59話 後輩+αと猫プレイ? 2
毎日投稿五日目!
猫カフェを後にした俺たちは、来たときとは逆の方向──つまり帰りの電車に乗り最寄り駅まで戻ってきた。
そこから案内されること数分、そこには既にお馴染みとなった高層マンションがそびえ立っていた。
ここの十階の一部屋に夜花ちゃんが一人暮らしをしている。
まぁここまで来たら何となく察しは付くな。
俺がため息を溢すと、不意に夜花ちゃんが不安そうに俺を見上げてきた。
「その……私の部屋は嫌ですか?」
どうやら今のため息を、自分の部屋が嫌だから吐いたものだと勘違いしたらしい。
俺は「そうじゃないよ」と微笑み掛け、ゆっくりと優しく夜花ちゃんの頭を撫でる。
「そ、そうですか。……はふぅ」
夜花ちゃんは安心したのか、気持ち良さそうな息を漏らす。
「ぐぬぬっ、夜花ちゃんだけズルいですよ!」
とそこで茶々を入れてきたのは、茜のクラスメイトであり俺の後輩の一人、司音ちゃん。
司音ちゃんは夜花ちゃんに羨望の眼差しを向けていた。
ハンカチがあったら噛みそうだな。
「お兄ちゃん先輩! 私の頭も撫でてくださいっ!」
さぁ! と言わんばかりに自らの頭を差し出してくる司音ちゃんに、つい苦笑を浮かべてしまう。
「まったく、仕方ないな」
俺は空いている手で司音ちゃんの頭をワシワシと撫でる。
「あーっ、髪型が崩れるー!」
司音ちゃんは楽しそうにはしゃぎ笑い声を上げる。
ホント、楽しそうだ。
「……」
そして当然、この子も羨ましそうに二人を眺めていた。
「……じー」
ただ魅音ちゃんはこういうときに限って控えめになるのか、ただ何も口にせず二人を見つめていた。
「……じー」
いや、正確には効果音を口にしていた。
俺〝じー〟を口にする人初めて見た気がする。
そう苦笑する間も、魅音ちゃんは「じー」と口にしながら二人を見つめていた。
まったく、仕方ないな。
俺は二人の頭から手を離すと、立ち呆けていた魅音ちゃんをギュッと抱き締める。
「はははは、葉雪さん!?」
突然のことに驚いたのか、魅音ちゃんは上擦った声で俺の名前を呼ぶ。
「いっ、いきなりどうしたんですか!?」
「んー? 魅音ちゃんが羨ましそうに二人を見ていたから」
「そそそ、ソンナコトナイデスヨー?」
図星だからだろう、魅音ちゃんは片言になりそっぽを向いた。
「まったく、魅音ちゃんは素直じゃないなぁ」
俺は抱き締めたまま魅音ちゃんの頭を優しく撫でる。
すると魅音ちゃんは「はぅ」と声を溢し安心したかのように脱力した。
「……お兄ちゃん先輩? 路上で小学生抱き締めるのはどうかと思いますよ?」
と再び茶々を入れてくる司音ちゃん。
まぁ確かに絵面は危ないかもしれないな。
そう思い魅音ちゃんを解放すると、魅音ちゃんは「あっ……」と名残惜しそうに声を漏らした。
「さて、早くイチャイチャしたいので夜花ちゃんの家へレッツゴー!」
「「ゴー!」」
「ご、ごー?」
司音ちゃんの掛け声に二人が元気よく応じ、俺たちはマンションの中へ足を進めるのであった。
◇妹◇
高層マンションの十階。
思えば夜花ちゃんの部屋に来るのはあの日以来で、少し懐かしさを感じる。
「そういえば二人は仲が良いみたいだけど、よく互いの家に遊びに行ってたりするのか?」
ふと疑問に思ったことを口にすると、司音ちゃんは「そうですよー」と頷いた。
だからか。やけに慣れた感じでここまで来ていたのは。
と話しているうちにエレベーターは十階に到着した。
それからやや狭い廊下を歩き、夜花ちゃんの家の扉の前までやって来た。
「お邪魔しまーす!」
夜花ちゃんが鍵を開けると、何故か真っ先に玄関に上がる司音ちゃん。
夜花ちゃんは笑っているが、魅音ちゃんは「ダメ姉が恥ずかしい」とため息を吐いていた。
部屋に上がると、俺は驚き感嘆を漏らす。
以前は質素というか、殺風景だった部屋が、今ではとても女の子らしい華やかな感じになっていたからだ。
