63話 海と水着とカメラと妹 2
今回も短いですし文章アレになっていますが、ご了承ください……本当に申し訳ないです。
カメラを片手にビーチを彷徨うことしばらく。俺は世界遺産も霞むほど素晴らしいモノを目にした。
それは光月ら四人が作っていた砂の城。作り始めの頃はまだ微笑ましいものだったのに、少し目を離した隙にディズ○ー顔負けの砂城へと変貌を遂げていた。更には砂城周辺に道や城下町まで作っている始末。
これはもう芸術としか言いようがないな。
妹たちの力作に感嘆していると、いつの間にやら光月、朝日、凉ちゃんと魅音ちゃんに囲まれていた。皆期待に輝いた瞳で俺を見上げている。
「みんな凄いなー、よく頑張ったぞ」
「えへへぇ♪ 凄いでしょぉ!」
「頑張った」
「あぅ……ありがとうございます……っ」
「別に魅音は何もやってないけど……えへっ♪」
期待に応えようと頭を撫でながら称賛すると、皆可愛らしい笑顔を咲かせてくれた。
俺の妹たちが可愛すぎてヤヴァイ。
「ところでおにぃ、それなにー?」
妹たちの尊さに悶えていると、ふと朝日がカメラを指差して尋ねてきた。
「カメラだ」
「それはわかってるよぅ!」
ちょっとからかうつもりで答えると、朝日は可愛らしく頬を膨らませぽかぽかと叩いてきた。
「はははっ、ちょっとからかっただけだぞ」
「もぅっ」
「「「……(じー)」」」
愛らしく怒る朝日に笑みを浮かべていると、ふと感じる三人分の視線。〝構ってほしい〟という彼女たちの意思がひしひしと伝わってくる。
まったく、可愛いじゃねぇか。
俺は順に妹たちの頭を撫でながら、カメラを持っている経緯を説明する。
「へー、じゃあ私たちも撮ってくれるのー?」
「あぁ、そうだぞ」
「……葉雪さん、それってスマホ──」
「魅音ちゃん、それ以上は言ってはいけない」
「あ、はい」
茜と同じような慈悲なきことを言い掛けた魅音ちゃんを制止し、「カメラの方が気分的にいいだろ」と適当な理由を付け足す。
魅音ちゃんは若干苦笑いを浮かべながら納得してくれた。
「よし、それじゃあみんなを撮りたいんだが、この城の周りに集まってくれるか?」
「「わかったー」」
「はっ、はひっ」
「大丈夫? 魅音たち城の付属品みたいにならない?」
やけに心配する魅音ちゃんに「大丈夫だ、みんなの方がメインだから」と言い聞かせ、各々に軽くポーズを決めてもらう。
「じゃあ撮るぞー」
俺はもう一度だけ確認を取り、シャッターボタンを押した。
「ちゃんと撮れてるな。ありがとうみんな」
「だっ、大丈夫です……っ」
「「おにぃも一緒に撮りたかったー」」
「二人とも、ワガママはダメだよっ」
微笑ましい妹たちが微笑ましいとか語彙力皆無なこと考えながら次の場所へ行こうとすると、「待って!」と魅音ちゃんに腕を掴まれた。
「どうしたの?」
「えっと……葉雪さんも一緒に撮りませんか?」
ついさっき朝日と光月にワガママはダメとか言っていたのは誰だろうか。いや、そんなところも可愛いのだが。
「うーん、そうだなぁ」
俺としては快く了承したいが、なんか後ろの木陰から感じる視線が怖いし他の子の写真も撮らなくてはならないので、俺は魅音ちゃんの頭に手を乗せ「また後でな」と告げる。
魅音ちゃんは「はい」と小さく頷いて、またみんなと町を作り始めた。
俺はそれを確認し、次の場所へと向かうのであった。
◇妹◇
カメラを持って向かったのは、今も楽しそうにビーチバレーをしている楓ちゃんと蓮唯ちゃんのところ。二人はこちらに気付くと笑顔で手を振ってきた。
うん、可愛い。
妹の可愛さを再確認しながら手を振り返していると、蓮唯ちゃんがボールを両手で掲げながらこちらに走ってきた。
「にぃに! 一緒にバレーしよっ!」
「あはは、それはまた後でな」
そう言うと蓮唯ちゃんは「うんっ!」と元気に頷き、カメラに視線を向けた。
「にぃに、それどうしたの?」
「あぁ、これは──」
「それって」
説明しようとすると、楓ちゃんが蓮唯ちゃんを抱き締めるようにして顔を覗かせてきた。
「それ、私が持ってきたモノです」
「えっ、そうなのか?」
「はい」
そうだったのか。
「なんか悪いな、勝手に使って」
「いえいえ、父から『みんなの写真を撮っておいてくれ』と言われてただけですから、葉雪にぃさんが撮ってくれて構いませんよ」
なるほど。確かに同行したくて大泣きしていた厳人さんなら、理解できる。
いや、親なら娘たちの楽しんでる写真をほしいと思うのは当然のことか。俺は親になったことないからわからんけど。
「じゃ、二人の写真撮らせてもらえるか?」
「はい」
「うんっ!」
二人は笑顔で頷くと、ご丁寧にビーチバレーをしているようなポーズを取ってくれた。しかも割りと自然な感じに。
「はい、チーズ」
パシャリとシャッター音が鳴ると、二人はポーズを止めてこちらに駆け寄ってくる。
「どうですか?」
「大丈夫、きれいに撮れたよ」
ほら、と見せてあげると、楓ちゃんは「写真撮るの上手ですね」と褒めてきて、蓮唯ちゃんは「すごーい!」とシンプルな感想を口にした。
ふふふ、そんなに褒められるとくすぐったいじゃないか。
「葉雪にぃさん、あと何枚撮るつもりですか?」
「そうだな、司音ちゃんと夜花ちゃん、あとかすみんだから二枚かな?」
「なら、その後に全員で写真撮りましょう」
楓ちゃんはポンッと手を叩き朗らかに微笑んでそう提案した。
ふむ、さっき朝日たちと一緒に撮るって約束したし、みんなで撮った方がいいよな。
「うん、そうしようか」
「じゃあその時になったらまた声を掛けてください♪」
俺は「わかった」と返して、二人の元を離れた。




