65話 無人島で大掃除?
もう二日も経ってしまいましたが、「妹ハーレム」二周年です! ありがとうございます!
最初の二日間こそ濃厚すぎて長く感じられた今回の旅行。だかもう慣れたのか、純粋に楽しくなっていたのか、気付けば今日を含めあと二日となっていた。
さて、本日は旅行五日め。だがしかし、俺たちはもうビーチを遊び尽くしてしまい、飽き始めていた。
そのせいか今朝は朝食を済ませたあとも、誰もビーチに向かおうとしない。
そんなとき、楓ちゃんがある提案をしてきたのだ。
「無人島に行きませんか?」──と。
◇妹◇
「ふぅ、無人島なだけあって、なんというか、大自然だな」
「そうですね」
到着した島を眺めながらそんな呟きを漏らすと、間髪入れずに茜が相槌を打つ。
眼前に広がるのは、樹海と称したくなるほどの、鬱蒼と生い茂った木々からなる森。そして俺たちが立っている砂浜は、あちらこちらに漂着物が散らかっている。
どう見ても人の手が加わっていない、ただの無人島だ。
率直な感想を述べるとすれば──思ってたよりも汚い。
「この有り様じゃあ、思う存分遊ぶ気分になれんな」
足元にあるゴミを見下ろし、ため息混じりに呟く。
すると楓ちゃんは申し訳なさそうに、
「すみません。まさか手入れがされていないとは思わなくて……」
「いや、大丈夫。今から掃除をすればいい!」
普段から家の掃除も担当していることもあり、俺はこの悲惨な砂浜を目にしたときからウズウズしていた。
だからとその旨を伝えると、楓ちゃんは嬉しそうに微笑み「そうですね」と頷く。
「わーい! 大掃除だー!」
「誰が一番ゴミを集められるか勝負するー!」
そこに朝日と蓮唯ちゃんが交ざり、楽しそうにはしゃぎだす。
「そ、そうですね! 頑張りましょう!」
「んー、正直他人の尻拭いみたいで気は進まないですけど、センパイの好感度稼ぎのために頑張ります!」
夜花ちゃんと司音ちゃんも賛同して、
「私はパスだぞ。めんどくさい」
「大の大人がそんなんでいいんですか……」
気だるげに吐き捨てるかすみんに、魅音ちゃんが蔑みの視線を向ける。
「……ん」
「がっ、頑張りましゅ……っ!」
光月は静かに頷き、凉ちゃんは盛大に舌を噛んだ。可愛い。
まぁ、あれだな。ホントみんなはブレな──「ぐへへっ、無人島、見渡しづらい森、お兄ちゃんと……ぐへへっ」……ほんっと、ブレねぇなぁ。
普段通りすぎて、呆れを通り越して感心してしまう。
それはさておき。
「楓ちゃん、都合よくゴミ袋とか持ってたりする?」
さすがに素手で集めておくのは危険を感じ聞いてみると、それなら、と楓ちゃんは乗ってきた大型クルーザーを指した。
「あの中に備えがありますよ」
ついでに食料や簡易的な調理セット、救急セットなどもあると教えてもらい、俺はクルーザーからゴミ袋をいくつかと、軍手やゴミ拾い用というシールが貼られたトングを持ち出す。
用意周到すぎじゃね?
なんて疑問は無粋なので呑み込んでおく。
「よしそれじゃあ、無人島の大掃除をするぞー!」
「「「おー!」」」
◇妹◇
──なんて意気込んでも、ただのゴミ拾いでしかなかったので割愛させていただく。
さて、砂浜の掃除が終わった頃には太陽もすっかり昇っていて、誰かのお腹が可愛らしく鳴った。
そう、つまりは昼である。
「朝食食って無人島渡って掃除して、もう昼か……」
「あ、あはは、すみません」
なんとなく朝からの流れを呟いてみると、楓ちゃんが苦笑する。
しまった、責めるつもりはなかったのに。
俺は慌てて「べつに楓ちゃんの提案に不満があったわけじゃない」と説明して、サラサラの銀髪を撫でてやる。
すると楓ちゃんは気持ちよさそうに「ふふっ」と微笑んだ。
うん、可愛い。
なんてことをしていると、茜が「あー! ずるいです!」と言って駆け寄ってきた。
そしてそのまま勢いに身を任せ抱きついてくる。
「うへへ~、お兄ちゃんの汗の匂い~♪」
「ちょっ、こら! 労働後の兄の体を嗅ぐな!」
スンスンとにおいを嗅いでくる茜の頭を押し返すも、どこから湧いてくるのかわからない力で茜は必死にしがみついて離れない。
くっ、これでも俺鍛えてるんだけど! なんではなれないんだっ!
