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62話 茜と添い寝

昨日体調不良で投稿できなかった三話目です。

 俺は断れぬまま、(あかね)が潜んでいたベッドに潜り込む。

 先程まで茜が隠れていたからか、ベッドはじんわりと暖かく微かに甘い匂いも漂ってくる。

 まるで茜に抱き込まれているような感覚に、思考が蕩けそうになった。

 

「そ、そういえば、どうして俺よりも早くこの部屋にいたんだ?」

 俺は気を逸らそうと、最初から抱いていた疑問を口にする。

「それはですね、お兄ちゃんがお風呂から上がってすぐに私だけお風呂に入って、お兄ちゃんが一旦部屋に戻るのを見届けてからこれに着替えて待ってたんです」

「どうしてこの部屋だとわかったんだ?」

「ふふふ、何年兄妹をしてると思ってるんですか。そのくらい簡単に思い付きますよ♪」

 茜は自慢げにそう言うと、ギュッと抱き付いてきた。

 ふわりと甘い匂いにクラッとしたが、そこは持ち前の理性で耐え苦し紛れの反撃として茜の体を抱き締める。

 極薄のネグリジェしか着ていないため、触れたときの感触はほぼ肌そのもの。

 もしかしたら裸よりも興奮するかもしれない。

 ネグリジェとそれを使い(こな)す茜に震えていると、茜は身を捩らせ位置を動かしていた。


「何してるんだ?」

「いえ、一番いいポジションはないものかと探してるだけです」

 いいポジションとは何だろう。

 そんな質問は口には出さず、俺は身の安全を確保するために茜を寝かしつける方法を考える。

 子守唄……いや、茜がその程度で眠くなるとは思えない。いっそずっと抱き締めておくか? それだと茜が興奮してヤバい方向に行きそうだな。

 なかなか良い案が思い付かず苦悩していると、茜は「そういえば」と口を開いた。

「ビーチでは私をローションでさんざん攻めてくれましたね」

「いや、ただ日焼け止め塗ってただけだし。それにローションタイプを選んだのは茜だろ?」

「そうですけど、後半お兄ちゃん〝お仕置き〟と称して私をさんざん弄びましたよね?」

「うっ」

「私はダメって言ったのに、お兄ちゃんは無視して私を攻め続けて……もう快楽に溺れる寸前だったんですよ?」

「ごめん、それは知らない」

 というかどうでもいい。

 そう言うと茜は「コホン」と咳払いをして続ける。

 

「なので、お兄ちゃんに仕返しをしたいと思います」

「し、仕返し?」

 不穏な単語に訊き返すと、茜は「はい」と頷き──

 

 ビリビリビリィッ!

 

 そんな音が俺の服からした。

 …………あれ、どうなってんだこれ。

 シーツを捲り確認すると、俺のシャツは裾から襟まで一直線に両断されてた。

 茜の手には、どこにあったかわからない裁ちバサミが握られている。

 多分、このハサミで俺のシャツを切り裂いたのだろう。

 ……なんで?

 そんな疑問がグルグルと頭の中を渦巻くなか、茜は裁ちバサミを床に投げ露になった俺の肉体にそっと指先を這わせる。

 ゾクリとした感覚が脳を駆け巡った。

 

「ふふふっ、いいですねその表情。すごくゾクゾクします♪」

 茜は妖しく微笑むと、俺の体に自らの体を押し付けるように抱き付いてきた。

「ぬぉぉぉぉぉっ」

 何度も言うが茜は今極薄のネグリジェ姿。そんな状況で抱き付かれたら、もうほぼ裸で抱き合っているようなモンだ。

 じんわりと伝わってくる体温は心地良い程に暖かいが……胸板に押し付けられる二つの膨らみの感触に意識を持っていかれる。

 や、柔らけぇ……っ!

 ふと思い返されるのは昼前のこと。茜にお仕置きと称してローションを塗っていたときのことだ。

 あのとき俺は確か茜の胸も塗っていたような気がする。

 そのときの感触と今感じている感触が、俺の理性を容赦なく削っていく。

 

「辛そうですねお兄ちゃん。我慢しなくてもいいんですよ?」

 心底楽しそうな茜は、俺の劣情を煽るかのように微笑みかけてくる。

「ふっ、別に我慢なんてしてない」

「強がらなくてもいいんですよ? 私はお兄ちゃんの全てを受け入れる覚悟がありますから」

「そんな覚悟は覚悟はゴミ箱にでも捨てておけ」

「嫌です♪」

 茜は妖しく微笑すると、おもむろに体を擦り始めた。

 それは動物のマーキングのようで……いや、そうじゃない。

 茜が体を動かすことで、茜の胸やお腹が俺の体に擦れる。

 その度にくすぐったいような、それでいて快感に似た感覚が全身を駆け巡った。

 うぁ……茜の胸が形をプニプニと変えて……

 大きさこそ夜花(よるか)ちゃんに負けるが、形や張りは一歩も譲らない。

 

 ……って俺は何を語ってんだ!?

