60話 夏と海と水着姿の妹たち 3
毎日投稿十一日目!
本日も遅れてしまい申し訳ございません!
明日は早く投稿できるよう頑張る所存です……
さて、気を改めて日焼け止め塗りレース二回戦。
羽真三姉妹に続く相手は、波瀬姉妹の姉の方、司音ちゃんだ。
司音ちゃんはシャツとこの中に着ていたであろう水着を脱ぎシートに俯せになっていた。
俺が来たのに気付くと、司音ちゃんは笑顔で手招きをしてくる。
「よろしくお願いしますね、センパイ♪」
「あぁ」
テンションの高い司音ちゃんに対し、俺のテンションはあまり高くない。
理由は言わずもがな、残っている面々だ。
茜を筆頭に司音ちゃんやかすみん等俺を誘惑してくる面子や、夜花ちゃんのように無意識に俺を誘惑してくる子もいる。
光月や朝日は実妹だしそんなに抵抗もないし誘惑されることもないが(茜は例外)、それでも女の子の柔肌を触り続けるのは精神的にキツい。
そんな先のことを考えると、どうしてもテンションは上がらないし気が滅入る。
いや、兄として妹に日焼け止めを塗れるということは至上のご褒美なのだが、それでもツラいものはツラい。
「センパーイ、どうしたんですか?」
私の色気に悩殺されましたか? とイタズラな笑みを浮かべる司音ちゃん。
「それはない」
「えー。見てくださいよこの横乳、悩殺されません?」
「いやぁ、司音ちゃんはほぼ壁だし」
からかうようにそう言うと、司音ちゃんは顔を真っ赤にして「最低です!」と叫んだ。
「センパイは壁胸には興味ないんですか!」
「怒るとこそこかよ」
俺はてっきり絶壁扱いしたことを怒っているのかと思ったのだが、どうやら違ったようだ。
それにしても、壁胸ってなんだ。初めて聞いたぞ。
恐らくは司音ちゃんの創作文字だろうが。
「そんなことはどうでもいいから、早く終わらせるぞ」
俺は司音ちゃんにそう言い掛け、日焼け止めクリームを腰辺りに落とす。
「ひゃうっ!?」
クリームが冷たかったのだろうか、司音ちゃんが可愛らしい悲鳴を上げた。
「大丈夫か?」
「大丈夫か? じゃないですよ! どうしてセンパイは私にだけ冷たいんですか!」
泣きますよ! と涙目になりながら司音ちゃんは叫んだ。
既に泣いてる気がするのだが……まぁいい。
「司音ちゃんってあれだろ? 冷たくされて悦ぶ性格してるんだろ?」
「違いますよぅ! 私をM扱いしないでください!」
俺の言ったことが余程心外だったのか、司音ちゃんは体を起こしこちらを向いて抗議してきた。
「司音ちゃん」
「何ですか」
「見えてる」
「……」
怒りで我を忘れていたのだろうか、そのことに全く気付いていなかった司音ちゃんに忠告すると、司音ちゃんは自分の体を見下ろし押し黙った。
視認することでようやく理解できたのか、みるみるうちに司音ちゃんの顔は赤く染まっていく。
「あ、あぅ」
そんなか弱い声を喉から出すと、司音ちゃんは逆再生のようにシートに俯せ両手で顔を覆い隠した。
「司音ちゃん、油断なりませんね」
「うちの愚姉がお見苦しいところを……」
「司音ちゃん……」
茜、魅音ちゃん、夜花ちゃんが口々に言い並べていくと、目に見える速度で司音ちゃんの耳が赤くなっていく。
どうやら、あの司音ちゃんでもあれは堪えたらしい。
それから俺は、とても気まずい空気の中司音ちゃんの体にクリームを塗っていくのであった。
