59話 後輩+αと猫プレイ? 1
やっとスマホが回復したぁ……。遅れてすみません! 毎日投稿四日目です!
茜とのカラオケデートから数日が経った。
その間俺は夜花ちゃんとの早朝ランニングや夏休みの宿題を熟し、妹たちと遊んだりと充実した夏休みのを送っていた。
そんなある日の朝。
羽真宅に三人の来客が訪れた。
波瀬家の姉妹、司音ちゃんと魅音ちゃん、それと茜たちと同じ一年の夜花ちゃんの三人である。
彼女たちは俺と遊びに来たらしく、俺は快く了承したのだが……
「お兄ちゃん先輩、楽しみですね♪」
「葉雪さん、久々に遊べて魅音嬉しいですっ!」
「せ、先輩っ、今日はよろしくお願いしますっ」
俺は何故か彼女たちに拉致されていた。
ホントに一瞬の出来事だった。頷いた瞬間司音ちゃんと夜花ちゃんに腕を掴まれ、一分となく家から引きずり出されたのだ。
そして俺たちは今電車に乗っている。
俺の右腕に司音ちゃんが、左腕に夜花ちゃんが抱き付き膝の上に魅音ちゃんが座っているからだろう。周りの俺を見る目が冷たい。
くっ、皆俺をクズを見る目で見やがって……俺は拉致されたんだよぉぉぉおおおっ!
と心の底から叫びたい。
まぁ別にいいのだ。もう気にしない。慣れてるから……
「ところで、今はどこに向かってるんだ?」
「そうですねぇ、ここにいる全員でイチャイチャできるような場所がいいですね」
俺の質問に答えたのは司音ちゃん。
どうやら具体的な行き先はまだ決めていないらしい。
なんだかなぁ。心配だなぁ。
茜とのデートから割りと日が経ってるので理性の方は大丈夫だと思う。
だが、彼女たちは全員美少女なのだ。完璧に大丈夫だという自信はない。
「安心してくださいよお兄ちゃん先輩。私たちはあくまで遊びたいだけで、お兄ちゃん先輩を困らせたいワケじゃありませんから」
俺の心配を察してか、司音ちゃんがそう微笑み掛けてくる。
「……そういえば、司音ちゃんはどうして俺のことを〝お兄ちゃん先輩〟って言うんだ? それじゃあ呼びづらいだろ?」
「そうですねぇ。確かに呼びづらいですけど、やはりヒロインになるには個性は重要ですから」
「そうなのか?」
「そーなんです♪」
そうらしい。
それにしても、他にもっといい呼び方があるだろうと思うのだが……。まぁ本人がいいと言っているのだ、俺は何も言うまい。
「だから夜花ちゃんも個性的な呼び方しなきゃダメですよ?」
「……えぇっ!?」
突然話を振られ驚く夜花ちゃん。
確かに、個性が大事という司音ちゃんからしたら、夜花ちゃんの〝先輩〟は普通かもしれない。
だが、
「夢見る思春期男子なら、美少女に先輩と呼ばれるのは普通に萌える」
「ふぇっ!?」
「なんですとぉ!?」
あくまで一般論だがと付け足すが、どうやら二人とも聞いていないらしい。
夜花ちゃんは「萌える……先輩が私に萌える……」とどこか嬉しそうに呟き、司音ちゃんは「なんてことを……」と落ち込んでいた。
別に一般論なんだけどなぁ。いやまぁ、俺も美少女の後輩から『先輩♪』って呼ばれるのは嬉しいけど。
「……それにしても、お兄ちゃん先輩はシスコンさんなのに、先輩って呼ばれて嬉しいんですね」
意外ですと司音ちゃんは挑発的に笑った。
「まぁな。確かに俺は茜たちが一番好きだが、他の子に全く興味がないワケじゃないさ」
「ですよね! じゃないと困っている私たちを助けるなんてしませんよね!」
と興奮気味になる司音ちゃん。
いや、困っている人がいたら、誰であろうと助けるだろ。
俺は苦笑を浮かべつつ、「そうだなー」と相槌を打っておく。
そのまま俺たちは、少しの間雑談を楽しむのであった。
◇妹◇
家から連れ出されてから数十分。
俺たちがやって来たのは、何種類の猫と触れ合いながらお茶を楽しむことができる喫茶店──猫カフェだ。
どうやらこの三人は全員して猫が好きらしく、いつか猫カフェに来てみたいと話していたらしい。
ふむ、まぁそのくらいなら茜たちのようなことは起きないだろう。
俺は安心して三人と共に猫カフェに足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ~」
店に入るとすぐに制服に身を包んだ店員がやって来た。
顔立ちはややあどけなさが残っており、俺たちと年齢が近い。
というか、どこかで見たことがある。具体的に言えば図書室とかレストランで……
「「あっ」」
俺と店員さんの声が被った。
「ど、どうも? お久しぶりですね」
「そうですね。これで三回目ですかね」
おずおずと話し掛けると、彼女は苦笑を浮かべながら返してくる。
「レストランで会ったときは、また後で会話しようと思ったのに」
「す、すみません」
「それからもなかなか図書室に来ないから話す機会もありませんし、名前も学年も知らないから会いに行けませんし」
ぷくーっと頬を膨らませる姿は、ちょっとグッとくるものがある。
「──はっ」
店員さんの可愛い一面に和んでいると、ふと後ろから三つの冷たい視線が送られていることに気付く。
ゆっくりと振り向くと、司音ちゃんはと魅音ちゃん、夜花ちゃんがジト目を向けてきていた。
え、えーっと……?
