60話 夏と海と水着姿の妹たち
毎日投稿九日目!
今回から別荘宿泊編です!
司音ちゃんたちとのデートから早一週間。
俺は充実した夏休みを送っていた。
といっても普段からしていることはあまり変わらない。ただやることやって妹たちと遊んでいるだけだ。
そんな何の変哲もない日常に心癒される。
なんせ誰かとデートすれば絶対に何かしらのハプニングが起こるし、帰れば茜に問い質される。そんなスリリングな一日を過ごすより、妹たちとただぐーたら遊ぶ方が楽しい。
だが、それだけでは夏休みを満喫しているとは言えるか? 否、言えないと俺は思う。
考えてほしい、やることやって妹たちとイチャイチャするのって、割りと普段からやってるだろ?
ならやっぱり、夏休みだからこそできることをしたい。
というワケで、俺たちは海に来ていた。
◇妹◇
遡ること数時間前──昨晩の出来事だ。
夕食を済ませた俺たちは妹たちから順に入浴していたのだが、俺は一人厳人さんに呼ばれ社長室のようなあの部屋に向かった。
そこで言われたのが、「手配が整った」と一言。
俺は最初何のことかわからず首を傾げていたのだが、厳人さんからの説明で思い出した。
それはまだ俺たちがここに来たばかりの頃、俺は厳人さんにどこか別荘を使わせてほしいとお願いしていたのだ。
それ以来厳人さんは仕事の合間に数ある別荘から、俺のお願いに添う場所を探してくれていたのだという。
そして日本内にある別荘の内、好条件のものを一つ見付けたのだと。
その別荘は海と山の両方に隣接しており、その地域一帯が羽真家の所有地らしい。つまりはプライベートビーチと山を所有しているということ。
そんな夏の楽しみを凝縮したような別荘に、俺たちはなんと一週間も泊まることとなったのだ。
──という経緯で俺たちはここに来ていた。
昨日の今日でよく皆準備できたなぁと思う。まぁ俺もちゃんと準備しているが。
「お兄ちゃん、こんな素晴らしい別荘に一週間も滞在できるなんて最高ですね!」
とてもテンションが高くなっている茜は、その場でピョンピョンと跳ねながら眼前の光景に目を輝かせる。
目の前には澄み渡った青い海が広がっており、左手奥には俺たちが泊まる別荘が、後方には雄大且つ青々とした山が聳え立っている。
確かに、こんな場所に泊まれるなんて最高としか言いようがない。
「でも残念ですね、厳人さんたち来れなくて」
「仕方ないだろ。どうしても外せない仕事があるんだから」
そう、この場に厳人さんと七波は来ていない。どうしても、どうしても外せない仕事があるからと嘆いていた。
世界を統べる程の大企業の社長だからそのくらいの仕事はあると思うが……少しだけ可哀想に思えた。
「ところでお兄ちゃん、どうですか私の水着は」
しみじみとした雰囲気を追い払うと、茜はその場でクルリと一回転し尋ねてきた。
「ふむ……」
茜が身に付けているのは、黒を基調としたビキニタイプの水着で、所々に赤い線で模様が描かれている。
茜の髪や瞳の色とあっており、もはや茜のために作られたと思う程似合っている水着。
率直に述べるとめっちゃ可愛い。
それに加え、健康的な四肢やお腹が露出していて、直視しすぎると失明しそうな程に眩しい。
というか、お腹とか見てるとデートの時のことを思い出すんだよな……
「お兄ちゃん?」
茜の水着姿につらつらと感想を述べていると、いつの間にか茜が近くまで寄ってきて俺の顔を覗き込んでいた。
「どうしたんですか? 急に黙り込んで」
「いや、なんでもない。水着の感想だったな、とても似合っててすっげぇ可愛い」
「ふへへっ、ありがとうございます♪」
茜は嬉しそうに微笑むと、あろうことか抱き付いてきた!
茜は今水着姿で、俺も既に海パンだけの姿になっている。そんな隔てるモノが一枚しかない状況で抱き付かれたら、茜の胸の感触がほぼそのまま伝わってくるのは当然で。
ぐ、ぐぉぉぉおおおっ! 茜の胸が俺のお腹にっ!
大きさはやや控えめではあるが、感触は最高すぎる。
ぬぅぅぅっ、耐えろ! 耐えろ俺の理性ぃいいいいいっ!
「……何朝から盛ってんだ淫乱兄妹」
そこへやって来たのは、ゴスロリチックな水着を着たかすみんだった。
かすみんは俺たちを見ると鋭い目を吊り上げ、とても不名誉な暴言を吐いてきた。
淫乱って……それはあまりにも酷すぎませんかね?
