一難去ってまた一難、きりがありませんわ。
宜しくお願いします
太陽の光が窓から差してきて、外の庭には色んな色の花が咲き、その花の色に沿った蝶々がパタパタと飛んでいる。
「はあ、」
「しょうがないだろう、俺は止めた、ほら、早く寝てろう。」
「う、」
そう、昨日私が病み上がりなのに翔さんと一緒に魚を捕まえようとしたせいで、私はまた風を引き、数時間前からベッドから降りられなくなっていた。
まあ、少しだけ眠いのも事実なので助かるといえば助かりますが、何故か今日は翔さんも休みを取り、十数分おきで様子を見に来るのです。
いや、誰が寝れますか、この状況で、
「あ、あの、翔さん、今日は平日ですよね、授業があるのでは?」
「ったくこれで何回目だ、ま、そうだがそれがなんだ?」
「いや、その、ここまで世話してくれなくてもいいと思います......が......」
駄目だ、顔が真っ黒になってる、やはり落ち込んでらっしゃる。
「ああああ、ですがここまでしてくれて本当に嬉しいですわ、ですが今日エーナがここに来るのでは?」
「フン、ったく嬉しいなら早く言え、それともうセバスチャンに迎えに行かせてる、安心して寝てろ。」
いやいやいやいや、翔さんがここにいたら顔が変に暑くなるから、もう授業ぐらい出てください。
やがて翔さんは私が彼を“じ~~”と見つめてる事を気づき、その暖かくて大きな手で私の頭を“ポンポン”と優しく叩いた。
「何だ、眠れないのか?じゃあなんか食べるか?」
“ドクン”
体が急に熱くなり、心がどうしてかふわふわする。
ううう、眩しい、どうして、闇色の髪を持っているのにこんなに眩しいの?
あ、もしかしたら窓の明かりが......あ、違った、窓は私の後ろにありました、ええっと、それじゃあ.....
ああ、確か私が生きてる頃翔さんは現役高校生声優の同時に隠れ王子キャラだと友達が騒いでたような......
ああ、これでですか、そうそう、これはただ同盟のよしみでくれた隠れ王子キャラからの優しさ、そうそう、もう、翔さんが普段とは違って優しいからといえ私ったら自惚れてたわ。
「......リア、......おい、エモリア!」
「あ、はい、何でしょう?」
「はあ、ちゃんと聞けよ、ったくなにか食べたいものとかあるか?」
“ドクン”
「ええっと、今は何もありませんですわ。」
「ああ、そうか。」
そして翔さんは私が横になっているベッドの端っこに座り、まるで子供を寝かすように私を見つめてくる。
“ドクン、ドクン”
うううう、どうして、やはりなんか変。
ほんと、今日はどうしてこんなに暑いのですか、そのせいで風が悪化し心臓の病気まで発展したに違いないですわ。
「なあ、」
「あ、はい!」
突然何でしょうか?
「お前、その......あの、......」
“コンコン”
「ペドルア坊っちゃん、エモリア様、セナルデン侯爵令嬢とツイッカーター侯爵令息がお見えになります。」
部屋に入ってきたセバスチャンさんが私達を見た途端なんか変な顔をしましたが、それはたったの一瞬なことで、すぐにもとの優しい顔に戻りました。
目は相変わらずキリッとしていますが。
「あ、ああ、わかったすぐに行く、さきにサロンで待ってろ。」
「はい、かしこまりました。」
「ゴメンねエモリア、私を探すためにこうなってしまい、ゴメンね。」
ほんと、エーナはどうしてこんなに優しいのでしょう、もし他の貴族様でしたら何があっても下の階級の貴族に謝らないのに。
「いいえ、でもその後エーナはどこに行ったの?心配したんだよ。」
「え、それは、その、」
あれ?一瞬翔さんを見た気がするけど、気のせいか。
「メリエード伯爵令嬢、セナルデン侯爵令嬢、ここは僕から言いましょう。実はその夜セナルデン侯爵令嬢は実家に帰ってらっしゃり、そして数時間後メリエード伯爵令嬢が行方不明になった事を聞き焦って探し回っていたらしいですよ。」
いや、どちら様ですか?え?僕?メリエード伯爵令嬢?
あ、それと、さっきこの人なんて言いました?
「え、ええレントルス公爵令息の言う通りですわ、まさかエモリアが心配してくれて探し回ってくださっていたなんて......
