57話アフター 嫉妬する茜
もう一話更新します!
──ピロリン♪
お兄ちゃんの部屋のベッドに寝転びながらラノベを読んでいると、不意にスマホの着信音が鳴った。
もしかしてお兄ちゃんから!? と急いでスマホを手に取って通知を確認する。
そこに表示されていたのは『霞さん』の文字。
「くぅ……っ!」
あぁ、折角忘れていたのに。折角お兄ちゃんのいない寂しさを耐えていたのに。
「あーもう! なんで自分だけデートに誘ってるんですか! 夏休み最初のデートは私って決めてたとに! うぅー!」
本人が目の前にいるわけでも、通話しているわけでもない。ただ、どうしても叫びたい。
せめて事前に教えてくださいよ!
「……まぁ過ぎたことはいいです。さて、何でしょうか」
やっと気持ちが落ち着き、私は着信のあった通話アプリを開く。
そこには動画が一つ添付されていただけだった。
なんの動画だろうと開いてみると──映っていたのは小さい個室で寄り添っているお兄ちゃんと霞さん。
自慢ですか! なんなんですか! まったくもって羨ましすぎます! 私だってお兄ちゃんと狭い個室であんなことやこんなことを──ぐへへっ♪
「──はっ、そうじゃないです」
いつの間にか怒りを忘れ妄想に耽ってしまっていた。
うぅ、お兄ちゃんがいなくてつい妄想しちゃいます……
私は二、三度深呼吸をして心を落ち着かせ、動画を再生します。
最初はただ密着して座っていただけなのが、雰囲気良さげに見つめ合い、なんと霞さんがお兄ちゃんの腕に抱き付き、更には手を太股で挟んでしまった。
う、羨ましいぃぃぃぃぃいいいっ!
つい本音が漏れてしまうも、我慢して動画を見続ける。
それから暫く、霞さんがお兄ちゃんに何やら話し掛けている。
かと思うと、霞んさんからお兄ちゃんにキスをした!
うがぁぁぁー! もうもうもうっ! 霞さんはぁぁぁぁぁあああっ! 何ですか何なんですか! 宣戦布告ですか受けてたちますよ!?
「──なっ!」
内心発狂していると、何と今度は霞さんが服を脱ぎ始めました!
それには思わずお兄ちゃんも顔を逸らします。
すると霞さんは是が非でもお兄ちゃんを誘惑したいのか、お兄ちゃんの手を取って自らの胸に押し当てました!
私でもそんなことできてないのに……っ!
喩えようのない嫉妬が沸き上がるなか、お兄ちゃんと霞さんはイチャイチャイチャイチャ……
流石にマズいと思ったところで店員さんらしき人がやって来て、そこで動画が切れました。
「はぁ……」
動画を見終えた私はベッドに体を沈め、ひたすらため息を吐きます。
まったく、霞さんはズルい人ですね。今の状況でも満足できませんか。
「まぁ、満足できてないのは私も一緒ですが」
いえ、全員が満足できてないでしょう。だって、皆お兄ちゃんと結ばれたいですから。
「でも、お兄ちゃんの一番は私ですけどね!」
強がるように一人呟く私。
なんと虚しいことでしょうか。
はぁ……お兄ちゃん早く帰ってこないかな。
動画のことも相まって、寂しさと怒りが私の中でひしめき合ってます。
とそこで玄関の方からお兄ちゃんの声が聞こえてきました。
私は急いでお兄ちゃんのいる玄関へ向かいます。
さて、何から問い質しましょうか?