光と影
よろしくお願いします
「ね、姉さんどうして?」
「まあエモリア、お腹空いたでしょう。ほら旦那様、お昼にしましょう。」
「リチェルはどこですか?」
やめて、もうこれ以上怒らせないで
「リチェルは......実家に帰り「まだ私を騙すのです?!!」」
「エモリア......?」
まるで屋敷の中の時間が全て止まったようにすべての人が止まり、同時に屋敷が一瞬不自然な沈黙に襲われた。
そう、それは数時間前、まだレントルス公爵邸の裏山にいた時に遡る
“ポチッ”
“ダアアアア”
機械の音と共に壁に飾ってたボードが半回転し、新しいボードが現れた。
「あ......嘘、これ......なんで?」
新しいボードに書いていたのはすべての悪役令嬢に関わる新聞や週刊誌の記事、だけど私が注目したのは一番新しく貼られていた私に関する記事だった。
だがその記事は侮辱的な文書となっており、一緒につけられた写真には私が何度も寒い息を飲むほどに傷つけられたリチェルが乗っていた。
「読み終わったか?」
「嘘、ですよ、ね、これってただのデタラメですよね!」
「いいや、俺が調べたところ本当だ。お前がお前の兄さんに叩かれ実家で療養中確かに第三王子と主人公率いる未完成な逆ハーメンバー共がお前の家に訪ねた。そして、お前のメイドは確かに主人公をにお茶を淹れた。」
「ですが、どうして不敬罪に?」
「ハーブティーだ。」
「え?」
「俺が知る限りでは、お前のメイドは主人公達にフルーツティーを淹れた。だがどこの誰かがお前は毎朝ハーブティーを飲んでると言ってしまったのだ。」
ああ、私のせいだ。
私はリチェルが淹れたハーブティーがものすっごく好きで、何度もリチェルに「私以外の人には淹れないで」と冗談半分に言った。
だから、
「リチェルは私の言葉を守り、主人公達に淹れるのを拒んだのね。」
「ああ、」
「でもメイドが主あるじの言葉を守る、これがどうして不敬罪なのですか?この国の法律にも不敬罪に関しては厳しいのでは?」
「確かにハーブティーを頼んだのが第三王子だったら不敬罪にならなかったのだろう。」
「え、それじゃあ、」
「ああ、頼んだのは主人公の方だ、そして拒まれた第三王子達は自分への侮辱だと思い不敬罪にした。」
「でも!」
「第三王子は王族だ、そしてそこに何人も次世代を背負う若者たちがいたら、誰もが名誉と評価がドン底な伯爵令嬢のメイドよりそっちを信じるだろう。」
「。。。。。。。。。」
何も言い返さなかった、いや、何も言い返せなかった。
だって彼が言うすべてが正論で、元はといえば私がそんな冗談半分に何度も言ったから............
......あれ?でもなんかおかしい。
確か私があのクソゲーを買う前に何度もキャラクターブックやプロフィールを読んだはず。でもそこには......
「あ、あの、確かセレナさんは」
「ようやく気ついたか。そうだ、全種類ではないが主人公はハーブアレルギーだ。しかも一歩間違えると喘息で窒息死になる程のだ。」
「でも、セレナさんは、」
「ああ、確か9歳の時に一度発症し、それっきりだ。
ちなみにその時はまだ第三王子とはまだ知り合ってないから多分攻略者達全員は知らないと思う。」
「......嘘、でしょう?お母様たちは?」
「。。。。。。。。。」
「本当の事を言ってください。」
「......分かった。これは俺が知る限りの事だ、多少の誤解はあるかもしれない。お前の弟はその時不在で、俺はなんにも言えない。
だがお前の父さんと母さんは権力に怯え、すぐにメイドを突き飛ばした。」
「。。。。。」
「まあ、あのメイドが処刑されるまで時間がある、今は冷静になってあの主人公と戦える作戦を練る......」
“タタタタタ”
「っておい!今は早すぎる、行くな!!」
“バン!!”
