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63話 海と水着とカメラと妹 4

あわわっ、久しぶりすぎる投稿ですよ!

 (あかね)と一緒にかすみんを起こし、俺たちは雑談を交わしながら皆の元へと向かっていた。

 

 といっても、皆バラバラに遊んでいるため一ヶ所にまとまってはいないのだが。

 

 

「お兄ちゃん、全員の写真を撮るんですよね?」

 

「あぁ、そうだな。それぞれの写真はもう撮ったし」

 

 そう答えると、茜は「個人では撮らないんですか?」と首を傾げた。

 

「そうだな、全員で撮ったあとに、気紛れで撮るかもしれんな」

 

「そうですか。なら私がお兄ちゃんを撮りましょう!」

 

 なぜか興奮したように迫ってくる茜に、俺は「大丈夫だ」と遠慮する。

 

「えー? 撮らせてくださいよー、撮りたいんですよー」

 

「いいって。俺の写真なんてあっても厳人(げんと)さん困るだろ」

 

「そんなことないと思いますよ? それに……」

 

 茜は少し恥ずかしがるように頬を赤らめて、小声呟く。

 

 ホントに小さすぎて、難聴系主人公じゃない俺でもさすがに聞こえなかった。

 

 なんか、嫌な予感がするなぁ……。

 

 やはりここは聞き返した方がいいのだろうか? そう頭を悩ませていると、ふと前方から笑い声が聞こえてきた。

 

 

「あっ! おにぃ戻ってきた!」

 

 

 そんな可愛らしい反応を見せてくれたのは、すっかり全身を砂まみれにした朝日(あさひ)だ。

 

 朝日はまるで飼い主と再会した犬のように、満面の笑みで砂浜を駆けてきた。

 

 それにつられるように、一緒に遊んでいた光月(みつき)(すず)ちゃん、魅音(みのん)ちゃんもこちらへ向かってくる。

 

「おにぃ! 私たち頑張ったんだよ!」

 

 両手を全力で振り回す朝日に、光月が静かに首肯する。

 

 そしてコテッと首を傾げ可愛らしく「褒めて?」とお願いしてきた。

 

 ここまでされて俺が断れるわけもなく(ここまでされなくても快く了承するが)、俺は要望通り「よく頑張ったな」と二人の頭を撫でてやる。

 

「えへへぇ♪」

 

「……ふっ♪」

 

 少しくすぐったそうにはにかむ二人が、マジで可愛すぎる。

 

「……(じー)」

 

「……(じー)」

 

 そして感じる二つの視線。朝日と光月の後ろで、凉ちゃんと魅音ちゃんが頭を撫でてほしそうにこちらを見ていた。

 

 そんな可愛らしい二人に苦笑を浮かべながら、俺は二人の頭へと手を伸ばし、ゆっくりと優しく撫でる。

 

「二人もよく頑張ったな」

 

「あぅ……あっ、ありがとうございますっ、にぃさまっ」

 

「わっ、あっ、ありがとうございます、葉雪(はゆき)さん」

 

 嬉しそうに微笑む二人が天使可愛い。

 

 それにしても、と彼女たちの後ろに目を向ける。

 

 そこには立派に建てられた砂城の周囲約二メートルほどに広がった街と、それらを囲む壁が作られていた。

 

「……ホントに、よく頑張ったなぁ」

 

 もはや「頑張った」などという単調な言葉では到底労うことのできない世紀の傑作に、俺の口から乾いた笑みが溢れる。

 

 あぁ、妹たちの才能が怖い……。

 

 

「まぁっ、凄いじゃないの!」

 

「うっひゃー、すっごいねー!」

 

 そこにやって来たのは、ビーチバレーを楽しんでいた(かえで)ちゃんと蓮唯(れんゆい)ちゃん。二人の額に浮かんだ小粒の汗が、二人の健康らしさを表している。

 

「やっぱり凉には芸術の才能があるのかしら?」

 

 添えるように手を頬に当て、楓ちゃんは嬉しそうに微笑む。

 