 己の思考に驚きながら、俺は別のことに意識を向けようとする。だが、

 な、何だろう。突如柔らかい感触の中に硬いモノが──いや何でもい。俺は何も知らない。

 突然現れた別の感触に、再び茜の体躯に意識を持っていかれた。

 

「お兄ちゃぁん♪」

 不意に掛けられた猫撫で声に茜を見ると、既に頬は紅潮しきって、赤い瞳は潤みハートのような幻覚が見える。

 口角からは僅かに唾液が垂れており、口からは熱の籠った吐息が漏れていた。

 茜はいつの間にか、完全にできあがっていた。そう、発情していたのだ。

 この状態になると、治まるまで耐えきるかどうにかして茜を寝かせるか気絶させるしか逃げる手段はない。

 ど、どうすればいい。……どうすればいいんだ。

 グルグルと思考を巡らせていると、突然頬に湿ったモノが触れた。汗ばんだ茜の手だった。

 

「あ、あか──」

 名前を呼ぶ寸前、茜に口を塞がれた。

 茜の唇も口内もとても熱く、茜がどれだけ興奮しているかがわかる。

「んっ……はぁ、はむっ……ちゅっ♡」

 茜の息と唇が触れ合う度に出る音が混ざり、俺の理性をどんどん溶かしていく。

 少ししてようやく茜が口を離した。

 二人の口を唾液の糸が伝う。

「茜……」

「ふふっ♪ どうですか? 興奮しましたか?」

 ニコニコと尋ねてくる茜に俺は首を横に振る。

「確かに、お兄ちゃんのアレも反応してませんね」

 茜は俺の下半身の方に目を向け、残念そうに呟いた。

 やめろ、夕食前のこと思い出すだろ。

 

「うーん、どうしたらお兄ちゃんは興奮してくれますか?」

「本人に訊いて答えると思ってるのか? ……まぁいい。俺は妹に興奮すような変態じゃないからな」

「でも、妹を弄ぶのは好きですよね?」

 茜が言っているのは、多分昼前のお仕置きのこと。

「その件に関しては本当にすまないと思ってる」

「いえ、いいですよ。お兄ちゃんに気持ち良くしてもらうの大好きですから」

 それに興奮します♪ と恍惚とした表情を浮かべる茜。

 俺は若干呆れてため息を吐く。

 

「そうだ、お兄ちゃん。これなら興奮しますか?」

 突如妙案を思い付いたように手を叩くと、茜は俺の手を掴みおもむろに自信の胸に押し当ててきた!

 掌に茜の柔らかい感触が伝わってくる。決して硬い感触など存在しない。

「揉んでください♪」

「こ、断る」

司音(しのん)ちゃんたちの胸は揉んだんですよね?」

「……」

 茜はもう一度、「揉んでください」と言った。

 それはお願いじゃない、脅迫だ。

 ここで断ったら何をされるかわからず、俺は断念しゆっくりと茜の胸に手を伸ばす。

 俺の指を呑み込むように、茜の胸は形を変える。

 

「んっ……うふっ♪ 気持ちいいっ、ですよ♡」

 妖艶に微笑み感想を述べる茜に、俺は「うっさい」と言う。

「そんなにツンツンしないでくださいよ♪」

「別に……」

「あっ、んふっ♡ んぁっ……あんっ♡」

 茜の喘ぎ声に、俺の理性は削れていく。

 ヤバい、このままだと近いうちにはち切れる……仕方ない。

 俺はもう一度奥の手を使うことを決意し、意識を切り替える。

 ……よし。

 俺は正当防衛だと暗示を掛け、半ば適当に茜の胸を揉みしだく。


「あっ! おっ、お兄ちゃんっ……いきなりどうしっ──ああんっ♡」

 茜は驚くが、すぐに気持ち良さそうに声を漏らす。

 俺は茜の喘ぎ声を聞き流し、ただひたすらに胸を揉む。

「あっあっあっ! ちょっ、おにいっ、ちゃんっ! まってくださっ、んぁっ!」

 最初は気持ち良さそうに声を出していた茜だが、次第に何かに耐えるような声に変わっていた。

 やめて、と喘ぎ喘ぎに言ってくるが、俺はそれを無視。

 あと少し……あと少しだ。

 

「あっあっあっ♡ お兄ちゃんっ、私もう……♡ あっ、んっ……ああっ、ふぁっ! んんっ♡ もうっ、らめぇぇぇえええっ♡」

 

 茜は甲高い矯声を上げ、ぐったりと脱力した。

 日焼け止めのときといい、俺は何をしてるんだ……

 明らか事後にしか見えない光景に、ふつふつと罪悪感が沸いてくる。

 

「……寝るか」

 俺は茜に罪悪感を持つなんてバカらしいと思い、茜を抱き締めたまま眠りに就いた。

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