「霞さん、そんなに怒らないでくださいよ」
茜は未だ抱き付いたかすみんに話し掛ける。
いや離れてくれよ。
「は? 私は怒ってないぞ?」
嘘だろ。言葉の節からめっちゃ怒気が伝わってくるぞ。
そんなツンデレなかすみんに、茜は「やれやれですね」と呆れたようにため息を吐いた。
いやだから離れろって。
「は、葉雪にぃさん……」
茜とかすみんのやり取りを適当に聞いていると、楓ちゃんが恥じらいながらやって来た。
楓ちゃんは白のビキニを身に付け、パステルグリーンのパレオを腰に巻き付けている。
品格のある佇まいや大人びた容姿と相まって、楓ちゃんはセクシーなお姉さんのようになっていた。
「その、どうですか?」
「あ、あぁ。大人っぽくて綺麗だよ」
そんな面白みのない感想を口にすると、楓ちゃんは赤くなった頬を両手で隠し四方八方に目を泳がせた。
「あ、ありがとうございます……」
いつもの冷静さはどこへ行ったのか、楓ちゃんはまるで凉ちゃんのようにしおらしくなっている。
そんな姿も可愛い……
「「おにぃ」」
恥じらう楓ちゃんに和んでいると、不意に後ろから呼ばれ振り向く。
そこには、キャミソールの水着に身を包んだ光月と朝日が仲良く手を繋いで立っていた。
光月は水玉が描かれた藍色の水着を、朝日はひまわりの描かれた黄色い水着を着ている。
「二人ともよく似合ってるぞ」
俺は可愛らしくお洒落をした双子の頭を撫でる。
「にへへ~♪」
「……♪」
反応は真反対だが、二人とも褒められたことが嬉しいのか頬を赤らめはにかんだ。可愛い。
「センパイ! 次は私たちの番ですよ!」
来たかぁ……
いつも変わらずウザいくらいに溌剌とした声に、つい頬が緩む。
振り向くとそこには一週間前にデートをした三人が並んで立っていた。
司音ちゃんは薄地のシャツにショートパンツと、普段の言動からは想像できない程大人しい格好をしていた。
司音ちゃんの妹である魅音ちゃんはというと……白色のスク水、つまりは白スクを着ていた。俺は何も言わない。そんなモノが普通のお店に売ってないだろなんて突っ込みはしない。
そして最後に夜花ちゃんだが、司音ちゃんと同じように水着ではなく薄地のラッシュガードを着ていた。ご丁寧にジッパーは閉めてあるのだが……そのせいか胸がとても苦しそうになっている。
「どうですセンパイ、今回は安心路線で露出を少なくしました♪」
「あ、あぁ、まぁ安心はできるが……」
ちょっと残念。司音ちゃんたちの水着を期待していたのだが……
まぁ下手に刺激のある水着を着てこられるよりはマシか。
でもやっぱり残念だったなぁ。
そんな葛藤を続けていると、何かを感じ取ったのか司音ちゃんが首を傾げた。
「もしかしてセンパイ」
「な、なんだよ」
「私たちの水着が見れなくて落ち込んでます?」
「……」
どうして女子とは簡単に人の心を読んでくるのだろうか。
もはや恐怖すら覚える能力に身震いをしていると、司音ちゃんがニヤリと微笑んだ。
「大丈夫ですよ、この下にはセンパイを悩殺する水着を着ていますから」
シャツの裾を摘まみ上げ、魅力的なお腹をチラチラと見せてくる司音ちゃん。
どこが大丈夫だと言うのか。
「おっまたせー!」
司音ちゃんに頭を悩ませていると、そんな元気な声がビーチに響いた。
やって来たのは天真爛漫という言葉がピッタリの蓮唯ちゃん、そしてその後ろには凉ちゃんが蓮唯ちゃんに隠れるように立っていた。
蓮唯ちゃんはオレンジを基調としたビスチェ水着を、凉ちゃんはフリルの多くあしらわれたかわいらしい水着を纏っている。
「二人とも可愛いよ、よく似合ってる」
「えへへ~♪ ありがとにぃに!」
「あ、ありがとうございます」
蓮唯ちゃんは嬉しそうにはにかみ、凉ちゃんは照れたように俯いた。
ホント可愛い。
「さてお兄ちゃん、全員揃いましたね」
「あぁ、そうだな」
俺の前には水着姿の実妹&義妹を見渡し頷く。
全員が美少女で、そんな彼女たちの水着を俺が独占して見ることができる。
神よ、ありがとう。
と珍しく神に感謝していると、茜が俺の手を取り、
「それじゃあ遊びましょうか、お兄ちゃん♪」
とても眩しく微笑んだ。
俺の夏休みは、今始まった。