どうか帰らせてください!!!
宜しくお願いします
拝啓現在王城の監獄にいるリチェル様、
お元気ですか?
ちゃんとご飯食べていますか?ちゃんと睡眠を撮っていますか?
私は、まあ、いま、ここで“ニコッ”と営業笑いするだけで精一杯です。
「レオール様!」
夜空の中で銀色に輝く月が一番眩しいように、私の目の前にいるきれいに髪も化粧も整えた少女の周りには何故か星屑に包まれたようにキラキラと輝きながら私達、いいえ、あの安物王子の所へ小走りしてやってくる。
「。。。。。。。。。」
そしてその安物王子はというとこの性悪女の美しさにやられて現在目を大きく開けながらフリーズしてる。
はあ、本当にあの性悪女にメロメロですな、それじゃあ今夜にて婚約破棄してもよろしいですか?
「本当にレオール様ですわ!
実はさっきエルドア様と共にいて、その時からずっとレオール様に会いたいとおっしゃっていたのですわ。」
え、ああ、そうでした、今日はネイズ・ミラボーとお兄様がこの性悪女と婚約するのでしたね、まあ、いろいろありすぎて忘れそうでした。
ですがそんな少女漫画みたいなシーンはどうでもいいのでもうご退場してもよろしいですか?
「。。。。。。。。。」
ん?まだフリーズしている?
そんなに性悪女に見惚れているのですか??
ではもうご退場してもよろしいですね、いいのですね。
「レオール様、どうしたのです?レオール様、レオール様!」
「あ、ああ、」
おお、やっと妄想からお目覚めですか
ってあれ?安物王子に一瞬だけ睨まれたような、いや、気の所為でしょう。
「どうしたのです、レオール様?」
「。。。。。。。。。」
「もう、レオール様ったら、具合でも悪いのですか?」
「ああ、いや、なんでも。」
多分今この人達はもうとっくに二人だけの世界にいて、私がいつご退場したって気づかないのでしょう。
ですがこの安物王子は一応王子様で、婚約破棄などまだしてないから今は嫌でも私の婚約者でもある。
だからもし黙って言ってしまったらこれが噂の種となり、人様に(主に性悪女に)どう利用されるかわかりません。
ですから、
「まあ、これはケレンドル公爵令嬢じゃないですの、この度はご婚約おめでとうございますわ。」
「。。。。。。。。。」
「。。。。。。。。。」
あ、うん、二人の世界に突然のお邪魔虫が入り込んだのですから、そうですね、これぐらいは普通ですものね。
「め、メリエード伯爵令嬢、ありがとうございますわ、あ、あの、その、はい、ありがとうございますわ。」
あらら、まだ私を怖がっている設定を突き通してるのですね。
「フフ、本当に運命ていうのは皮肉なものですわね、まさかケレンドル公爵令嬢みたいな素敵な女性が私の義姉様になるなんて。」
ほんと、どうしてあんたが私の家族になるのでしょうね。
「あ、う、はい、その、メリエード伯爵令嬢、その、以前私達になにかの誤解があるかもしれませんが、今日から私はあなたの家族になります、ですから、その......」
ホホホホホホ、誤解、それはどんなことでしょうか?
もしそれは自分の化けの皮を指してるのでしたら喜んで剥がしてあげますわよ。
「誤解?その、私達の間になにかありましたか?」
「お、おい、エモリア!」
安物王子は黙っていてください。
「め、メリエード伯爵令嬢、その、」
「恥ずかしい事ですが、実は私、以前からお兄様がセレナ様のことをどう思ってるのかお分かりで、ですが同時に何度も何度もセレナ様が他の殿方とものすごく仲良くなっているところも何度かお見えになったこともあります。
ですが今でしたらもう大丈夫ですわね、だってこの国はもう多夫一妻制度に変わり、セレナ様とお兄様はこの制度のおかげで結ばれたのですものね。」
ううっと、この嫌味、露骨すぎましたでしょうか?
「あ、うう、ああ、」
「エモリア!」
「はあ、何でしょうか?」
まあ、そうですよね、やはり露骨すぎましたか、じゃあなんなりと言ってください、そして早く私をエーナたちが待っているダンスホールへ行かせてください。
「。。。。。。。。。」
ん、なに、またフリーズ?
いやいやいや早く怒って一旦退場させてください!
ほら、あの性悪女でさえ目をキラキラさせて待っているでしょう。
「で、では私はこれで、失礼しますわ、セレナ様、今はレオール様と二人の世界を是非ご堪能してくださいませ。」
そっちが何もしないのでしたら私が先に失礼しますわ。
「ええ、それではエモリア様、ごきげんよう。」
「ごき「待て。」」
はあ!?この安物王子、いきなりなんですの?
「レオール様?」
「まあ、いきなりどうしたのです?まだ私の友達がダンスホールで待っているのですが......」
早く行かせて!
「う、うう、その、」
何うじうじしてるのですか、それでも男?
「レオール様?」
「う、セレナ、ゴメン。実は父上がどうしてもメリエード伯爵令嬢と一曲踊れと言ってな、だから仕方無いが婚約者エモリアと最低一曲ぐらい踊らなくてはいけない。
実はさっきもそんな事をエモリアと話してな。」
え、そうでしたっけ?
っていやいやいや知らない、本当に知らないから性悪女、そんな顔で私を見ないで!
「う、フフ、フフフ」
あ、うう、壊れた、性悪女が壊れた。
しかもこの人意外と簡単に壊れるのですね。
「セレナ?」
はあ、だからあなたはいつまでも安物王子なのですよ、少しは空気ぐらい読んでください。
「フフ、なんでもありませんわ。
ですがメリエード伯爵家にもうすぐめでたい事がありそうですわね。」
「え?」
「だってエモリア様ももうすぐご結婚されるのですよね。」
「あ、あの、」
「ああ、そうだ、その時はもうレオール様のご婚約者ではなくなってますが。」
「ふ、何言っている、僕とエモリアが結婚したらもう夫婦なんだから婚約者ではないに決まってるだろう。」
「ええ、そうですわね、ほんと、最近私は幸せでいっぱいですから頭が少しボヤケたのかもしれませんわ。」
いや、多分違う。
この女の頭はボヤケてなんかいない。
そう、この言葉をもう一つの角度から捉えると、その時私はあの安物王子ではなく他の男の嫁になっている事にもなる。
はあ、そうだったらあの性悪女は安物王子と私の口論を聞いて、翔さんの存在や私の気持ちなどわかってしまったのでしょう。
“カタッカタカタッカタッ”
「エモリア、どうしたのか?なんか震えてるぞ。」
「そ、そうですの、多分、身体が少し冷えてしまったせいかもしれませんわ。」
ええ、震えなくてどうするのですか?
だってもし翔さんの正体がバレたら......
「まあ、それは大変ですわ、レオール様、私はここで失礼しますわ、ごきげんよう。」
「ああ」
「ごきげんよう」
災厄ですわ、今日はもう帰りましょう。
「それでは行こうか、エモリア、」
「。。。。。。。。。。。。。。。。」
いや、どうか帰らせてください!!!!!
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