“お零れ”なんていらない
宜しくお願いします
拝啓現在王城の監獄にいるリチェル様、
お元気ですか?
監獄見張りの騎士たちに良くされてますか?同じ監獄仲間たちと仲良くしてますか?
先程私はもう二度と会いたくない人達ランキングTOP10(当社比)でナンバーワンに輝く性悪女、いいえ、セレナ・ケレンドル公爵令嬢に会い、そして彼女と安物王子に翔さんの存在がバレました。
まあ、幸いこの安物王子には翔さんの正体がバレておらず、それはそれで一安心なのですが問題は私と同じ転生者ピンク色のマカロンの性悪女。
そう、もし彼女の前世は私と同じ世界でしたら、もし彼女が人気声優の秋内翔を知っているなら、それなら、彼女は......
いやいや、拝啓現在王城の監獄にいるリチェル様、
お元気ですか?
私は、
「......ア、......モリア、ねえ、エモリア!」
「ああ、は、はい、なんでしょう?」
「全く聞いているのか?」
「......ああ、はい、安、いや、レオール様でしたか。」
まったくこの安物王子、少しは空気ぐらい読み、私に現実逃避する時間ぐらい与えてくださいよ!
はあ、ちゃんと答えた私がバカみたいでしょうが。
辺りはもう人工的な明かりに少しだけ照らされて、さっきと変わらない人々の賑わいとクラッシック音楽の音が微かに聞こえる。
「うう、僕はさっきからエモリアのそばにいたよ。」
う、そんなうるうるした目で私を見ても......
「すみません、気づきませんでした、」
早く帰りたくてしょうがなかったので。
「。。。。。。。」
「では私はこれで失礼してもよろしいでしょうか?」
後程変な噂が立つと嫌なので、
「......ゴメン。」
「は?」
いきなりなんですの?
「先に言っておく、僕はセレナ・ケレンドル公爵令嬢を自分の妹としか思っていない。」
「はあ、またこの話ですか、いいです、私はもうなんとも思いませ「どうしてなんとも思わない!!!!!」」
「。。。。。。。。。」
「わ、悪い、お前に大声出すんじゃなかった。
だが信じてくれ、僕は本気なんだ。」
はあ、
「ええ、わかりました、信じますわ、あなたは今、セレナ・ケレンドル公爵令嬢を妹だと思っている事を。」
「ふう、ありがとう、良かった、信じてくれて。」
「ええ、でしたら、」
もうエーナ達の所へ行ってもよろしいでしょうか?
「じゃあ、もう一つ、」
まだなにかあるんですか?
「そ、その、あの、ぼ、僕は、その、10年前から、その、」
「はあ、どうしましたか、レオール様?友達がダンスホールで待っているので早くしてもらいません?」
そして私をメリエード伯爵令嬢とお呼びしてもらえたらもっと嬉しいのですが。
「う、うん、そうだ、僕と最低1曲踊ってくれ、これは父上からの命令だ。」
「......ほう、」
私みたいなしがない伯爵令嬢と3番目の息子の婚約を気にするぐらいこの国の国王陛下は暇なんでしょうか?
ですがもしこれが嘘でしたらなんでこの安物王子はこんな嘘をつくのでしょう?
いや、そもそもこの安物王子は私の社交デビューの時でさえ私と踊ってくれず、そのせいで私は他のご令嬢達に何年もいじめられた記憶がある。
でも、なんででしょう、なんか、引っかかる。
確かゲームの中では一度だけ、私がこの安物王子とダンスする場面があったような無かったような。
うう、でもそれは、ヒロイン(性悪女)にとってはすごく大事なイベントで、あれ?どうしてそうなったのでしょう?
何か、なにか大事な事を見落としたような......
