短く説明して頂くと幸いです。
「まあ、簡単に言うとだ、本物の悪役令嬢になれ。」
そして彼は私にある物を渡してた。
え、これって、え?いや、え?えええええええええええええええええ!!!!!!!!!
満月の月が家に帰り、太陽の日差しが闇に差し始めて数時間経つ今、私はやっと魔王、ではなく翔さんに開放され、19年間住んでたメリエード伯爵邸の門の前についた。
ここで言っておきますが、私はただ翔さんに例のものに関しての大雑把な説明されながら一晩中こっぴどく叱られ、リチェルの奪還作戦A,B,Cを自慢話みたいに聞かされただけです。
って私ったら誰に説明してるんだか。
「はあ、やっぱり夜更かしはあまり良くありませんね。」
今日は少しだけ寝坊しましょう。
「へえ~~夜更かししてたんだ~~」
ギクッ
声の方向へと向くとそこには無表情に立っていたエリティと前髪で表情が見えないレオール王子がいた。
え?今の時間でしたら使用人達が起きる時間で他の人は寝てるはずなのに。しかもどうしてこの組み合わせなのです?
「ふ、本当にセレナが言っていた通りのふしだらな女だ。」
いや、その、ええっと......
「姉さん、嘘だよね?ケレンドル公爵令嬢が言ってた通り毎晩平民や金持ちの人に自分を売ってないよね。」
あ、あの性悪女!
ですが、多分翔さんの言う通り、私がやり返さないと本当に......いや、ですが、
「最後に言いたいことはあるか?」
「違うよね、絶対に違うよね!」
「。。。。。。。。。。。」
「なんだ、弁解する気でもないのか?それとも証拠を突きつけられて何とも言えないのか?」
「何かの間違いだよね、姉さんはそういう人ではないですよね!」
いや、その、どこかの天使と悪魔ですか!?
ですが私だってもう黙っていられませんわ!
「シクっ、シクっ......」
「ね、ねえさん?!」
「お、おい、泣いてるのか?」
レオールの手が私に触れようとしたその時、私は彼の手を振り払い、親の仇みたいに彼を睨む。
「私に何が言えますの?どうせあなたもお兄様と同様、彼女に惹かれて私のことなんかどうでもいいですもの!!」
「いや、その、エモリア、」
「いいですわ、私達、もう終わりましょう、ですが外では私があなたに婚約破棄を申し込んだと。それと、私はレオール様を諦めることに努力しますから、もうケレンドル公爵令嬢に変な噂を流さないでと言ってください。」
「ねえさん、それはどういう?」
「フフ、エリティ、あなたでも知っているはずですわ。私が学園に通ったときからずうっと私の名誉を壊す悪質な噂が流れていますと。」
「は、それは、」
「ええ、確かに以前はありませんでした。」
「レオール様、それはどうゆうことかお解りになられます?」
「な、まさかお前、セレナが流した嘘だと言いたいのか?」
「ええ、それ以外ありえません。」
「お前、」
「いや!!!!!触らないで!!!!!!」
私たちの騒ぎで使用人達や近所の早起きなお偉いさんたちまでここに集まり、レオールは王子身分があるため「一旦中へ入ろう」と提案する。
まあ、嫌ですわ、こんな悪役になれるチャンス滅多にないですもの。
「どうして、どうしてなんですの?!」
「姉さん?」
「エモリア、だから中へ」
「もう嫌ですわ、私があなたと婚約してますのに10歳から他のご令嬢の隣に居られて、婚約者の私を置いてきぼりにして。」
「いや、それは、」
「わかってます、ケレンドル公爵令嬢とあなたは......ですが、ですが!!」
レオールの顔が青くなる同時に周りがザワザワと騒ぎ始めた。
まあ、当たり前と言えば当たり前ですわね。
ここは王都内では静かで有名な別荘地区、屋敷の外で少しだけでも大声を出しましたらその内容がほぼ他の屋敷にも聞こえる。
しかもここに集まっている使用人や近所の早起きなお偉いさんたちは絶対に他の人に言い、そして絶対にゴシップ好きなマダムの耳に行く。
それが私の狙いですわ。
そう、先程翔さんが書いてくれた巻物には悪役令嬢になる為の106の心得が書いており、その中に教えてもらった悪役令嬢になる為の心得その1
真の悪役令嬢は敵と味方両方の次の手を考え、周りの高感度を得ながら敵を地獄に落とす。
まあ、本当に悪役そのものですわね。
ですがそのゴシップ好きなマダムが騒げば騒ぐほどに性悪女とレオールの関係が怪しまれ、私への同情が深まる。
はあ、ほんと、この手口を考えた翔さんだけと敵になりたくない。
「もう、いやですわ!レオール様、もし私になにかご不満があれば言ってください!!ケレンドル公爵令嬢に変な噂をわざと流さなくても私はあなたと婚約破棄しますので!!ですから、ですから、もう......」
頬に流れる雫は雨のように止まらず、私は膝を崩した。
同時に周りは一段と騒がしくなり、私の目的へと近づいていく。
これが終わりなんて思わないでください、もう少し、もう少し私が味わった噂の力をご堪能してくださいませ。
同時に私は今回の件に対してレオール達に同情や謝罪の気持ちなんてまっぴらございません、先にやってきなのはあなたたちの方ですから、これはただの正当防衛ですわ。
まあ、この騒ぎで朝帰りの事を忘れていただけたら幸いですけど......
「何事だ、」
まあ、性悪女を愛す愚か者2号、ではなく、
「お兄様。」
あ、確かお母様とお父様は昨日の夜から領地に行くとかなんとか、でも、彼らを傷つけなくて良かったです。
「はあ、またお前か、立て、このメリエード伯爵家の恥が。」
私は彼らの声が聞こえないふりをし、下を向いてただただ泣く。
「姉さん、やはり兄さんの言う通りに立ち上がったら、そうじゃないと兄様がまた......」
エリティの言葉で周りが一旦静かになり、そしてざわつきが一段と増す。
「な、エリボア・メリエード、お前は何を?」
Oh nice, my 弟よ、ですがどこでそんな悪役技を......
あ、多分私からですわね。
はあ、私も今回はここで引かないと後々面倒なことになりますからね。
しかも翔さんに教えられた悪役令嬢になる心得19にも「物事は度をわきまえてからやること」と書いてありましたし。
ですが、もうちょっとだけ、
「エリティ、もう、いいです。あなたもわかっておりますでしょう、ケレンドル公爵令嬢はお兄様にも愛されてるのが。ですからケレンドル公爵令嬢に対して悪く言えません、彼女は多分私達の未来のお姉さまになるか、第三王子妃に......
いいえ、なんでもありませんですわ、中へ入りましょう、エリティ」
沸騰したザワメキを後にして、私はエリティの手を握り屋敷へ戻る。
セレナ、確かにあなたは頭が良い。でもあなたは性格が悪くて欲望の為に他人をドン底へと貶めた、いいえ、現在でも未来でも貶めている。
ですが私だって、他の悪役令嬢たちだって、あなたに貶められた人たちだって幸せになりたい。
私は自分の部屋に戻り、窓から差し込む光を見ながら決心する、
はあ、今回は翔さん、あなたの勝ちですわ。
ですから私、エモリア・メリエードはあなたが提案したように最後まで悪役令嬢になりきります、そして、私は......
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