これはストーカー行為ではなく親切な見守りです ペドルア視点中編
前編では少し至らなかった点がありましたので修正しました。
宜しくお願いします
「翔さん」
誰だ、僕を呼んでいるのは!
あれ、僕を?
そんなバカな、僕はレントルス公爵家長男ペドルア・レントルスだ、それに、
「翔さん!」
その人は、馬鹿な!
エモリア嬢、どうしてあなたが?
それに、どうして僕を「翔さん」と、
「翔さん」
「翔さん!」
「翔さん......」
「翔さん??」
「翔さん!?」
うう、頭が痛い、これは一体?
思い出せない、何か、何か大事な事を忘れているような......
「翔さん......ごめんなさい、約束、守れなかった、それなのに、私は......」
約束?
約束とは何だ、「しょうさん」と何があった!?
っく、何がどうなっているんだ、エモリア嬢は何を知ってるのだ??
あ、待て!エモリア嬢行くな、待ってくれ!!
「ルア様、......ペドルア様、」
「。。。。。。。。」
ああ、家のメイドか、確か最近良く眠れなかったから一旦実家へ療養させてもらったのでしたね。
ま、それはどうでもいいが、
あの婚約披露パーティーから何日が経ったか覚えていない。だけど僕はその夜からずっとこの様な夢を見て、気づいたら今のように布団やシーツが汗でひどく濡らされながら枕は涙で染まっている。
だが、僕は、
「野暮用がある、着替えを準備してくれ。」
「畏まりました、少々お待ちくださいさせ。」
そうだ、一刻も早くエモリア嬢が言っていた「しょうさん」を探さなければ。
ったくどんだけ手間かからせんだよあのドアホ......
......え?僕、さっきなんて?
いや、ありえない、どうして僕があんな汚い言葉を喋っていたのですか?
まさか、いや、でも、男は自分の過ちを素直に認めなければいけません。
そう、今回は僕の不始末です、後でレントルス公爵家の家訓を百回手移します。
ですが、その前に「しょうさん」を探さなくては!
はあ、困った事に「しょうさん」に関する情報はレントルス公爵家直属の暗部を使っても何も出てこなかった。
ま、ついでだったから隣国の貴族名簿も見てみたんだが「しょうさん」と言うなの貴族はいなかった。
おかしい、もう数日探しても情報の欠片すら掴めていないなんて。
まさかエモリア嬢偽りの名前を?いいや、その様には見えない、それでは「翔さん」がエモリア嬢を騙したのか?
それに、暗部からの報告書に何箇所も不可解な点があった、
一つ、エモリア嬢はセレナを虐めてなかったらしい。
まあ僕が察していた通り何かの誤解があったのかもしれないな。
でもエモリア嬢はどうしていつもセレナがイジメにあった現場にいたんだ?それもほぼ毎回。
だが現状ではエモリア嬢が無実だという証拠がない、これは一旦様子見するしかないな。
一つ、以前僕は暗部全体を使ってエモリア嬢を探しに行ったらしい。
いつの事だ?全然覚えていない。
そう言えば以前の記憶が朦朧としていたような、それに、どうしてだろう、僕は誰を家で療養させたような、ないような。
そしてもう一つ、ここ最近僕以外にエモリア嬢の事を嗅ぎ回っている奴がいるらしい。
ま、もしそれはただのご令嬢やご令息ならあまり驚かないが、だがエモリア嬢を嗅ぎ回っているのは他でもなく彼女の今の婚約者、レオール・ナタリソーテ・レナレード第三王子だ。
だが確かエモリア嬢によるとこの二人はもうとっくに冷めきっているはずでは?
まさか、これはエモリア嬢自身のお考えで、本当は......
っく、何だ、このイライラは、どうして僕はこんなに怒っているのでしょう?
“コンコン”
「入れ。」
「ペドルア様、お召し物の支度が終わりました。」
「ああ、今行く。」
おっと、危なかったです。
もしこのメイドがもう少し遅く入ってきたら僕は確実に地下室にある鎖を持ってきたのでしょう。
勿論、その鎖を使ってエモリア嬢がいる所に乗り込みます。
ちなみに僕はこの数日間「しょうさん」を探してる間に少しだけエモリア嬢を見守っていました。
言っておきます、僕はただ見守っていただけです、けしてストーカー行為ではありませんよ、ただの親切な見守りです。
ですがそのお陰で僕はエモリア嬢の交友関係が大体分かった。
だからもう一度言っておく、これは親切な見守りで、交友関係を洗い出すのはその交友関係を見極めながら「しょうさん」を見つけ出すためだ。
そして今日、エモリア嬢は日がまだ登ってなかった頃からセナルデン侯爵邸から出て、貧しい商人たちが乗る馬車を何度も乗り換えてベネザル男爵邸に行った。
フフ、その小賢しさと努力は称賛するべき事です、ですがレントルス公爵家直属の暗部は国王陛下直属の暗部と匹敵するとも言われているので、あの婚約者がいながら他の婚約者達がいる女と毎日のように出かけている男の個人直属暗部が見失ってもレントルス公爵家の暗部は朝飯前だ。
ま、最終的にこのミッションに参加した暗部の人たちの息が物凄く上がっていたけれど......
茜色の夕日は地面にいるすべての人や物を自分の色に染め、僕はお目当てのご令嬢が来るのを待っている。そして僕の後ろから何度目の黄色い悲鳴が鳴った。
「キャー!レントルス公爵令息よ、今日は本当に良き一日で!」
「ええ、そうですわ、まさか普段お目にかからないレントルス公爵令息がせいぜい伯爵階級の貴族が来るか来ないかの貧相な街にお出ますなんて!」
「ああ、レントルス公爵令息、なんという威厳の強さなのでしょう?ですがレントルス公爵はもうここで数時間立ってらっしゃってるようですわ、誰か待っているのでしょうか?」
煩い、本当にウザい小娘たちだ。しかも僕がどこで誰を待っていようが関係ないだろうが。
だが、そうだな、もうそろそろつくだろう。
「ボボ」
「はい」
「きゃ!さっきまで誰もいなかったのに、どうしたのですの?」
「まあ、まさかレントルス公爵家直属の暗部でしょうか!?」
「まさか、それはただの噂では?」
はいはい説明ありがとうございました。
ったく、そうだよ、この人はボボ・べデリア、10代の女の子に見えるが本当は20代前半の男だ。
ちなみに彼は何度も任務で女装した経験があるらしい、何だ、ああ、男の娘って言うやつか?
「ペドルア様、」
「ああ、エモリア嬢は煩いのはお好きじゃないと思うから彼女が来るまでこの街を静寂に包ませろ。」
「御意」
数分後、街は静寂に包まれ、そしてその静寂はとある平凡な顔持つ少女を迎えるまでと続いた......
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