精神的にやられた司音ちゃんを別のシートへと追いやり、魅音ちゃんがやってきた。
魅音ちゃんは恥ずかしそうに身を捩らせながら、「お願いします」と頭を下げる。
上目遣いなんかも使っちゃって、俺のハートがガッチリと鷲掴みされてしまった。
魅音ちゃんが着ているのは白スクで、塗るとしたら出ている四肢ぐらいなのだが……魅音ちゃんは皆と同じにしてほしいと白スクを脱ぎ捨てた。
つまり、今眼下のシートには全裸の魅音ちゃんが俯せているワケで。
俺は「ロリコンじゃない」と自己暗示をしながら手にクリームを乗せる。
魅音ちゃんは凉ちゃんに近い位置取りなので、俺は凉ちゃんのときのようにクリームを人肌に温めて塗っていく。
「ふぅ」
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。……葉雪さんが優しくしてくれますから」
控えめに微笑む魅音ちゃんは、姉なんかよりよっぽど女の子らしかった。
「なんか今貶された気がします」
「全裸の女子小学生にクリーム塗りたくるとか、普通だったらアウトですよね」
「うちの生徒から性犯罪者が出ないか心配だ」
いつの間にか復活した司音ちゃんがジト目を俺に送り、茜とかすみんが笑いながら痛いところを突いてくる。
俺は首を傾げる魅音ちゃんに「気にしないで」と声を掛け、その瑞々しい肌にクリームを塗り広げていく。
この調子なら大丈夫だと思った矢先──
「はぅんっ!」
肩甲骨のラインをなぞったところで魅音ちゃんが声を上げた。
もしや、と俺は恐る恐る先程触れたところを指先でなぞる。
「ひんっ」
やはり、同じ場所で魅音ちゃんが声を上げた。
どうやら魅音ちゃんは肩甲骨のラインが弱いらしい。
くっ、避けようにもまだこの辺りは塗ってないから触らないことはできないし……仕方ない。
本日何度目かの仕方ないにため息が出るが、本当に仕方ないのだ。
こういうときは早く済ませるに限る。
俺は今日、同じようなことを何回考えただろうか。
少なくとも三回は越えてる気がする。
そんなことを考えながら、俺はクリームのついた手を魅音ちゃんの肌に滑らせる。
「んふぅっ」
「魅音ちゃん、少しだけ耐えてくれ」
俺の頼みに魅音ちゃんは無言でコクコクと頷く。
よし、魅音ちゃんのためにも早く終わらせよう。
「んっ……ふわぁっ」
指が肩甲骨を添う度に魅音ちゃんが小学生ならぬ声を漏らす。
後少し、後少しで終わる……っ!
俺はスパートを掛けるように手の動きを早め、肩甲骨のラインから残っていた腕までクリームを塗り終えた。
「魅音ちゃん、大丈夫?」
「……(コクコク)」
魅音ちゃんは一言も発しないで、覚束ない足取りで隣のシートに移動し寝転がった。
チラリと見えた魅音ちゃんの表情が蕩けきっていたことは、すぐに忘れようと思う。
「お、お願いします……」
波瀬姉妹を突破すると、妹たちの中で一二を争うくらいしづらい相手である夜花ちゃんが準備していた。
傍らには先程まで着ていたラッシュガードが丁寧に畳まれ置かれている。
下に何か見えるが、多分あれはラッシュガードの下に着ていた水着だろう。
黒、か。セクシー路線の水着だろうか。
そんなことを考えながら、俺は寝ている夜花ちゃんの隣に腰を下ろす。
「おぉ」