よく考えてみたら違和感がありまくりだったはず。
例えば意識が失う前に一緒にお洋服を買う約束をしてたのに目が覚めたら執事から一旦実家へ帰ったと言われたとか、それなのにハーブティーの味にちょっと違和感を感じるがリチェルが淹れたのとすこく似てる事や。
多分リチェルが最後時間を振り絞って他の人に教えたんでしょう。
もう、どうして?どうしてこんなドン底にいる崖っぷちな私にこんな......
思えば家族でさえちょっと引いた私の噂もリチェルだけが聞き流し、なにごとがないように私の傍で笑ってくれた。
確かに最初はメイドだから当たり前だと思っていた。だけど家の中で他のメイド達に変な目で見られたり、背後で笑われた時彼女だけが立ち上がり、私に知られないように対抗していた。
そう、彼女は私のメイドだけじゃなく、私の大切な友人なのだ。
もう、どうして今になって気づくのでしょう?
彼が言った通りに私はまだ一人じゃない。だから、私は、絶対に......
温かい太陽の光が窓を通して私を包む。だけど誰かに聞いたことがある、光が強ければ強いほど影は自分の存在を強めてくるのだと。
そう、今の私はこの太陽の光に作られたくっきりとした地味な影。
多分この影は誰の目にも入らないのでしょう、だけど影は、私は、自分の大切な人が傷けられてるのにただ知らぬ顔で生きる事は断じてできない。
だから、
「あの記事は、あの事件は本当なのですか?」
例え親に向かってこういう態度はいけないとは思っても、最終的に絶縁されようとも、もしお父様達はあっち側に行くのならば私は最後まであなた達と戦いましょう。
そう、最終的に私が、一人になったとしても。
「ああ、そうだ。」
「旦那様!」
「なあに、いずれにせよバレる事だ。」
「それじゃあ、本当に」
「そうだ、リチェルはお前の言う事を守ったから不敬罪になったのだ。」
「だけどお父様!」
「仕方なかったのだ!これはメリエード伯爵家の未来の為なのだ、分かってくれ。」
「。。。。。。。。。」
「姉さん......」
「ふふ、ふふふふふふふふ、フハハハハハハ!」
「姉さん!?」
「エモリア!?」
ふふふ、そうか、そうだったんだ。つい先日まで彼らを百パー信じてた私がバカみたい!
そっか、「メリエード伯爵家の未来の為」に私の大切な友人が処刑間近になるんだ。
それじゃあ私は?ただ時間の問題だけど私は十中八九貴族席から外れるのよ。
その時あなた達はどうするの?
今回みたいに、「メリエード伯爵家の未来の為」に私と縁を切るの?
多分、そうなるのでしょう......
「何事だ、騒がしいぞ。」
だいぶ遅く現れた深い青色の髪をした男は不機嫌な顔をしながらリビングに入り、そして私を見た瞬間にその不機嫌さは一段と増した。
多分この人は私が一晩中屋敷にいなかったことでさえ知らないのでしょう。
私はあなたの実の妹なのに、あの女より何年も一緒にいたのに。
なんか胸が、痛い。
「はあ、お前か。騒がしいから部屋へ戻れ。」
第一声はこれですか、本当に嫌われたのですね。
もし、私が死に陥る境地にいて、その境地の中でまた嵌められたら、
「あなたは家族を信じるのですか、それとも......」
「なんの事だ?」
いや、答えはもう出ています。
もう、とっくに。
「いいえ、エリボア・メリエード様。公務中に騒がしくて申し訳ございませんでした。」
「な、」
「姉さん......」
「では私はこれで、ごきげんよう。」
「待って、姉さん!」
そして私は彼らに背を向いて、19年間私が住んでいた冷たい部屋に行こうとしたその瞬間
「あれ、エルドア?それと皆さんここでどうしたのです?」
と聞いたはずがないのに憎たらしい声が聞こえた。
私は顔を声の方向へと向き、そこで目にしたのは自分をドン底へと突き落としたストロベリーレッドの髪色だった。
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