「三人とも、どうかした?」
「いえ、お兄ちゃん先輩は楽しそうだなぁて」
ジトー。
「そうですね。先輩すごい楽しそうですね」
ジトー。
「葉雪さん魅音たちのこと忘れてましたね」
ジトー。
「ご、ごめん」
「いえいえ、いいんですよ? 聞いた話だとその人とお兄ちゃん先輩は過去に面識があるらしいですしー? デート中に偶然出会って話しちゃうのもわかりますよー?」
「ほ、ホントにごめん」
頭を下げると、司音ちゃんは冗談ですよと笑い頭を撫でてきた。
俺は司音ちゃんの手を退けて頭を上げようとしたが、不意に司音ちゃんが屈み耳元で、
「たくさんイチャイチャしたら許してあげますから」
と呟いた。
俺はやれやれといった感じに「わかったよ」と返し司音ちゃんの頭を撫でる。
「そういうことなんで、また今度」
「そうだね。じゃあ席に案内しますねー」
彼女は華やかな笑顔を浮かべ俺たちを案内すると、注文を受け取りすぐにカウンター裏へ消えていった。
「お兄ちゃん先輩! 猫です! 猫がいます!」
席についたばかりなのに、司音ちゃんはすぐに席を立ち床に寝転がっている猫の元へ駆け寄った。
「可愛いー!」
「あっ、お姉ちゃんだけズルいっ」
司音ちゃんに続き魅音ちゃんも猫に駆け寄り、小柄な白猫を胸に抱える。
うーん、小さい女の子が猫とじゃれる姿は映えるなぁ。
「ん? 夜花ちゃんは行かなくていいの?」
元気な姉妹を眺めていると、隣で同じように二人を眺めている夜花ちゃんが気になりそう尋ねる。
「私はいいんです。こうして眺めているだけで幸せですから」
夜花ちゃんは少し困ったように笑みを浮かべ手を振る。
うーむ、夜花ちゃんも猫と触れ合いたいはずなんだが……どうしたんだろ?
「夜花ちゃんは猫が苦手だったりする?」
「いえ、そんなことはないですよ。ただ、上手く撫でれるかなって不安になるので」
「なるほど」
つまり触りたいけど、それが猫にとって平気なことなのかが気になって触れないってことか。
「それなら俺が教えようか?」
「えっ? いいんですか?」
少し不安そうに尋ねてくる夜花ちゃん。
「あぁ。折角来たんがら夜花ちゃんにも楽しんでもらいたいからね」
そう言うと夜花ちゃんは嬉しそうにはにかみ、「お願いします」と頭を下げた。
「それじゃあまず一つ目、近付くときは前からではなく後ろから」
「後ろから? 司音ちゃんたちは真っ直ぐに行ってますけど?」
「あぁ、ここの猫はお客さんが正面から来るから慣れてるんだろ。基本的に前から向かうと猫は〝捕まる〟って思って警戒しちゃうんだ。なるべく後ろから近寄って撫でてあげると猫も安心しやすいんだ」
「そうなんですね。他にはどんなことがいいんですか?」
「そうだな。撫でるときは摩擦の少ない手の甲の方が喜ぶってのもあるな。後は顔周りから撫でてあげるってのもある」
「なるほどっ」
「指先で軽くちょんちょんってするのも、親猫が舐めるのと近い感覚で安心できるらしい」
「先輩は物知りですね!」
「そんなことないさ」
尊敬の眼差しを向けてくる夜花ちゃんに、俺は面映ゆくなり頬を掻く。
ちなみに、これはwebで調べたことなので間違っていることもあるかもしれないがあしからず。
「それじゃあ早速やってみますね!」
「おう、いってらっしゃい」
夜花ちゃんは興奮気味に席を立ち、猫たちを見渡す。
夜花ちゃんは黒猫に狙いを定め、ゆっくりと後ろから近付く。
そして猫の後頭部を指先でそぉっとなぞった。
「あっ、上手くいったんだ」
夜花ちゃんの眩しい笑顔に和みながら、いつの間にか届いていたコーヒーを口に含む。
夜花ちゃんは猫の顎や鼻下、耳裏などをゆっくりと撫でていく。
すると黒猫はゴロリとお腹を晒し寝転がった。
おお、まさかお腹を出すとは思わなかったな。それ程夜花ちゃんの腕が上手かったのかな。
夜花ちゃんは露になったお腹を、恐る恐る指先で触れる。
「あ、びっくりしてる」
夜花ちゃんは一度お腹から手を離すと、再び猫のお腹に手を置いた。
「慣れてきたのかな」
夜花ちゃんはゆっくりとぎこちなくだが、猫のお腹を撫でていく。
猫はよっぽど気持ちいいのか、完全に脱力して小さく鳴いている。
それからしばらく、俺は猫とじゃれ合う三人を眺めながらコーヒーをちまちまと飲んでいた。
◇妹◇
一時間と猫とじゃれ合い満足した三人は、ホクホク顔で席に戻ってきた。
「どうだ、楽しかったか?」
俺の質問に三人は声を揃えて「はいっ!」と答えた。
「それならよかったよ」
「お兄ちゃん先輩は触らなくてよかったんですか?」
「ん? あぁ俺はいいんだよ。うちには独占欲の強い犬がいるから」
そう答えると、司音ちゃんは「そうですねー」と苦笑した。
「それじゃあそろそろ次の場所に行きましょうか」
司音ちゃんはカフェラテを飲み干すと、おもむろに席を立ちポンッと手を叩いた。
次の場所? と首を傾げていると、司音ちゃんは近付き、
「今度は私たちが猫になる番ですから」
と耳元で囁いてきた。
「それじゃあ、私たちを楽しませてくださいね? ご主人様♪」
司音ちゃんは妖艶に微笑み、パチリとウィンクをした。
俺はそれだけで全てを悟る。
やっぱりこうなるのか……