その時視界に入った夜花ちゃんの横乳に、思わず声が漏れた。
妹たちの中で一番大きいソレは、夜花ちゃんの体の下敷きにされむにゅりと形を変えている。横にはみ出た部分など、いかにも触ってくださいと言っているようなものだ。
それに夜花ちゃんの体重が掛かっているにも関わらず、そのたわわな果実は形を崩していない。
素晴らしい。そんな貧相なコメントしかできないくらい、俺は夜花ちゃんの横乳に衝撃を受けていた。
「あの、先輩……そんなに見つめられると恥ずかしいです」
「す、すまんっ」
羞恥に頬を赤く染めた夜花ちゃんの声に我に返り、俺は素早く目を逸らす。
ヤバい、あれはかなりヤバい。気付かぬ間に魅了されていた。
夜花ちゃんの胸は全男子を惑わす凶器だ。
そんな心底下らないことを考えながら、俺はクリームを手に取り優しく夜花ちゃんの背中に塗り付ける。
「はふぅ……」
夜花ちゃんは落ち着いたように息を吐く。
どうやら、クリームが冷たいということはなかったようだ。
よし、第一関門突破。次だな。
俺は一度息を吐き、慎重に慎重を重ねゆっくりと手を滑らせる。
次にあることといえば、背中のどこか、または手足が弱いといったことか。
慎重に探っていけば、もう同じようなことは起きないだろう。
そう考え、俺はゆっくりとクリームを塗り広げていく。
「夜花ちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。……はふぅ」
夜花ちゃんはまるでマッサージを受けているような感じに脱力する。
よし、どうやら夜花ちゃんは背中が弱くないらしい。
この調子で手足も上手くいってくれればいいのだが……
俺は変に期待をせず、警戒をしながら足に手を置く。
「──んっ」
やはりと言うべきなのか、夜花ちゃんは今までとは違う声を漏らした。
足が弱いのかと考えたが、まだ他の可能性がある。
例えば、ただ急に足を触られて驚いただけかもしれない。
そんな考えを持ち、俺は両手を使い同時に両方の足にクリームを塗っていく。
「あっ……んんっ! ふぁっ」
ダメだった。どうやら夜花ちゃんは足が弱いらしい。
足を先にしておいて正解だったか?
少し不安になりながらも、俺は早く終わらせようと手の動きを早める。
「だめっ、もっとゆっくりしてください……っ」
が、夜花ちゃんの口からは俺の考えとは反対のお願いが発せられた。
早く終わらせたいが……妹のお願いを無下にすることはできない。
「……わかった」
俺は短く返事を返し、ゆっくりと足にクリームを塗り広げる。
やや肉感のある太ももに、ランニングの成果がふくらはぎには程よく筋肉がついていた。
これはこれでいい感じだな。
少しだけ余裕のできた俺は、呑気にそんなことを考える。
「んふぅっ、はぁっ……んっ!」
がすぐに夜花ちゃんの悩ましい声に現実に戻され、ジワリと汗が浮かぶ。
早く終わらせたくても夜花ちゃんのお願いでできないし、かといってゆっくりやってると夜花ちゃんができあがっちゃいそうで怖い。
こういうときはどうすればいいのだろうか。
そう考えるが、よくよく考えれば今クリームを塗っているのは足。そんなに面積はないし、少し我慢すればすぐに終わるはずだ。
よし、なら俺は待とう。
「んっ、はぁっ……ふぁっ! ひゃっ、はぅっ……ああっ!」
お、終わらないっ!
