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63話 海と水着とカメラと妹

長らくお待たせしてしまって、誠に申し訳ありません!

リハビリ的な感じで文字数が少なくなっておりますが、ご了承ください。

 宿泊二日目。(あかね)と朝チュンとかいうやっぱり何の変哲もない朝を迎え、揃ってリビング(超広い)に行けば妹たちから羨望と嫉妬に満ちた視線が送られた。

 皆これが昨日のビーチバレーの賞品だとわかっているので特に何も言ってこないが、向けられる目が彼女たちの感情を雄弁に語っている。

 なんというか、そのうち皆俺のベッドに潜り込んできそうだな。

 そうなったら賞品という位置付けが無意味となるのだが……別に気にしなくていいだろう。茜ほど刺激が強くなければ、別に俺は添い寝くらいなんてことないワケだし。

 

 と長々と綴ってみるがその後はとても普通なもので、仲良く朝食を摂ると俺たちは昨日と同様に各々で水着に着替えビーチに向かった。

 勿論、日焼け止めは妹たちで塗らせた。昨日の惨劇を繰り返すワケにはいかないからな。

 

 

   ◇妹◇

 

 

 朝にも関わらず太陽さんは青空に燦々と輝き、耐え難い熱エネルギーと女性の天敵とも言える紫外線を躊躇いなく降り注いでいる。少しは自重していただきたい。

 目元を手で隠しながら夏の空を仰いでいると、別荘の方から和気藹々とした妹たちの声が聞こえてきた。皆揃って元気なようで、お兄ちゃん嬉しいよ。

 

「お、に、い、ちゃ~んっ♪」

 妹たちの談笑に耳を傾けていると、突如背後から抱き付かれた。

 こんなことをするのは一人しかいない。俺は後ろに手を伸ばしノールックで犯人の横腹を優しく掴む。

「ひゃうっ!?」

 突然のことに驚いたのか、それともくすぐったかったのか、犯人は悲鳴と共に体を離した。

 ふっ、仕返し完了。

 

「むぅ、お兄ちゃんは酷いです」

「何がだ茜、俺のどこが酷いのか原稿用紙三枚で述べてみろ」

「体型を気にしがちなナウいJKのお腹を掴んだことですよ」

 ナウいとか、父さんでも言わないだろ……

 なぜ茜がそんな死語を知っているのか、お兄ちゃんすごい気になる。

「茜、死語は慎んだ方がいいぞ」

「真面目な顔でボケないでくださいよお兄ちゃん……」

「……」

 ちょっと掛けてみただけなのに、割りとガチで茜は引いたご様子。もうドン引きである。

 なんでや……死語はよくてギャグはダメななのか……。

 


「あーっ、あかねぇまた抜け駆けしてるー!」

 

 ちょっと沈んだ空気を切り裂いたのは、朝日(あさひ)の明るいそんな声。それに続いて蓮唯(れんゆい)ちゃんや司音(しのん)ちゃんが「ズルい~」と声を上げる。

「ズルくなんかありません、一番の妹として当然の権利です」

 ブーイングを浴びながらも、茜は薄い胸を張ってそう答えた。

 というか、一番の妹とは何ぞや。

 

 

 皆と合流して俺たちはしっかりと準備運動をこなし、今日は各々で自由に遊ぶこととなった。

 茜は「遊びますよぉっ!」と意気込み海に出て、光月(みつき)と朝日、(すず)ちゃんと魅音(みのん)ちゃんら四人は仲良く砂浜で城を建築。(かえで)ちゃんは蓮唯ちゃんと二人でビーチバレーを楽しみ、司音ちゃんと夜花(よるか)ちゃんはパラソルの下で楽しそうに談笑していた。残るかすみんはというと、どこから持ち出してきたのかわからないビーチチェアで寝ている。

 

 さて、残った俺はどうするべきか。

 どこかのグループに交ざるのも少し気が引ける。かといってこのまま夏休みを謳歌する妹たちを眺めるだけというのも……意外とアリかもしれない。

 いやいや、それは流石にアウトだろ。ただジッと妹たちを見てるだけなんて……

 そう頭を悩ませていると、ふと視界の端、組立式テーブルの上にあるモノが見えた。

 そうだ、これなら──

 

