お前は一人じゃない
よろしくお願いします
ペドルア?翔?さんに連れられて、私はレントルス家の付近にある裏山に着た。
いや、付近って言っても馬車で30分ぐらい掛かってるからね。
「あ、あの、」
「大丈夫、ここもレントルス家の私有地だからな。」
さ、さすが三大公爵家の一つで隣国でも権力が握ってるとも言われるレントルス一家、スケールがデカイ!
「ま、そんなに驚くな。ほら、来い。」
案内されたのはその裏山の森にポツンと立ってるなんの特徴もない一軒家。そして中にはいったら予想通り暗く、少しだけホコリが積もっていた。
やがて私はその家の地下室へと連られ、そこには前世での某ニュース番組が使ってたみたいなニュースボードが部屋の中で一番目立つ所に堂々と飾っている。
「そこで何ボケッとしてるんだ、速くこっちへこい。」
私は彼の言う通りにニュースボードの前にある椅子に座る同時に部屋の明かりがパッと明るくなった。
そしてやっとボードに書かれた文字が見えて、私は冷たい息を吸った。
「そうだ、これがここ数年で俺がかき集めたこの世界と人物関係の資料だ。」
「いや、見れば分かりますが、まさかこんなに細かく書いてるとは......」
「ったくいちいち驚くな、あと重点的にココを読んでみろ。」
彼が指したのはセレナさんとお兄様、そしてレオール王子のプロフィールと人間関係図、どもどうしてかお兄様とセレナさんの間にはハートが描かれてるのにレオール王子は三角に包まれてる。
「あの、先生!」
「先に聞け、質問は後だ。」
うう、じゃあ後にしましょう。
「俺たちが最初に注目しなきゃいけない点は主人公とお前の兄さんの関係だ。
まあ、お前が察してるようにお前の兄さんは主人公にべた惚れだ、しかもこの状態ならばすぐにハッピーエンドに行けるだろう。」
「ですがセレナさんは逆ハーエンド狙いだと」
「そこだ、そこが問題なんだ。ほら第三王子のプロフィールを見ろ」
「......私よりレオール様の事知ってるんですね。」
「ったく嫉妬するな、だが俺も主人公の小賢しさに騙されたかもな。」
え?それって......
「ゲームの中でもこの世界でも主人公と第三王子は幼馴染だ。多分主人公は計算してたのだろう、もし悪役令嬢やゲームに出てくる重要な人物が彼女と同じく転生者だったらと。」
「え、それじゃあ、」
「まあ、俺も前世の風の噂で聞いたんだがお前の兄さんは他の攻略者と比べたら登場してくるキャラが少なく、多分お前以外に他のルートに出てくるキャラはいないと思うぞ。」
「え、う、そ、兄様は......」
「お前の兄さんとこうして仲良くなることで転生者の可能性があるキャラクター達に一安心させ、そして警戒心が超薄くなったところで一気に全員落とす。」
「でもあの時私は確かに数名の攻略者に校舎裏に呼ばれましたよ。」
「ああ、だから俺は騙されたと気づいたんだ。不本意だが。」
「え」
「ったく考えてみろ、お前は主人公が攻略者に媚びを売るような真似を間近で見たことあるか?あの主人公が学校で何人の男と付き合ってる噂聞いたことあるか?」
「噂は聞いたことありませんが、レオール王子の教室に行ったことは覚えています。」
「だからだろう、レオールと主人公は幼馴染だ。だからみんなはてっきり兄弟みたいな存在だと思い放置していたのだ。」
「。。。。。」
「はあ、言っておくがアイツラは10歳の頃からほぼ毎日会っているモノホンの幼馴染だ。まあ、その、」
「わかっていますわ、セレナさんはそのような手口を使い他の攻略者達を裏で落としたのですね。」
「悲しくないのか?」
「いいえ、あの時、セレナさんがレオール様の教室へいらっしゃった時から薄々気づいていました、レオール様の隣は私ではないのだと、私はレオール様の眼中にいないのだと。ですからもういいのです、続けてください。」
「......分かった、主人公がこうなってしまった「あ!先生!」」
「ったくなんだ!」
「あの、私の記憶が正しければ貴方が、ペドルア・レントルス様が幼馴染枠に入るのでは?」
「......負けたんだ。」
「は?」
「俺は前世の記憶を得てからずっと主人公を避け続けてた。だがどうしてか街とかパーティーとかで会い、気づいたら俺は主人公に幼馴染扱いされたんだ。」
「それって......」
「ああ、ゲームの強制力だ。ま、言っておくがゲームの中でも主人公と攻略者全員は小さい頃から会ってる。ただ俺と一番長く知り合って、第三王子と一番仲がいいだけだ。」
えええ、どんだけクソゲーなの、幼馴染設定使いすぎでしょう!