本当にごめんなさい、私が連絡してから帰っていれば!」
「いいえ、その、私が先走ってしまっただけですわ、こちらこそごめんなさい。」
うん、その、ごめんなさい、同じ悪役令嬢だからって先走っちゃって。
ううううう、やはり同じ悪役令嬢でも考え方は違うのか、
穴があったらダイブしてなかにずうっと身を潜めたい......
「それにしてもエモリア、昨日は楽しかったですか?」
「え?昨日は......」
あ、楽園は二人だけの秘密でしたっけ?
「......そうですね、とくに何も感じてませんでしたけど。」
「へ、へえ、そうですの。」
そしてエーナは翔さんのところへ行き、小さな声でなにか話してる。
うう~~ん、話の声が小さいせいかただ「一緒に出かけて......なかった......この役立たず」とか「......侯爵令嬢の策が甘い......」とかなんとか言っており、話が見えませんですわ。
「ねえ、エモリア、大丈夫?」
あ、エベルトン様、
「ええ、大丈夫ですわ、もうこの数日で学校に戻れるかと。」
「良かった、これ、僕が移したノート、役に、立てるといいな。」
そうでした、出席日数と授業の進捗状況もどうにかならないと。
「ありがとうございます、本当に助かります。」
これはお世辞でも何もありません、ただ心から思っただけです。
それなのに、どうして翔さんの顔が真っ黒になってるのです?
しかもエーナに関してはもう顔どころか全身が喜びの光を放っていますわよ、どうしたのです、前回エベルトンと噂になったときには真逆な態度を見せていましたのに。
これはマズイですわね、なにか話をそらさないと......
あ、
「そうですわ、今日は天気が良さそうですからピクニックでも行きませんか?」
「でもエモリア、あなたまだかぜが、」
「もう治ってるみたいですし、少しぐらいはいいかと、ですよね、しょ、レントルス公爵令息?」
“ツネッ”
「ヒッ!」
「エモリア?」
「え、ああ、何も。」
もうどうしていきなりつねるのですか?駄目って言えばいいじゃないですの。
「いいですね、皆さんはどう思います?」
じゃあどうしてつねるんですか?!
「え、私はエモリアがいいならいいけど。」
「僕も、いいと思う。」
「では、お言葉に甘えて。」
ハーブティーの匂いと太陽の光に包まれながら、私はメリエード伯爵邸にある布より何倍も質がいい洋服に包まれながらレントルス公爵邸にあるガーデンの中でアフタヌーンティーを味わっている。
ほんと、私は今ものすごく嬉しいですわ!
“ポンッ”
“ドキッ”
びっ、びっくりした、翔さんたらどうしていきなり肩叩くのですか?
しかもまだ手を方に載せたまま、もう何企んでるんだか?
「まあ、エモリアどうしたの、やはり風邪が治ってありませんの?」
「エモリア、大丈夫?」
「ええ、ありがとうございます、エーナ、エベルトン様、もう何時間も寝ていますし。」
“ドクン、ドクン”
うう、うるさい、静かにして!
「ああ、そうだな、バカは風邪引かないからな。」
「な......」
「なんだ?」
「いいえ、何もございません、失礼いたしました、レントルス公爵令息。」
「な!」
前言撤回します、もしこの魔王がいませんでしたら今ものすごく幸せです。
ほんと、さっきはどうかしてましたわ、証拠にさっきのうるさい心臓の音が消え、からだがもうあつくならなくなりましたもの。
まあ、さっきはどうかしてましたわ。
「な、困ります、まだペドルア坊っちゃんにお客様が!」
セバスチャンさんの声が珍しく焦っており、私はその話し相手が誰かなと思う瞬間聞きたくなかった声が響く。
「何言ってるんだ、これは国に関わる大事な事だ、一刻も争わなくては!」
う、うあ、この声ってもしかして......
「まあ、どういうこと、どうしてメリエード伯爵令嬢がこのレントルス公爵邸に?」
いや、要するにどうして私みたいな悪役令嬢が攻略者の家にいるのですね。
「数日間見かけなかったと思えば権力者に尻尾振っていたとはな、やはりお前は僕の婚約者として相応しくないらしい。」
要するに今婚約破棄したいのですね。
さっきの前言撤回を撤回してもいいですか?私はこの性悪女とその愛の虜たちが眼の前にいなければ非常に幸せだと思います。
しかも、私、もしかしたら今修羅場のど真ん中に、
どうしよう、どうしたらこの状況から逃れられるのでしょう......
......ってあれ?どうしてこの人達がこのレントルス公爵邸(別邸)に?
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