夜花ちゃんの口から漏れる艶かしい声で集中できず、先程から同じところを何度も触ってしまっている。
こうなれば、先に手を済ましてしまおう。
そう考えた俺は、足から手を離しクリームをつけると素早く腕に塗り広げる。
夜花ちゃんが反応しなかったことを考えると、やはり腕は弱くなかったようだ。
よし、これで改めて足に塗ることができる。
俺は少しだけクリームを足し、夜花ちゃんの足に塗り込む。
「んっ、あっ! ふわぁっ……ひゃんっ!」
手が、手が進まない。
だがそれでも俺は理性に頑張ってもらい、クリームを足全体に広げる。
「先輩の手がっ、私の足をぉ……ああっ! ひゃっ、んっ!」
夜花ちゃんの口からどんどん艶かしい声が零れるが、集中した俺はそれを気にも止めずひたすらクリームを塗り続けるのであった。
完全に脱力した夜花ちゃんを休ませ、次の相手はロリ先生のかすみん。
「おい葉雪、あまり失礼なことを考えていると大変なことになるぞ?」
平然と心を読んでくるロ──かすみんは、今は大人しくシートに横になっている。
体型が幼いからか、あまりこの姿を見ていても理性が削れるようなことは起きない。
よし、これなら大丈夫だ。
「何が大丈夫だボケ」
「……なぁ、俺無意識の内に口に出してたりする?」
「いや、お前は何も言ってないぞ。ただ考えていることがわかりやすいだけだ」
さらっとディスられたような気がするが……気にしない。
残るはかすみんとうちの三姉妹のみ。ならかすみんを倒して早くこの天国な地獄を終わらせよう。
俺はそう意気込み、手に取ったクリームをかすみんの背中に塗っていく。
「なんか、かすみんは余裕そうだな」
「そうだな。生憎私はこういったことは弱くないからな」
残念だ、とやや棒読みな口調でかすみんは呟く。
「折角葉雪に身体中を触られるのに、楽しむことができないじゃないか」
かすみんの声音から、かすみんが本当のことを言っていると理解した俺は、今までになく安心してクリームを塗っていく。
今回ばかりはかすみんに助けられた。
そう思っていたのだが……
「うっ」
腰骨近くを手が触れたとき、かすみんの口から変な息が漏れた。
どうやら、かすみんでもそこが弱いとわかっていなかったらしい。
結局こうなるのかと肩を落とすが、あることに気付く。
もう既に手足にはクリームを塗り終わっているし、加田付近や背中の中央辺りも終わっている。
残るは腰近くだけ。
これはもしかして、かすみんに反撃するチャンスなのでは?
デートのとき、俺はかすみんにさんざん弄ばれた。その復讐をここでできるのではないかと俺は考えた。
よし、そうと決まれば……
俺は指を立て、かすみんの弱いところを強めに圧迫しながらなぞる。
「うぁっ」
「どうしたかすみん、効かないんじゃなかったのか?」
「し、知らんっ……あぐっ」
一本で、二本でと遊びながらかすみんの弱点を刺激する。
「お、お前っ、真面目に日焼け止めを──あんっ!」
普段は口調の荒いかすみんが、女の子らしい可愛い悲鳴を上げる。
そのことに俺の気は昂っていた。
よしいいぞ! この調子で今までの分仕返してやる!
火の点いたイタズラ心は、そう簡単には止まらない。
「うっ、はぁっ! あんっ……ひやっ!」
押したり撫でたりを続けると、どんどんかすみんの腰が浮いてきた。
ふふふっ、あのときはさんざん攻められたからな。今度はこっちが攻める番だ。
「はっ、葉雪ぃっ……やめっ、あんっ! そこはぁっ、だめぇっ」
俺よりも年上なかすみんが、涙を浮かべ懇願する。
そのギャップと背徳感に、もっとやりたいとイタズラ心がくすぐられる。
「だめだってぇ……いってるだろぉっ! ひゃうっ、はぁっ! んんっ!」
気付けばかすみんの頬はすっかり紅潮しており、鋭い目は潤み力なく垂れている。半開きになった口からは熱の籠った吐息と矯声が繰り返し漏れている。
こんなかすみん初めてだ。
いつもは大人の余裕とでも言わんばかりに冷静なのに、弱点を刺激されすっかり可愛くなってしまってる。
ダメだ、もっとやりたくなってしまう。
「は、はゆきぃ、もうらめらぁっ……もぅっ」
かすみんは何かに耐えるように目を強く瞑るが、それも意味なく俺のトドメの一撃に、
「あぁぁぁあああああっ!」
一際大きな矯声を上げ、ぐったりと脱力した。
そう、その光景だけを見ればまさに──
「事後ですね」
俺の考えを読んだのか、それとも同じ思考をしているのかはわからないが、茜が俺の思っていたことを躊躇いなく口にした。
そう、完全に事後だ。凉ちゃんよりも圧倒的に事後。
仕返しという意味だったのだが、完全にやりすぎた。
かすみんが起きたら謝っておこう。
そんなこんなで、残るはうちの三姉妹だけとなった。
早く済ませて皆で遊ぼう。
そう思い、俺は強く手を握った。