いきなり何ですの??
宜しくお願いします
もし私の記憶が正しければ、あの山裏の建物の中にある(ニュース番組顔負けの)ボードに書いてる攻略者共のプロフィールに写真もどきなのが貼られてて、その写真もどきには一人ずつ丸、バツ、三角が書かれている。でも確か私が最後に見た時15人中6人に丸が書かれ、5人にはバツが描かれ、そして4人には三角が書かれていた。
確か私が悪役令嬢になるルートの攻略者では兄様が丸で、ペドルア(翔さん)はバツ、それでレオールは三角というものすごく平等に分かれて書いている。
まあ、その時『なぜレオールが三角?』と疑問に思わなかったのは嘘ですが、あの時翔さんに聞いたら話がすぐ逸らされたので私もあまり追求しないようにしていた。
「どうしました、レントルス公爵令息?」
ええ、どうしたんでしょうね、いきなりプロフィールの事を言い出して。
「いいえ、なんでもありません、でもまさかメリエード伯爵令嬢がレオール王子の婚約者様でしたなんて。」
「な、それは、」
「一国の王子様が婚約者で、失踪したのを何日も探してくださり、この別邸とはいえこのレントルス公爵邸へと押しかけてくれるとは、メリエード伯爵令嬢は誠に幸せ者ですね。
ああ、すみません、メリエード伯爵令嬢とは失礼でしたか?」
ええっと、その、え?
いや、その、翔さん、これはなんのマネですか?
「ええ、本当ですわ、私の婚約者もそんなに愛してくれましたら私はもう何もいりませんわ。」
エーナ?え?これって、まさか......
「エーナ、僕、まだ愛が、足りてない?」
「。。。。。。。。。。」
うん、ここは沈黙を貫きましょう。
「悪役令嬢の心得序章」
うう、ですよね、ボソッと言ってくれてありがとうございます。
「エモリア、大丈夫?顔色、良くないよ。」
「ええ、大丈夫ですわ、ええ、はい......」
そして私はあの性悪女にされたすべての事や前世での後悔などのすべてを意図的に思い出し、目の中から溢れそうな程のしずくを溜め込んだ。
そう、悪役令嬢の心得序章
悪役令嬢は女の三大武器:可愛さ、可憐さと涙を使い、自分が心から一番したい事を成し遂げる。
注意:女の三大部器は緊急事態でしか使ってはいけない、ではないと周りからウザイと思われるでしょう。
............でも、うん、翔さん、あなたは前世で何があったのです?
「エモリア?」
「メリエード伯爵令嬢?どうしたのです、気分でも悪いのですか?!」
白々しい、本当に翔さんはお芝居が得意のですね。
「あの、もしご気分が悪いのでしたら先に中入りません?皆様も体が少し冷えてるみたいですから。」
こ、この女は白々しいどころか空々しいですわ!!
多分この女は私の体の具合など気になどしていない、でもそう言わないと攻略者たちに“なんて優しい”所を魅せつけられないですもの。
そしてこの言葉のせいで私の涙は何の役にも立たなくなったのも同然です、ほんと、賢すぎて怖い女ですわ。
「ああセレナ、やはりあなたは優しすぎる、こいつなどほっとけば良いのに。」
ほら、やはりネイズ様が食いつきましたわ。
ほんと、この女は周りからウザいと思われないギリギリな程度に“可愛さ”と“可憐さ”という武器を最大限に利用してる。
やはりこの女は怖い。
「違います、私は優しくありませんわ、確かにメリエード伯爵令嬢とは少し誤解があるかも知れませんけど、でもやはり私はメリエード伯爵令嬢には元気でいてくれたらと願っています。
ですから皆様早く中へ入りましょう、お体が冷えますわよ。」
............叫んでもいいですか?
え?なんですのこの人、なにが「メリエード伯爵令嬢とは少し誤解があるかも」ですの、これって遠回りにして私があなたを虐めてると言ってますよね!
しかも「メリエード伯爵令嬢には元気でいてくれたらと願っています」!?ええ、私が病死しましたらレオールルート、エルドアルートとペドルアルートのハッピーエンドに辿り着けませんし、逆ハーエンドも諦めるしかありませんからね。
それと一番ムカッとなったのはこの性悪女の言い方、なにそれ、もうこの屋敷の女主人になてるみたいじゃない。何様のつもりですの、あなたはまだ翔さんの何も知らないじゃないですか!!
