初恋は無様に散り、 ミミ視点
宜しくお願いします
パーティー会場の外はガチで寒く、この馬車停止場に通りかかった人たちは皆身体を抱えながらパーティー会場へと小走りに急ぐ。
だけど今、私はそんな事なんてどうでもいい、ただ私達が何度もイアリング型通信機で呼びかけても私と同じ転生者ピンク色のマカロンのエモリア・メリエードが全然応答しない。
まさかだと思うが、いや、エモリアはああ見えて運が強い子だ、だから私みたいにならない、と、思う、だが、
本当に大丈夫なんだろうか?
もし、もしあのクソ女に会って、私みたいな事をされていたら......
ち、じっとしてらんねえ!!
「おいこら!!エモリア・メリエード!!!聞いてんのか、どこにいる??!はよ応答せんかい!!!」
「エモリアお願い、返事して、無事でいて!!」
「エモリア、返事、して、僕、不安......」
通信機の向こうでエーナ・セナルデン侯爵令嬢とその婚約者もエモリアのことを心配してる、だがエモリアの方からはやはり応答がなく、私の不安は積もっていく。
「おい、エモリア、エモリア!!」
お願い、頼むから、エモリア、無事でいて......
“カチャ”
あ、繋がった!
「もうエモリア大丈夫?みんな心配したんだから。」
「エモリア、無事で、良かった。」
「ったく無事なら無事で、」
“ペロッ”
「きゃ!」
は、何があった?
“フー”
「いやっ!」
「。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。」
ええっと、何だ、この状況?
「フフ、ねえ、エモリア伯爵令嬢、あ、呼んじゃった、」
呼んじゃったじゃねえよ、どこかの恋する乙女かテメエ?
ったくどこの誰だ、
「離してください、苦しい......」
「ヤダ、もう離さない、どこにも行かせない、」
“カチャ”
「え、ええっと、こちら悪役令嬢1号、う、なんか、なあ、エモリア、じゃなくて悪役令嬢2号はただ今18禁に突入しそうな勢いなので、一時的な殉職とみなしてもよろしいでしょうか?OVER」
「ええ、こちら悪役令嬢3号、悪役令嬢1号の意見に賛成しますわ、ああ、そうですわ、帰ったらエモリアに全身エステしなければ、フフ、今日はいい日ですわね、OVER」
「うう、エーナ、あの人誰?エモリア、嫌がてる。OVER」
「まあ、エベルトン様、いいですか、女の“イヤ”と“だめ”は“いい”と同然ですわOVER」
「じゃあ、僕も、エーナに、通信機の向こうがしてる、みたいなこと、したら......」
「きゃ、も、もう、エベルトン様ったら、それは好きな人同士がする行為ですわ。」
「でも、僕は、エーナが好き、結婚したら、通信機の向こうがしてる、あんな事や、そんな事、毎日、ずっと、したい。」
「う、ううううう、し、しりませんわ、もう、ダンスホールから抜け出してもう時間が立ちましたわ、早くダンスホールへ戻りましょう。」
「でも、僕は、」
「行きますわよ!!」
“カチャ”
「エーナ、どうして、顔赤い?」
“カチャ”
「。。。。。。。。。」
や、やってらんねー!!!!
は?同じ悪役令嬢なのに何、この差!
婚約者がいたらそんなにいいの?しかも同じ転生者だったときに愛し合ったからゲームの強制力に掛かっても惹かれ合うなんて......
いや、別に羨ましくはないぞ、シイと言うならば私にも婚約者がいた時期もあったんだから。
そう、私の元婚約者、ガルトラ・ソートベータ辺境伯令息はこのクソゲーの中でもまあまあ人気がある一途で前向きなキャラで、私の前世と転生してからの初恋相手でもある。
まあ、何というのだろう、前世の私には弟が一人いて、思い返せば私はずっとその弟と喧嘩ばっかしていた。
そのせいかなんだが知らないが周りの男はこんな男勝ちの性格をした私を女だと見れないのだろう。
そんなある日、私はゲーム屋さんで普段はしない衝動買いをしてしまった。きっかけはパッケージに描かれてるその明るい緑色の髪をしたキャラクターがとても優しそうで、私の好みだからだったからだ。
ま、正直以前にも好きなアニメのキャラクターや声優がいたがあまりときめく事は無く、同時にこの世界の設定やストーリーはクソだった、だがガルトラ様の優しい声と主人公に言うセリフの数々が私の心を震わせて、気づいたら私はこのクソゲーの第二部、三部を買い、すべてのガルトラ様ルートをコンプリートしていた。
だからこの世界に転生して、ガルトラ様の婚約者になって私は自分が悪役令嬢だということを忘れるほど嬉しくて、そして私はガルトラ様が毎年私の誕生日にわざわざ王都へ来て、自ら赤いバラの花束をくれた時、目眩がするほど幸せだった。
ちなみにガルトラ様は私と同い年で、見た目通りに優しくてカッコイイ私だけの王子様だった。
そして当時の私は大きくなったらガルトラ様と結婚して、こんな幸せがずっと続くんだと思っていた。
だがそれは違った。
そう、私がこのクソゲーの舞台“セイントーラス学院”入学して早々私に纏わるへんな噂が流れた。
ま、私は、噂の内容なんてどうだってでも良かったんだけど、その噂のせいで周りからは嫌な視線が感じられる。
はあ、どんだけ私が男勝ちな性格したってこんな時は心細い、だから私はガルトラ様の所へ行き、以前みたいに優しい声と言葉で慰めてもらおうと思った。
だが、まあ、私以外の悪役令嬢と同じく、私が知らない間にガルトラ様は攻略済みだった。
ええ、私はガルトラ様が王都に住む辺境伯邸に押しつけて見たのは私が心から愛す男が見覚えのある女とベッドであ仲睦まじく愛し合っていた場面だった。
「が、ガルトラ様、これは?」
嘘、ですよね、
「はあ、ミミ・ベネザル伯爵令嬢、私はあなたと婚約がある限りあなたの完璧な婚約者になります。ですがせめて私に自分が本当に愛する女性と一緒にいられる自由と時間をください。」
忘れてた、この世界はセレナ・ケレンドルののために作り上げられた世界。
だけどあの時、ガルトラ様があのクソ女に気持ちよく叫ばせる場面を見たその時、あのクソ女確かに影で不気味に笑っていた。
そう、セレナ・ケレンドルはとっくにこうなることを知っていたのだろう。
それじゃあ、この世界のセレナ・ケレンドルは......
そう思った途端私の中にある理性の糸が切れた音がした。
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