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64話 かすみんと一夜 2

そういえば「妹ハーレム」の投稿開始から1年と8ヶ月が経ちました!

 それからしばらく。やっと落ち着いた頃にはもう就寝時間となっていて、寝ることとなった。

 

 さすがにもう何もしてこないだろう。そう思ってかすみんの待つベッドに入ったのだが、俺が入るや否やかすみんは軟体動物のように体を絡ませてきた。


「ふっ、これくらいなら文句は言わないだろ?」

 

「ぐぬぬ……まぁさっきよりはマシだけど」

 

 そうだろう。と得意気に笑うかすみんがウザ可愛い。

 

 

「それにしても、本当に久しぶりだな」

 

 話題を変えるように、かすみんはそう呟いた。

 

「昔はお前の親が家を空けたりすると、よく妹たちも一緒にうちで預かったりしたな」

 

「その度によく一緒に寝たもんだ」とどこか感慨深そうに言葉を紡ぐかすみん。

 

 小さい頃の記憶を遡りつつ、俺は「そうだな」と相槌を打つ。

 

「あの頃は、かすみんのことお姉さんみたいに思ってたよ」

 

「なぜ過去形なのかは追求しないでおこう。殴りそうだから」

 

 かすみんの物騒な発言に「おー、怖い怖い」と茶化すと、顎に思いっきり頭突きを食らった。痛い。

 

「おいこら教師、体罰はよくないぞ」

 

「今はお前の妹だ、関係ない」

 

 顎を擦りながら抗議すると、そんな暴論を返された。

  

「なら、妹らしく兄を(いたわ)ってくれ」

 

「なんだ、妹にそんなことを望んでいたのか?」

 

「いや、全然」

 

 そう答えると、かすみんは「ならする必要ないな」とため息を吐いた。

 

 ため息を吐きたいのはこっちだっつうの。

 

 まったく、と呆れ混じりにため息を溢すと、原因であるかすみんは「どうかしたか?」と何食わぬ顔で尋ねてきた。

 

「もしかして、溜まってるのか? 仕方ない、私が処理してやろう」

 

「違うからズボンを下ろそうとするな!」

 

 華奢な腕のどこにそんな力があるんだと驚きながらズボンの中を死守すると、かすみんはつまらなそうに唇を尖らせた。

 

「けっ、面白くないやつだな」

 

「こんな波乱な面白さは求めてないからな」

 

「据え膳食わぬは男の恥と言うだろ?」

 

「毒入りを食べる男はいないだろ」

 

「誰が毒入りだ」

 

 明らかにかすみんのことなんだよなぁ。

 

 なんて考えているとかすみんに睨まれた。だから怖いって。

 

「まったく、くだらんことばかり考えおって」

 

「くだらいのはかすみんも同じだろ」

 

 なんなら教え子に手を出そうとしてる時点でかすみんの方が上。

 

 そう抗議の目を向けるが、当のかすみんは「私は至って普通だ」と飄々とした態度で答えた。

 

 普通ってなんだっけ?

 

「というか、寝るんじゃなかったのか?」

 

「かすみんが寝かせてくれないんだろ?」

 

 ケロッと尋ねてくるかすみんに、俺は呆れ混じりにそう返す。

 

 実際、先程からずっとかすみんが話し掛けてきているので寝ることができないのだ。

 

 教師が生徒に夜更かしを強制してんじゃねー。

 

「今夜は寝かさないぞ?」

 

「頼むから寝かせてくれ……」

 

 眠たいからと言葉を重ねると、かすみんは「ならお前は寝てていいからヤらせろ」と爆弾発言を投下してきた。

 

 もう睡魔に思考の半分を奪われているので、呆れを通り越してどうやって黙らせようかと考え始めている。

 

「ふふっ、お姉さんに任せて気持ち良くなっていいんだぞ?」

 

 舌舐めずりをして唇を濡らし、妖艶に微笑むかすみんの姿に──ブチッと千切れた。

 

「なんだ葉雪、その気になったのか?」

 

 突如起き上がった俺に、かすみんは困惑を浮かべながらも、余裕そうに尋ねてくる。

 

 だが俺はなにも答えず、無言でかすみんの顔の横に思いっきり腕を突いた。

 

 壁ドンならぬ、ベッドドンである。

 

 思いの外語呂が悪かった。

 

 そんなくだらないことを考える余裕があったらしく、ハッと我に返った俺は恐る恐る下にいるかすみんへと目を向ける。

 

 

「……っ!?」

 

 

 かすみんの思う壺になってしまったと冷や汗を掻いたが、当人の反応はまったく異なっており。

 

「は、葉雪ぃ……っ」

 

 いつもはからかうような、余裕ぶった態度を取っているかすみんが、俺の下でしおらしくなっていた。

 

 余裕ぶった表情は剥がれ、ただ向けるだけで相手を怖がらせてしまうほど鋭い目は垂れて濡れそぼり、思わず引っ張りたくなる柔らかな頬は恥じらうように紅潮している。

 

 子供のようなスベスベした手でネグリジェの胸元を強く握り、弾力ある太ももを何度も擦り合わせる様子はとても切な気だ。

 

「葉雪……」

 

 かすみんの口から熱い吐息が漏れる。

 

 理性をしっかり保っていないと、思わずキスをしてしまいそうだ。

 

「いい、ぞ……葉雪なら、私の──を捧げれる、から……っ」

 

 恋する乙女のような発言に、俺は目の前の人物が本当にかすみんかと疑ってしまった。

 

 いや、だってかすみんがこんな乙女チックなこと言うわけないし。

 

 内心激しく動揺しながらも、それを悟られないよう俺は更に攻撃を仕掛けた。

 

 空いている手をかすみんの火照った頬に添え、うっかり重ならない程度に顔を近付ける。

 

「っ……あぅ」

 

 それだけでかすみんは更に赤面し、可愛らしい反応を見せてくる。

 

 ヤバい、楽しい。

 

 そんな感想が浮かび──俺の自制心が働いた。

 

 俺が楽しいとか考え出すと、いつもやりすぎるからな……自重せねば。

 

 昂った感情を落ち着かせ、期待を孕んだ瞳を向けてくるかすみんに意識を向ける。

 

「葉雪ぃ……私、もう我慢できないぞ……っ」

 

 はぁはぁ、熱く荒い息を繰り返すかすみんに、俺は一瞬見惚れてしまった。

 

 だがすぐに冷静さを取り戻し、焦らすように添わせていた手をゆっくりと這わせる。

 

 少し触れると、かすみんはくすぐっそうに「んっ」と声を漏らした。

 

 可愛すぎるかすみんに、俺は抱き締めたくなる衝動に駆られた。もちろん我慢したが。

 

 さて、そろそろ頃合いかな。

 

 俺はかすみんの上から退き、隣に倒れる。

 

 どうしたのかと高揚しつつ首を傾げるかすみんに、俺はからかうような笑みを浮かべ、

 

「俺だって男なんだから、からかい半分で誘ってくるの止めろよ?」

 

 と隙だらけのかすみんにデコピンを放った。

 

「あぅ」と可愛らしい悲鳴を溢したかすみんは、落ち着いたのかいつもの声音で「葉雪のバカ」と罵倒してくる。

 

「はいはい。もう寝るからな」

 

「……葉雪のバカ」

 

 繰り返し罵倒を吐くかすみんに「おやすみ」と返して、俺は目を閉じた。

 

 すっかり疲れてしまっていたのか、俺の意識はすぐに夢の世界に沈み始め、

 

 

「──私の方が溜まるだろうが……ばか」

 

 

 なんてかすみんの言葉が、聞こえたような気がした。

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