その3
あれから月日が経って私達も高校二年生、新しく入ってきた新入生達から先輩と呼ばれる立場に進級した。
イシタマ様の噂はピークは過ぎたけど、学校七不思議の一つに加わる形で残ってる。
……前の七不思議の一つはどこにいったんだろう?
「七不思議ですか。確か、減る階段、踊り好きなヒップホッパーゴースト、トイレの花子さん、憑いてくる幽霊、夕暮れ時のドッペルゲンガー、夜の決闘場、そしてイシタマ様でしたね」
因みに内容は、
【減る階段】特別棟の北側左端の階段の段数は夜中に通ると一段減っている。
【踊り好きなヒップホッパーゴースト】夜中に武道場の中心でブレイクダンスを踊ると幽霊の集団に囲まれる。
【トイレの花子さん】女子トイレの1番目から3番目までドアを3回ノックして4番目のドアの前で「花子さん、遊びましょ」と呼ぶと「はーい」と返事が返ってくるので、急いで逃げる。1時間逃げ切って同じトイレの四番目のドアの前で「花子さんの負け」と言って「負けちゃった」と返って来たら終了。捕まったり、校舎の外に出たらあの世に連れて行かれる。
【憑いてくる幽霊】夜中に2階東側教室棟の通路を歩いていると足音が一つ増えている。
【夕暮れ時のドッペルゲンガー】夕暮れ時に第1多目的教室で目を瞑りながら自分のフルネームで『○○さん、いらっしゃいますか』と三回きくともう一人の自分に出会える。
【夜の決闘場】夜中の第二多目的室で『俺と決闘しろぉ!』と叫ぶと闇のゲームが始まり、負けたら魂を抜かれる。
【イシタマ様】校舎裏の御社に入った石は神様の卵で祈りが溜まると神様が産まれ信仰した人に祝福を与えてくれるが、石に粗相をしたら天罰が下る。
な感じ。
「オーソドックスな七不思議の中にネタ系七不思議が混じってるってシュールよね。でも、イシタマ様の前の七不思議はなんだったか由香里は知ってる?」
「んー、七不思議はあんまり興味がなかったですからねぇ。裏サイトの方には度々話題に上がってたみたいですが、残ってる板にあるのはどれも今の七不思議だけですし」
「知らなかったら別に知らなくていいんだけど、こうなるとなーんか気になるんだよねぇ」
「まぁ、今度三年生の方に聞いてみるのがいいと思いますよ、でもイシタマ様が七不思議扱いに収まってしまうのはあまり良くないですね」
「何で?安定するんじゃないの?」
「私が創りたかったのは、もっとこう、皆から崇め奉られるような神様であって、肝試しのネタじゃなかったんです。こんな事の為に天罰とか頑張ってきた訳じゃないんです」
「まぁ、崇め奉るメリットが何も無いしね。産まれたら祝福くれるっていってもいつ孵るか分からないし、あまり祈る気にはなれないよね」
「うーん、ここ等辺は従姉の意見を聞いて置くべきでしたね。あの人なら上手く煽って盛り上げるアイディアも持ってそうですし」
「今からでも聞けばいいじゃん?」
「何か泣き付いたみたいで悔しいじゃないですか」
「由香里らしいね」
この友人は変に意地っ張るせいで何度かこういうポカを繰り返してるのに、全く懲りない。
まぁそこが可愛い所といえばそうだけど、ここから由香里が望むようなのにはなれないんじゃないかな。
「はぁ。けどまだ二年近く時間は残ってますからね。まだまだ逆転のチャンスはあります」
「ネバーギブアップなスピリットはいいけど、次はどうするの?」
「………イシタマ様の御利益とかをネットに書き込んだりしてみましょうか」
「あんまり効果は期待出来そうにないけどね」
「んー、なら梓ちゃんは何かアイディアとかあります?」
「あー、やっぱ本来の七不思議を見つけてそれを広めてイシタマ様を七不思議から外すとか?それと並行して由香里が言ってたみたいな御利益とか信仰を進める書き込みとかをしてく感じで」
「ホントは七不思議の一つじゃないってのを示すわけですね。確かにやらないよりかはマシでしょうし、そうしましょうか。なんならでっち上げてもいいわけですし」
「そんなのばっかだなぁ」
「情報操作って言うのはそういうものです。真実があればその中に嘘を混ぜるんですけど、今は分かんないのでしかたないですね」
そういってにこやかに笑う由香里。
どうやらこの一年もイシタマ様に関わって終わるみたいだ。