 それに対し褒められた凉ちゃんはというと、顔を真っ赤に染め上げ忙しなく両手を振っていた。

 

「わっ、私にそんな才能ない……っ」

 

「ふふっ、そんな謙遜しなくてもいいのよ」

 

「そうだぞー! 凉は凄いんだぞー!」

 

 恥じらう凉ちゃんを、楓ちゃんと蓮唯ちゃんが抱き締めて髪をわしゃわしゃと撫で回す。

 

 嗚呼……羽真(はねま)三姉妹が百合ん百合んしてて尊い……。

 

 水着姿でイチャイチャする三人に悶えていると、不意に後ろから抱きつかれた。

 

 背中に押しつけられる胸の感触からして茜なのだろうから、俺はとりあえず気にしないことにした。

 

「ちょっとお兄ちゃん!? この状況で無視はひどくないですかっ!?」

 

「あーはいはい、茜は世界一可愛いぞ」

 

「せ……っ!? もぅ、お兄ちゃんったらぁ♪」

 

 軽く口にしただけなのだが、茜はあっという間に機嫌を良くし、まるで犬のように俺の回りを歩き始めた。

 

「えへぇ♪ お兄ちゃん好きーっ♪」

 

 やがて正面で止まった茜は、緩みきった頬に朱を散らして再び抱きついてきた。

 

 お腹に二つの膨らみが押しつけられ、茜は「ふっへへへ♪」と珍妙な笑みを溢しながら汗ばんだ胸に頬擦りをしてくる。

 

 こうしてると、やっぱり茜は可愛いよなぁ。

 

 ギューっと抱きついて離れない茜に和みながら、俺は深紅に煌めく髪を優しく撫でる。

 

 

 ──ぺろっ。

 

「ちょっ、なにしてんだ茜っ」

 

「なにって、ちょっと舐めただけですよ?」

 

 抱きついたまま見上げてきて、きょとんとした様子で首を傾げる茜に、俺は呆れてため息を吐く。

 

 まったく、普通にしてたら可愛いんだけどなぁ。……まぁこういうところも可愛いんだが。

 

 なんて考えていると、茜は勝手に了承を得たつもりになったのか舌を出して大胆に舐め始めた。

 

「えへっ、お兄ちゃんの汗の味~♪ ぐへへっ♪」

 

「おいこら! やめい!」

 

 なんだかだんだん変なスイッチが入り出した茜を引き剥がそうと奮闘していると、今まで無言だったかすみんが茜の背後に回り、脇に手を当てる。

 

 そして躊躇いもなく、あまり変化のない表情でかすみんは茜を容赦なくくすぐり出した。

 

「ちょっ、かっ(かすみ)さん!? なにして──ひゃっ、ちょっ、はひっ!?」

 

 突然の攻撃に虚を衝かれた茜は、くすぐりに耐える方に意識を向け、そのお陰で拘束が緩まった。

 

 その隙に俺は後ろへと跳び、茜から距離を取る。

 

 うっへぇ、どんだけ舐めてんだよ……結構ベタベタになってるじゃないか。

 

 茜に舐められたところを見ると、唾液が日光に煌めき存在を主張していた。

 

「あぁもう、お兄ちゃんに逃げれちゃったじゃないですか! どうしてくれるんですか霞さん!」

 

「うっさい。そういうのは部屋でやれ、部屋で」

 

 いや、部屋でもよくないと思うのだが。

 

 と内心で突っ込みを入れていると、茜が騒いでいたのを聞きつけたのか、気づけば残る司音(しのん)ちゃんと夜花(よるか)ちゃんも集まってきていた。

 

 

「まぁたイチャイチャしてたんですか? センパイ」

 

「俺じゃねぇよ」

 

「またまたぁ、センパイは舐められるのが好きなんですよね? へんたぁい♪」

 

「舐められるのが好きってわけじゃないし、なんならナメられるのは嫌いだぞ? なぁ?」

 

「いででっ!? センパイっ、ちょっギブ! 私にSM趣味はありませんよ!」

 

 拳で頭をグリグリすると、生意気な後輩はすぐに両手を挙げ降伏宣言をする。

 

 というか、以前魅音ちゃんや夜花ちゃんを巻き込んで猫コスしてたとき、ノリノリで「ご主人様♪」とか言ってたしあんまり信用ならない。

 

 しかも、今だって「うへっ♪ これはこれでアリかも……」とか口ずさんでるし。絶対そっち(SM)の気あるよね?