なんて苦戦していると、司音ちゃんとかすみんが二人がかりで茜を引き剥がしてくれた。
「もー、茜ちゃん独占禁止だよー」
「そうだぞ。そういうのは公平にする決まりだろ」
注意された茜は、不満げに頬を膨らませ「わかってますよぅ」と唇を尖らせる。可愛い。
なんて和んでいると、ふと光月と朝日が手を繋いでトテトテとやって来た。
「「おにぃ、撫でてー」」
そんな可愛らしくお願いされ、俺は頬を緩ませながら差し出された頭をゆっくりと撫でる。
すると二人は満足げに、可愛らしく笑顔を咲かせた。
「にぃにっ、私も撫でてー!」
「お、おう」
光月と朝日を撫でていると、今度は蓮唯ちゃんが駆け寄って頭をこちらに向けてきた。
そしてこのとき、俺はすべてを悟る。
これ、全員の頭を撫でる流れだ。
その予感は正しく的中した。
「にへへ~、ありがとにぃに!」
「お、おう」
「あの、にぃさま、私も、お願いします……」
大満足と言わんばかりに満面の笑みを浮かべる蓮唯ちゃんに続いたのは、恥じらいながらもまっすぐとこちらをみつめてくる凉ちゃんだ。
もちろん断るわけもなく、みんなと変わらずに頭を撫でてあげると、凉ちゃんはわかりやすく赤面した。
「えっと、じゃあ私もお願いします、先輩」
まるでアイドルの握手会だなと思いつつ、俺は律儀に順番を待っていた夜花ちゃんの頭を撫でてやる。
性格が似ているからか、夜花ちゃんは凉ちゃんと同じように恥じらいながらはにかんだ。
うん、可愛い。
「じゃ、じゃあ魅音もお願いしますっ」
「あ、あぁ。お疲れ様」
続いて七人めは魅音ちゃん。小学生だから身長差は一番激しく、頭を少しこちらに傾けただけですっかり顔が見えなくなってしまう。
そんな小さい存在に悶えながら、俺はちょっと激しく頭を撫でてやる。
「わっ、もぅ! 葉雪さんのイジワルっ」
「あははっ、ごめんごめん」
可愛らしく怒る魅音ちゃんを微笑ましく思っていると、司音ちゃんが「あーっ、魅音ばっかズルい!」と言って抱きついてきた。
「センパイっ、早く私も撫でてくださいっ♪」
ウザカワ系が板についた司音ちゃんは、キラキラと輝いた瞳で俺を見上げてくる。
なんやかんや可愛いので、俺は素直に撫でてやるのであった。
「ふむ、なら私も撫でてもらう権利はあるだろ」
「……まぁ、うん、そうだな」
司音ちゃんの番が済むと、今度はかすみんが何食わぬ顔で目の前までやって来た。
あまりゴミ拾いをしていた姿は見てないが……ここで撫でないと後が怖いので、俺はむりやり自分を納得させ偉そうなかすみんの頭を撫でる。
得意げにドヤるかすみんが、司音ちゃん以上にウザ可愛かった。
「──って、なんで私が最後なんですかーっ!」
そこでようやく茜が声を上げ、みんなが同時に笑いだした。
「お兄ちゃん! 私を! 誰よりもたくさん撫でてください!」
「わ、わかったからそんなにくっつくな! 撫でれないだろっ」
またもや抱きついてくる茜をなんとかして引き剥がして、俺はお望み通り存分に撫でてやる。
そのことに茜はとても満足げだったが、今度は他の妹たちが不満を漏らして、ついには二順めが始まった。
そうして無限ループにも思えたこのナデナデ地獄(天国?)は、全員のお腹が空腹に悲鳴を上げるまで続いたのであった。