「うう、」
「どうしたんだ、大丈夫か!?」
「え?」
気づいたら私は頭を抱えながら膝を地面に落とそうとするとこだった。
「ああ、その、ごめんなさい、レディーの振る舞いらしくなくて。
ですがやはりお体の具合があまり良くなかったようです、ですから、その、」
「わかった、ではここは婚約者の僕がお前を家に帰す。
さあ、メリエード伯爵邸に帰ろう。」
え、いえ、いえいえいえいえ、“王城に行こう”と言っていないのは感謝しますけどですが現在私はまだエーナの家に居候中でございまして。
まあ、シイと言いましたら今夜、メリエード伯爵邸には五分五分の確率であの性悪女がお兄様のお部屋で三人で夜の遊びを朝までする可能性がありますから。
「いいえ、大丈夫ですわ、自分でなんとかします。」
「だめだ!」
は?このこぶし頭、「もういいですわ」「自分でなんとかします」と何度もおっしゃってるのに!
「ま、まあ、どうしてなのですの?」
ふざけないでください、
「お前は僕の婚約者だから。」
いや、知ってる、ですがもうあなたに婚約破棄を申し込んだはずじゃ?
「フフ、レオール様は冗談好きなのですね。」
「エモリア......」
「それでは私はこれで、」
「ああ、送ってやる。」
いや、ですから!
「あの、本当にいいのです、自分で帰ります。」
「いや、送る。」
“プチッ”
「大丈夫です、結構です、自分で帰ります。」
「だが僕は君の婚約者だ、だから「だから言いましたよね、何?もう私がケレンドル公爵令嬢の件でお兄様に追い出された事をお忘れで?」」
「......エモリア?」
どうして、どうして今になって私に関心を持ち、優しくしてくれてるの?
いや、答えはとっくに知っているはず。
そう、あの性悪女が結婚するから、安物王子が失恋したから、そして偶々私が隣りにいたから。
ええ、翔さん、いいえ、ペドルア様の時と同じ、私が偶々いたから、だから私に微笑みかけて、私を愛してるかのように振る舞っている、だから今私を本当に愛してくれてる人なんて、誰もいない。
ですが、私は性悪女からの一時的な“お零れ”なんていらない、自分の幸せは自分で掴んでみせます、ですから、
「それと、もうすぐ婚約者じゃなくなるのですからそんなに親しく呼ばなくてもいいんじゃないでしょうか?」
「エモリア、僕は!」
「なんですの?あなたは、10年前から私の事はどうでも良く、ずうっとケレンドル公爵令嬢の隣りにいて、彼女を愛し続けた。
ですがあなたは少しでも私の気持ちをお考えになられて?
ケレンドル公爵令嬢が婚約する前にあなたは自ら私にお声をかけた事がありますか?ケレンドル公爵令嬢以外にも踊ったご令嬢はいましたか?ケレンドル公爵令嬢以外に笑いかけたご令嬢はいましたでしょうか?」
だから今、安物王子今の婚約者に一部言っておきます、そして、できれば自分がした事を少しでも反省してもらえたら宜しいのですが。
「。。。。。。。。。」
「ええ、確かに以前、私はあなたを好きでした。
ですがあなたに見て欲しければほしいほど虚しく感じ、あなたを好きになればなる程自分が惨めに感じたんです。」
「聞いてくれ、エモリア、それには理由が「理由?そんなのもうどうになってもいいのです。」」
「な、」
「だってそうですよね、あなたはただの噂のために他にケレンドル公爵令嬢を愛する次世代を継ぐ未来の2世代官僚達に学院で人気が無い場所まで強制的に連れだすんですもの。」
「違う、僕は!」
「いいです、答えはもう頂いてますわ。」
「違う、違うんだ、聞いてくれて、頼む!」
ここまで言ってまだ分からないのですか?
「はあ、もう、疲れたのです。
ですから今夜、私と「あれ!?メリエード伯爵令嬢じゃないですの??」」
え、その声は......
でもどうして、どうしてあなたがここにいるの!?????
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