 

 まぁとりあえず、あまりやりすぎるのも司音ちゃんに悪いと思い解放してあげた。

 

 少し残念そうにしょんぼりする司音ちゃんに、俺はやっぱりそっち(SM)の趣味があるんではないだろうかと疑った。

 

 

 

「さて! 皆揃ったことですし、集合写真を取りましょう!」

 

 さっきまでかすみんに説教を喰らっていた茜が唐突に仕切りだし、いそいそと指示を飛ばす。

 

 やれ、背景はどうだ。角度はどうだ。並び、ポーズはどうだと、なぜか俺を抜きに話し合いが進む。

 

 ……まぁ、わかってたけども、俺の意思は尊重されないんだな。

 

 なんて遠目で妹たちを眺めていると、話がまとまったのか皆動き始めた。

 

「お兄ちゃんー、お兄ちゃんはここに立ってください」

 

「はいはい」

 

 俺は茜に命令された通りの場所に立つ。すると俺を中心に幼い組(+かすみん)が前に並び、隣には楓ちゃんと夜花ちゃんという圧倒的な二人が並んだ。

 

「ふふっ、よくよく考えたら、葉雪にぃさんとこうして写真を撮るなんて初めてですね♪」

 

「お、おう、そういえばそうだな」

 

「わっ、私も先輩と写真初めて、です」

 

「お、おう」

 

 なんだかジリジリと距離を詰めてくる二人に戸惑っていると、楓ちゃんと夜花ちゃんは目配せをして腕に抱きついてきた。

 

 夜花ちゃんの年齢不相応な巨大な爆弾と、楓ちゃんの大きくも張りのある果実が俺の腕に容赦なく押しつけられ、むにゅっと形を変える。

 

 二人ともビキニタイプの水着で露出が多いため、しっとりむっちりした感触と心地よい体温が(じか)に伝わって心臓に悪い。

 

 あぁあああああ──っ! ちょっ、それはやばっ、めっちゃ柔らかいっ!

 

 夏の暑さにやられたのか、どんどん顔が熱くなっていく。

 

 あぁもう、さっきから心臓がうるさい。一回止まってくれないかな!? 死ぬけど!?


 なんて心の中で叫んでいると、カメラをセットし終えた茜が小走りでこちらへと向かってきた。

 

 走るくらいなら、タイマー設定長くしておけばいいのに。なんて少しだけ冷静を取り戻す。

 

 ──ってあれ? なんか茜すごい真っ直ぐ来てない? 大丈夫? これぶつかるんじゃないか?

 

 真っ直ぐ走ってくる茜に不安を覚えていると、なんというか、茜は予想の斜め上の行動を取る。

 

「おにぃちゃーん!」

 

「ちょっ、茜!?」

 

 砂を蹴り勢いよく跳んできた茜に抱きつかれ、俺は勢い余って倒れないよう、両手で茜を受け止める。

 

 左右から「あっ」と残念そうな声が聞こえたが、咄嗟のことで仕方ないと思う。

 

 茜は首に腕を回ししっかり掴まると、カメラの方へ目を向け笑顔を浮かべる。

 

 それに対抗しようとしてか、皆もポーズを止め俺に触れようと密着してきて、

 

 

 ──パシャ。

 

 

 そんなところで、呆れるようにシャッター音が鳴った。

 

 

 あとで確認してみたが、それはもう厳人さんに見せれるような写真ではなく、俺たちは改めて写真を撮るのであった。


 ついでに、朝日たち四人が作り上げた砂城都市もカメラに収めることにした。

 

 というか、どこのハーレム王だよ、俺は。

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