だから、僕は ペドルア視点 前編
宜しくお願いします
「レントルス公爵令息、」
“ツーン”
と、彼女が僕を苗字で呼ぶ度に心がひどく痛みだし、やがて僕が目を瞑るたびに彼女が浮かびだす。
離れない、どうして君は僕の頭から離れない?
僕はセレナを愛してるのに、それなのに、
「エモリア嬢、」
それなのに、僕は彼女のすべてが欲しい。
「やめてください!!」
僕の前で彼女が抵抗している、でも僕は彼女が本気で抵抗しているとは思えない。
だってそうだろう、彼女には何度も僕を物理的に傷つけて逃げるチャンスがあった、けど彼女は僕を物理的に傷つけ様なことは一切してこなかった。
だからきっと彼女は僕に少しだけでも好感度はあるはず。
でも、彼女がレントルス公爵家を恐れていたら、もしそのせいで本気で抵抗できなかったら、
“ツーン”
「だめだよ、僕しか考えちゃだめ、ずっと、永遠に僕だけを考えて!」
もう、どうでもいい、
“レントルス公爵令息”だからでも、僕があいつかもしれないからでも、
君が手に入るなら僕は君の人生と言う名の物語で悪役になってもいい。
そう、だから僕は......
セレナは僕の幼馴染で、初恋の人でもあった。
まあ、心の何処かでモヤモヤしていたけれど僕はこれを恋だと思う。
だがある日、セレナにレオール第三王子が好きと言われた。
ああ、わかってるさ、いつかこういう事が来るだろうと、だから僕はその時涙を強制的に引っ込ませてセレナに祝福した。そう、例えセレナが僕の気持ちに気づいてなくても僕はセレナの幸せが大事だから、だから......
『本当にそうなのか?』
『お前はセレナを本当に愛してるのか?』
『好きだったらお前の胸元で縛り付ければいいだろう、それなのに......?』
いや、そんなはずない、僕は本気でセレナを愛してるはずだ。
そう、だから僕はレオール王子と別れたくなく、嫉妬に焦がされた挙げ句にセレナをいじめてるセレナとレオール王子の間の大きな障害を許さなかった。
まあ、もしそれだけなら僕は何とかしてメリエード伯爵を失脚させて強制的に婚約破棄させてあげただろう。
だがいつからかセレナは僕の計画に気づき、僕に『私の為に誰かを犠牲にしたくない。』と言い、そして彼女は自ら進んで多夫一妻制度新しい法律を貴族代表として進んでいった。
許さない、いや、絶対に許せない。
どうして無垢で純粋で優しいセレナが好きでもない男達と結婚してあの嫉妬で狂った女がレオール王子と一緒にいられる?
どう考えてもおかしいだろう?!!!!!!
だから最初はただセレナの仇討ちのつもりでこの女に近づいた。
だってそうだろう、この女さえいなければ天使みたいに純粋なセレナは両思いだったレオール第三王子と結ばれたんだ、
大丈夫、僕があの悪女をレオール第三王子から引き離したらすぐゴミのように捨てるさ!
と、最初のうちは思っていたけど、
セレナの婚約披露パーティーの時、僕はどうしてかあの女を姉弟喧嘩から引きずり出した。
いや、僕には彼女が実の弟と一部の貴族たちに虐められてるように見えた。
まあ、多分あいつの自業自得かもしれないが、だがな、
「......伝言の内容はこちらになります:
何度も助けてくれてありがとうございます、
実は私、あなたに会うまで本当にこの世から去っていこうと思っていたんだ。
でもあなたは私にこの世の真実を教えてくれた、何度も、何度も、私みたいな何も知らくてバカな私に怒りながらこの世で生きていける術を教えてくれた。
リチェルの時だって、私は家族に捨てられるんだと思っていたときだって、私のそばに居てくれたのは誰でもなく、あなただった。」
ただ他人への伝言だけなのに、まるで僕にその言葉を伝えているように心を震わせる。
これが演技だと全然思えない、この女は本当にセレナの敵で嫉妬に狂った悪女なのか?
「ごめんなさい、あなたは私に大切な事を、思い出をいっぱいくれた、それなのに、私はあなたに何もしてあげられなかった、
もし、もしあのとき国王陛下と王妃に婚約破棄する事を阻止された時に直接、あの安物王子と話し合っていたら、私がもっと強ければ、もっと行動力があっていれば、もっと、もっと......
いつしか私はあなたを頼り、独立できない程に頼りまくって、駄目になっていたかもしれない。」
「エモリア嬢......」
一般的な婚約者同士だったら愛情はなくても一定な尊敬はある筈。
それなのに先程この女とレオール第三王子のことを話していたときは尊敬どころかなんの感情も伝わってこない、まるで氷のように冷え切っているようだった。
おかしい、この女が、エモリア嬢が僕が知っているセレナに嫉妬しイジメる醜い性格の持ち主だと到底思えない。
もしかしてどこか誤解でもあったのか?
「ごめんなさい、翔さん、ごめんなさい、約束、守れなかった、それなのに、私は......」
“ドクン”
は?
「しょう、さん?」
何だ、この名前、どこかで聞いたことがあったような......
「ごめんなさい、伝言はこれまでです、ありがとうございました。」
“ドクン”
「あ、エモリア嬢!!」
“ドクン”
いつの間にか彼女は僕の前から去っていき、僕はその時なにかを失うような恐怖に包まれていた。
「......しょう、さん。」
“ドクン”
“ドクン”
“ドクン”
どうして、初めて聞くはずなのに、それなのに......
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