 

   ◇妹◇

 

 

 俺は例の物(カメラ)を首に掛け、モデルを探してビーチを徘徊していた。

 結局は全員写真に収めるのだが、やはりトップバッターは一番映えるモノにしておきたいからな。こだわらねば。

 そうして彷徨うこと数分、充分に海を満喫したのか茜が体をほぐしながら海から戻ってきた。

 こちらに気付いた茜は、笑顔を咲かせ手を振りながらこちらに駆け寄ってくる。

 

「おにーちゃーん、何してるんですか~?」

「おぉ、茜か。そうだ、ちょっと撮らせてくれないか?」

「こんな真っ昼間から水着を脱がそうだなんて……お兄ちゃんは大胆です♡」

「〝取る〟じゃない、写真を〝撮る〟方だ」

「つまり、私にヌードモデルをしろと?」

「ばかやろう」(ぺしっ)

「あふんっ♪」

 機関銃の如きボケにため息を吐き、俺はカメラを見せて茜に説明をする。

 

「なるほど、夏の思い出を残しておきたいですか……スマホでいいじゃ──」

「おっと、それ以上は言わせないぞ?」

 至極もっともなことを言い出しそうになった茜の口を押さえ、俺は「写真の方が風情があるだろ」と適当に付け足す。

 まぁスマホで撮って写真にすることもできるのだが……どうせ今日も海に行くだろうと部屋に置いてきてしまったから、今ここにはないのだ。取りに行くのもめんど……時間がもったいないし。

 

「というワケで茜、最っ高に可愛くて夏らしいところを撮らせてくれ」

「なっ……お兄ちゃんはホント卑怯ですっ」

 何故俺は罵倒されたのだろうか。

 茜は少しピンクに染まった頬に手を当て、深呼吸を繰り返す。心なしか口角が上がっている気がするが……気にしないでおこう。

 

「落ち着いたか? 茜」

「はい、しっかりと落ち着きましたよ。ふへへっ♪」

 その割りには顔がだらしないことになっているが、気にしない方がいいのだろうか。

 まぁ茜がいいって言っているんだし、大丈夫だろ。

「それでお兄ちゃん、どんな感じの写真を撮りたいんですか?」

「そうだな、今は水着だし海を背景にした方がいいだろうな」

「そうですね」

 茜は頷くと、頬に指を当て「ポーズはどうしますか?」と尋ねてきた。

 ふむ、ポーズか……

「別に気にしなくていいと思うぞ。自然体で頼む」

「堂々と写真撮らせてほしいと言われたのに自然体って、面白いですね」

「それもそうだな」

 なんだか矛盾した要望に、兄妹揃って笑みを溢す。

 

「じゃあ普通な感じでいいですか?」

「あぁ」

「わかりましたっ」と敬礼すると、茜は膝に両手を突き胸元を強調させるような仕草を取った。

 それが普通なのか? なんて疑問を抱いたが、普段の茜からしたら充分まともだと納得させる。

 というか、そういうのは楓ちゃんか夜花ちゃん辺りが似合うんだよなぁ。

 そんなことを考えていると茜に睨まれた。ゴメンナサイ。

 

「よしじゃあ撮るぞ?」

「はい♪」

 確認をすると、茜は笑顔で答えてくる。それを見て俺は、ゆっくりとシャッターボタン押した。

 

 ──パシャリ。

 

 静かに鳴ったシャッター音に茜が姿勢を崩し、「どうでしたか?」と寄ってきた。

 俺はデータを見せながら「可愛く撮れたぞ」と答える。

「えへへっ、なんだかお兄ちゃんに写真を撮ってもらうのいいですね♪」

「そうか? ならまた後で頼むわ」

「はい♪ なんなら今からもっと際どい──」

「はいはい、そういうのはいいから」

 茜が調子に乗り出したのを察し、俺はため息を溢しながら茜の元を後にした。

 後ろから、

「うわぁんっ、冗談ですよぉぉぉっ」

 なんて泣き声が聞こえたが、俺は気にせず次のモデルを探すのであった。

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