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絶体絶命

宜しくお願いします

 


 夜風や今起きてるすべての生き物が曲を奏で、お月様とお星様たちがその楽曲でワルツを踊る頃、私は目の前にあるとんでもない現象に何も考えられずにいる。




 ええっと、その、え?




 夜風が止み、ドアップされた彼の髪が少し揺れる。


 あ、この人、お月さまの髪色だと思ったら少しだけ上品なワインレッドが混ざってる。


 ですが、この髪色、どこかで......





 ............いや、多分この人とは初めてですが、前世で一度、パッケージで、




 “ドサッ”


 「痛っ!」


 「あ、ごめんなさい」


あんなに強く突き飛ばすんじゃなかった、いいえ、ですがきちんと自分の立場をわきまえて貰わないと後々面倒なことに......





 「あ、あの、私はあなたがここで寝てまして、風引くといけませんと思いましたから起こそうとしました。


ですが勝手にあなたを起こしたり、突き飛ばしたりしてレディーとして相応しくない振る舞いをお見せしたことはごめんなさい。ですからもうこのことはチャラにしましょう。


では、ごきげんよう。」


 「え、おい、」






大丈夫、彼はねっとりしたフレンチキスではなく、ただ口角に挨拶みたいなキスをしたまでですわ。ですから私のファーストキスはまだあると思います、いや、でも、いやいやいや、これは私のファーストキスではない、今はそう考えるしか、いや、でも、いやいやいや............






私は戸惑う彼を一人残して逃げるように寮へ戻り、ベッドヘとダイブし、何度も眠るよう頑張った。


ええ、頑張りましたとも、


ですが、ええ、まあ、うん......




















“カタッカタカタカタッ”


学校の食堂の隅っこで、私は大好きな味噌汁とキノコソテーを食べながらカタカタと震えてる。


いや、勘違いしないでください


これはけして食事の美味しさでのせいでも例の手紙のせいでもございません。


そう、私は今でも前世でも味わったことが無い恐怖に包まれています。


まあ、理由は多分お分かりでしょう、ええ、昨夜、私にキスをした彼のせいです。






はあ、まさかこんな早く、そしてこんなシチュ出会うとは思いもしませんでした。


ええ、その落ち着いた雰囲気と少しだけ憂鬱感を出すその深い紫色の目。多分、いいえ、間違いなく、昨夜の彼はこのゲームの攻略者の一人、この国の王族直属第一騎士団団長の息子、エベルトン・ツイッカーター侯爵令息なはず。


ちなみに彼は前世の私があのクソゲーをやる前に3ヶ月間最も押してた推しメンです。


まあ、王族直属第一騎士団団長の息子とは言え彼の独特な喋り方と天然な性格が公式上治癒系と言われるので、いや、確かに治癒系だったけど、やはりストーリー性って大事なんですね。






ですが、ここで言っておきますけど私は攻略者の一人に(口角に)キスされただけでこんなに恐怖を感じません。


そう、私が今最も怖いのは......




「まあ、エーナ様、そんな事がありましたの!」


“カタン!”


 あ、だめです、今立ち上がりましたら私がやったと言っているみたいですか。


 早く座りましょう




「これは緊急事態ですわ、早く例の泥棒猫をこの学院から追い出さないと。」


「ええ、まったくどこの泥棒猫が私の婚約者に押しかかったのでしょう!?」




いや、いやいやいやいやいや、誤解です!


私は無実です、しかも押しかかったのはあなたの婚約者様ですよね。




そうです、私が今怖がってるのは昨夜の件をエベルトン様の婚約者、エーナ・セナルデン侯爵令嬢に知られる事。


ここで言っておきますけどエーナ・セナルデン侯爵令嬢は私より2年上で、学院の中であの性悪女の次に才能があり、皆に好かれる後輩たちの憧れ的な存在です。


ええっと、要するに、もし昨夜の事がエーナ様に知られたらやっとしてきた努力パーになり、そして一時的に収まっていた噂が以前よりも酷くなるのは確かです。


それだけではいいんですが、もし本当にバレてしまったら今後どう頑張っていても誰からも信頼されず、リチェルを救うどころか私が処刑されるでしょう。


嫌です、今回はなんとしても乗り切らないと......






「わかりましたわエーナ様、今からA班は昨夜の件で聞き込み調査し、B班は容疑者リストを作り、そしてC班は事件現場に行きもう一度検証しに行きます。」


「ええ、よろしく頼みますわ、頼りにしてます。」


「まあ、エーナ様、これは誠に勿体無いお言葉です!」


「ええ、私達はエーナ様に何度も助けられ、私達は今まで何もできませんでした。ですから今回は徹底的に調べ、その泥棒猫を一刻も早く見つけ出して見せますわ、そうですよね!」


「「「「ええ、もちろんですわ」」」」






 “カタッカタカタカタッ”


 え、その、いいです、本当に


 だってあなた達が目を真っ赤になっても探そうとしている“泥棒猫”って、多分あなた達の後ろで座ってご飯してますから


 ですからどこかで見たことがある刑事ドラマの捜査会議みたいな事本当はしなくても良いんですよ


 まあ、でも、一生懸命隠れながら逃げきれるように頑張りますけど......








「では、エーナ様、行って参りますわ。」


「ええ、頼みましたわよ。」




“カタカタカタカタカタカタ”




「ねえ、どうしたの?寒い?」


ひいぇえええええええええ!!!




すみません、レデイーとして相応しく無い声を出してしまい、ですがこれには事情があるのです!


そうです、今、私の目の前には私がエーナ様達に捜索され、恐怖に包まれるようになった銀赤の髪を持つ“根本的な理由”が私に話し掛けているのです。




ううう、どうして私の所へ、


「あの、婚約者様はそちらにいますよ」


ですから早く行ってください、シッシッ!




「うん、わかってる、でも今はあなたと話したい。」


いいです、遠慮なく!


「ええっと、その、私達は「エベルトン様、どうしたのです?」」




“ギクッ”


声の方向へと向くとそこにはさっきと違う雰囲気を出してるエーナ様がいる。




「どうしたの、エーナ、なにか、具合、悪いの?」


 いやいやいやエベルトン様、このほぼエーナ様と初対面な私でもエーナ様は今怒ってらっしゃるとお気づきですよ


 あ、でもこの人確かプロファイルでは“少し鈍感で天然”と書いてあったような......




「いいえ、エベルトン様、それはさておきこのご令嬢は?」


 ひいいいいい、要するに「この女誰、見ない顔だな、まさか昨夜の泥棒猫か?」ですよね!


 うううう、やはり逃げられませんでしたか!?




 食堂に入る大半の人はこっちに視線を向け、一握りの人達は礼儀作法の影響でこちら辺を見てませんですがやはり気になるそうで、名一杯耳をすましている。




 お、終わった、何も、かも......





誤字、脱字及び気になる点などありましたらお気軽に感想欄や活動報告のコメント欄に書いてくれたら嬉しいです。(待っています~~)

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