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神様を創ったら  作者:
5/7

その5

あれから更に時間は過ぎて、私達は三年生になった。


イシタマ様の話は未だに消える事も薄れる事もなく、続いている。


あの後から私がやった事は由香里巻き込んで他のバカな事をしたり、受験勉強に付き合わせたり、バイト代を使って旅行にいったりといった特に毒にも薬にもならないことだけだ。


イシタマ様について完全に忘れろといっても無理だろうけど、ただ少しでも由香里の気が紛れたらいいなというだけの行動。


始めは気の晴れない様子だった由香里も、少しずつ元の元気さを取り戻して一安心だ。


イシタマ様に粗相をした相手に天罰で砂絵とか石組のモニュメントとか、机や鞄に石詰めとかはもうやっていないし、イシタマ様の天罰を止める行動もやっていない。


私達は、もう傍観者へと落ち着いていた。


「裏サイトとかSNSでもイシタマ様に関する事が多いですね」


「天罰がイジメをしてた子や万引き、援交、痴漢詐欺とかを日常的にしてた子達だけを対象にしてるってのもあるかもね。悪い子に罰を与える神様的な扱いが多いね」


「結果的に、そういうのから被害を受ける人が減ってるのを考えると、良い事なんでしょうか?」


「分かんないよ、そんなの。漫画とかアニメとかだと否定されたりもするけど、実際に助かってる人もいるし、被害を受けて引き籠ってる人もいるし」


「そうですね。気にしても仕方ないんでしょうけど、最近思う事があるんですよ」


「なぁに?」


「祈りで孵化するイシタマ様は、今の相手に天罰が下るのを願うだけの祈りを受けてるわけですが、そんな願いで孵る神様はどんな神様になるんでしょう?悪い人を祟る祟り神?良い人を助ける善神?、それとも、怒りだけを持った荒御魂でしょうか」


「……それも分かんないかなぁ。でも」


「でも?」


「あんまりいい気持ちはしてないんだろうね」


「……そうですね」


それから何を喋ることも無く、静かな時間が流れる。


そんな中、一つの考えが私に浮かんだ。


「ねぇ、由香里」


「なんですか?」


「イシタマ様が天罰の祈りだけ受けてるのを気にするなら、いっその事イシタマ様を無くしちゃおうか」


「…………はい?」


由香里がすっとんきょな声を上げる。


「イシタマ様って言わば由香里が適当に選んだ石を崇める偶像崇拝なわけだし、その偶像の大本を無くしちゃえば意外と静まりそうじゃない?」


「えぇ?まぁ、可能性はない訳じゃないですけど。“誰か”に見つかる可能性も高いですよ」


「そだね。なら私達以外にやって貰おうよ」





そしてしばらくして、イシタマ様はその御社擬きも含めて教育委員会の指示を受けたっぽい先生達によって取り除かれる事になった。


それに対して学校の多くから反対意見が上がったけど、半年前から続く生徒の不登校や転校の理由となったイシタマ様を守るには足らず、そのまま市の廃棄場に回収されていったのだった。


「思ったよりすんなりいきましたね。聞けば単純な事なのに、思いつきませんでした」


「あんまり動いてくれる印象もないしね。でも内容が内容だし、流石に形だけでも動くでしょ」


私達がやったことはいたって単純。


ただ、イシタマ様の噂とその被害にあった人達について綴ってその原因となった石の除去をお願いする投書を教育委員会とPTAに入れただけ。


この投書を受けて、特に三年の親御さんは今年受験だけあって学校や教育委員会にイシタマ様の除去を強く申し出てくれたらしい。


「まぁ、結局は遺したかったのも無くしちゃったわけだけどね。あのままだったら、結構長く残るものになったろうけど」


「仕方ないですね。まぁ次は今回の反省を踏まえて七不思議の一つでも創りますか」


「もう作ってたじゃん」


「イシタマ様はノーカンです」


互いに笑いあう。


久々に由香里の軽い笑い声が聞けた。


それだけで、今回は満足したっていうのは、流石に恥ずかしいから由香里には秘密だ。


その後、由香里と七不思議っぽい話を色々と考えたけど、しっくり来るのは出来ずにその日は終わった。


由香里はまた明日考えましょうとか言ってたし、軽く怪談系を調べとくかなとか考えながら家に帰って過ごした。


何の疑問も無く、また平和な日常が戻ってきたと無意識に想いながら。














































次の日、業者に回収されて処分されたあの石が、イシタマ様が再び同じ場所にあるという話を聞くまでは。

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