「驚きました?」
「あぁ、すごい驚いた」
正直な感想を述べると、夜花ちゃんは「先輩のお陰なんですよ」と微笑んだ。
「俺の?」
「はい。先輩が暗かった私を変えてくれたから、以前よりも気にするようになりましたし」
「でも俺は何もやってないぞ? 茜が何かしたらしいが」
「いえ、それでも切っ掛けをくれたのは先輩です。ありがとうございます」
丁寧に頭を下げる夜花ちゃんに、俺は気恥ずかしくなり頬を掻く。
「はいそこ! 今から皆でイチャイチャするのにいい雰囲気作らない!」
とそこでまたしても司音ちゃんが茶々を入れてくる。
夜花ちゃんは「ごめんね」と笑い、司音ちゃんの元へ向かった。
「それにしても、本当に変わったなぁ」
部屋を見渡し、しみじみと感じる。
所々に置かれた置物やカーテンなど、すっかり女の子の部屋になっていて、以前の面影は残っていない。
「ホントに変わったな──ん?」
夜花ちゃんの変化を感じ取っていると、ふとカーテンの間から何かが見えた。
何か──いや、あれは洗濯物か。
ベランダに洗濯物が掛けてあることなんて然程不思議なことではない。
洗濯物──ってアレはっ!
シャツや靴下といった物の間にチラリと見えたソレに、俺は咄嗟に目を逸らす。
あ、危なかった……凝視していたら死んでいたかもしれない。主に社会的に。
「先輩、外に何かありましたか?」
とそこでタイミング悪く夜花ちゃんがやって来た。
いやまだ大丈夫だ。俺がアレを見たことは気付いていない。ここで誤魔化せば──
と考えていたところで、夜花ちゃんがベランダに目を向け赤面した。
何事かと思い俺もベランダの方に目を向けてみると──風で場所がズレたのだろう。先程チラリと見えていただけの〝ソレ〟が堂々と姿を現していた。
「せ、先輩……」
「夜花ちゃんちょっと待った! 別に俺は何も見ていない!」
無駄だとわかりながらも弁解するが、どうやら夜花ちゃんは聞いていないらしい。
プルプルと震える夜花ちゃんは無言でベランダに近付き窓を開けると、そこに干してある洗濯物を回収し素早く自分の部屋に放り込んだ。
「先輩」
「はいっ」
「ベランダには何もありません」
「……」
「何もありませんでした」
「……はい」
夜花ちゃんの有無を言わさない迫力に、俺はコクコクと頷くことしかできなかった。
◇妹◇
それから数分後。
俺の前には三人の猫娘が並んでいた。
待て、ブラウザバックはするんじゃない。お願いだからしないで。
……コホン。どうしてこうなったのか──はあらかた想像できるだろう。大方皆さんの想像通り、司音ちゃんの策略だ。
どうやら以前からこの計画を立てていたらしく、猫耳やら猫尻尾、その他のアイテムやら服を夜花ちゃんの家に持ち込んでいたらしい。
どうして波瀬家ではないのかと訊いたが、今日は親がいて過度なイチャイチャができないからと答えられた。
さて、経緯を話したことだし、三人の服装の話でもしようか。
まずは司音ちゃん。司音ちゃんは茶色っぽい猫耳と、ストライプ柄の尻尾を着けている。更には露出の多すぎる薄地の服。肩や胸元、足に至っては太ももの付け根辺りまで見えてしまっている。
次に魅音ちゃん。魅音ちゃんは白い猫耳と尻尾、それと何故かスク水を身に付けている。
猫耳&尻尾にスク水……何この背徳的な姿。
最後に夜花ちゃん。夜花ちゃんは黒色の猫耳と尻尾を着け、体は最低限の場所しか隠せていない。つまりは下着姿である。
どうして水着じゃないのか問い質したいが、気にするのは今更な気がする。
と目の前の光景は思春期男子には刺激的すぎて目のやり場に困る。
そんな中、俺の手には三つの首輪と猫じゃらしがあり、ここまでくれば何をするのか察しはつくだろう。
この後のことを考えると胃が痛くなるが……付き合うしかない。
「じゃあお願いしますね、ご主人様♪」