いや、その、私も翔さんのことあまり知りませんですが、いやいやいや、その前にどうして私が怒ってるんですか!?
もう、訳がわかりません!!
「あ、あの!」
その言葉でガーデンにいるすべての人が私を見る。
いや、ですから、その、
“ツネッ”
痛い!
いや、わかってます、怒りません、態度にも出しません、ですから翔さん、やめてください、痛いです。
「あ、あの、先程はお見苦しい所をお見せし大変申し訳ございませんしすわ、その、レオール様はどうして私がここにいるとわかったのですか?
確かレントルス公爵令息もこの国で権力を持つ貴族様も私が貴方様の婚約者だと知らないはずですわ。」
悔しいですがこれは事実です。
確かに男爵から伯爵の貴族様たちは私がレオール様の婚約者だと知ってるはずですけど公爵あたりから何故か婚約者は未定だと思われている。
まあ、これも翔さんから仕入れた情報ですが、ですがこのせいで私が渾身の演技を使ってばら撒いた噂も精々侯爵止まりで、国の本当の中枢には届かなかったという。
ホント、思い出しただけでムカつきます。
「な、それは、その、」
多分この安物王子は探すどころか気にもしていないと思いますわ、ですがこれも新しい噂の種になりそうですわ。
ほんと、私も悪役令嬢に似てきましたね、いや、本物の悪役令嬢ですが......
「まあ、いいじゃないですの、メリエード伯爵令嬢、レオール様は最終的にあなたを見つけたのですよ。
もうペドルア、早く中に入りたいですわ、ね、入りましょう」
なにその語尾に(ハート)が出そうな甘い言い方は、ほんと、それで翔さんが落ちると思ってるのですか?
「ああ、そうだな、ここは風が強いから中に入ろう。」
え?風、そんなのありませんよ。
「さあ、メリエード伯爵令嬢、ご婚約者のところへどうぞ。」
一瞬何が起こったのか理解できなかった、
でも私は感じた、彼に物理的で一番近かった私でも気のせいかと思うぐらい感じ難く、微量の電波が流れているような、ないような。
そして私はもう一度彼の方に向き、彼の雰囲気が、立ち振る舞いが、目に映る者がいつもの翔さんと違うと気づき、最初に抱えていた違和感が徐々に不安と恐怖にすり替えられる。
“ツネッ”
どうだ、お返しですわ......!
“ニコッ”
......あ、
普段では絶対にもっと痛くつね返されることをしても、挑発的にドヤ顔をしても彼はまるで何事も無く私に微笑む。でもその微笑みは目の奥に届いておらず、まるでただの高位貴族族が社交パーティーで使う仮面如く冷たく、私の心は瞬時に凍りつく。
「さあ、早く行ってください、僕はまだセレナちゃんとお話がしたいので。」
セレナ、ちゃん?さっきまでケレンドル公爵令嬢だったのに、
「まあ、ペドルア、お行儀が悪いですわよ。」
「ええ、だってもう数日もセレナちゃんに会ってないのですよ、まさか僕がいない間に他の男と......
そう思うとなんかその男殺したくなる。」
......なにそのヤンデレ設定、気持ち悪!
え、嘘、なんで!?
内心そう叫んでいる裏腹に、私の顔はポーカーフェイスを飾っている。
当たり前ですわ、この数日間ずっと翔さんと一緒に特訓してきましたもの、ですから今何が起こってもこれだけは絶対......
「さあ、行くぞ、エモリア・メリエード。」
その言葉を聞いた瞬間私のドレスを掴む手に力が入る。
「え、その、」
本心では行きたくない、でも今は、
「あ、あの、レオール王子!」
エーナ?
「なんだ、セナルデン侯爵令嬢。」
「その、さっきエモリアは今日から数日間私の実家に泊まるとお約束してしまい、そのできましたら、その.......」
「だがエモリアは、」
「レオール様、これは数日前からのお約束ですわ、申し訳ございません、先約がありますの。」
「はあ、分かった、だが手紙ぐらいはよこせ。」
なんですの、翔さんはいきなり離れて、嫌われた婚約者にいきなり婚約者ズラされて、訳わかりませんわ。
でもこんな訳もわからない状況だからこそ敵の本拠地に行ってはいけません、しかも王城の地下牢にはリチェルも......
......もう駄目ですわ、頭が回りません!!
誤字、脱字及び気になる点などありましたらお気軽に感想欄や活動報告のコメント欄に書いてくれたら嬉しいです。(待っています~~)