「それとだ」
“ポチッ”
“ダアアアア!”
おおおおお!横からもう一つのボードが現れた、すごい、某ニュース番組も顔負けだぞ!
「ふ、そんなに驚くな、後で顎が骨折しても知らないぞ。」
「あ、はい」
「ま、見ての通りこれが第三王子とお前の兄さんを含む全てのルートの悪役令嬢たちのプロフィールと人間関係だ。」
いや、この人どんだけやりこんでるんですか?しかもこれクソゲーですよ、ゲーム制作者でさえこんなに詳しく知らないと思いますが。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ」
「どうして攻略者や主人公のプロフィールに彼らの写真が付いてるのに悪役令嬢たちは顔に“?”を書いた絵しか無いのです?」
「はあ、だからお前たちが平凡すぎるだからだろ、ったく最初っからお前が悪役令嬢だと知ってたら関わらないっツーのに。」
「え、でもどうして私が転生者だと知ったんですか?」
「はあ?お前本当に気づいてないんだな。学校で有名だぞ、変なスープを飲んだり、一人で変な独り言を言うとか。ったく自分が転生者だって言ってるみたいじゃねーか。」
いや、変なスープって言われましてもそれ味噌汁ですし、しかも変な独り言って......
あ、でも
「私の周りに誰もいなかったのって......」
自業自得?
「いや、お前は一人じゃない。いや、もう少ししたら一人いなくなるかもな。」
「慰めてるつもりですか?」
「ほんとだ、これを見ろ。」
“ポチッ”
“ダアアアア”
機械の音と共に壁に飾ってたボードが半回転し、新しいボードが現れた。
でも私はボードに書いてる内容を見て、感心するとかニュース番組顔負けとか考えてられなかった。
“タタタタタ”
「おい!今は早すぎる、行くな!!」
“バン!!”
その時の私は貴族にとっての礼儀や心がけを気にする時間も余裕も無く、ただたださっき彼と話したあの事件を考えてる。
だから私は彼の怒鳴り声を無視し、全力で走って馬車を拾い、家に向かった。
馬車の揺れと共に私の中にある火は燃え上がってる一方だ。
どうして、どうして、どうして?
逆ハー狙いだったら私だけ狙えばいいのに、私だけ嵌めればいいのに。
許さない、もしこの事が本当ならば絶対に許せない!
一日ぶりにメリエード伯爵邸に着・いた時、私は以前のように帰ったという少し嬉しい感情はになれなかった。
「まあ、旦那様、エモリアが帰ってらっしゃいましたよ!」
「エモリアか、全くどこへふらついていたんだか。」
「姉さん、もうどこに行ったの?」
「。。。。。」
以前の私だったら泣いて喜ぶだろう、だけど、今は......
「姉さん?」
「リチェルは?」
「え?」
「お父様と、お母様、そしてエリティ、本当の事を話してください。私の専属メイドのリチェルはどこへ行きましたか?」
もしこれが事実なのだったら、セレナ、あなたは自分の欲望のために何でもする極悪人だ。だからもし、もしこれが本当なら、私は......
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