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神様を創ったら  作者:
6/7

その6

卒業式まで残り僅か。


私達の高校生活も終盤も終盤、公立の受験は既に終わって学校に登校する必要も薄いほぼロスタイムな時期。


そんな時期でもイシタマ様の話題は噂話のトレンドを維持し続けている。


あれ以降も、業者が回収して粉砕したり、教員が倉庫に厳重にしまい込んでも、イシタマ様は元の場所に戻ってきた。


それだけでなく、粉砕した欠片やしまい込んだ倉庫の中の石も消えているっていう噂だ。


私達にそれを確認する術はないけど、先生達がイシタマ様自体をどうにかするんではなく、覆い隠す様に鉄の箱を被せて固定し、周辺部を立ち入り禁止として囲いを設置する対症療法を行った事からほぼ事実扱いを生徒達から受けている。


結局、私達は何も出来なかった。


“誰か”を恐れずにカメラを管理していれば犯人の様子も見れたかもしれないけど、バッテリーの取り換えもせずに半場放棄した形でそのままにしてたカメラはあの時には既に動いて無かった筈だ。


危険に飛び込む勇気が無い私や、私を巻き込めない由香里は、犯人の方法を知る術は無かったのだ。


「ほんと、どうやったんだろうね。由香里がしてたみたいに似た石を用意してたのかな?」


「欠片や石が消えてたって噂が嘘ならそうかもしれませんが、それならわざわざ石に鉄の箱を被せる必要はないと思うんですよね。それこそ、何かしら監視カメラとかを設置するなり、フェンスを付けるなりで」


「んー、だったら“誰か”は生徒じゃなかったとか?教員とかならこっそり持ち出せるかも?業者の方は知り合いに頼むとか」


「どうでしょう?倉庫から消えた場合に真っ先に疑われるのは先生達でしょうし、愉快犯にしてもリスクが大きいと思います」


「そっかー。ならもう、私じゃ分かんないなぁ」


「こっちもお手上げです。もうオカルト的な何かって決めつけて思考放棄してもいいかなって感じに」


「精神衛生的にはそれがいいかもね。従姉さんは何か言ってた?」


「『マジシャンか』って言ってましたよ。一応意見も聞いてみたんですけど、『ワタシは探偵じゃないから。安楽椅子に座ったまま推理とかは無理だから』と言われました」


「従姉さん、漫画とかアニメなら得意げに推理を披露してくれるポジションだと思ってたのに」


「あの人は普段から変な事を考えてたりしてますけど、能力的には普通ですからね。それに、何か分かってたとしても多分私達には教えないと思いますし」


「関わるなって何度も釘刺されたしね」


「ですから、もう気にするのはやめようかなって。無責任だとは思いますけど、もう私に出来る事は無さそうですし」


「うん、それが良いと思うよ。大学まで引っ張ってもしょうがないし、言っちゃ悪いけど被害に合ってるのも他の人に悪い事をした子だけっぽいしね」


「あんまりそういうので判断はしたくないですけどね。はぁ、これからどうしましょう?」


「大学の準備とかじゃない?入学式用のスーツや靴、鞄とかを用意したり、女子大生っぽい服を買ったりとか」


「それは梓ちゃんが欲しいのですよね」


「付き合ってくれるでしょ?」


「ふふっ。ええ、もちろん。どこに買いに行きましょうか」


「駅前のとこで買ってもいいけど、少し遠出してもいいよね。あ、この前にテレビで紹介されてたんだけど―――――」





卒業式 前日/PM10:43


―――――――――――――――!!!!!


「ッ!?」


何かが爆発したような鼓膜を打つ爆音と共に来る地震みたいに強い振動。


とっさに読んでた本を放り出して音がした方にある窓から外を見ても煙が上がったりはしてない。


外はこの時間帯にはふさわしくないざわめきは、あの音と振動で驚いた人が外に出て確認しようとしてるんだろう。


「……なんだったの?」


気になるけど、二階から見える範囲では何があったかは分からない。


近くに工場とかそんなのもないから危ないものではないんだろうし、煙が登ってる様子もないから火災とかが発生してる訳でもないと思うけど。


~~~~~♪


机に置いてたスマフォから着うたが流れてくる。


この歌は由香里だ。


「もしもし由香里?どうしたの?」


『どうしたの?じゃないですよ!何か外で爆発音みたいなのがありましたけど、梓ちゃんは大丈夫ですか?振動とかで窓が割れたりとかありません?』


心配そうな由香里の声。


確か、爆発音がした方向と逆方向に由香里の家がある。


だから爆発音の原因に家が巻き込まれてないか心配してくれたというわけだ。


うん、出来た親友で私も鼻が高い。


「こっちは大丈夫、音に驚いた人たちが外に出てきてちょっと騒がしいぐらい。さっき窓から見てみたけど煙とかが昇ってる様子もないね」


『そうですか。でも、何があるか分からないので注意して下さいね。もし何かあったらすぐに逃げれる様に大事な物はまとめてポシェットとかに入れとくと良いですよ』


「そこまでする必要はないと思うけど、ありがとね由香里」


それから由香里と数十分話し込んで通話を切る。


「そういえば、明日の卒業式は大丈夫かな?」


爆発音がした方向には明日には卒業する我等が母校がある。


家であの振動だったんだから、発生源次第では校舎や体育館の窓でも割れて延期になるかも。


「そしたら女子高生延長か。んー、あまり意味ないな」




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